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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第二十五話 人形
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25-5




エドウィンの指示に従い、生徒たちはぞろぞろと中庭へと移動する。


広々とした芝生の上には、すでにいくつかの訓練用の的や結界術の装置が設置されており、普段とは違う物々しい雰囲気が漂っていた。


「特別講師って、誰だろうな?」

「有名な魔術師とかかな?」


生徒たちが口々に噂する中、まふゆも友人たちと並んで中庭の中心へと歩みを進める。

昨日の幸せな余韻はまだ胸に残っているものの、授業となれば気を引き締めなければならない。


(ミカゲ、いつも通りやな……。でも、やっぱりちょっと意識してまう……)


すぐ後ろを歩くミカゲの気配を、いつも以上に強く感じてしまう。


彼のことをちらりと盗み見ると、彼は何も言わず、ただ静かに前を見据えていた。

その無機質な横顔に、昨夜の情熱的な告白の面影を探してしまう自分がおかしくて、まふゆは小さくかぶりを振った。




やがて生徒たちが整列し終えると、エドウィンが一人の男を伴って現れた。


男は、白を基調とした清潔そうなローブに身を包み、柔和な笑みを浮かべている。歳は三十代半ばだろうか。一見すると、どこにでもいる穏やかな神官か学者のように見えた。


「諸君、紹介しよう。今日、君たちに魔術防御学を教えてくださる、特別講師のアルテス先生だ」


エドウィンに紹介され、アルテスと名乗った男が一歩前に出て、にこやかに一礼した。


「皆さん、はじめまして。白檻会より参りました、アルテスと申します。本日は短い時間ですが、皆さんの学びの助けとなれば幸いです」




その言葉が出た瞬間──まふゆ、レオンハルト、セリウス、ミカゲ、シャノンの五人の間に、見えない緊張の糸が張り詰めた。


(白檻会……ッ!)


表向きはエルフの保護を掲げる人道的な組織。しかしその実態は、エルフを実験材料として非道な魔導機を開発する外道の集団。


レオンハルトとシャノンが鋭い視線でアルテスを射抜き、セリウスは表情を消して警戒を露わにする。

ミカゲは影のように気配を薄めながらも、その全身から放たれる殺気は隠しきれていない。


そして、その講師を連れてきたエドウィン。彼の正体も、白檻会の中枢メンバーであるという事実も、彼らは知っている。


(この授業……ただの授業やない。何か目的があるはずや……!)


まふゆはぎゅっと拳を握りしめた。アルビノエルフである自分と、その隣に立つアリス。

この二人を前にして白檻会の人間が現れた。偶然であるはずがない。




エドウィンは、そんな五人の緊張など全く意に介さず、満足げな笑みを浮かべて授業の開始を告げた。


「ではアルテス先生、よろしくお願いします。君たちも、しっかり学ぶように」


アルテスの柔和な瞳が、生徒たちを見渡し、そして──ぴたりと、まふゆとアリスの上で止まった。その笑顔の裏に隠された冷酷な本質を、まふゆたちは肌で感じ取っていた。


これは、敵地も同然の学園内で仕掛けられた、白檻会による巧妙な罠。

波乱に満ちた特別授業の幕が、静かに上がった。




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