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追放された絆紋使いの穏やかな冒険譚〜辺境の街ではぐれ者たちと最強の居場所を作ります〜  作者: 盆ちゃん


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第81話 国境の防衛戦と、新たなる原石たち

第81話 国境の防衛戦と、新たなる原石たち

 辺境の街アシュタルの東、小高い丘に広がる特級クラン『絆紋亭』の拠点は、今日もまた、世界中のどの場所よりも優しく、そして奇跡のような調和に満ちた朝を迎えていた。

 庭の中央にそびえ立つ精霊樹は、深淵の邪神を浄化した光をたっぷりと吸収し、もはや一つの森と見紛うほどの巨大な神樹へと成長を遂げている。その豊かに茂ったエメラルドグリーンの枝葉が朝の心地よい風に揺れるたび、チリン、チリンと微かな鈴の音のような魔力の波紋が広がり、拠点全体を極上の癒やしのオーラで包み込んでいた。

「ウォンッ!」

「キュイッ!」

「きゅるるーっ!」

「ルルゥッ♪」

「キュゥッ♪」

「キュゥッ、キュゥッ!」

 澄み切った青空の下、縁側で朝の空気を胸いっぱいに吸い込んでいる俺の足元へ、競い合うように六匹の魔物が飛び込んできた。

 俺が王都を追放され、この名もなき辺境の森にたどり着いたその日、一番最初に俺の固有スキル『絆紋』 を受け入れ、共に歩み始めた最古参の相棒たちである銀色のウルフ『フェル』と、純白のポーションラビット『ピコ』。そして空色小竜の『ソラ』に、水豹の『リン』、幻宝石獣の『キラ』、さらには先日助け出したばかりの白銀の幼熊『ブラン』だ。

 フェルは艶やかな銀色の毛並みを俺の手にすり寄せ、ピコは長い耳をパタパタさせながら俺の膝に飛び乗り、ソラは俺の肩にふわりと着地して頬をすりすりと擦りつけてくる。リンもしなやかな体を俺の足に巻きつけるようにして喉を鳴らし、キラは俺の足元で美しいルビーのような宝石をキラキラと輝かせ、ブランは短い手足で一生懸命に俺のズボンの裾を引っ張っていた。

「おはよう、フェル、ピコ、ソラ、リン、キラ、ブラン。今日もみんないい天気で元気いっぱいだな」

 俺が六匹の頭を順番に優しく撫でると、彼らは心底嬉しそうに目を細めて尻尾を振った。

 庭を見渡せば、漆黒の竜ノヴァが竜使いのルカに鱗を磨いてもらいながら気持ちよさそうに目を閉じ、紅蓮の火蜥蜴ガエンや鋼角の犀ザイン、岩砕の巨獣ダグといった大型の魔物たちが木陰でうたた寝をしている。黄金の甲殻を得て進化した砂塵の魔蠍ゼットは、太陽の精霊鳥ソルをハサミの上に乗せて日向ぼっこを楽しんでいた。

「レイン様、朝食の準備が整いましたよ!」

 厨房から、見習い魔導士のエリスが元気な声を上げた。

 ダイニングルームには、元宮廷料理人のセシルが腕を振るった極上の朝食が並べられている。今朝のメニューは、特製の魔力小麦で作った『焼きたてのハーブソーセージパン』に、農学者セリーヌが育てた新鮮なトマトと葉物野菜を使った『シャキシャキのグリーンサラダ』、そして砂漠の巫女ナディアが持参したスパイスで味付けされた『具沢山のミネストローネ』だ。

