ミルが消えた朝
最近のジョセフはミルが仕入れから帰ってくるまで寝ている。毎朝ミルが部屋から降りてきて市に行く準備する物音で目を覚まして、そして出発をしたと確認したらまた寝るのだ。しかし、ミルは降りてこない。そのせいか1度も起きることなく昼過ぎまで寝てしまっていた。
ドンドン、店の扉を叩く音がする。
「ジョセフ、今日、店は休みかい?ミルの具合が悪いのかい!」
ジョセフは飛び起き、慌てて店の扉の鍵を開ける。そこには八百屋のジルやいつも借りている借馬車の主人がいた。
「ミルが朝、馬車を借りにこなかったよ。どうしたんだい?こっちも予約しているから借りてもらわないと困るんだよ。どうかしたのかい?」
借馬車の主人も商売だ。理由もなしに勝手にキャンセルは許されない。キャンセルの場合は1日前に言うことがルールだ。ルールを破ることは契約違反である。その際は、違約金が発生する。
「待ってくれ。ミルが市にいっていない?済まない。俺は今日、体調が悪くて今まで寝ていたんだ。ミルには今日会ってないんだよ。部屋で寝ているかもしれない。見てくるよ。」
と言って、ジョセフは3階のミルの部屋に向かった。
「ジョセフ…。大きなお世話だろうがちょっとミルを働かせ過ぎじゃないかい?まだ10歳だろう?今日は疲れて寝坊しているのだろうよ。」
八百屋のジルはジョセフの後に続いてミルの部屋に向かった。借馬車の主人はまた後で寄ると言って帰っていった。
「わかっているよ。ジル。本当に済まないと思っているんだ。しかし、身体が…」
「まだ、オレより若いだろうに。一度ロンじいさんの所に行ってみたらどうだ。そう何度も言っているだろう。」
ロンじいさんとは近所の錬金術師だ。
「い、いやあそこのポーションは高いだろう。」
「なに言っている。頭痛程度なら5デニーくらいだろう」
「頭痛じゃない」
「そういうことじゃないだろう」
ジルはあきれて、ため息をついた。
トントン、ミルの部屋の扉を叩く。
いつもしないのに今日はジルがいるのでノックをする。
「ミル、開けるよ」
返事を待たず扉を開ける。部屋にミルはいなかった。開けっ放しになっている窓が風でギィギィいっている。ミルの演出だ。
「いない。どこに行ったんだ。」
ミルが行方不明になったことはその日のうちにアッと言う間に近所に知れ渡った。
ジョセフは一緒に探してくれと近所の人達にお願いをしていたが一緒に探そうとはしなかった。
「オレ達も忙しいんだ。自分たちの生活がある。兵士に任せろ。」
と、ジョセフを拒絶した。
下町の人達は薄情ではない。ミルは自分で出て行ったのだと分かっていたのだ。
最近のミルの様子、隣町の事やプレートのことをやたらと聞いていた。自分たちが助けてやりたいのは山々だったが、どうやって助けてやればいいのか分からなかった。経済的にもとても無理だった。その為、ミルが父から逃れようとしていることの邪魔だけはしたくなかった。
ジョセフは兵士にミルは森にでてケガをしているかもしれない、攫われたのではないか、と捜索を願い出ていた。
しかし、近所に聞き取りをしていた兵士は家出だと結論づけた。そこで捜索は2日で打ち止めとなった。ジョセフはそんなはずないと反論したが却下された。そもそも夜は部屋にいたことはジョセフが確認している。そして店の扉から出ていないこともジョセフにはわかっている。
窓を使って自ら出て行ったのだろう。気が付いたのが昼頃。朝、家を出たなら6時間以上、夜なら12時間は経っている。駅馬車に乗って他の町に移動したならば既に着いているころだろう。
この辺を捜索しても意味がないと結論がついた。
移転先は真っ暗な森、いつも洗濯している場所だ。黒ちゃんにお願いして猫のように夜目がきくようにしてもらった。猫ってこんな風に見えているのかと感心する。
つっちーに以前から小さな祠のようなものを作って貰っていて眠い時はそこで昼寝をしていた。まったく人が来ない秘密基地だ。朝になるまでここで待機だ。もうこの森に来ることもないだろう。新しい拠点近くに同じような場所を見つけてまた基地の作り直しだ。
移転が出来るのだからずっとここを使えばいいのにと思うかもしれないが、下町に割りと近いためいくら危険な森だとしてもたまたま迷い来る人もいるかもしれない。
それが父に伝わるかもしれない。そんな恐怖がある。もう二度と会いたくない。
これであの父親とはおさらばだ。
お金を貯めるのに時間が掛かったな。色々と精霊にお願いすれば売れる物を作れたりするがまだ未成年だしね。あまり派手に動き回りたくない。
ラノベとかって目立ちたくないとか言っている割には私、やっちゃった?とか言って悪目立ちしているよね。なんなのあれっていつも思っていた。
私は本当に目立ちたくない。まぁあれは話しを面白くするための布石なのはわかっている。でも、私には保護者がいない。そんな状態で貴族とかに見つかったら飼い殺しになるかもしれない。そんなの嫌だ。そのうち大人になって人助けとかに協力してもいいけど、今はまだ子供だ。自由でいたい。
本来の森ならば、恐怖を感じるだろうが、私には精霊たちが付いている。今は見つかりたくないからひのちゃんたちには大人しくしてもらってはいるが、他の精霊たちもいる。魔獣が出ればなにも言わなくても瞬殺してくれている。本当に心強い。
ただ心残りなのは市場の人にも近所で親切にしてくれていた人達になにも挨拶できていないことだ。父親に感づかれるとやっかいなため誰にも逃げ出すことは言えていない。仕方がないことだが、申し訳ないと思う。
よかったと思っていただけたら評価☆を頂けると励みになります(^_-)-☆
よろしくお願いします(^◇^)




