緑の精霊付の子供
目の前の子供が肉ゴロゴロ定食をガツガツと食べている。
なんだこれ?新手の当たり屋だろうか。まぁ腹が減っているんだろうから1回くらいは騙されてやってもいいが、次はないぞ。きちんとクギを指しとかないと当たり屋仲間からカモにされそうだ。
「食べ終わったか?おまえの話を聞こうか?」
目の前の少年は食べ終わって満足している。本来の目的を忘れているように見えた。
「あっごちそうさまでした。はじめてこんなに食べました。おいしかったです。」
「それはよかったな」
しっかりしているし、そんなに貧しい感じに見えないが。
「僕は四つ角にある靴屋の5男でエトと言います。いつも上4人にご飯を取られてお腹いっぱい食べたことがなかったから」
5男だとそうなるのかもしれないな。
「それはいい。弟子がどうとか言ってただろう」
「はい、その…僕は緑の精霊と契約出来まして」
小より少し大きい緑の精霊がロゼに向かって手を振って笑っている。かわいい。手を振り返したいのを我慢する。
「それはよかったな」
適当に相槌をする。
「はい、でもうちは靴屋で、後を継ぐのは長男と次男です。僕は緑の精霊付になったことで親が喜んで農家に養子に出すと言っています。けっこうな支度金がもらえるそうです」
「なるほど、それでおまえは農家がいやなのか?」
「今、見習いとして養子になる予定の農家に通っています」
「いいじゃないか。なんの不満があるんだ?」
「…その、みなさん悪い人ではないのですが…僕の精霊を当てにして働かなくなりました。毎日たくさん野菜や果物を精製させられて、僕は毎日魔力切れを起こしながら家に帰ります。翌日には魔力は戻りますが、これからずっとこんな生活が続くのかと思うと…」
悪い人ではないか…俺からすればもう悪い大人だが…
「その農家には里親2人とその子供…長男・次男・長女がいて…。僕は長女と結婚するとかでもなく、長男・次男も外に働きに出るとかでもなく、養子に入っても僕は3男で、その農家を継げるわけでもなさそうです。あと1ヶ月もすれば正式に養子縁組をすることになります…」
「親にそのことを言ったのか?」
養子縁組をする場合、子供がいない家庭や、跡継ぎがいないことが条件のはずである。
「言いましたが、支度金を一部すでに受け取っていて…いまさらどうとかって…」
ひどい親である。だが弟子の話とどう結びつくのか?
「で?どうするんだ?」
場合によっては逃げるしかない。手伝ってもいいが。
「…僕は養子の話が出るまで冒険者を少ししていました。学校の掃除や年寄り夫婦の買い物代理とかで…その時に師匠を見かけました。いつも薬草をいっぱい採取していてすごいなって」
俺が精算する時間は少し早い時間だったからフロアには未成年者もいたな。俺も未成年者だが。
危険のない街の中での雑用は、主に未成年者が担当することが多い。
「そこでギルド長とカウンターで精算をする人の話を聞きました。師匠が薬草を定期的に採取しているおかげで、この街は錬金術の街になってきていると、いい薬草を求めてイージュレンに錬金術師たちが集まって来ているって、本当にすごいなって。僕もその手伝いが出来ないかなって思ったんです。僕は緑の精霊がいますし、跡継ぎでもないので成人したら家を出なければなりません。なので師匠に弟子入りを申し出てみようと思っていた矢先に養子の話をまとめられて…」
少年はズボンをギュと握りしめ泣きそうな顔をしている。
まあそうだよな…普通の養子縁組ならいいがこの少年の話が本当ならひどい話だ。
俺も錬金術の練習がしたいし、薬草はいずれ誰かに引き継ごうと思っていた。しかも緑の精霊付の子に。
「いいだろう。俺も薬草の件はどうにかしたかったし。まず、レオンに養子縁組の件を片付けてもらおう。少年、一緒にギルドに向かおう」
「は、はい。ありがとうございます!」
「ところで今日は闇の日じゃないだろう。農家は休みか?」
立ち上がって会計を済ますと、ギルドに向かう。
「僕に休みはありません。今日は行きませんでした」
「そうか、親が探しているかもなぁ」
「はい…」
沈んでいる少年に何かを言ってやりたかったが、どうにか出来るかわからない。安請け合いはしない。喜ばせて後でがっかりさせるだけだ。そちらの方がつらいだろう。
俺がユロランで受けた恩恵を、今度はイージュレンの子に返そう。そしてこの少年もいつか困っている子供を助ける。すごくいいじゃないか!
引き継がれる恩恵。ちょっと胸がたかなるロゼであった。
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