ありき戦法
イージュレンから王都まで2ヶ月ほどかかる。その道のりに宿屋がぽつぽつと数か所あり、その近辺には小さな集落になっている。旅の途中にそこの集落で宿を取ったり、休憩を挟んだり、昼ご飯を取ったり、旅に足りない物や食べ物を買ったりする。
その各集落に魔術具が設置してある。その魔術具でメールが送れるというのだ。
その魔術具にスズカを差し込み、魔石に手を掲げながら念じれば誰に誰がどこからどんな内容か一言だけ伝わるらしい。そのメールは各教会にある魔術具に伝わり内容が紙に複写される。それを登録している人に配達される。メール便というらしい。
メールというよりFAXじゃないか。しかも念じれば?どんな仕組みだ。魔力か?よくわからん世界だ。
レオンは既に登録済みらしい。それはお布施付で誰でも登録できる。ロゼも登録しなければならない。
そして送る方に料金がかかるシステムだ。それはスズカから引き落される。
「200ベニーもかかるの?高っ!しかも登録にお布施付!?」
合わせて400ベニー!あの教会金取り過ぎだろう!
「まあ高いがな。昔はもっと高かったんだぞ。ここ10年で安くなった方だ」
2ヶ月間、馬車に揺られることを考えたら安いか…
「はぁわかったよ。その方法で連絡する」
ロゼはレオンから紹介状を受け取った。
ルキはまだ納得していないようだ。
「ダメよ!子供にそんなわがまま許すなんて!ダメなものはダメと教えなきゃ!!」
ルキはロゼの紹介状を奪おうとする。
もちろん、渡したりしない。ロゼは既にルキより背が高い。
まあ子供だから子供扱いするのは仕方ないか
ロゼは紹介状の取り合いをしている過程から体勢をかえ、ルキを壁の方へ追いやり左手を壁に掛ける。所謂、壁ドン姿勢だ。
そして神妙な面持ちで顔を近づけてルキの瞳を見つめる。
「ルキ…心配してくれるのはありがたい。でもルキは私の母親でも姉でもない。私にしつけは無用だ」
グッと詰め寄る。
ルキは、はっとして見る見る顔が赤くなっていく。
「わ、悪かったわね…」
怒りながら悲しんでいる。ちょっと涙目だ。
ロゼはルキに肩にそっと手をやる。
「悪い。こんな言い方して。でもルキには私の友達でいてほしい。親ではなく、友達でいてほしいんだ」
ちょっとだけくさいセリフを言ってみる。ちょっと本音も入れる。
ルキは顔を上げ、目を大きく見開く
「と、友達でも心配はするわ」
顔がさっきとは違う意味で真っ赤だ
「友達なら頑張れと送り出してくれると思うよ?」
ロゼはにっこりと笑って見せた、ちょっと矛先を変える
「し、し、し、仕方がないわね。み、見送りだけはするから鐘の音をおしえなさいよ!」
え?見送りなんていらない。転移するだけなのに。
「まだ、駅馬車のチケットも買ってないでしょ!」
仕方がない。
「わかった。明日の朝2回目の鐘の音の駅馬車で出発する」
早起きは苦手だ
「そんなにゆっくり行くの?朝1の音でいけば、昼には北門に着くのに。朝2の音だと北門で宿を取らないといけないわよ?」
朝2《あさに》の音って略し方するんだな。
途中で降りればいいやと思っていたので適当なことを言ってしまった。
王都に行くには北門まで行かなければならない。北門には駅馬車で半日かかる。そこから王都行の駅馬車に乗り換える。そして休憩を挟み、昼2の音から出発する。
朝2の音の駅馬車で向かっても昼2の音に間に合うか微妙らしい。しかも休憩も取れない。ロゼはそこから転移すればいいのだが。
北門には王都に向かう人用にレストランや宿など色々と賑わっている。もちろんいい値段はするようだ。しかしせっかくなので観光しながら向かうのは悪くない。まあ街道に入ってしまえばどこも一緒だから途中の集落で転移してすればいい。
「観光しながら行きたいからそれでいい」
「観光しながら行くのなら私と春にいけばいいのに…」
と聞こえてきたが無視する。
「わかった。明日の朝2の音ね!」
ルキは威勢よくギルド長室を後にした。
ロゼも帰ろうとしたときにレオンが言った。
「このスケコマシめ!」
レオンにはお見通しのようだ。
ロゼはにっこり笑って部屋を後にした。
もちろん前世であんな恥ずかしい事などしたことがない。ロゼの容姿ありきの戦法だ。白ちゃんには頼っていませんよ。
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