11.特効薬
「……で、きた……?」
何時間経ったか分からない。実験用に飼っていた白いネズミが感染させる前のようにケースの中でちょこまかと動くのを見て、ルナは安堵の息を吐いた。
できた薬は一人分。
使用用途は決まっている。
ルナはダイニングに出ると、すぐにエトヴィンの部屋へと駆けこんだ。落としてはいけない、と特効薬をいれた注射器はケースの中にいれて、それを持ってエトヴィンの部屋に入ると、エトヴィンはベッドの上で上体を起こしていた。
「特効薬が、できたんだ。たぶん、間に合った……末期患者にはさすがに効かないが、中期までなら効くと分かったんだ」
瞼が重い。この状態で注射器をきちんと扱えるだろうか。一刻も早くエトヴィンに特効薬を与えなくてはいけないのに。
ルナは椅子を手繰り寄せて、ベッドの傍に座った。
「少しだけ、寝たいんだ……。あと少しなら、大丈夫、かもしれないから……もし、寝過ごしても、きっと君が起こしてくれるって、信じてるから」
ルナはそこまで言うと糸が切れたようにベッドの隅に突っ伏して眠ってしまった。
ルナは知らないだろう。
ずっと触れずに見ないようにしていたエトヴィンの足につけていた手錠がいつの間にか外れていることも、いつの間にか棚の下の段に置いてあった救急セットから包帯が減っていることも、ルナが目を瞑った後に、伸びた手が注射器の入ったケースを掴んだことも。




