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追放された絆紋使いの穏やかな冒険譚〜辺境の街ではぐれ者たちと最強の居場所を作ります〜  作者: 盆ちゃん


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第59話 極光の氷原と、氷狼の皇子

第59話 極光の氷原と、氷狼の皇子

 辺境の街アシュタルの東、小高い丘に広がる非公式クラン『絆紋亭』の拠点は、今日という日もまた、世界中のどの場所よりも優しく、そして奇跡のような調和に満ちた朝を迎えていた。

 庭の中央にそびえ立つ精霊樹は、日を追うごとにその存在感を増し、今や拠点の絶対的な要として太く力強い幹を天へと伸ばしている。その豊かに茂った枝葉が朝の心地よい風に揺れるたび、チリン、チリンと微かな鈴の音のような魔力の波紋が広がり、庭全体を極上の癒やしのオーラで包み込んでいた。

「きゅるるーっ!」

「ウォンッ!」

「ピィィィッ!」

「ヒンッ♪」

「ルルゥッ♪」

「シャァンッ♪」

「きゅあぁっ♪」

「キュゥッ♪」

「ホゥッ♪」

「キュイィィッ♪」

「キュルルゥッ♪」

「パタパタッ♪」

「プゥゥッ♪」

「ピィッ♪」

「サララッ♪」

「グルォォォッ!」

 澄み切った青空を背景に、空色小竜のソラ、雷鳴の怪鳥ライ、黄金の天馬ルミナ、翡翠の風呼びシルフィ、星詠みの白梟ステラ、黄金の女王蜂メルティ、黄昏のグリフォンであるシエル、意思を持つ魔道具である銀色の空飛ぶ絨毯シルキー、焔の不死鳥の雛フィア、古の樹精リーファ、風呼びの巫女の末裔ウィンディ、鏡の精霊ミラー、そして先日仲間になったばかりの雷霆の白虎ライトが楽しげに上空を旋回、あるいは地上を駆け巡っている。ルミナの放つ神聖な黄金の光、ライとライトの纏う青白い雷光、ソラの美しい空色の鱗、シルフィとウィンディが巻き起こすエメラルドグリーンのそよ風、ステラの星屑を散りばめたような銀色の羽ばたき、メルティの放つ黄金の鱗粉、シエルの夕空のような美しい翼、シルキーの滑らかな銀色の布地、フィアの放つ温かな炎の軌跡、リーファの放つ淡い翠色の光、そしてミラーの作り出す虹色の光のプリズムが交差し、まるで空と地上に生きた巨大な芸術作品が描かれているかのようだった。

 そんな賑やかな光景を縁側から見守りながら、二匹の魔物が堂々たる足取りで庭を歩いていた。

 銀色のウルフである『フェル』と、純白のポーションラビットである『ピコ』だ。

 彼らは、俺が王都を追放され、この名もなき辺境の森にたどり着いたその日に、一番最初に俺の『絆紋』を受け入れ、共に歩み始めた最古参の相棒たちである。

 フェルの銀色の毛並みは月明かりのように美しく気高い光を放ち、その体躯は一回りも二回りも大きくなり、森の王者のような風格を漂わせている。ピコもまた、その小さな体には信じられないほどの敏捷性と強靭な魔力を宿し、仲間たちを癒やす要として立派に成長を遂げていた。彼らの後ろを、瑠璃色の幼竜ラピス、紅蓮の精霊狐イグニス、大地の巨熊の幼獣ベル、幻影の小狐ファム、夢紡ぎの獏ネム、癒しの水妖精ディーネ、巨木の守護獣ウドといった幼い魔物や精霊たちが、よちよちと、しかし元気いっぱいに追いかけていた。フェルとピコは時折立ち止まり、幼い魔物たちが転ばないように優しく鼻先で促している。その姿は、この大家族の頼れる兄と姉そのものだった。

「フェル、ピコ。今日もみんなの面倒を見てくれてありがとうな。お前たちがいてくれるから、俺は安心してこの場所を守れるんだ」

 俺ことレインは、縁側に腰掛けながら、足元にすり寄ってきた二匹の頭を順番に優しく撫でた。

「ウォンッ♪」

「キュイッ♪」

 フェルは嬉しそうに目を細めて俺の手に頬をすり寄せ、ピコは自慢の長い耳をピクピクと動かして俺の膝の上に飛び乗ってきた。

「さて、みんなのお腹が空く前に、朝飯の準備をするか。今日は魔力農園の野菜がとびきり美味しく育っているはずだからな」

 俺がそう呟くと、フェルとピコは力強く鳴き、ラピスやベルたちを連れて水路の方へと遊びに行かせてくれた。

   * * *

 一階の広々とした厨房へと降りると、そこにはすでに見習い魔導士のエリス、仕立屋のリナ、元王都特級密偵のシオン、元宮廷料理人のセシル、元聖騎士のフレア、天才錬金術師のノエル、流浪の精霊弓士ライラ、猫耳の行商人ミーア、元Sランク冒険者の剣聖シルヴィア、元宮廷魔導水質管理官のアクア、流浪の吟遊詩人カノン、風呼びの巫女の末裔ウィンディ、そしてミラーがエプロン姿で立ち、手際よく調理を進めていた。

