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流石に二日間にわたる学園祭の喧騒と、昨夜の後夜祭での様々な出来事は、若い生徒たちの体力をもってしても疲労困憊させるには十分だった。
学園側の配慮で与えられた休日は、まさに恵みの雨と言えただろう。
女子寮のまふゆとアリスの部屋にも、穏やかな休息の時間が流れていた。
まふゆはアリスに昨夜のことを報告し、小さな友人からの純粋な祝福を受けた後も、どこか夢見心地な気分から抜け出せずにいた。
ベッドに腰掛け、膝を抱えたまま、窓の外の穏やかな景色をただぼんやりと眺めている。
(今日は一日、のんびりしよ……)
劇でのトラブル、ガーゴイルとの予期せぬ戦闘、そしてミカゲとの運命的なダンスと告白。
あまりにも濃密な二日間だった。
特に、ミカゲとのことについては、思い出すだけで胸がいっぱいになり、思考がまとまらない。今はただ、この幸せな余韻に浸っていたかった。
アリスもまた、そんなまふゆの様子を察してか、無理に話しかけることはしない。
昇級祝いに貰ったスケッチブックを開き、真新しいクレヨンで何かを描くことに没頭している。時折、サリ、サリ、と紙の上をクレヨンが滑る音だけが、静かな部屋に響いていた。
結局、その日はレオンハルトたちと合流することもせず、二人きりで本当にのんびりと過ごした。
昼食は寮の食堂で簡単に済ませ、午後は部屋に戻ってまふゆが持ってきた物語をアリスに読み聞かせてやる。
アリスは物語の内容を理解しているのかいないのか、ただまふゆの声に耳を傾けながら、時折こくりと頷いた。
やがて陽が傾き、夕食の時間になっても、二人は部屋で過ごすことを選んだ。
ミカゲがどこからか調達してきたサンドイッチと温かいスープを差し入れてくれた時、まふゆは彼の顔をまともに見ることができず、「あ、ありがとう……!」と俯きながら受け取るのが精一杯だった。
そんなまふゆの様子を見て、ミカゲは何も言わず、ただアリスの頭を一度だけぽんと撫でて去っていった。
その些細なやりとりすら、まふゆの心を温かく満たしていく。
夜が更け、二人並んでベッドに入る。
心地よい疲労感と、満たされた幸福感。
まふゆは、隣ですうすうと穏やかな寝息を立て始めたアリスの柔らかな髪をそっと撫でた。
(こんなに穏やかな日が、ずっと続けばええのになぁ……)
しかし、運命は彼女たちに、そう長い休息を与えてはくれなかった。
この静かな休日の裏で、ある男が不吉な笑みを浮かべ、次なる計画の駒を着々と進めていることを、まふゆたちはまだ知る由もなかった。
アルビノエルフと、彼女を慕う謎の少女。
二人の運命の歯車が、見えざる手によって、ゆっくりと、しかし確実に狂わされようとしていた。