「ガハハ! 今日も飯が美味い! これなら今日の『シゴキ』も存分に腕が振るえるってモンだね!」

 女戦士のアイラが、ソーセージパンを豪快に頬張りながら凶悪な笑みを浮かべる。

「ええ。辺境伯様から預かったひ弱な騎士どもと、ギルドの冒険者たちを、一から鍛え直してやらなくちゃいけないからね。私の魔法の的としてはちょうどいいわ」

 少女魔導士のルウも、うっとりとした表情でスープを口に運びながら物騒なことを言う。

「武の道を志す者たちに、真の剣術と立ち回りというものを徹底的に叩き込んで差し上げましょう。昨日見込みのあった者たちには、さらに一段上の課題を与えます」

 剣聖シルヴィアも静かに闘志を燃やしていた。

 そう。今日から本格的に始まるのは、アルベルト辺境伯とバルカン・ギルドマスターから依頼された【全軍強化計画】の続きである。

 世界各地で自然発生し始めた『変異ダンジョン』や、魔王軍の残党に対抗するため、俺たち『絆紋亭』のメンバーが教官となり、アシュタル辺境伯軍の騎士たちとギルドの冒険者たちを鍛え上げるのだ。午前中は特設訓練場での基礎と連携の訓練、午後は国境付近での実戦演習と討伐依頼の並行処理という、息をつく暇もないスケジュールが組まれていた。

訓練場での新たなる原石たち

 朝食を終えた俺たちは、アシュタル郊外に設けられた広大な特設訓練場へと向かった。

 そこには、辺境伯軍の騎士団長レオンに率いられた数百名の騎士たちと、バルカンが選抜した中堅冒険者たちがすでにずらりと整列し、ウォーミングアップを終えていた。

 彼らの顔には、昨日までの過酷な訓練による疲労の色が濃く出ているものの、同時に「もっと強くなりたい」という確かな熱意が宿っている。

「全員、よく集まってくれた! 今日も絆紋亭の皆様による厳しい指導が待っている! 己の限界を越え、アシュタルを守る真の盾と剣となるべく、死ぬ気で食らいついてこい!」

 レオンが号令をかけると、騎士と冒険者たちは一斉に「ははっ!」と力強い返事をした。

「それじゃあ、早速始めるよ! 前衛志望の奴らはアタシとシルヴィアについてきな! 昨日の今日でどれだけ体が動くか見極めてやる!」

 アイラが戦斧を肩に担いで大声で叫ぶ。

「魔法使いと後衛志望は私とフレア、シオンのところへ来なさい! 魔力制御と回避のステップから叩き直してあげるわ!」

 ルウも杖を振り回して指示を出した。

 訓練が開始されると、訓練場には再び阿鼻叫喚の嵐が吹き荒れた。

「遅い遅い! そんなへっぴり腰じゃ、オークの突進すら止められねぇぞ!」

 アイラの繰り出す戦斧の峰打ちを必死に盾で防ごうとする騎士たちが、次々と地面に転がっていく。

「剣の軌道が読まれやすすぎます。敵の視線を誘導し、常に二手先を読んで動きなさい」

 シルヴィアは木剣一本で、十人の冒険者を同時に相手にしながら、的確に彼らの弱点を指摘し、木剣で打ち据えていた。

 俺はフェルやピコたちと共に、訓練の全体を監視しながら、疲労困憊して倒れた者たちに『絆紋』 の光を薄く乗せた特製ポーションを配って回っていた。

「ほら、飲んでおけ。アイラたちの訓練は厳しいが、これを乗り越えれば絶対にしぶとくなるからな」

「あ、ありがとうございます、レイン様……。しかし、皆様の動きはまるで次元が違います。我々がいくら束になっても、シルヴィア教官の木剣にすら触れられない……」

「焦らなくていい。君たちは確実に成長しているよ」

 そんな中、昨日俺たちが見出した二人の『原石』――槍使いの少年兵クロードと、魔法盾使いのアリスは、他の訓練生たちよりも明らかに一歩抜きん出た動きを見せていた。

 クロードはアイラの重い一撃を長槍のしなりを利用して見事に受け流し、アリスはルウの容赦ない炎の魔法を、即座に展開した多重の『氷の盾』で的確に防いでいる。

「いい動きだ、二人とも。その調子で連携を意識しろ」

 俺が声をかけると、二人は汗だくになりながらも嬉しそうに頷いた。

 だが、俺の目は、さらに別の場所で奮闘する二人の『新たな原石』に留まっていた。

 一人は、後衛の射撃訓練場で弓を構える、獣人の耳と尻尾を持った小柄な少年だ。

 彼はシオンの厳しい指導の下、動く的を狙って矢を放ち続けていたが、その集中力と『目の良さ』は尋常ではなかった。的がどれほど不規則に動こうとも、彼の放つ矢は寸分の狂いもなく中心を射抜いている。

