王家の財宝
「じゃあこの大木を切ったら魔素が薄くなるの?レイジュ様は死ぬの?」
『お、おぬしは言いにくいことをつらつら聞くのぉ』
はちみつ色の瞳が困惑している。
『この古木を切れば、魔素は薄くなり森は魔獣が減るだろうな。わしはまた若い木に戻る。その繰り返しじゃ』
「え?若い木になる?記憶はそのままで?」
『いや、この記憶はなくなるだろう。ただ知っているだけとなる』
「記憶はなくなる…」
知っているとはどういう事なのか、言葉はわかる。人間のこともわかる。それは知っていると言う事か。でもレイジュ様が歩んできた記憶はない。
記憶が無くなるのであれば、死ぬのと同じことではないか。このやさしいまなざしのおじいちゃんを殺す?なるほど昔の人は出来なかったわけだ。
精霊同様、ロゼも悲しくなる。
『いずれは切ってもらわなければならぬ。今でもよい。何もせずともわしもいずれは死ぬ。そして古木は朽ち果て腐り、やがては臭気をまき散らし今よりもっと魔素を大量に放出するであろう。その時、森は魔獣によるスタンピードが発生する。わしもその時は若い木にはもう戻れぬ。世界樹は枯れる…』
情報量が多すぎてよくわからない。つまり切るしかないのか。その役目は私になるのだな。他にここまで来られる人はいないもんね。
転移出来る人はいるかもしれないが、その人を見つけてここまで連れて来て説明する苦労を考えれば私が切った方が早い。
ロゼはお湯に浸かりながら空を見る。
世界樹が枯れたらどうなるのだろう。聞くのがこわいから聞かないけど。
「その時が来れば私が切るよ。これで世界樹は枯れないよね。それでいい?」
『ふぉふぉふぉ、そうかい!それはよかった。ありがたい。今切ってもらってもいいんじゃがの…』
レイジュ様は笑顔になり早く切ってくれと言わんばかりだ。
「いやいや、急に切れないよ。まだ、大丈夫なんでしょ?それに根回しとか必要ないの?あとから違う神様みたいな人が出て来て、『お前がレイジュ様を殺したのか!』とか言われない?そこら辺はちゃんと遺言とか連絡とかしといてもらわないと」
ラノベのお約束である。
『違う神様とはなんじゃ?わしは誰も知り合いはおらん』
いないのか?
『精霊たちが遊びに来るくらいじゃ。もうつまらぬ、誰も来ぬようなこんな場所なぞ。早くこんな古木、切ってくれ』
投げやりだな…
レイジュ様はこの何千年もの年月を一人で過ごされたのだろう。もう疲れたのだと言う。はちみつ色の瞳は悲しそうに笑う。
「わかったけど、2年後でいい?私が15歳になって旅立つときに切りに来るから。私と共にレイジュ様も一緒に旅立ちましょう!」
なんかいいことを言っているようだが、生理の時に温泉に浸かりに来たいだけだろう。古木を切った後も、温泉があるとは限らない。
『おお、それは良いの!一緒に旅立とう!!』
レイジュ様も乗り気である。
レイジュ様は2年後に旅立つことが出来ると決まり安心したのか、楽しそうに昔のことをよく話す。全然アパートに帰れない。1週間ほど休みたいとザリには連絡しているからいいのだが。
ロゼも温泉を楽しみながらキャンプをして2・3日寝泊りをしていた。レイジュ様の話だと昔この温泉は療養所のように使っていたようだ。泉の温泉は新しいポーションの材料にいいかもしれない。
新しいポーションを開発すると博士号がもらえるらしい。
「レイジュ様、この泉の水少し貰っていい?」
『いくらでも持っていくがよい』
レイジュ様からお許しが出て時の精霊に収納してもらう。泉の水は一気に半分ほど減ったが、またすーっと戻った。
時ちゃん貰い過ぎでは…
『おお、そうだ。底をさらってみよ。人間にはいい物があるかもしれん』
大木の近くまで行くと底が深くなっている。ロゼでも足が届かない。
水の魔法を使って泉の底をさらう。ロゼの足元までさらったものを寄せる。
「金貨だ。あっしかも初代だ!今のシュッとした横顔の王様とは違い二重あご!」
初代の金貨なんてプレミアム付きで値はつけられないほどだ。
『ふぉふぉふぉ初代とな!そやつもよく来ておったな。いい王だったな』
「え!初代も来ていたの?そんな昔から…」
『5000年生きておる、そういうたではないか』
確かに今は王歴2567年だからもっと前からレイジュ様は生きている。
ちょっとしんみりする。
まっそんなことより、泉の底は金銀財宝ザックザックだ。初代や2代目3代目4代目の金貨や高価な宝石付のネックレス・指輪・ブローチ・イヤリングなど年代物の宝石なども出てきた。なんで金貨や宝石がこんな所にと思ったが、7代目まで財産をここによく隠しにきていたなぁだって。王家よ…
全部もらう。いつか売りつけてやろう。
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