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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第二十六話 影人
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26-6




ミカゲは音もなく寝台に近づく。


その呼気は浅く、静かだ。熟睡している証拠。任務は容易い。そう判断し、腰に差した短刀を抜き放つ。闇の中で、鍛え上げられた鋼が冷たく光った。


急所は心臓。一突きで終わらせる。

彼は腕を振り上げた。これまで幾度となく繰り返してきた訓練の動き。寸分の狂いもなく、刃は白いシーツの膨らみに向かって振り下ろされる。




──その瞬間。


ばさりと、音を立ててシーツが跳ね上げられた。

寝台にいたはずの人影が、まるで幻だったかのように消え失せる。


「!?」


ミカゲの思考が、生まれて初めて驚愕によって凍り付いた。

気配は完全に消していたはず。呼吸も、心音も。何故、気づかれた?


視線を巡らせた彼の目に、信じがたい光景が飛び込んできた。

部屋の隅、窓から差し込む僅かな光が届かない深い闇の中に、白い影が佇んでいた。


雪のように白い髪。月光を吸い込んだかのような白い肌。

そして、その影がゆっくりと顔を上げた時、闇の中で二つの菫色が、まるで宝石のように妖しく輝いた。




それは、寝台で眠っていたはずの姫、ユキだった。


彼女は、眠ってなどいなかった。最初から起きていて、ミカゲが部屋に侵入したことに気づいていたのだ。


「……随分と静かなお客さんね」


鈴を転がすような、しかしどこか芯の通った声が、静寂を破った。




第二十六話・了




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