「君、見事な弓の腕だな。名前は?」

 俺が声をかけると、少年はビクッと肩を震わせ、慌てて弓を下ろした。

「あ、あの……ザックと言います。猟師の村の出身で、ギルドの冒険者としてはまだ駆け出しなんですが……目が良いのだけが取り柄でして」

「ザックか。ただ目が良いだけじゃない。風の読みと、敵の動きを予測する直感が素晴らしい。だが、スタミナがないから連射するとブレが出始めているな」

「は、はい……。長時間の戦闘になると、腕が上がらなくなってしまって」

「なら、無駄な力を抜く引き方と、スタミナの配分を俺とシオンで徹底的に教えよう。君のその目は、間違いなく最高の狙撃手スナイパーになれる」

 ザックは驚きと喜びに満ちた顔で、「ありがとうございます!」と深く頭を下げた。

 もう一人は、回復・支援魔法の訓練エリアにいた、修道服を着た気弱そうな少女だ。

 彼女はフレアの指導を受けていたが、自分に自信がないのか、常にオドオドとして魔力のコントロールを乱してしまっていた。しかし、俺の『鑑定』スキルと気配察知が捉えた彼女の「内包する魔力量」は、ルウに匹敵するほど膨大なものだった。

「そこの君。少し肩の力を抜いてみよう。名前は?」

「ひゃ、ひゃいっ! わ、私はミリーと申します……! 神聖教会の見習い治癒師なのですが、どんくさくて、いつも皆の足を引っ張ってばかりで……」

 ミリーは涙目になりながらペコペコと頭を下げる。

「ミリー。君の魔力はとても澄んでいて、しかも膨大だ。ただ、一度に放出しようとして制御が追いついていないだけだよ。自分の魔力を細い糸のようにイメージして、少しずつ編み上げるように魔法を構築してみなさい」

 俺が彼女の肩に手を置き、『絆紋』 の光で彼女の魔力回路をほんの少しだけ整えてやると、ミリーの杖から溢れ出していた暴走気味の光が、スッと安定した温かい光のオーラへと変わった。

「あ……魔力が、言うことを聞いてくれる……! すごい、私にもこんな安定したヒールがかけられるなんて!」

「君のその魔力量なら、回復だけでなく、味方全体を強化する強力なバフもかけられるはずだ。フレア、彼女の特訓メニューを支援特化に切り替えてみてくれるか?」

「承知いたしました、レイン様。ミリー、貴女には素晴らしい才能があります。私と共に、その力を引き出しましょう」

「は、はいっ! よろしくお願いします!」

 槍使いのクロード、魔法盾使いのアリス、狙撃手のザック、そして支援術師のミリー。

 アシュタルの未来を担う新たな原石たちが、この特訓の中で次々とその才能を開花させようとしていた。

国境付近の実戦演習と、残党の脅威

 午後。

 厳しい基礎訓練を終えた俺たちは、実戦演習と通常の討伐依頼を兼ねて、アシュタルの南の国境付近へと足を運んだ。

 今回のパトロール班には、俺、アイラ、シルヴィア、ルウの教官陣に加え、見出した四人の原石――クロード、アリス、ザック、ミリーを同行させている。魔物組はフェル、ピコ、ソラ、そして新入りのブランだ。

「いいか、お前ら。午前の訓練で教わったことを忘れるなよ! 実戦じゃ、一瞬の気の緩みが命取りになる。だが、アタシらがしっかり後ろで見ているから、恐れずに前に出な!」

 アイラが戦斧を肩に担ぎながら、四人の訓練生たちにハッパをかける。

「は、はいっ!」

 四人は緊張した面持ちで武器を構え、鬱蒼と茂る森の中を慎重に進んでいった。

 しばらく進むと、先頭を歩いていたフェルがピタリと足を止め、鼻をヒクヒクと動かして低い唸り声を上げた。

「ウォゥゥ……」

「敵の気配か、フェル。数は?」

「ウォンッ、ウォンッ、ウォンッ」

 フェルの鳴き声から、十数体の魔物の気配と、それらを統率する強大な一体の気配が伝わってくる。

「前方の開けた場所に、魔王軍の残党のオークの群れがいます。さらに、それを率いているのは……変異した『オーガ』のようです」

 木の上に登って索敵していたザックが、優れた視力で敵の正体を看破して報告した。

「オーガだと? ただでさえ厄介な魔物だが、魔王軍の瘴気で変異しているなら、相当な力を持っているはずだ。……よし、お前たち四人で、この群れに当たってみろ。フェルとピコがサポートに入る。俺たちは致命的な危機になるまで手は出さない」

