反撃の狼煙
「もう何年も前だよ。いなくなったのは。ルーイが王都に行った年の秋ごろだったかな、もうすぐ寒くなるというのに行方が分からなくなった。たぶんだが王都に向かったのではないかと思う。ルーイのことを想っていたのだと思うよ」
「あなたの息子?そのミルの相手にとは思わなかった?」
10歳ともなると親が子の進路を決める。自分の店を継がせるのか婿にやるのか。
「最初はその花屋の婿にやろうと思っていたんだ。ミルは一人っ子だったし、2人は仲も良かった。ジョセフに婿にどうだと言ったんだが、ミルにはもう相手がいると言われた。だが今考えればうそだったのだろう。ルーイを親戚がいる王都に預けた。婚約者とともに。
そしてすぐにミルは消えた。ショックだったのかもしれん。もっと親身になって上げていたらと思うよ」
「今でもルーイは王都に?」
「ああ、もしかしたら今は一緒にいるのかもしれない。私が選んだ婚約者とは解消したと手紙が来ていたから。王都で再会したのかも」
ルーイの父親はうれしそうに言う。
「居場所を聞いても?」
「ああ、あのリタって女が捜しているのだっけ?もし王都で2人が一緒にいるのならそっとしていてほしいがな。一度はミルを捨てたのだ。今更母親ズラするなと言いたい」
「同感だ」
ユロランの街に戻る馬車の中で話をまとめると、本当にひどい環境だったようだ。8歳になっても学校に通わせてもらえなかったし、なんの祭りにも参加させていなかったと、いつも格好は男の子で花屋の仕事までさせられていたと言う。
本当になぜジュリエッタは一緒に連れて来なかったのだ。少なくとも紫の瞳なら受け入れてもらえていただろう。
街に戻り教会に行く。神父に話だと、教会にミルという女の子の登録はないという。
そんな馬鹿な!5歳になったら登録させるだろう。
いや待て、なんの祭りにも参加していなかったと言っていたな。
自身の5歳の生誕祭にも参加させてもらえなかったのか?なら登録は出来ない。そんなことする親がいるのか…。
ルーイの父親もそんなこと言っていたな、娘にスズカを持たせないなんてあり得ないとか。ルーイはミルがスズカを首に掛けていないことを不思議がっていたと。
ルーイはミルのことを良く見ていたんだな。好きだったのだろう。2人は王都で暮らしていると願いたい。
下町で少し話を聞くと、ミルのことを覚えている人たちは幾人かいた。洗濯場の主婦や肉屋にパン屋、買い物もすべてミルがしていたようだ。
もっと早く迎えにきてやって欲しかったと俺が怒られた。知らんがな。
しっかりした子だった、きっとどこかでうまくやっている。と聞く人すべて言ってくる。パン屋の女将は自身のモスグリーンのワンピースをやったら大きな瞳に涙を浮かべて喜んでいたと言う。いつか子供でも連れて遊びに来てほしいねぇと言った。
何としても見つけ出したい。あのクソ夫婦のためでなく、みんなに好かれているミルのために。ミルはスズカの再発行の仕方や隣町の行き方など色々と調査をしていたようだ。だから行方が分からなくなったと聞いたときはああ、旅立ったのだと思ったという。
やはり王都に向かったようだ。隣町はイージュレンだな。イージュレンと言えばあの生意気な小僧がいたな。あいつは…濃い青の瞳だったな。ま、男だからそもそも関係ないが。
一旦、王都に戻ろう。あとはジュリエッタに話を聞こうか。
「ジュリエッタに話?なんの話を聞く。早く娘を連れてこい」
偉そうに。金を返してもらえたら俺は逃げる、それまでの辛抱だ。
「話をしたい。でないとこちらも情報は出せない」
今日は強気だ。いつも顎で使いやがって。もううんざりだ。これは公爵家の仕事じゃない。ただの私利私欲だ。
「な、なにを!」
「父上、いいではないですか。母上の自分の子のことです。あの時の状況は俺も聞きたい」
長男のデェルスが言う。
「むっしかし体調が…」
「母は仮病だと思いますよ」
「「は?」」
二人は驚愕する。
「気が付いてなかったんですか?叔父上はともかく父上も?母はそういう女ではないですか」
次男のディルイが冷たく言い放す。
この子たちも一度は母に捨てられたのだ。許しているはずがない。
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