表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラック ブック  作者: さだきち
レティシアへ:境界を越える五つの決意

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/97

第三章:再会の舷梯(タラップ)、あるいは宿命の知識


風の死んだトルニアの港。あれほど頻繁に行き交っていたレティシアからの船も、今やぷっつりと途絶えていた。重苦しい静寂が支配する港で、カイエンは隣に立つイゾルデに鋭い視線を向けた。


「……ところで。お前らの本当の目的は何だ?」

「さあね。シファはどのみちヴェネリア王国の奪還に向かうでしょうし、あなたたちは……あの忌々しい魔術師を倒しに行くのでしょう?」

イゾルデは視線を海へ向けたまま、はぐらかすように微笑んだ。

「私たちは、どちらか『美味しい方』についていくわ」

その言葉に、後ろに控えるバルドも我が意を得たりと深く頷く。


「美味しい方だと!? どちらも遊びに行くんじゃないんだぞ!」

たまらずマルコが声を荒らげたが、イゾルデは動じない。

「あら、マルコさんでしたっけ? かわいい顔をしているわね。……さて、私たちはどこか落ち着ける場所でも探しに行くわ。ご機嫌よう」

優雅な足取りで、イゾルデと二人の兵士は港町の雑踏へと消えていった。


「なんなんですか、あのふざけた奴らは!」

憤るマルコをなだめるように、カイエンが低い声を出した。

「まあ待て……ああ見えても、実は……いや、何でもない。……ところで、マルコ。お前もサヤを待ってくれるのか?」

「……ええ。彼女は師匠の刀を奪ってまで、相当な覚悟でここまで来たんですから」

「そうだな」


二人が静かな決意を交わしたその時、背後に停泊していた美しい帆船の上から、微かな、だが聞き覚えのある声が届いた。

「……エン! そこにいるのはカイエンだろ! おーい!」

「なんだ?」

カイエンが反射的に船を仰ぎ見る。そこには、甲板の手すりから身を乗り出し、大きく手を振る男の姿があった。


「バレル! お前、来ていたのか!」

久しぶりに見る親友の姿に、カイエンの目が見開かれた。

「そんなところに突っ立ってないで、こっち来いよ! ゆっくり話をしようぜ!」

船の上からバレルの快活な声が響く。


「どうするんですか?」と尋ねるマルコに、カイエンは即答した。

「俺は船に行く。お前はどうする?」

「……僕も行きます。あの方、何だか不思議な雰囲気ですし」

カイエンは港に残る、シファが連れて来た親衛隊員たちに目を向けた。

「お前らはどうするんだ?」

「私たちはここで隊長の帰りを待ちます。どうぞ、船へ行ってらしてください」

「申し訳ないが……」

「サヤさんのことですね? もちろん、戻られたら船にいらっしゃるとお伝えします」

「かたじけない。恩に着ます」

マルコが深々と頭を下げ、二人は誘われるままに美しい船のタラップを上った。


甲板の先、一段高くなった後部デッキのテーブル席で、バレルが手招きしていた。

「ようこそ! さあ、そこに座れよ。……ん? そちらの方は?」

「マルコと言います」

マルコが丁寧に頭を下げると、バレルはその修道士のようないでたちを凝視し、突然、驚愕の声を上げた。

「マルコ……? お前、あのマルコか!!」


「え? ええ……? なぜ、僕を知っているんですか?」

戸惑ったマルコが助けを求めるようにカイエンを見るが、カイエンもまた困惑して首を振る。

「バレル、お前……マルコを知っているのか?」


「ああ、知ってるとも!」

バレルは身を乗り出し、確信に満ちた目で告げた。

「――『ツインズ』に憑依された、あのマルコだろ?」


その瞬間、マルコの身体が凍りついた。

「な、なぜそれを……! あなた、一体何者なんですか……!?」

驚愕のあまり、言葉を失ってバレルを見つめるマルコ。その脳裏に、過去の記憶が鮮烈に蘇っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