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しかし、その答えはもう、分かりきっていた。
ユキを選ぶに決まっている。
自分は、ただの代用品でしかなかったのだから。
ミカゲが三百年間も想い続けた、本物の恋。その相手が、今、目の前にいる。
片や自分は、面影が似ているというだけで彼の感傷の対象になっただけの、偽物。
比べるまでもない。天秤にかける価値すらない。
彼がこの扉を開けた瞬間、その腕は迷うことなく、ユキを抱きしめるだろう。
そして、自分は……その光景を、ただ見ていることしかできない。
想像しただけで、心臓が氷の刃で貫かれたように痛んだ。
ミカゲが自分以外の女性を愛しそうに見つめる姿など、見たくない。
彼が自分のものではないと、決定的に思い知らされる瞬間など、耐えられない。
「……いや……」
無意識に、後ずさる。
冷たい壁が、背中に当たった。これ以上、逃げる場所はない。
「いやや……来んといて……」
それは、心の底からの叫びだった。
来ないで。
来ないで、ミカゲ。
あなたの優しい声も、不器用な笑顔も、温かい腕も、もう私のものではないのだから。
あなたが他の誰かのものになる姿を、私に見せないで。
お願いだから、もう、私の前に現れないで。
「……ふふ、面白いわね」
ユキは、まふゆの絶望に満ちた願いを聞いて、楽しそうに目を細めた。
「助けに来てくれることを信じているのに、来てほしくないと願うなんて。本当に、恋する乙女というのは矛盾していて、愛おしいものだわ」
彼女の言葉が、遠くに聞こえる。
まふゆの耳にはもう、遠くで響く戦いの音も、ユキの声も、ほとんど届いていなかった。
ただ、自分の心臓が大きく、痛く、脈打つ音だけが響いている。
その鼓動の一つ一つが、ミカゲの足音のように聞こえて、まふゆはぎゅっと目を閉じた。
どうか、この扉が開かれませんように。
どうか、彼が来ませんように。
絶望の底で、まふゆはただ、そう願い続けることしかできなかった。




