呆ける貴族
「おまえ、女だったのか!」
秋も深まり、今年最後の魔獣素材の受け渡しだろう。
ローブの男が声を上げる。
「うるさいぞ、ローブ。下に女の子が住んでいるんだ。静かにしてくれ」
「す、すまん…」
ロゼはローブの男をローブと呼んでいた。
「女だとは思わなかったぞ」
ローブの男は心底びっくりしている。ロゼは煤なしのガウチョルックだ。
「ああ、男に扮していたからな。でも最近バレるようになったから辞めたんだ。男でいるメリットももうないからな」
「そうなのか…」
ローブの男は平然と言われても付いていけていない。
「で、相変わらず例の女の子を捜しているのか?」
「ん、いやまあ…捜してはいない。もう関係ない」
「関係ない?」
「ああ、俺は貴族を抜ける。一般人として生きることにした。だから買い付けも今日で最後だ。来年もない。引継ぎもしないつもりだ」
「へぇ家族は許したのか?」
ちょっとびっくりとするロゼ
「許すわけないだろう。でも関係ない。もうなにもかも面倒だ。引退した両親は分かってくれた。一般人になってなにが出来るか今は探っている」
「へ~100枚の金貨返そうか?」
もちろん返す気はないがロゼは意地悪そうにニヤニヤしている。
「むっその必要はない。兄から返してもらった」
「引継ぎはしないと言っていたが、私の事は貴族には言っていないのか?」
「言ってない。闇取り引きだしな。腕のいい冒険者としている」
「ふ~ん、そうなのか今日でもう会うことが出来なくなるわけか…」
「まぁそうなるが、なんだ俺に会えないのが寂しいとか言うんじゃないだろうな」
ローブの男はニヤリと笑う
「ふふ、もちろん違うが…どうしようか、じゃあ言ってもいいかな。最後だしな。そうだな。実は俺だ、間違えた。私だ」
母との繋がりがなくなるのは困る…かな
ローブの男はじっとロゼを見る。
「なにが私なんだ?」
可笑しくてぷっと笑ってしまう。
私と言いなれていない感じが可愛かった。
「だから、ミルは私だ。13歳の女の子を捜していただろう?」
サラリとぶっこむ
「は?…」
またもや、付いていけていない。
「いや…いやいや、ミル嬢は紫の瞳だ。おまえは濃いが青だろう…」
と、ロゼを見たら、紫の瞳になっていた。
「…」
「私がミルだよ、今は14歳だけど」
にっこりと笑う
辺りは暗くなり始めていた。それでもローブの男の思考はもどらない。
いつまで呆けているつもりだ。
ロゼはローブの男をほっといてご飯を食べたり、レイジュ様の所にお風呂に入りに行った。トイレに行こうとして、ついでに隣の部屋を覗くと暗くなった部屋にまだローブの男はいる。なにかブツブツ言っている。
さすがに肩を揺らす、
「おい、いつまで呆けているつもりだ。さっさと帰れ」
ローブの男ははっとなる。
ようやく自分が軽く気絶をしていたことに気づく。
ロゼを見て、ローブの男は
「本当に義姉上、娘なのか?」
ロゼの紫の瞳を確認する。
「義姉上?」
ローブの男は、ジョニルバール・ディ・ロイスと名乗った。
よく知らないが現公爵の弟なのだとか。公爵って王様の親戚とかだろう。大物じゃないか。
ローブの男ジョニルバール・ディ・ロイスは義理の姉のことをロゼに話した。
「そうか…」
「会うか?」
「まだ、会わない。成人して自由を手に入れたらな。会ってもいい」
「自由ってなんだ?」
「未成年だとなんだかんだ、言われそうだろう?面倒じゃないか」
「そ、そうだな…」
ジョニルバール・ディ・ロイスはロゼを見る。煤のないキレイな顔は確かに義姉上に似ている。
「なぜ、俺に言った。今ここで攫ってしまうかもしれないぞ」
「あ~なるほど、そういう事もあるか」
「自分の力に過信しているのではないか」
「そうだけど…それがなんなんだ?攫った後私は殺されたりするのか?」
「するかもしれないだろう?」
「貴族でもそんな事をしたら精霊なしになるんじゃないのか?」
「…それはそうだが、警戒心が無さすぎないか?」
「面倒な…攫われたら逆に攫い返してやるよ」
レイジュ様の所に強制転移だな。そして、魔素多い森に放り出してやる。
「そんな事より、貴族を廃してどうするつもりだ?」
「そんな事って…いや今は城の近くに屋敷を借りている。しばらくそこで生活する」
「ふ~んまあ、頑張れよ。俺が母親に会いたくなったらおまえに繋げばいいのか?」
「ああ、俺でいい。貴族を廃しても連絡は取れるようにしている」
「その時は頼むよ。俺も来年は王都で生活するつもりだ。錬金のアカデミーを受けるつもりだから、あっちで会おう」
ロゼはニパっと笑う。
「独身の男女が2人で会うのはまずいんだぞ」
「普通の庶民はそんなこと関係ないぞ」
「ちなみに瞳の色を変えていたのは闇の精霊の力なのか?」
「そうだ」
「言いたくなければいいが…水と闇の精霊と契約しているのか?」
「ん…そうだな」
「そうかいいな、時の精霊とは契約しなかったのか?」
「…ん、している」
「時の精霊ともか?すごいな」
ロゼはちょっと悩んでローブの男の顔を見る。
「あんたは俺の親戚になるんだよな?」
「叔父だ」
血は繋がらない。
「言ってもいいかな。フフ」
いたずらっ子の顔だ
「なにをだ?」
「自慢?」
ロゼはぷぷっと笑う
「俺は8属性全部と契約をしている」
どうだ、すごいだろう、と言わんばかりのドヤ顔だ。
「は?」
「俺は8属性全部と契約をしている、ふふん」
2度言う。
「そんなこと…」
最初は世間体から、水の精霊の中と契約したが、他の精霊から不満が出た。
なので中の水の精霊とはかわいそうだが契約は解消させてもらい、一番力のある水の精霊と契約したのだ。その後にも時の、闇の、光の、土の、緑の、火の、風の、と契約した。すべて一番な力の強い精霊とだ。じゃないとケンカになる。
順番にも不満が出たが、光の以降はあみだくじで決めてもらった。時のと闇のはいつもお世話になっているので先に契約をした。
またしても、ローブの男ジョニルバール・ディ・ロイスは呆けた。
名前長いな、もう一般人なら短い方がいいな。これからは、バルと呼ぼう。
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