 俺の指示に、四人は息を呑みながらも、力強く頷いた。

「行きます! 私が前線を抑えますから、アリスは防御を、ザックは後方からオークの数を減らしてください! ミリーは俺たちへの支援を!」

 クロードが長槍を構え、勇敢に前線へと飛び出していく。

「オォォォォッ!! 人間ドモメ、食ッテヤル!!」

 残党のオークたちが、獲物を見つけて一斉に襲いかかってきた。

「させません!『マルチ・アイス・シールド』!!」

 アリスが杖を掲げ、クロードの死角を補うように氷の盾を展開する。オークの粗末な剣が氷の盾に弾かれ、体勢を崩したところを、クロードの槍が的確に急所を貫いた。

「今です!『聖なる鼓舞ホーリー・エンチャント』!!」

 後方からミリーが祈りを捧げると、温かい光のオーラがクロードたちの身体を包み込み、彼らの腕力と敏捷性が飛躍的に向上した。

「すごい、体が軽い……! これならいける!」

「僕もやります!『風裂きのウィンド・アロー』!」

 高台に陣取ったザックの放った矢が、風を巻き込みながらオークの額を次々と正確に射抜いていく。

 四人の連携は、午前中の訓練の成果を存分に発揮し、見事なまでにオークの群れを減らしていった。フェルとピコはあえて手を出さず、彼らの戦いを見守りながら、背後から近づこうとする伏兵だけを的確に処理している。

「やるじゃないか。即席のパーティーにしては、互いの長所をよく活かしているわ」

 ルウが感心したように頷く。

 だが、戦況が有利に傾きかけたその時。

「ガアアアァァァァッ!!」

 森の奥から、木々をへし折って、一際巨大な魔物が姿を現した。

 体長五メートルを超える巨体。赤黒く変色した皮膚には無数の棘が生え、手には大木を丸ごと削り出したような巨大な棍棒を握っている。魔王軍の瘴気によって狂暴化した『変異オーガ』だ。

「なっ……なんてデカさだ……!」

 クロードが思わず後ずさる。

「グシャァッ!!」

 変異オーガが巨大な棍棒を無造作に振り下ろした。

「危ないっ!『アイス・ウォール』!!」

 アリスが咄嗟に分厚い氷の壁を構築するが、オーガの一撃は氷の壁を紙屑のように粉砕し、その衝撃波だけでクロードとアリスを吹き飛ばした。

「きゃあっ!?」

「ぐはっ……!」

「クロード! アリス! 『癒やしのヒール』!」

 ミリーが慌てて回復魔法を飛ばすが、オーガは休むことなく次の一撃を振り上げようとしていた。

「クソッ、隙がない……!」

 ザックが必死に矢を放つが、オーガの硬い皮膚に弾かれ、致命傷にはならない。

「ここまでだな。十分よくやった」

 俺は剣を抜き、前に出ようとした。

 だが、その瞬間。

「キュゥゥゥゥッ……!」

 変異オーガの後ろの茂みから、微かな、しかし必死の鳴き声が聞こえた。

 見れば、オーガの足元に転がっている粗末な木製の檻の中に、一匹の小さな魔物が捕らえられていたのだ。

 美しい銀色の毛並みに、長い尻尾。そして、周囲の空間を微かに歪めるような特異な魔力を放つ、非常に珍しい魔物――『銀狐シルバー・フォックス』の子供だった。

「あのオーガ、あんな小さな子供の魔物を捕まえて、食料にでもするつもりか……!」

 俺の右手の甲の『絆紋』 が、怒りに激しく明滅した。

「フェル! ピコ! あのオーガの動きを止めるぞ! ソラ、ブランはクロードたちの護衛を!」

「ウォォォンッ!!」

「キュイッ!!」

 俺の指示と同時に、フェルとピコが目にも留まらぬ速度で飛び出した。

 フェルが青白い雷光を纏った『白銀の迅雷』でオーガの側面に回り込み、その強烈な雷撃でオーガの片膝を強制的に地面に突かせる。

「ガァァッ!?」

 オーガが驚愕して棍棒を振り回そうとした瞬間、ピコが空中高く跳躍し、浄化の光を限界まで込めた『ホーリー・ムーン・キック』で、オーガの棍棒を真っ二つに粉砕した。

「今だ!」

 俺は一気に距離を詰め、右手の甲の『絆紋』 の光を長剣に纏わせた。

「悪く思うな。お前のその狂気、ここで終わらせてやる」

 ズバァァァンッ!!

