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とある場所で

「どうだ、進んでいるか?」


 銀髪に紫が掛った髪と瞳をした童顔の男がかしずいている男たちに聞いている。

ジョニルバール・ディ・ロイス 

この国の現公爵の弟だ。


「ジョニルバール様、恐れながら素材についていささか問題がございます」

 傅いている一人の男が言葉を選びながら言う。


「ああ、わかっている。素材が悪いのであろう」

「はい」

「仕方がないのだ。手に入らない」

「以前の素材は素晴らしく新鮮で濃度も高く美しかったのですが、その魔獣を狩っていた者はどうされたのでしょう?」

 真っ直ぐで真っ白な髪を束ね、濃い青の瞳をもつ、傅いているその男は王宮専属の魔術師だ。



「ああ、この春から復活するだろう。それまで今の素材でなんとかしてほしい」


「それはもちろんでございます。ですが、ジュリエッタ様の専用のポーションとなると濃度の濃い新鮮な素材でないと効き目がありません。王宮の錬金術師たちが言うには、数年前からの体調不良がその素材で作成されたポーションだとまったく効きが違うそうなのです」


「そうらしいな…」

 そんなことを言われても困る。俺だって交渉はした。それが10倍の金貨を取られて、また春からの取引を続行させることを承諾させたのだ。


 その金貨は俺の私物だ。兄上と交渉して分割で返してもらえるようにはしたが、ずいぶんと白い眼で見られた。何枚もの書類を提出させられた。大体、兄上の妻の病気に効く素材をなんで弟の俺が集めにゃならん!!

 そしてその手柄は兄上だ。これだから次男はいやなんだ。俺ももう30だ。もう跡取りとしての婿の話はないだろう。話は何度もあったのだ。それを兄上が公爵の権限で潰していった。自分の都合のよい手足をなくさないために。

 俺に妻を娶る話もあったが、結局兄上が気に入らないと潰した。おまえにはこの兄上が極上の女を見つけてやる、とか言われてこの歳だ。見つける気などないのだ。便利な弟を手放すことはしないのだろう。


 俺も逃げようか…


すっと男が現れた。


「ジョニルバール様、ジョニラトール公爵がお呼びです。」

「兄上が…すぐに行く」

 銀髪に紫が掛った髪、紫の瞳の男はジョニバデェルス・ディ・ロイス。兄上の長男だ。見た目は兄上とそっくりだ。今は兄上の公務を手伝っている。

 8歳上の兄上はすでに20歳の次期公爵の跡取り息子がいる。それどころか次男は18歳、長女16歳、三男9歳、四男7歳だ。自分は18歳から子供をボロボロと作って俺は今だ未婚だ!なんだこの差は!


 あのクソ兄貴、この呼び出しも素材の追加だろう。


「叔父上急ぎましょう。父上の機嫌が損なわれます」

「ああ、わかっている」

 叔父上と俺を呼んでいるのは、兄上の次男だ。

次男のジョニバディルイ・ディ・ロイス。

この国の貴族は次男まで名前がやたらと長い。


 ジョニジョニ、うるさいのだ。

この男は、チビで童顔の俺や兄上、長男とはまったく似ず、長身でイケメンだ。同じ紫なのにまったく違う。義姉上の血筋だろう。

 次男は今、俺の下にいる。お目付役だろう。金貨100枚はさすがに利いたか。


 公爵のいるの応接室に転移する。


「兄上、お呼びですか」

「…ああ、バールか」

結局長いのでジョニルバールの事をバールと呼ぶ。

「兄上が呼んだのでは?」

「そうだ、実はジュリエッタの体調が思わしくない、自分は死ぬと…」

「しかし、春になりませんと、新鮮な素材は手に入りません」

「そうではない、10年前のこと覚えているだろう?」

「10年前?」


 ジョニルバールの兄、ジョニラトール・ディ・ロイス公爵

銀髪に紫が掛った髪、紫の瞳だ。特徴はジョニルバールとよく似ている。性格は正反対のようだが。ジュリエッタとはジョニラトールの妻だ。


 10年前、ジュリエッタは戻ってきた。

その5年前に失踪していた。5年間見つからず、ある日突然この応接室に戻ってきた。

当時城には転移防止などはしておらず無防備だった。


 迷惑な女である。その5年間、俺はずっと捜していた。15~20歳まで10代の青春はあの女の行方を捜すことに明け暮れた。結局、自分で戻ってきた。俺は役立たずとどれだけなじられたか。


「失踪の件ですか」

「そうだ、失踪していたときにある男と暮らしていたのだそうだ」

「それは聞いています。結局、どこの誰とは話してはくれませんでした」

「…その時に子がいたのだそうだよ…」

「その男との間にですか?」

「そうだ!なぜ、その可能性を考えなかった!紫の血筋だぞ!今すぐに見つけ出せ」

ジョニラトールは急に感情的になり、声を張り上げた。


 考えてはいたさ。面倒だから聞かなかっただけだ。そもそも自分は、浮かれてそんな可能性を考えてもいなかったくせに。

 偉そうな兄だが、義姉上に心底惚れている。戻ってきてくれたことが、うれしくて浮かれてどこにいたのかも聞き出せていないのだ。

 裏切った女などなにがいいのだ。


「捜すにもどこに潜んでいたかも聞いてはおりません」

「白状したよ。よっぽど気に留めていたのだろう。しかも、今まで黙っていたのは子が居れば離縁されると思ったから言えなかったのだそうだ。今、病に倒れ気が弱くなっている。その子を救いたいのだと許しを乞うてきた」

 兄はなぜかうれしそうだ。頼られて嬉しいのか、離縁されたくないと思ってくれていることが嬉しいのか、バカらしい。また俺は人捜しをするのか。


「今度は抜かるなよ」

 兄が俺を見下す。俺よりチビのくせに。

「場所はどこです?」


「ユロランだ」



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