「あ、レイン様! おはようございますっ!」

「レインさん、おはようございます。今朝も魔力農園のお野菜がキラキラしてますよ。今日はライトさんが魔道コンロに微弱な雷魔力を流してくれて、火力が一段と安定しているんです!」

「皆さん、おはようございます! 今朝のメニューは、特製の魔力小麦で作った『こんがり焼き立てのバタートースト』に、アクアさんの浄水と魔力農園の新鮮なほうれん草を使った『とろとろクリームポタージュ』、そしてメルティちゃんの『黄金の霊蜜』をかけた季節のフルーツヨーグルトですよ!」

「私も、微力ながらパンをスライスするのをお手伝いさせていただいております!」

「ふふっ、人間の料理というのは、見ていてとても興味深いですね。香ばしいバターの匂いとクリームの甘い香りがたまりません」

「レイン様、おはようございますニャ! 今日も朝からごちそうですニャ!」

「剣の修行の前に、この素晴らしい朝食をいただけるのは至福だな」

 厨房いっぱいに広がるのは、トーストがこんがりと焼き上がる匂いと、クリームポタージュの甘く濃厚な香りが暴力的なまでに食欲をそそる匂いだ。セシルが加わったことで、俺の『料理』スキルや『植物知識』との相乗効果が生まれ、そこに伝説のエリクサーの主原料でもある『黄金の霊蜜』、さらにはアクアが魔法で極限まで不純物を取り除いた『究極の浄水』が加わっている。

 女戦士のアイラ、少女魔導士のルウ、老薬師のゴット、ドワーフの若き職人ドーラもリビングに集まり、「いただきます」の合図と共に賑やかな朝食が始まった。

「んんっ!? なんだこれ!? このポタージュ、ほうれん草の青臭さが全然なくて、クリームのコクと合わさって最高だぞ! サクサクのバタートーストを浸して食べると、無限に食えちまうよ!」

 アイラが豪快に頬張りながら、信じられないというように目を輝かせる。

「本当によ……セシルが来てから毎朝驚かされてるけど、今日のこれも別格ね。ヨーグルトの酸味と霊蜜の甘さが絶妙だわ。お肌の調子もまた一瞬で最高になっちゃった」

 ルウもうっとりとした表情を浮かべて、スプーンを口に運ぶ。

「このクリームのコクとほうれん草の旨味のバランス……王都の宮廷料理ですら、これには足元にも及びません。涙が出るほど美味しいです……!」

 フレアは、美しい顔をほころばせながら、信じられないものを見るような目でトーストを噛み締めていた。

「……美味しい。ただただ、美味しい……。呪いの痛みもなく、信頼できる仲間たちと囲む温かい食卓が、こんなにも心を震わせるものだったなんて……」

 シルヴィアは、自身の切り分けたフルーツが入ったヨーグルトを食べながら、感動の大粒の涙をポロポロとこぼしていた。

「ほっほっほ、伝説の霊蜜を使ったヨーグルトを朝から食うなど、王族が見たら卒倒するじゃろうな。寿命がさらに十年は延びた気分じゃわい」

 ゴットも満足そうに髭を撫でて笑う。

 テラスでは、魔物たちもそれぞれに用意された特製の朝食を夢中で食べている。ラピスやイグニス、ベル、ファム、ネム、ディーネ、フィア、リーファ、ウド、ミラーといった幼い仲間たちや精霊たちには、セシルが特別に消化の良い特製ミルク煮込みに霊蜜を垂らしてくれており、顔を突っ込んで美味しそうに頬張っていた。ソラやライ、ルミナ、ライトたちも、上質な魔物肉や果実を存分に堪能している。ダイヤはたっぷりの魔力草を幸せそうに咀嚼し、ステラとシエルは専用に用意された極上の肉片を優雅に啄んでいた。シルキーは、俺たちが食事を楽しむ様子を、興味深そうに空中からパタパタと見守っている。

