4.回想
「また机に突っ伏して寝てたの?仮眠室があるんだからそっちで寝なよ」
ことり、と自分の頭の傍にマグカップが置かれ、ルナは頭をあげた。顔にかかる前髪とも後ろ髪とも分からない髪を息を吹きかけてどかそうとするが上手くいかず、それを見かねたエトヴィンが指先で払ってやる。
「いつの間にか寝落ちしてたんだ」
「ねぇ、知ってる?それ、寝落ちじゃなくて気絶って言うんだよ?」
エトヴィンがルナの机に軽く腰かけてチョコチップクッキーを一口かじった。
「そういえば、ルナの家、大丈夫かな?都市の中心あたりにあるんだろ?」
「ああ、でも、大丈夫だろう。セキュリティはしっかりしていたから強盗にもあわないと思う」
「僕の家はダメかなぁ。ほら、戸締りちゃんとしてたかも忘れたよ」
エトヴィンは軽く笑うと、個包装に包まれたチョコチップクッキーをルナのマグカップの横に置いた。
「……今日はココアなんだな」
「コーヒー飲ませたら寝ないからね」
「君はいつまでも私のことを子供扱いするんだな」
「子供扱いはしてないよ」
エトヴィンはそう言って、一口ココアを飲んでから、もう一度口を開いた。
「君のことが好きなんだ」
ルナは掴みかけたチョコチップクッキーを机の上に落とした。
「……冗談か?」
「君のことが好きなんだ」
「分かった。私の聞き間違いじゃないようだ」
エトヴィンはにこにことしながら、珍しく目を丸くして自分のことを凝視したルナを見つめた。「返事は?」と尋ねてじっと視線を逸らさずにいるとルナの方が顔を逸らして、額に手を置いた。
「今は、そんなことに構ってられないんだ……」
研究は手詰まり。上から下へ建物内は大忙しだ。ルナは自分が今色恋に頭の容量を割けないとため息をついた。エトヴィンも長い付き合いだ。彼女の性格を分かった上の告白だったため、彼は笑って「大丈夫だよ」とチョコチップクッキーをもう一つココアの隣に置いた。
「返事はこの事態が終わった後でいいよ。その時には、ほら、前に言ってた夢に僕を加担させてほしいんだ」
「夢……ああ、花を作るというあれか」
「素敵な夢だと思うよ」
ルナは小さくため息をついた。
「……分かった。その返事も事態が収束したらするから、待っていてくれ」




