レオンとムカイ
大人しく薬草で生計を立てようと思っていたけど金貨5枚って。憧れの金貨だよ。つまり50万円。クマ1頭で?たまにならいいかな?2ヶ月に一回とか…。大きい魔獣が感知出来た時だけとか…
一応、目標額が成人まで10万ベニーなんだよね。つまり1000万円、金貨100枚。稼いだ金はほとんど使ってないからすでにギルド銀行には7千ベニー貯まっているが、年に2万5千ベニーは稼がないと貯まらない。しかも、冬の4か月は稼げないからな。9ヶ月で2万5千ベニーだ。250万円。
1頭50万円なら1ヶ月1頭だとして9ヶ月で450万円だな。むふふ。しかしさすがに目立つか…。コツコツと稼ぐしかないか…。欲張って目立つのは得策じゃない。まだ11歳だから稼ぎはこんなものだろう。目標額であって決まり事じゃないしね。
ロゼはベッドの上で、憧れの金貨を眺めている。硬貨の裏には王様の横顔が描かれている。
とてもキレイだ。純金だ。これが王様だな。鼻が高くて顎のラインがシュッとしいてイケメンだな。
次の日からも、ロゼは小さい魔獣と薬草の依頼をコツコツとこなしていく。どうしてそんなに目立ちたくないのかと言えば、ロゼはまだ11歳である。見た目は15.6歳に見ているようだが調べられれば成人でないことが明るみになる。
明るみになれば、「我こそがロゼの里親になろう」とか知らない輩から言い出されるかもしれない。いい金づるだと思われるに違いないのだ。
やっとジョセフから逃げ出したのに、誰かに縛られるのはもうごめんである。
ロゼの基本的な稼ぎは1日で、魔獣と薬草で40~60ベニーである。依頼をチビチビとこなしてはいるがそれを合わせても月約2,000ベニー稼げればいい方だ。日本で言えば初任給くらいの金額だろう。それをアパート代を除けば、ほとんどを貯金出来ている。たまに大きい魔獣を狩れば目標金額になる。慌てることはない。
身体を壊さないように闇の日はキッチリ休みを取っている。自己管理もばっちりである。スマホもテレビもないのでものすごく暇ではあるが。
そして、紫で目立つ瞳も去年イージュレンに来てアパートに入る前に碧眼にしていた。セドたちとすれ違う前だった。セーフだ。唯一1階フロアにある壁掛けの小さな鏡を見ながら瞳の色を変えれないかなと思っていたら出来た。
黒ちゃんが協力してくれたらしい。ギルドの受付のサムには紫の瞳を見られているかもしれないが、前髪を長くしてあまり瞳が見られないようにしていたからあまり印象に残っていないかもしれない。
「最初からこの瞳の色ですけど」という顔も忘れない。
ロゼは森に入るようになってからあまり身ぎれいにしないようにしている。
見える部分の腕や首、顔には、煤と泥を混ぜた物を薄く塗っている。凛々しく見えるように眉には煤で太くなぞっている。髪もキレイな銀髪を煤で黒くしていた。
小汚くしている理由とすれば、すこぶる美少年だからだ。ロゼは美形過ぎる。これでは男の恰好をしているのに男からもモテそうだ。それでは何のために男装しているか分からない。
「風呂に入れよー。女にモテないぞ」
とセドから謎のアドバイスを貰ってしまった。モテなくていいのでお構いなく。
ムカイが素材の処理をしている所にレオンが入ってきた。
「おお、あの魔獣の素材か?いくらした?」」
「いや、これはちがう。あの素材は既に領主に渡った。あんなにキレイな素材はなかなか手に入らないそうで。金貨12枚にもなったよ。」
ムカイは素材を見ながら言う。ムカイは30歳前のオレンジ髪の緑の瞳で戦闘要員ではなく、癒し要員だ。たれ目でほっとする容姿だ。
「そんなにしたのか。あの坊主に5枚しか渡してないんだろう?」
「まさか12枚になるとは思わなかったし、俺もちょっと目利きが悪かったよ。普通のクマの魔獣だって1枚もしない。大きくてキレイな処理だったから破格の5枚だったんだ。結構色つけた方だったんだが」
「そんなにか!」
「ああ、この魔石を見てくれ。赤い魔石。俺たちが扱う魔石は普通はこんな色だ。ロゼが持ってきた魔石は大きく深く濃い赤い色をしていた。濃い魔石は魔素が濃い所の魔獣でしか取れないのだそうだ。魔石の色の濃さなんて見てこなかったから驚いた。確かに今まで見たことがなかった濃さの色だっただろう?」
「確かにな。しかし、その情報は聞いたことないな」
「買い付けに来ていた領主お抱えの魔術師が言ってたよ。こんなの常識だとバカにされたな」
ムカイは、眉をさげて苦笑いをしている。
「俺も知らなかったぞ。まぁこの辺の冒険者は森の奥なんか行かないからな。奥に行けば行くほど魔素が濃くなるし魔獣も頻繁に出てくる。必要があれば、御屋形様の騎士様たちが大きな魔石求めて森の奥深くまで行って狩ってくるわけだしな。俺たちには関係ない。しかし、そんな危険な場所、あのクソ坊主危ないだろう。たまたま狩れたはいいがいつか死ぬぞ」
口は悪いが気のいいレオンである。
「確かに。金貨5枚も嬉しそうに持って帰ったよ。金貨に目がくらんで危険なことしなければいいけどな。」
「若いからな。あの坊主はいくつだ。16か17か?」
レオンが聞いた。
「さぁ知らん」
ムカイは首を傾けながら返事をした。
「なぜ知らない?精算時にスズカを見たらわかるだろうに」
「忘れたのか?ちょっと前にどこかの街で若い冒険者に不当なピン跳ねして捕まったギルド職員がいただろう?あれのせいで冒険者ギルドでは年齢確認できなくなった。別に年齢なんてどうでもいいからいいけど」
「ああ、そうだったな。見た目が若かったら意味がないと思うが…しかし、あれは生意気だな。魔獣をどうやって倒したかわからん。首根っこ捕まえて聞き出すか…」
レオンは顎鬚を撫でながら物騒なこと言っている。
「いやいや、ダメだろう!よけいに言わないだろ!普通にいい子だよ、ロゼは。ただ口下手なだけのようだけどな。有料なら教えてもいいって言っていたぞ」
「なんだ、そうなのか。秘儀じゃないのか…有料ねぇ」
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