謎の男
『教えるの?魔法を?』
精霊たちが同じ方向に傾いている。かわいい。
「イメージをね」
精霊たちはいまいち理解が出来ないようだった。
「みんなもピストルのイメージを知らなかったでしょ?それを教えるの」
『『なるほどぉ』』
キラキラ飛び回る。この光景がすごく好きなロゼである。
それにしても一人300ベニーかぁ。冬の間は無収入だと思っていたから助かった。間引き用と言っていたから30人は来るだろうか?これはデカイ。30×300で9,000ベニー。90万円!金貨9枚もらえるな!
どうしても日本円で計算する癖が抜けないロゼである。
『ロゼ、鐘の音に遅れるよ』
時ちゃんが約束を教えてくれる。
「あっそうだ。準備しないと。忘れる所だった。ありがと。時ちゃん!」
時の精霊はにっこり笑って飛び回る。
アパートに戻ると7階のフロアに待ち人がいた。
紫がかった銀髪に紫の瞳、黒の高級なローブを身に着けている。こんな下町にいることがとてもあやしい。
「ああ、もう来ていたのか。すぐ準備する」
ロゼは気軽に声を掛ける。
「いや、気にするな。待っている」
ロゼは自分の使っている部屋ではない扉を開けて入った。そして、あやしいローブの男を招き入れた。
ロゼは使っていない7階の部屋をこじ開けて勝手に使っていた。ベッドにクローゼット付。ロゼと同じ間取りだ。空き部屋のベッドの上に魔獣の魔石や肉、牙、角などの素材を並べ、クローゼットにはなにかの魔獣の毛皮が数枚、干している。
「今週はこんなものだよ」
「おお。すばらしい。どの魔石も濃い深い色合い。すばらしい。すべて頂くよ」
「まいど。いくらだ?」
「んー金貨で14枚だな」
あやしいローブの男は言う。
「なら金貨15枚にしてくれよ。切りよくていいだろう?」
「足元を見る…いいだろう。来週も頼むよ」
「ああ」
男は金貨をロゼに渡すと一瞬にして素材がその場から消えた。そして男も消えた。
今週は金貨15枚かぁ。夏の間、随分儲けさせてもらったな。来年は間引きすると言っていたからその期間は休もう。
初めて狩った大グマの魔獣は1頭で金貨12枚、しかしあんなに大きな魔獣はめずらしいらしく、なかなかお目に掛かれないようだ。その大グマ以降は小粒な魔獣しか狩れず金貨もそれなりだ。
大きな魔獣がいそうな森の奥までいけばいいのだがそれもそれで変に怪しまれる恐れがあるため、ロゼは小粒の魔獣のみで精算をしている。それでも大儲けだが。
夏の間に貯め込んだ金貨をすべて時空から自分の部屋に出す。金貨がチャリチャリと積み上がる。合計で140枚の金貨だ。目標金額は達成しているが、金貨は別だ。イケメン付きの金貨を集めるのはもはや趣味みたいなものだ。
積み上がった金貨を見ながらニヤニヤするロゼに、精霊たちは同じ方向に傾いている。
『あの人いきなり現れてびっくりしたよね』
『時ちゃんは誰か来るよーって言ってたよ』
『そーだっけ?』
精霊たちで話を始めた。
「ああ、あの男ね。確かに7階フロアに現れた時はびっくりしたね。まさか領主お抱えの魔術師様とは。しかもけっこう強い時ちゃん付き。髪も瞳も紫だし、しかもそんな人が闇取引きを持ち出すなんて」
領主がそれでいいのかと思ったが、まさかムカイがひどいピン跳ねをしているなんて思わなかった。話を聞いたときは怒り心頭だったが、ギルドの目利きなどそんなものだと魔術師は言う。
大体の売上金額を見越して精算をする。1~2割の手数料や税金を持っていかれるのは仕方がないのだ。しかしまさか半額以上の金額で売り上げるなど想定していなかったのだろうと言われた。
ギルドに依頼するとよい素材は手に入りにくい、時間も掛る。そんな時キレイな大グマの魔獣の素材が手に入った。ギルドに依頼するより倒した人物を探し出し直接依頼した方が早いと結論が出たようだ。
そしてすぐに身元がバレて直接交渉にいらした訳だ。
迂闊だった。倒せたのは、たまたまだとしていたのに身バレするとは思わなかった。しかも家に来た。個人情報は無視かよ。素材が集まれば変な詮索はしないと約束はしてくれたがどこまで信用できるかわからない。でも変に騒ぎ立て逃げられるより素材が手に入る方が好ましいと考えている内は大丈夫だろうと思う。
むむむ、とロゼは考え込む。
1. よい素材が手に入りそれを錬金術師がなにかを製作する
2. それを魔術師が使い、よい仕事をする
3. 領主がその働きを喜ぶ
4. 私は金貨を貰う。
まさに1石4鳥!ウィンウィンウィンウィンではないか!
週に大体金貨10枚。大きさによるが。むふふ、来週はもっと奥まで探しに行こうか。金貨に目がくらむロゼであった。
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