決行の時
市場や近所の大人たちで得た情報により、自分の置かれている現状も見えてきた。
お金も少しずつ溜まっている。毎日食材を買うために15ベニーを貰っているが以前は10ベニーだった。以前であれば1ベニーくすねるのが精いっぱいだったが、今では10ベニーはくすねている。
8歳のころから約2年間で約700ベニー。7万円。10歳からは半年で、1820ベニーくすねた、18万2千円だ。合わせて約25万円までになった。
もうすぐ秋、11歳なる。厳しい冬が来る前にどこか落ち着ける場所を見つけなければならない。私はミルの誕生日が分からないため、前世の美玖の誕生日で歳を数えている。前世では、10月27日生まれだった。それでいい。近所の同い年のルーイが夏生まれでその後らしいのであまり誤差もないだろう。
王暦2554年現王4年10月27日生まれとなる。
これだけあればどうにかなるだろう。明日にでも出ていける。そもそも、私には荷物がない。いつも着ているのはジョセフのお下がりだ。10歳を過ぎれば下町の女の子だってワンピースやスカートを着ている。いつまでも男の子の恰好をしているのは私ぐらいだ。母の着ていた物があるかもしれないと探したが一切なかった。普通取って置くだろう。父からは母の情報はまったくない。以前、どんな人だったか聞いたら殴られた。理不尽だ。もういい。早くこんな家から逃げ出したい。後はタイミング。もう今からでもいいんだけど。
----ジョセフ-----
ジョセフは、店で会計をしていた。
大抵はミルに任せてはいるが、お金だけは触らせてはいなかった。
金を任せるとどんな風にも不正が出来るからな。あいつに金を持たせたら全額もって逃げるだろう。そうはさせない。それにしても意外と稼ぎがいいものだな。楽してこんなに金が得られるとは思わなかった。
オレだって仕入れがうまくいくのに何年もかかったのに。
商人ギルドに金を納めに行った時は、金額が間違いではないかと思うほど安かった。
売れ筋の花を仕入れるようになったと思っていたが、まさかあんなに安く仕入れているとは…。子供は作っとくもんだな。
ミルはもう11歳か。背ばかりひょろひょろ伸びて他はまだまだ成長が遅いようだな。まぁ11歳なら仕方がないか。もう少し待つか、楽しみは後に取って置くものだ。
ジョセフはミルの部屋がある方を向いてニヤリと笑う。
しかし、最近のミルはいやに素直だ。ちょっと前までは反抗ばかりしていいたのに…。諦めたか…でも悲壮感は感じられない。
あやしい…。
ミルはオレのものだ。あの女のように逃がしてなるものか!
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ゾクリとする。
まだ、店にジョセフがいるようだ。
ミルの店は下町の大通りにある。1棟1棟が1つの店で住居だ。
1階は店になっている。2階は居住スペースになっていてキッチンや食堂がある。3階は現代で言うリビングがあり、夫婦の寝室がある。そして4階に2つの部屋がある。ミルはその1つを使っている。5階にいくと店側は屋根部屋になっており、その反対側が洗濯物が干せる小さな屋上になっている。それはどの住居も一緒だ。
出入口は1つで店のドアしかない。外に出るならば店を通らなければならない。
最近のジョセフは店で寝起きている。
そのことを精霊たちに聞いてミルは知っている。
逃げないように見張っているのか…。そうなるとグズグズしてられない。
ミルは最近のジョセフの視線が気持ち悪いと思っていた。下から上にじっとりと見てくる。そして、ニヤリとする。
「まだまだだな」
という。
なにがだ!
本当に気持ち悪い。これはまずいかもしれない。
前世でのあれだ。変態だ。貞操の危機だ。絶対にいやだ!!
別に、店にジョセフがいようがいまいが私には関係ない。時ちゃんに頼んだらどこにでも行けるのだ。もう我慢できない。もう今夜出発しよう。
「みんな!行くよ!」
『『『了解~』』』
ミルは逃げた。
逃げた後のことも以前から調査済みでこの日のために準備をしていたのだ。
ミルは闇夜に消えた。
ミルは、以前からジョセフの視線を不快に思っていた。
じろりと下から上をニヤニヤして見ているかと思ったら睨むような目つきになったりしていた。
なんなのだいったい。見んなこっちを!
他にも気配を消して急にミルの部屋をノックもせずに乱暴に開けたり、料理をしているときや掃除をしているときもずっとミルを監視しているように見ているのだ。
そのため、風の精霊に掃除をお願いすることも水の精霊に水圧で食材を切ってもらうことも出来ない。
マジでうざい。
部屋にいても心から休めない。突撃してくる前は精霊たちが教えてくれはするが、急に移動するので、『こっちに来るよ。』と言われて焦る。
それは着替えるタイミングが多かった。寝る前には当然、着替える。ジョセフのお下がりだが、身体を拭いて寝間着用の服に着替えて寝るのだ。
時間をずらして着替えたりしているが、ずらしても急にミルの部屋に来るのだ。来ることが分かっているので着替えるのをやめて窓の外を見ているフリをする。
「早く寝ろよ」
父親みたいなことを言う。
「わかってる」
「着替えないのか?」
「お父さんがいたら着替えられないよ」
「子供のくせになにを恥ずかしがっている」
「…」
ニヤニヤしながら自分の部屋に戻るのだった。イケオジが台無しである。
マジでゾッとする。つっちーにお願いしてドアノブに細工をして扉を開かなくしようかとも思ったがジョセフにそれが見つかるとまたやっかいだ。
私はまだ10歳だ。ロリコンなのだろうか。でも実の子だよ。マジで気持ち悪い。でも、少し胸が出てきたかな。さすが外国人の身体、発育がいい。いや異世界人か。
捨てようと思っていたジョセフの冬のシャツをビリビリと引き裂き出した。それを胸に当て巻く。さらし変わりだ。ぎゅうぎゅうにシャツを巻いて胸を抑えた。さらしを巻くことで胸板がちょっとたくましくなった。余計に男の子に見えてしまう。
今までのミルはジョセフのお古を着ていた。それはシャツ一枚なのだ。ミルにとっていい下着ができた。
これいいかも。このまましばらくはこれでいこう。今までは特に気にしてなかったけど、あの視線を向けられたらいやでも気になる。これで変態ジジィに変な目で見られても平気だ。
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