 翠色の光の軌跡が宙を描き、変異オーガの巨体を一刀両断する。断ち切られたオーガの肉体は、瘴気を発することもなく、純粋な光の粒子となって森の空気に溶けていった。

「す、すごい……。あんな巨大な化け物を、たった一撃で……!」

 クロードたちが、信じられないものを見るように俺を見上げていた。

空間を操る銀狐との絆

 俺は剣を鞘に収め、すぐさまオーガの後ろに転がっていた木製の檻へと駆け寄った。

「キュゥ……」

 檻の中の銀狐は、恐怖に身を縮ませ、震えていた。美しい銀色の毛並みは汚れ、足には乱暴に扱われた際についたと思われる傷がある。

「もう大丈夫だ。怖い奴はみんないなくなったからな」

 俺は剣の柄で檻の鍵を破壊し、ゆっくりと手を差し伸べた。そして、右手の甲の『絆紋』 の光を灯す。

 翠色の温かな波紋が、銀狐の小さな体を優しく包み込んだ。

『万物の調和と極限浄化』の力が、銀狐の傷を瞬時に癒やし、恐怖に強張っていた心を解きほぐしていく。

「キュゥ……?」

(あたたかい……。お前は、さっきの恐ろしい化け物をやっつけてくれたのか……?)

