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イージュレンの街

 下町で情報収集をしていると町の人から、若い頃に着ていてもう着ないからと言ってブラウスやスカート、ブーツ、カバンなど次々貰う。

 なぜ、こんなに親切にしてくれるのかミルには分からなかった。


 着なくなっても古着屋に売ればそれなりになるはずだ。なぜ私に譲ってくれるのか。

たぶん、ずっとミルのことを助けたかったに違いない。ずっと働かせてばかりでワンピース1着ももっていない、学校にも行かせてもらえない、なんの祭りにも参加しない。さすがにおかしいと下町の人たちは思っていたようだ。



 ミルはこの町から父から逃れたくてしょうがなかったが、町の人はこんなにもいい人ばかり、なぜジョセフだけああなのか。


 ミルはみんなに涙ながらに感謝する。大人になったら帰ってこよう。子供とか連れて、あの時はありがとうといいたい。忘れないようにメモをしよう。



 ミルは秘密基地で貰ったモスグリーンのワンピースを着てみる。ちょうどいい。

パン屋のおばさんの身長はミルと同じくらいだった。ミルは既に160cmくらいの身長があるようだ。父ジョセフも背が高い。まだまだ伸びるだろう。


 モスグリーンのワンピースに貰ったブラウンのショートブーツを身にまとったミルはれっきとした女の子だった。


 ミルは髪を短くしていたが無理やり後ろに束ねてひもで結んだ。髪を結ぶとクリクリの天然パーマのミルの髪は毛先が丸まり、お団子を作っているように見え、そうすることで少し大人っぽくなった。


 貰った肩掛けカバンをし、イージュレンの商人ギルドに向かう。ユロランもそうだが商人ギルドは下町と繁華街に2つある。

ギルド職員から見れば、質のいいワンピースを普段着にしていると思われるに違いなかった。小金持ちに見えるかもしれない。ミルは繁華街の方がいいかなと思った。


ユロランで情報収集しているとスズカという言葉が何度も出てきた。どうやら戸籍プレートはスズカと言うらしい。なんでスズカと言うのか恐る恐る聞いてみた。なんでそんな常識を知らないのか、とののしられるかもと、こわかったが普通に答えが返ってきた。なんでも大昔に「すずか」という女性が考案したのだとか。日本人ぽい名前だが、今ではスズカと言えばそのプレートということなのだ。



ミルは繫華街を歩く。着なれないマキシ丈ワンピースは歩きにくい。繫華街は石畳みの道に大きくきれいな建物が大通りに並んでいる。ユロランでは下町から繫華街の大通りを避けて市場に向かっていたミルにとって繫華街自体が初だ。場違いもいいとこだ。


商人ギルドは大通りを抜けたところにあった。


商人ギルドに入ると天井は高くキレイな白い床を紳士淑女の方々がお上品に歩いている。



下町のギルドにいけばよかったかな…。下町と大違いだわ。パン屋のおばちゃんには悪いけど、このワンピースでもちょっと場違い。いつもの恰好で下町にいけばよかった。


と、ミルが思っていたら執事のような人から声を掛けられた。

「お嬢様、本日はどのようなご用件で?」


ひっと声が漏れそうになるのを堪えた。

「えっあの…スズカの再発行を…」


再発行か正直に作っていないことを言うか迷っていたのに、急に話しかけられ咄嗟に再発行と言ってしまった。


「そうですか。では、こちらにどうぞ」

と、白いブラウスに黒のパンツスタイル、髪型は清潔にセットしている上品そうなおじさんに勧められ受付に向かう。他の受付の人がいなかった為、そのままそのおじさんが担当してくれることとなった。



「スズカをなくされたのですか?」

「…はい」

 おどおどと返事をしてしまう。


「どういった経緯で無くされたかわかりますか?家ですか?外ですか?」

「外です。実は森の外に行って薬草を積んでいましてちょっと結界から外れてしまい、魔獣に出くわしてしまったのです。たぶん、その時に落としたのかも…。」

「森に?!若い女性がいけませんね。」

「幼馴染も一緒にです。一人ではなかったのですが、びっくりして慌ててしまって。」

 ミルは考えていた設定を言う。


「そうですか。わかりました。再発行の手続きをしますので、こちらに記入してください」

 1枚の銀色をしたプレートを渡された。そこに名前、出身、生年月日、を記入するように言われた。


 どうしよう考えなしだったかな…。名前、出身


「どうかされましたか?」

「いえ…」

 ミルはつづりを間違っていないように祈りながら専用のペンでプレートに書き込む。


 受付のおじさんに銀のプレートを返すと、そのプレートを魔術具に羽目はめる。

「では、こちらの魔術具に指をのせてください。」

 と言われ、ミルは人差し指を置く。


しばらくすると、銀のプレートが光りだした。銀のプレートは名刺サイズから1cm×3cmくらいのプレートに代わっていく。ルーイが持っていたものと同じものだ。


「はい、これが再発行されたスズカです。もう無くさないように。」

「はい。ありがとうございます。」

 スズカには小さな穴が開いている。ここに紐を通すのね。


 ミルは自分のスズカが出来たことに喜び、カバンをゴソゴソしながら聞いた。

「あの、おいくらになりますか?」

「いえ、代金はけっこうですよ」

「えっ?再発行にはお金かかると聞いたのですが…」

「ああ。何度も無くさないように親は子供にそういうのでしょうね。基本無料です。まぁ何度も繰り返し無くされると罰金はあります。でも初めての再発行のようですし大丈夫ですよ。」


とやさしく説明を受けた。


 なぜ、初めての再発行とわかるのだろう。





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