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LIBERAL ONLINE  作者: Guri
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隠された洞窟

 

 湖の向こう側に見つけた洞窟は、

 近くまで来てみると思っていたよりもずっと小さかった。


 岩壁の一部がぽっかりと開いているだけの簡素な入り口で、

 知らなければ見落としてしまいそうなほど目立たない。


 だからこそミナトはわくわくしていた。


 L・O(リベラルオンライン)にはこういう場所がある。


 誰も気付かないような場所。


 地図にも載らない場所。


 けれどその先に思いもよらない発見が待っている場所。


 そんな秘密を見つけるたび、この世界は本当に生きているのだと思う。


「行ってみよう」


 ミナトは嬉しそうに言った。


 その声には期待がたっぷり詰まっている。


 フィリックスは小さく息を吐いた。


「前を歩くな」


「うん」


 素直な返事だった。


 そして本当に後ろへ下がる。


 そういうところがミナトらしい。


 無鉄砲に見えて、言われたことはちゃんと守る。


 フィリックスは先頭に立ち、洞窟の中へ足を踏み入れた。


 中はひんやりとしていた。


 夏の暖かな空気とは違う冷たさが肌を撫でる。


 天井からは水滴が落ち、小さな音が静かに響いている。


 光は少ない。


 だが完全な暗闇ではなかった。


 岩壁のあちこちに淡い青色の結晶が埋まっていて、ぼんやりと周囲を照らしている。


「きれい……」


 ミナトが思わず呟く。


 まるで夜空の星みたいだった。


 青い光が洞窟の中で瞬いている。


 幻想的で、神秘的で、現実には存在しない景色だった。


 だから見ているだけで胸が高鳴る。


 ミナトはゆっくり鑑定を使う。


 すると視界に文字が浮かび上がった。


【光石】


【希少鉱石】


「初めて見た」


 嬉しそうな声だった。


 フィリックスは少し笑う。


「また珍しいものか」


「うん」


 ミナトは何度も頷く。


「ここすごいよ」


 目が輝いていた。


 初めてログインした頃と同じような顔だった。


 新しい発見に胸を躍らせる顔。


 フィリックスはそんな表情を見るのが好きだった。


 だから黙って見守る。


 奥へ進む。


 洞窟は思ったより深かった。


 途中で小さな地下川も見つかった。


 見たことのない魚もいた。


 珍しい鉱石もあった。


 採取できる素材もいくつか見つかった。


 どれも価値が高そうだったが、ミナトが喜んでいる理由は値段ではない。


「知らないものがある」


 それが嬉しいのだ。


 何年も遊んでいるのに。


 まだ発見がある。


 まだ知らない景色がある。


 それがたまらなく楽しかった。


 やがて洞窟の最奥へ辿り着く。


 そこには小さな空間が広がっていた。


 天井には無数の青い結晶。


 足元には透き通る泉。


 そして泉の中央には一本の花が咲いていた。


 淡い銀色の花だった。


 花弁が光を受けて柔らかく輝いている。


「……」


 ミナトは言葉を失った。


 綺麗だった。


 あまりにも、綺麗だった。


 思わず近付き鑑定を使う。


 すると文字が浮かび上がった。


【月花】


【未発見】


 ミナトは目を見開いた。


 また未発見素材だった。


 しかも品質表示を見る限り、とんでもなく希少な素材らしい。


「すごい……」


 小さく呟く。


 嬉しい。本当に嬉しい。


 だけど、それ以上にこの景色を見られたことが嬉しかった。


「フィリ」


 振り返る。


「見て」


 子どもみたいな声だった。


 フィリックスは花を見る。


 それからミナトを見る。


 どちらも綺麗だった。


 だが、どちらか一つ選べと言われたら、迷わなかった。


「綺麗だな」


 静かに言う。


 ミナトは満足そうに笑った。


 その笑顔だけで十分だった。


 しばらく二人はその場所で休憩した。


 泉のそばへ座る。


 青い光が揺れる。


 水音が響く。


 静かな空間だった。


 どこか現実離れしていて。


 まるで世界から切り離された場所みたいだった。


「こういう場所を見つけるとさ」


 ミナトがぽつりと呟く。


 泉を眺めながら。


「この世界に来てよかったなって思うんだ」


 その声はとても穏やかだった。


 幸せそうだった。


「現実じゃ絶対見られなかった景色だから」


 何気ない言葉だった。


 だがフィリックスは少しだけ顔を上げる。


 ──現実。


 ミナトは時々そういう言い方をする。


 現実の話を詳しく語ることはない。


 けれど。


 この世界が特別なのだということだけは伝わってくる。


「そんなに違うのか」


 フィリックスが聞く。


 ミナトは少し考えた。


 それから優しく笑う。


「うん」


 短い返事だった。


 そこにはたくさんの想いが込められていた。


「だから今が幸せなんだ」


 泉の光が揺れる。


 銀色の花が静かに輝く。


 そしてフィリックスは、その言葉を胸の奥へしまい込む。


 今が幸せ。


 ミナトはそう言った。


 なら、その幸せを守りたいと思った。


 この笑顔も。


 この時間も。


 この場所も。


 全部。


 ずっと続けばいいのにと。


 願わずにはいられなかった。


 洞窟を出る頃には、外の空は夕焼け色に染まり始めていた。


 湖の水面が茜色に輝く。


 風が吹く。


 木々が揺れる。


 ミナトは隣を歩くフィリックスへ笑いかけた。


「今日は楽しかったね」


 その声は心から嬉しそうだった。


 フィリックスは少しだけ目を細める。


「ああ」


 短い返事。


 けれど優しい声だった。


 二人は並んで帰路につく。


 長く伸びる影を連れて。


 まだ知らない未来へ向かって。


 穏やかで幸せな日々を重ねながら。



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