 銀狐から、警戒が解けた純粋な疑問と、微かな安堵の思念が伝わってくる。

「ああ。俺はレイン。君を助けに来たんだ」

 俺が微笑みながらその銀色の毛並みを撫でると、銀狐は驚いたように目を見開き、そして俺の手のひらに顔をすり寄せてきた。

「ウォンッ♪」

「キュイッ♪」

「きゅるるーっ♪」

 フェルとピコ、ソラも近寄ってきて、新しい仲間の匂いを優しく嗅ぐ。銀狐は少し驚きながらも、彼らの放つ温かい魔力に触れ、完全に安心したように喉を鳴らした。

「もし帰る場所がないなら、俺たちのところに来るか? ここには君を守ってくれる強い仲間がたくさんいるし、美味しいご飯も毎日食べられるぞ」

 俺が誘うと、銀狐は嬉しそうに頷き、そして不思議な光景を見せた。

 ポンッ、という小さな音と共に、銀狐の姿が一瞬にして俺の腕の中から消え、次の瞬間には俺の頭の上にちょこんと乗っていたのだ。

「おっ? 空間転移の魔法か。すごい才能を持ってるんだな」

「キュンッ♪」

 銀狐は得意げに鳴き、俺の髪をホリホリと掘る仕草をした。

「よし、今日からお前の名前は『ギン』だ。よろしくな、ギン」

「キュンキュンッ♪」

 新たな家族を迎え入れた俺の元へ、クロードたち四人が申し訳なさそうに歩み寄ってきた。

「レイン様……申し訳ありません。俺たちの力が足りず、結局レイン様の手を煩わせてしまって……」

 クロードが悔しそうに俯く。

「何を言ってるんだ。君たちは変異オーガの攻撃から仲間をしっかりと守り抜き、互いをカバーし合っていた。即席のパーティーで、あれだけの連携ができるのは大したものだ」

 俺が褒めると、アイラやルウたち教官陣も深く頷いた。

「そうよ。アンタたちは、今日の訓練と実戦で確実に成長したわ。これからもアタシたちが徹底的にしごいてやるから、覚悟しな!」

「は、はいっ!! 光栄です!!」

 四人の顔には、恐怖よりも遥かに強い、己の成長への喜びと決意が満ち溢れていた。

帰還と、温かい食卓

 夕暮れ時。

 訓練と実戦演習を終え、新たな仲間ギンを連れた俺たちは、アシュタルの拠点へと帰還した。

 拠点では、セシルやエリス、そして居残り組の魔物たちが温かく出迎えてくれた。

「レイン様、おかえりなさいませ! あら、また可愛らしい家族が増えたのですね!」

 セシルがギンの銀色の毛並みを見て目を細める。

「キュンッ♪」

 ギンは空間転移を使って、一瞬でセシルの肩に移動し、愛想よく頬をすりすりとした。

「まぁ、なんて器用な子でしょう。今日の夕食は、ギンちゃんのお祝いも兼ねて、特大の鹿肉のローストですよ!」

 その日の夜。

 庭の虹色の天蓋の下、精霊樹の優しい光に照らされながら、盛大な夕食の宴が開かれた。

 クロード、アリス、ザック、ミリーの四人も特別に招待され、彼らは『絆紋亭』の豪華すぎる食事と、伝説の魔物たちがのんびりと寛ぐ光景に、終始目を丸くして感動していた。

「信じられない……。こんなに美味しいお肉、食べたことがありません! それに、あの恐ろしい黒竜様が、あんなに大人しくお肉を食べているなんて……」

 ミリーが感極まって涙ぐみながらロースト肉を頬張る。

「これが、アシュタルを救った特級クランの日常……。俺も、いつかレイン様たちのように、誰かを守れる強い騎士になります!」

 クロードが木製ジョッキを握りしめ、熱く語る。

 テラスでは、フェルやピコ、ソラ、リン、キラ、ブラン、そして新入りのギンたち魔物組が、極上の肉を頬張りながら楽しげにじゃれ合っている。ギンは時折、空間転移を使って他の魔物たちの背中に飛び乗っては、鬼ごっこのように遊んでいた。

 ノヴァやガエン、ゼットといった大型組も、その様子を穏やかに見守っている。

 賑やかで、優しくて、誰もが誰かを必要とし、誰もが誰かに感謝している場所。

 全軍強化計画という新たな使命を帯びても、俺たちのこの温かい日常が変わることはない。

 原石たちは磨かれ、新しい家族は増え、俺たちの絆はさらに強く、大きく広がっていく。

 星降る夜の下、笑い声と美しい音楽が、いつまでも絶えることなく響き渡っていた。

【現在のステータス】

名前:レイン

職業:Sランク冒険者(特級クラン『絆紋亭』マスター / 自治区代表)

称号:追放されし者 / 魔物に愛されし者 / 辺境の癒し手 / 導きの光 / 豊穣の主 / 浄水の守り手 / 迷いを導く者 / 真理を導く者 / 絆の真髄を知る者 / 竜を解放する者 / 独立同盟の盟友 / 熱砂を歩む者 / 深淵を浄化せし者 / 変異を鎮める者 / 導きの軍師

Lv:78(※国境防衛と後進の育成、オーガ討伐によりアップ)

HP:810 / 810

MP:610 / 610

【固有スキル】

絆紋きずなもん:対象と心を通わせる。万物を調和させ、極限の浄化と最適化を行う絶対的な力。

【クラン『絆紋亭』メンバー(一部抜粋)】

・銀色のウルフ(フェル):絆レベル5

・ポーションラビット(ピコ):絆レベル5

空色小竜ソラ:絆レベル5

・漆黒のノヴァ:絆レベル5

・砂塵の魔蠍ゼット:絆レベル5

水豹リン:絆レベル5

幻宝石獣キラ:絆レベル5(※絆深化)

・白銀の幼熊ブラン:絆レベル4(※絆深化)

銀狐ギン:新規合流 / 絆レベル3

・アイラ(女戦士・Sランク)

・ルウ(魔導士・Sランク)

・シルヴィア(剣聖・Sランク)

・シオン(密偵・Sランク)

・ナディア(砂漠の巫女)

・レオン(辺境伯軍・騎士団長 / クラン協力者)

・クロード(辺境伯軍・槍使い / 訓練生・有望株)

・アリス(冒険者・魔法盾使い / 訓練生・有望株)

・ザック(冒険者・狙撃手 / 訓練生・有望株)

・ミリー(神聖教会・支援術師 / 訓練生・有望株)

(※その他拠点防衛および生産メンバー多数)

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作 【安全第一】死に戻り商人の異世界スローライフ~万能魔法と『リトライ』を駆使して完璧な物流網とインフラを整備し、のんびり隠居を目指します~

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