それぞれの進路
春になり、それぞれの生活が変わっていく。キシとニールが7階のロゼの部屋を訪ねてきた。
「ロゼ、ちょっといいか」
キシとニールは申し訳なさそうにしている。関わった連中と一緒に謝罪しに来て以来である。
「ああ、なにか用か?」
ロゼもあの日以来口を聞いていない。
「あの時は本当に悪かった。知っていたのに止めなかった」
「俺もだ。本当にすまなかった」
ニールが言う。
「…」
「それなのに教会で社会貢献をすれば精霊と再契約が出来ることを教えてくれてありがとう。この間、再契約できたよ。」
キシとニールはうつむき加減で話をする。
「俺たちは後悔した。水を掛けられた時ロゼは俺たちを見つけただろう?その時のこと。仲間に裏切られた悲しい顔をしていた。本当にひどいことをした。俺たちだけは止めないといけなかった。ロゼには恩があるのに、おもろがった。本当にごめん」
キシとニールは頭を下げている。
「…良くはないが、謝罪を受け入れる。それで?他にもなんかあるんだろう?」
キシとニールは顔を上げてお互いを見る。
「じゃあ、俺から…実は、」
キシが話出した。
「セドがピストル弾を取得している間、俺は暇でさ。毎年行われている領主の騎士試験に応募したんだ。試験は筆記、剣の技能、あと魔法ね。まぁ色んな街で毎年受けていたから、いつもの調子で今年も受けたんだ。受からないと思っていたんだけど…」
「受かったのか?」
「ああ、剣の技能と筆記はギリギリ。魔法で受かったんだ。ピストル弾のおかげだ」
ああ、だからさっき恩があるみたいなこと言っていたんだな。
「恩があるのによく笑ってたな…」
ロゼが睨む。キシの精霊が何度も頭を下げて謝っている。
「そ、そうだよな。サイテーだよな。」
またしゅんとする。精霊を見るともう怒る気になれない。
「お、俺はさ、また違うんだ。ちょっと行った先に飯屋があってその店の娘と婚約したんだ。講習の時に一緒になって。いい子で。ロゼも知っている子かも…、付き合いは最近なんだけど。だから冒険者家業から足を洗うつもりなんだ。俺は剣も魔法も度胸もないしさ。」
ニールが険悪になりそうな雰囲気を慌てて軌道修正をする。
「2人ともよかったじゃないか。将来の目標が決まって」
ロゼはにっこりと2人に笑い掛ける。恐ろしく無表情で笑うロゼに2人は引いてしまう。
「セドは?」
今、この場にいないセドの事を聞く。まぁ聞かなくてもなんとなくわかるが…
「「拗ねている」」
2人の声が重なる。
「だろうな」
「俺は王都に行くことになった。領主が紹介状を用意してくれて、王都の騎士団の試験を受けて来いってさ。王都で落ちたらイージュレンの騎士団に迎えるって。だから3日後、王都に出発する」
なんでそのままイージュレンの騎士団に入らないかというと、おもしろい逸材を何人か集めて王都の騎士試験を受けさせるのだそうだ。見事受かれば王都に借りも作れるし経験を積んで戻ってきてもらえば箔も付くのだそうだ。キシ以外の何人か王都で試験を受けるらしい。みんなピストル弾を取得している。
ピストル弾の講習で合格すれば、スズカに掲載できるようにもなった。それはイージュレンの冒険者ギルド特例で決まった。まだ王都には普及しておらず、イージュレン発の攻撃方法として歴史に刻むかもと期待されている。それを担うのはキシたちになるだろう。
ロゼのスズカには発案者と掲載されている。王都でピストル弾が認知されれば賞金がもらえるらしい。
ニールは、いずれ王都で店を出すのだそうだ。今年はイージュレンで料理修行らしい。今の飯屋は婚約者の姉が婿を入れて繁盛している。お相手の父親の兄夫婦が王都の下町に同じく飯屋を出しているが跡継ぎがいなかった。そこでニールたちに任せようと言う話になった。両親はニールたちの店が落ち着いたら、兄夫婦と母が暮らす王都より先にある故郷に帰るのだそうだ。
決まっていないのはセドだけになり、知らない間に2人の将来が決まってしまって拗ねているというわけである。
「俺も、ニールもアパートを出る。セドのことよろしく頼むよ」
キシが言う。
なぜ、俺が…
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