錬金術師のザリ
「うまいだろう。ここの肉はショーユというめずらしい調味料で味付けしているんだ。ショーユは王都しか売っていないからな。食べたことないだろう?」
なかなか大きなステーキをザリは注文していた。
醤油味なんて久しぶりだ。王都には醬油があるのか。王都に行ったら一番に買う。
ザリと同じステーキを食べながらロゼはそんなことを思っていた。
「ロゼ…なぜ間引きに参加しなかった?どこの街でもそうだが間引きに参加しない冒険者は後々苦労するぞ」
食べ終わったザリは心配そうに聞いてくる。
ロゼはまだ食べている。
「どう苦労するんだ?」
「そりゃあ周りの女たちから色々言われるだろうし、なかなか嫁も見つからない。ずっと冒険者をするつもりがなくてもだ。後々商売をしようとするときも間引き不参加者として記憶に残ることになるんだぞ」
「そうか。俺にとってはそれがなんの苦労になるのかわからないが、忠告感謝する」
間引きに参加しない男など女性の親から嫌われる。女性からも倦厭される。店を出しても間引きに不参加の新参者と揶揄されるらしい。
「まぁいまさらか。この夏、ロゼはどうするんだ?暇じゃないのか?」
「暇だな」
食べ終わったロゼは続けて
「冬の間に取得できなかった低級ポーションの練習をしようと思う。ザリの所は人が足りないとかないかな?給金はいらないから…」
「もちろん構わない。ロゼは働き者だから来てもらえると助かるよ。少しだが給金も出す」
ザリはロゼが話終わらないうちに返事をした。
「ありがたい。でも給金は本当にいらいなよ」
「いや、きちんと出すよ。働いてもらうんだから、下働きだってあるんだぞ」
冬の間、ロゼはザリの工房で講習を受けていた。講習が終われば生徒はさっさと帰っていく。7名ほどの生徒だったが講習に使った材料や錬金術で使う鍋などそのままにして帰るのだ。
その片付けも講習代に入っているようなのだが、ロゼはそのままにして帰るのが何となく気持ち悪くいつも片付けの手伝いをしていた。
あんなことする生徒はロゼが初めてだと、後にザリから聞いた。
「じゃあちょっと準備とかあるから来週から来てくれ」
「わかった。なにか持っていくものとかあるか?」
ロゼは、日本での初出勤のような気持ちでいたため、この世界では妙な事を言ってしまった。
「いやぁ?なにもいらないが…なにかあるのか?」
「いや、ないならいい」
また、余計なことを言ってしまったな。
「そうか…えーとなぁ、低級ポーションを取得したら、俺の弟子にならないか?中級ポーションを取得したら王都のアカデミー学園に入学できる権利がもらえる。試験はあるがな。俺はアカデミーを中退した身だが、れっきとした中級錬金術師だぞ。まぁ他の優秀な錬金術師がいいと言うのであれば知っている者なら紹介も出来るし…」
ザリは言いづらそうにしかし早口で今後のプランをロゼに提案する。
ザリは間引き不参加者としてのロゼをすごく心配しているようだった。説教をするのではなく自発的に選ぶように提案をしてくれている。しばらくはイージュレンを離れた方がいいよと遠回しに言ってくれているのだ。
元々ロゼはイージュレンから出るつもりだったが、それを知らない者から見ればイージュレンが拠点だろうと思われた。そもそもみんながみんな王都を目指すわけではない。
「どうした?」
ザリがロゼの顔を覗き込み聞いてくる。
やさしい事を言ってくれる。この世界に生まれてきてから自分のことだけで精一杯だった。ユロランに居た時も親切にしてくれていた近所の人たちはいたが、お礼も言わず出てきてしまった。
あの時は、ジョセフから逃げるため仕方がないことだと思っていたが、今は逃げているわけではない。
「ザリ、俺が弟子になっても大丈夫なのか?間引き不参加者は嫌がられるのだろう?」
「それは大丈夫だ。そこはなんというかカラっとしているというか、不届き者は嫌がられるがその周りに被害はないよ。ロゼはしばらくの間は大変だと思うよ。まぁ自業自得だ。ハハ」
「そっか、それならお願いします」
ロゼは頭を下げる。
「ああ、よろしく頼む」
「それと正式に師匠になってもらえるのであれば、言っておきます」
「え?なんだよ、急にあらたまって。気持ち悪いな」
「俺は12歳です。未成年でも弟子にしてもらえるんですよね?」
「…はぁ?誰が12歳だって」
ザリの思考が止まる。
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