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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第二十六話 影人
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26-4




いよいよ、少年が十二の歳を迎える日が来た。

その日、彼は一族の長であり師でもある男の前に呼び出された。


「今日より、お前は“個”となる。もはや童ではない。影として、我ら一族の刃として生きるのだ」


長の厳かな声が、静まり返った広間に響く。

少年は深く頭を垂れ、その言葉を拝聴する。


「お前に名を与える。──ミカゲ。闇夜に潜み、影となりて事を成す者。それがお前の名だ」


ミカゲ。

生まれて初めて与えられた、己だけの名。


しかし、彼の心は凍てついた湖面のように静まり返っていた。喜びも、高揚もない。

ただ、新たな役割を与えられたという事実だけを、機械的に受け止める。




「そして、お前に最初の任務を与える」


長の目が、初めて射るような鋭さでミカゲを捉えた。


「──ダークエルフ王国の姫を殺害せよ」


ダークエルフ。好戦的で、誇り高い種族。その王族となれば、警備も当然厳重だろう。

ミカゲが任務の詳細を待っていると、長は意外な言葉を続けた。


「かの姫は、ダークエルフの王と王妃の間に生まれながら、アルビノエルフとして生を受けたという。白き髪、白き肌。戦う力を持たぬ、忌み子。依頼主は、その存在を快く思わぬ王国の民だ」


アルビノエルフ。伝説上の存在。慈愛に満ち、強大な治癒の力を持つとされる、エルフ族の中でも極めて稀少な種。


ミカゲの知識の中にも、その情報はあった。白魔術に特化し、戦闘能力は皆無に等しい、と。




「警備は厳重だろうが、狙うは力なき娘一人。油断なく、だが速やかに事を終えよ。これは、お前が“ミカゲ”という名の道具として、十全に機能するかを試すための任務だ。心してかかれ」

「……御意」


初めて発したその声は、自分のものではないかのように乾いて響いた。

感情はない。ただ、与えられた命令を遂行するのみ。




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