30-6
レオンハルトの力強い宣言が、静まり返っていた中庭に響き渡った。
それは、絶望の闇を切り裂く、希望の狼煙だった。
その声に呼応するように、今まで物陰から様子を窺っていた生徒たちが、次々と姿を現した。
扉の向こうから、廊下から、階段の上から。
A組のクラスメイトだけでなく、B組や他のクラスの生徒、さらには上級生たちの姿まであった。
彼らの顔には、怒りと戸惑い、そして仲間を思う強い意志が浮かんでいる。
「俺たちも、黙って見てるわけにはいかねえ!」
「そうだ!エルフの命を犠牲にして作られた魔導機なんて、もう使いたくねえ!」
「まふゆとアリスは、俺たちの仲間だ!」
エドウィンの裏切りと白檻会の真実を知った今、彼らはもう傍観者ではいられなかった。
今まで信じていたものが偽りだったという怒り。
そして、このあまりにも過酷な戦いを、レオンハルトたちだけに背負わせるわけにはいかないという、熱い想いが彼らを突き動かしていた。
その輪は、生徒だけにとどまらない。
「──まったく、血気盛んな小僧どもめ」
重厚な声と共に、ホールの入り口に筋骨隆々とした巨体が姿を現した。戦闘訓練担当のガレオスだ。
彼の背後には、クールな表情を崩さないドワーフの魔科学教師ガンツ、そして心配そうに眉を寄せた誘惑科担当のローゼリアの姿もあった。
「お前たちの気持ちは分かる。だが、相手は国さえも裏で手を引く巨大組織だ。無策で乗り込むのはただの犬死にだぞ」
ガレオスが厳しく、しかしその瞳の奥に憂慮を滲ませて言う。
「ガレオス先生……!」
レオンハルトが驚いて振り返る。
「だが」と、ガンツが眼鏡の位置を指で押し上げながら、冷静な声で続けた。
「教え子が目の前で攫われて、黙って見過ごすほど我々も落ちぶれてはいない。それに……私の専門分野が、役に立つかもしれん」
彼の言葉は、白檻会の使う魔導機や技術への対抗策を示唆していた。
「そうよぉ」
ローゼリアも、普段の蠱惑的な雰囲気とは違う、真剣な表情で歩み寄る。
「まふゆちゃんもアリスちゃんも、私のかわいい生徒。そんな子たちが悲しんでるのに、黙って見てるなんて、教師失格じゃない?」
教師たちの登場は、生徒たちの心に大きな勇気を与えた。
これはもう、たった数人の無謀な殴り込みではない。
種族も、クラスも、学年も、そして生徒と教師という垣根さえも越えて、学園全体が心を一つにした、仲間を救うための聖戦なのだ。
レオンハルトは、集まった仲間たちの顔を一人一人見渡した。
その全員の瞳に、同じ決意の炎が宿っている。
「……感謝する、皆」
彼は深く頭を下げた。そして、再び顔を上げた時、その瞳にはリーダーとしての揺るぎない覚悟が輝いていた。
「これより、作戦会議を始める!どんな些細な情報でもいい、白檻会の本拠地の手がかりを掴む!そして、必ず、まふゆとアリスを俺たちの手で取り戻すぞ!」
「「「応!!」」」
中庭に、力強い雄叫びが木霊した。
絶望の底から立ち上がった彼らの、反撃の狼煙が、今、確かに上がったのだ。




