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LIBERAL ONLINE  作者: Guri
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夏祭りの知らせ

 

 洞窟での発見から数日後。


 辺境の家には、相変わらず穏やかな時間が流れていた。


 朝になればミナトは畑の様子を見に行き。


 フィリックスは薪を割ったり家の修繕をしたりする。


 昼になれば二人で森へ出掛け。


 夕方になれば並んで食事をする。


 特別なことは何もない。


 けれどミナトにとって、その毎日は宝物のようだった。


 ある日の昼下がり。


 二人は買い出しのため、最寄りの小さな街を訪れていた。


 辺境の家から馬車で一時間ほど。


 決して大きな街ではないが、必要なものは大抵揃う。


 ミナトは街へ来るのも好きだった。


 人々の会話を聞くのが楽しい。


 露店を眺めるのも楽しい。


 知らないアイテムを見つけるのも楽しい。


 何より、ゲームの世界が本当に生きているように感じられるから。


「わぁ」


 街の広場へ入った瞬間、ミナトは思わず声を上げた。


 中央の掲示板に大きな告知が貼られていたのである。


 色鮮やかな装飾。


 見慣れないデザイン。


 そして、


【夏祭り開催】


 という文字。


「お祭りだ」


 ミナトの声が弾む。


 すぐに掲示板へ駆け寄った。


 フィリックスは少し後ろからその様子を見守る。


 内容を読む。


 夏祭りイベント。


 期間限定。


 屋台。


 ミニゲーム。


 限定アイテム。


 花火大会。


 さらには隠し報酬の存在まで示唆されている。


 L・O(リベラルオンライン)では定期的に季節イベントが開催される。


 だがミナトは辺境へ移住してから、

大規模イベントへ参加することがほとんどなかった。


 久しぶりだった。胸が高鳴る。


「行きたい」


 思わず呟く。


「行けばいいだろう」


 フィリックスが言う。


 ミナトは振り返った。


「フィリも?」


「嫌なのか」


「そんなことないよ」


 慌てて首を振る。


 そのあと嬉しそうに笑った。


「一緒に行けたら嬉しい」


 本当に幸せそうな顔だった。


 その笑顔を見たフィリックスは、胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じる。


 最近はこういうことが増えていた。


 ミナトが笑う。


 それだけで安心する。


 嬉しくなる。


 理由はもう分かっている。


 認めているかどうかは別として。


 少なくとも昔の自分にはなかった感情だった。


「花火もあるみたい」


 掲示板を見ながらミナトが言う。


「花火?」


「空に大きな光が上がるんだって」


 興味津々な様子だった。


 現実にも花火はある。


 だがミナトは病院生活が長かった。


 実際に見た経験はほとんどない。


 テレビや動画で見たことがある程度だ。


 だから少し楽しみだった。


「楽しそうだな」


 フィリックスが呟く。


「うん」


 ミナトは素直に頷いた。


「こういうの好きなんだ」


 広場を見回す。


 露店の準備をしているNPC。


 イベント用の装飾を取り付けている職人。


 走り回る子どもたち。


 活気に満ちた街並み。


 その全てが愛おしく思えた。


「世界が生きてるみたいだから」


 ミナトは小さく笑う。


「見てるだけで楽しくなるんだ」


 フィリックスは黙って聞いていた。


 ミナトは本当にこの世界が好きなのだ。


 モンスターを倒すだけじゃない。


 レベルを上げるだけじゃない。


 景色も。


 季節も。


 人との出会いも。


 全部含めて好きなのだ。


 だから一緒にいると、自分までこの世界を好きになっていく気がした。


 買い物を終えた帰り道。


 二人は街外れの丘を歩いていた。


 夏の風が草原を揺らしている。


 空はどこまでも青い。


 白い雲がゆっくり流れていた。


「楽しみだなぁ」


 ミナトが呟く。


 花火。


 屋台。


 お祭り。


 その言葉を口にするたびに表情が明るくなる。


 フィリックスはそんな横顔を見つめる。


 そして思う。


 この笑顔を見ていたい。


 もっと。


 できるだけ長く。


 ずっと。


 その願いは日ごとに強くなっていた。


 まだ口には出さない。


 けれど胸の奥では確かに育っている。


 静かに。


 ゆっくりと。


 夏の日差しの下で育つ木々のように。


 誰にも気付かれないまま。


 そして二人は知らない。


 これから訪れる夏が、二人にとって忘れられない季節になることを。


 幸せな思い出が数え切れないほど増えていくことを。


 まだ知らなかった。



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