精霊のいる世界
父・ジョセフは精霊の話はしなかった。それはなぜか。ジョセフが精霊なしだからだ。
きれいな緑色の瞳を持って生まれたジョセフは両親から喜ばれきっと緑の精霊が付くに違いない。代々花屋の我が家にぴったりだと、父母に言われて育った。
しかし、精霊は付かなかった。両親は土と水の精霊が付いていたから緑の精霊が付けば商売の幅も広がると期待が大きかった分、落胆が大きかった。
しかし、ジョセフの両親はジョセフを今まで以上に可愛がり粗末に扱ったりしなかった。だが、それがジョセフのプライドに傷を付けた。
「じゃあ、私も教会に行けば精霊が付いてくれるのね!明日にでもお父さんにお願いして教会に連れて行ってもらう!」
教会など行ったことがない、いやだがジョセフに連れて行ってもらうしかない。
しかし、その時のミルはまだ7歳と小さかったため、まだ早いと精霊に止められた。
『別に契約しなくてもいつでも力を貸すよ!』
赤の精霊は言う。
「えっいいの?そういえば1人に精霊も1体なんでしょ?ここにはフリーの精霊たちがいっぱいだけど、教会にいって契約しなくてもいいの?」
『ミルがいいの。ミルの魔力はおいしいのぉ』
と黄の精霊が言う。
えっ?
「魔力っておいしいっの?」食べるものなの?
ちょっと引いてしまう。
『精霊は人の魔力をもらうのよ』
紫の精霊が言う。
ちょっと何言っているのかわからない。
でも異世界なんだし自分にも魔力はあるのか。あるんだな。私にも魔力があって、その魔力を精霊が食べていると。無理やり納得する。
「精霊は魔力を食べているの?」
とりあえず、聞いとく。
『食べているというか~感じているというか~ぁ』
緑の精霊が言う。
『ようは一緒にいればいい気分なの!』
赤の精霊が言う。
『人に害はないよ~たぶん。私たちは気に入った魔力にヒタヒタになっているだけぇ』
青の精霊がブンブンと、ミルの周りを飛びながら言う。
たぶんって…。それにヒタヒタ?なんか猫にマタタビみたいなものかな?
まぁでも力を貸してくれるのだから魔力ぐらいいいのかな。
「あっでもそれは精霊付になってからでしょ?契約もしていないのに力を使わせたら精霊は生きていけるの?」
『大丈夫なの。ミルの魔力はたくさんあって駄々洩れしているから20でも30でも契約してなくても精霊を引き連れていけるよ』
駄々洩れ?引き連れて行く?どこに?もう本当になにを言っているかわからない。
紫の精霊はそんなのあたりまえだと言わんばかりにのけ反っている。
私の瞳が紫だからなのか紫の精霊は他の精霊よりよくみえ、声がはっきり聞こえる。
紫の精霊と見つめ合っていると
『ちょっと!紫の!!抜け駆けゆるさない!!』
と、100体以上はいそうな精霊たちのバトルが始まった。
光たちのバトルは深夜まで続いた。赤や青、緑・黄その他100体ほどの光が暗いミルの部屋を夜景のように照らしながら飛び回っている。
きれいだわ~自然界の色だからかなぁ目に優しい感じがするね。
バトルに参加していない子もいるな。力の弱い子たちだろうか。精霊の世界も世知辛いのう。力の弱い子たちは声も小さいし光も小さい。そういう子はそういう子に付くのがいいのかもしれない。
しかし…魔力が駄々洩れ。20でも30でも。
すごいチート。まさしくチート。これぞチート。
ありがたいわぁ
逆によかったかも、変に貴族とかに生まれなくて。貴族に生まれて結婚相手を勝手に決められたり悪役令嬢とかになるより全然いい!この世界に貴族とかいるのか知らないけど王国なら貴族もいるだろうな。
お母さんと過ごせないのは残念だったけど、50歳過ぎて「ママ~」とかガラじゃない。ちょっと甘えたかったけど、違う形で幸せになろう。
ふっと見るとイロトリドリの光の陰に黒の光が見える。人型には見ない。
寝ころんで光を見ていたミルの目の前にふよふよと漂っている。なぜかじっと見られている感じがした。黒の光ってとても不思議。黒の精霊は闇。
ミルはこの黒の光を触ろうと手を伸ばした。そっと触れるとフワッとした毛玉のような肌触りがした。ミルは猫の顎を撫でるかのような仕草をした。前世で飼っていた黒猫のクロを思い出した。
かわいい。クロみたい。クロも私が携帯電話を触っているとじっと見つめていたな。ウリウリ。かわいいなぁ。闇ってなにが出来るのかな?闇に溶け込むとか?
この家を出るときは夜にしよう。
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