悪代官
ロゼは今週も魔獣の素材をあやしいローブの男に売っている。今回は金貨10枚だ。ローブの男は金貨を懐から出した。ロゼは金貨を受け取る前に話を始めた。
「ああ、そうだ。来週から森で魔獣の間引きが始まる。販売は中止だ」
「ん?なぜだ?」
ローブの男は顔を上げた。歳は30歳くらいの優男で身長はロゼより少し高いくらいだ。身なりはシンプルだが質のいいものを着ている。
「街の冒険者が何人も森に出入りをする。俺は間引きには参加しないが森に入るところを見られるのはいやなんだ。だから魔獣は狩れない。必要なら冒険者ギルドから買うといい」
ロゼは説明をする。
「そんなの気にしなければいいだろう」
ローブの男は引かない。
「気にはしてないが、今年はもう狩らない。以上だ」
ロゼは会話を終わらせた。
「いや、冒険者ギルドの素材は荒れた物が多い。困るのだが…」
「知らん」
「いや、なんとかお願いできないか?」
「出来ない。もう決めたことだ」
「…」
ローブの男は頑固な青年の回答に困り果てた。
「来年から取引をしないぞ」
脅してみる。どうでるか…。
「そうか、残念だ」
やはり、覆らない。ロゼはもう十分稼いているのだ。
「…わかった。諦めよう。来年は頼む」
「来年取引しないのだろう?そう言ったな」
ロゼはにっこりと笑う。
「すまない。取り消す」
「そうか、一度口に出してそれを取り消すであれば、代償が必要になるな。今回の報酬は2倍で手を打とう。どうだ?」
ロゼはにっこりと笑う。
「はっ?いくら何でも!取り過ぎだろう!」
珍しくローブの男は声を荒げる。
「最初に脅してきたのはそっちだろう?なぜ、代償もなく許されると思っている?俺とあんたの立場は一緒のはずだ。売る買う、それだけの関係だ。それなのに取引しないと脅してきただろう?」
「私が買わなければこれらの素材は捌けないはずだ。立場は一緒ではない!」
「買わないのであれば他の国に行って売るだけだが?3倍になった。まだグズグズ言うのか?」
「はぁ?俺がこのまま奪って消えてもいいんだぞ!!」
「それは出来ない。やってみるといい」
ローブの男はすべての素材を収納しようとしたが、収納できなかった。
「なぜ…なぜ、収納出来ない…」
「当然だろう。金を払っていない。そのくらいの防御はしている」
ローブの男はガタガタと震え、汗を搔いている。
ロゼは風たちと黒ちゃんと時ちゃんを配合して、条件に合わなければ収納出来ないように調整していた。うまくいった。
「おまえは盗人だ。有難く思え10倍で許してやろう。俺はやさしいだろう?」
ロゼはベッドの端に座り、にっこりと笑う。
「さ、さすがにそんなに持ってきていない」
ローブの男の汗は止まらない。
「持ってくればいいだろう」
「もう帰ってこないかもしれないぞ」
「じゃあ来年の取引はなしだな」
ロゼはにっこりと笑う。
「…わかった。取ってこよう」
ローブの男は戻ってきてロゼに100枚の金貨を渡した。
「おまえ、いい性格しているな…こんなことして精霊が去るかもしれないぞ」
ローブの男は素材の収納を済ませ、ロゼに言ってきた。
「何言っている。俺は最初に脅された代償は2倍でいいと言ったろ。それをあんたがグズグズ言い出した挙句、盗もうとしたんだろう。精霊から去られるのはおまえの方だぞ?」
「そ、そんなこと…」
ローブの男は納得していなかったが、一瞬にて消えた。
『金貨100枚も貰えたね~』
時の精霊が金貨の周りを飛んでいる。
「きれいでしょ?」
ロゼはムフフとしている。
『10倍はやりすぎ!』
火の精霊がプーとしている。
「まぁ脅してくると思っていたし、案の定脅してきたね。私は2倍でいいよって言ったよ」
『ロゼの方が悪者みたい…』
緑の精霊が困り顔で言ってくる。
「そうだね。でも盗もうとしたのは事実だし。言い負かした方が無条件で悪者って変だよ」
『でもロゼが盗ってみろってけしかけたよね?』
水の精霊が疑問を口にする。
「そう。でもそこで盗まないっていう、選択もあったよ?私の挑発に乗ったおバカさんってことだよ」
『そうかな?』
精霊たちが傾く。かわいい。
「じゃあみんな私のもとを去るの?」
精霊たちは一斉に頭をブンブン振る。かわいい。
ロゼは金貨を見ながらにっこりと笑う。
お金に余裕が出来たロゼは精霊が去っても問題はないが、可愛い精霊たちの姿が見えなくなるのはとても寂しいと思っている。
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