スズカ
「そうなのですか。でも初めての再発行ってどうして分かるのですか?」
「ああそれは、魔力は一人一人違うのはご存じでしょう?さきほどの魔術具であなたの魔力がそのスズカに登録されました。あなたしか使用できません。誰か別人がそのスズカを使用しようとするとあなたと別人の魔力が反発して溶けてなくなります。
ですから、あなたがなくしたスズカも悪用できません。そして、今登録した魔力は初でした。元々スズカは5歳の時に教会で作られますが、教会では魔力の登録はしません。発行した人数さえ把握できていれば問題ないので。魔力の登録は名無しなのですが、同じ人がくればわかります。同じ魔力の人はいませんからね。と言うことです。」
「な、なるほど、知りませんでした。すごいですね。」
すごい。名前の登録もしていないのに魔力だけでわかるんだ。
なんかDNA的な感じかな魔力って。
「あまりこんなことまで説明しませんからね。知らなくて当然ですよ。」
でも、それだったら無くしたと言って名前や出身地を変えて何個も作る人が出てきそうな気がするけどそれはいいのかな。
「ちなみに、名前や出身地を変えて色んな所でスズカを再発行するなどはできませんよ。魔力は一緒ですから名前が違えばスズカが拒否します。2個までなら出来るでしょうけど入る街でスズカで証明をして宿屋でも同じスズカで証明しないと不法侵入者になりますから2つ持っていてもあまり意味がないかと思います。」
ミルは顔に出ていたのかと思うほどに的確な説明をされてしまった。
「申し訳ございません。敏いご婦人のようでしたので余計なことまで申しました。」
詫びられてしまった。
「いえ!きちんと知れてよかったです。ありがとうございます。」
と、墓穴を掘る前に帰ろうとお礼を言ってミルは腰を浮かした。
「あっ教会にも行かれた方がいいですよ。この建物の前ですので、精霊登録されないと精霊なし扱いになります。精霊と卒業した学校名は商人ギルドでは登録出来ない仕組みになっていますので。」
「あっなるほど、それで2個持っていてもダメなのですね。」
「そうです。どちらかが精霊なしと学卒なしになりますからね。」
2つのスズカを持っていても精霊なしになると仕事が探せない。もちろん学卒も。なんなら精霊なしは犯罪者扱いされるかもしれないのだ。
「名前の違う新しいスズカにも同じ精霊登録しようものなら今度は精霊が反発すると言われています。そして離れてしまうとも。そして精霊は自身の力で人を攻撃したりすることを拒みます。自身で殺し盗みなどしたならばそれも精霊が離れて行ってしまうでしょう。精霊なしをバカにしても離れると聞いていますね。」
けっこう色々な誓約があるんだな。
ミルはそっとブンブン飛び回る精霊たちを見る。
「あっ精霊なしをバカにしても離れるのですか?」
「ええ。そうですよ。親に聞いてはいませんか?最初に言われることですが。」
「あぁ。聞き逃したのかもしれません。」
「気を付けられるといいですよ。教会は真正面です。少しお布施が必要かもしれません。」
「分かりました。ありがとうございました。」
ふぅあぶない。あぶない。色々突っ込むと逆に変に思われる。
でもよかった、無事にスズカを作れた。私は今まで作ったことなかったからなんの反発もなかったのかな。あとで精霊たちに聞いてみよ。それにしてもすごい緊張したよ。あとは精霊登録ね。学校は行ってないから関係ないな。
さて、どの子と契約するかな。
どの精霊と登録するかで精霊が揉め出した。
ミルは商人ギルドの前にある噴水広場のベンチに座っている。
『やっぱり、瞳と同じ私と契約するでしょう?』
時ちゃんが言う。
「えっ時ちゃんはムリだよ。貴重だもん。契約は水・火・風の子たちのどれかだよ。」
時ちゃんはガーンと効果音が聞こえてきそうな顔をしてミル頭の上に落下した。
緑・土属性の精霊と契約出来た人たちは教会に登録しなければならない。
言い方は悪いが、水・火・風の3種の属性は石を投げれば当たるほどいるのだ。緑や土が特に珍しい属性と言うわけでもないが、なにかの災害などがあるとお願いしたいとの思惑もあるらしい。しかし、時・闇・光などはあまりいない。
国になにかあった時になにかしら協力を得る為に登録をしてもらう。そして貴重な人材としてお布施は返ってくる。
「じゃあ、水のさんにお願いしようかな。」
そう言うと、一番光の強い水の精霊が喜びミルの周りを飛び回っている。
「いやいや違うよ。中の子でお願い。大きな光の子と契約なんて目立つじゃない!」
光の強い水の精霊は、ミルの頭の上に落下した。今では2体並んで不貞腐れている。
中のくらいの水の精霊たちはいそいそとミルの前に整列する。7体いる。水の大きい光の子たちはミルの頭の上を不満げに飛び回る。
「もうみんなごめん!契約したからってなにも変わらないでしょ?もうその子にしかお願いをしちゃあいけないってことはないんでしょ?」
『『『でも~!!』』』と不満は止まらない。
そこは無視して中の水の精霊たちに向き直る。7体の水の精霊はそわそわしている。ミルはさっさと決める。人差し指で真ん中の子を指す。
教会の大きな扉を開けると1組の契約者がいた。平日は人が少ないようだ。教会は、吹き抜けになっていて大きなガラスの窓が天井まで抜けていた。昼間は明るく教会内を照らし、その中央には精霊王ヒースを祭っている。なかなかのイケメンである。
その精霊王ヒースの銅像の下にバスケットボールほどの透明な石がある。その周りにはたくさんの精霊が飛んでいる。10歳くらいの子供が石に手を掲げている。近くには両親と神父さんみたいな人が見守っている。
ミルが教会内に入ると精霊たちは一斉にこっちを向き直りミルの方向に飛んで来ようとしていた。
あっダメ。こっちに来ないように言って!あの子が精霊なしになってしまう!
と小声で精霊たちに言う。
ミルの精霊たちは子供の周りにいた精霊たちを説得してくれたようだ。
無事、その子供は精霊との契約が成立したようだ。
ミルがほっとしていたら見守っていた人とは違う神父さんから話しかけてきた。
「今日はどうされましたか?」
「あっ精霊の契約に来ました」
「精霊の契約ですか。2回目ですか?」
神父さんは笑顔で聞いてきた。
「いえ、1回目です。精霊の契約は2回も出来るんですか?」
「1回目ですか?これは失礼しました。ええ、2回でも3回でも出来ますよ。契約が出来るかは分かりませんが、大人になって魔力が増えることは不思議なことではありませんから。2体3体と契約する方は大勢いますよ。それより失礼ですがおいくつですか?いえ、失礼でしたね。どうぞこちらに、少々お布施が必要になります。大丈夫でしょうか?」
「はい…」
神父さんはひとりで勝手にしゃべってひとりで完結してしまった。
いったい、何歳に見えるのだろう。もうすぐ11歳とはいえまだ10歳なんだけど。
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