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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第三十一話 少女は学園に愛される
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31-3




その頃、レオンハルトたちは夜の闇に紛れて、学園の深部へと足を進めていた。


ローゼリアの先導で一行が向かうのは、学園長室。通常、生徒が足を踏み入れることなど許されない、学園の心臓部だ。


「いい?ここからは静かにね。見回りの先生に見つかったら、さすがに厄介だから」


ローゼリアが艶然と微笑みながらも、声には緊張を滲ませる。彼女の言葉に、誰もが頷き、息を殺して後に続いた。

重厚な扉が並ぶ廊下はシンと静まり返り、自分たちの足音だけがやけに大きく聞こえる。




やがて一行は、一際豪華な装飾が施された扉の前で足を止めた。学園長室だ。

ローゼリアは手慣れた様子で懐から一本の鍵を取り出すと、あっさりと錠を開けてみせた。


「さあ、お入りなさい」


室内は広く、壁一面が本棚で埋め尽くされている。その中央、大きなデスクの背後にある壁に、複雑な魔法陣が描かれていた。


普段はただの装飾にしか見えないが、それこそが目的地である「特別な転移門」だった。


「起動には膨大な魔力と、正確な座標設定が必要になる。下手にいじれば、どこへ飛ばされるか分からんぞ」


ガンツが魔法陣に近寄り、その構造を検分し始める。彼のドワーフとしての知識が、今まさに活かされようとしていた。


「座標は分かっている。ドワーフ国境付近、旧ダグザ鉱山。問題は魔力だ」


ガレオスが腕を組み、唸る。


「魔力は、僕に任せて」


セリウスが静かに一歩前に出た。彼のハーフエルフとしての強大な魔力が、この作戦の鍵の一つだった。


ガンツが転移門の制御盤を操作し、セリウスがその魔力を注ぎ込んでいく。

魔法陣が淡い光を放ち始め、徐々にその輝きを増していく。空間がビリビリと震え、扉が開かれようとしていた。




「よし、もうすぐだ!」


ガンツの声が飛ぶ。


レオンハルトは、静かに佇むミカゲの肩を叩いた。


「ミカゲ、先行はお前に任せた。頼んだぞ」

「……ああ」


ミカゲは短く応えると、光り輝く魔法陣を真っ直ぐに見据えた。

その瞳には、恐怖も迷いもない。ただ、救い出すべき少女のいる場所だけを見つめている。


「転移門、開くぞ!」


ガンツの叫びと共に、魔法陣の中心が眩い光を放ち、渦を巻くように空間が歪んだ。

その向こうには、見慣れない荒涼とした大地が広がっている。




ミカゲは誰に言うでもなく、ただ一言、


「行ってくる」


と呟くと、躊躇なく光の渦へとその身を投じた。彼の姿は一瞬で歪んだ空間に吸い込まれ、消えていく。


「俺たちも続くぞ!」


レオンハルトが叫び、剣の柄を握りしめる。


「陽動部隊は俺に続け!後方支援部隊はタイミングを計って来てくれ!」


レオンハルトを先頭に、ガレオス、そして屈強な獣人やドワーフの生徒たちが、次々と転移門へと飛び込んでいく。

希望と決意を胸に、彼らは決戦の地へと降り立った。


「まふゆ、アリス……必ず、助け出す!」


レオンハルトの力強い声が、後に続く仲間たちの心を一つにした。

夜陰に隠された学園からの、静かな、しかし確固たる反撃が、今、始まったのだ。




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