   * * *

 和やかな朝食を終え、食後のハーブティーを楽しんでいた時のことだ。

 日課の情報収集から戻ったシオンが、珍しく険しい表情でリビングに入ってきた。

「レインさん。少し気になる報告があります。アシュタルの北、永久凍土が広がる『極光の氷原』で、異常な寒波が発生しているとのことです」

「極光の氷原……。あの辺りは年中雪と氷に覆われているが、異常な寒波となればただ事じゃないな」

 俺が眉をひそめると、ルウが震えるように自分の二の腕をさすった。

「あの氷原は、ただでさえ息をするだけで肺が凍りそうな場所よ。そこに異常な寒波なんて、どんな強力な氷属性の魔物が暴れているのやら」

「ほっほっほ、氷原の奥深くには、古くから『氷狼の皇子』と呼ばれる強力な魔獣が封印されているという伝説がある。もしかすると、その封印が解けかかっているのかもしれんのう」

 ゴットが長い髭を撫でながら思案顔になる。

「氷狼の皇子……。もしそれが真実なら、アシュタルの街にも寒波の被害が及ぶかもしれないわね。農園の野菜たちが凍っちゃうわ!」

 アクアが青ざめた顔で立ち上がった。

「街の人々や自然が困っているなら、アタシたちの出番だね! よっしゃ、その氷の魔獣ごと、アタシの斧でぶっ叩いてやるよ!」

 アイラが戦斧を背負い直して闘志を燃やす。

「私も行きます。邪悪な力が寒波を引き起こしているのなら、私の聖剣で打ち払ってみせます!」

 フレアが聖剣の柄に手を添える。

「極寒の環境なら、私の炎魔法が役に立つわね。任せてちょうだい!」

 ルウが自信満々に杖を掲げた。

「俺も行こう。どんな寒さであれ、我が剣の冴えを鈍らせることはない」

 シルヴィアが大剣を背負って頷いた。

「よし、決まりだ。今回の探索パーティーは俺、アイラ、ルウ、フレア、シオン、シルヴィア、そしてアクアも頼めるか? 魔物は、氷属性に耐性があり、炎を扱えるイグニスとフィア、そして氷の幻獣マシロ、索敵に長けたフェルとピコを連れて行く。エリス、ゴットさん、ドーラ、ノエル、セシル、カノン、ウィンディ、ミーア、ミラー、ライラたちは、拠点の防衛と留守番をお願いできるか?」

「はいっ! ティタンと一緒に、拠点の外周防衛システムを完璧にしておきます!」

 エリスが元気よく頷き、ノエルも「極寒を防ぐ特製の保温マントを持たせます!」と眼鏡を光らせた。

 こうして、異常寒波の謎を解明するため、俺たちはアシュタルの北方に位置する『極光の氷原』へと出発した。

   * * *

 アシュタルの街から馬車とフェルの背、そしてシルキーの飛翔を駆使して数時間。

 視界が開けると、見渡す限りの純白の世界——『極光の氷原』がその姿を現した。ノエルが作ってくれた保温マントを羽織っていても、骨の髄まで冷えるような恐ろしい寒さが肌を刺す。上空には美しい極光(オーロラ)が揺らめいているが、その美しさとは裏腹に、吹き荒れる吹雪は容赦がない。

「うわぁ……本当に寒い。それに、空気が痛いわ」

 ルウが震えながら杖を構え、自身の周囲に小さな炎を浮かばせる。

「マシロ、周囲の寒気を少し和らげてくれ。シオン、空からの索敵はシルキーとソラに任せて、地上の警戒を。フェルとピコは、異常な魔力の発生源を探ってくれ」

「キュゥ♪」

「了解です。クロ、影の探知を」

「にゃっ!」

「ウォンッ!」

「キュイッ!」

 マシロが額の青い宝石を輝かせると、俺たちの周囲だけ吹雪が弱まり、いくぶんか寒さが和らいだ。フェルとピコの案内で、俺たちは深く積もった雪を掻き分けながら、氷原の奥深くへと慎重に進んでいった。

 やがて、氷原の中心部と思われる巨大な氷の洞窟へと辿り着いた。

 洞窟の奥から、凄まじい冷気と共に、悲痛な咆哮が響き渡ってくる。

「グルルォォォォォォッ!!」

 洞窟に足を踏み入れた俺たちが目にしたのは、信じられない光景だった。

 巨大な氷柱が林立する洞窟の最深部。そこには、体長が五メートルを超える、美しい銀白色の毛並みを持つ巨大な狼——『氷狼の皇子』が、自身の体から溢れ出す暴走した冷気に苦しんでいた。

 その毛皮には、呪いのように赤黒い模様が浮かび上がり、彼の魔力を強制的に引き出して周囲を凍りつかせている。

「あれは……伝説の氷狼の皇子! でも、様子がおかしいわ。何者かの呪いで魔力が暴走しているのね!」

 ルウが驚きの声を上げる。

「どうやら、あの呪いの紋様が異常寒波の原因のようだ。このままじゃ、皇子自身の命も危ないぞ!」

 アイラが戦斧を力強く握りしめた。

(……来るな……私に近づくな……。体が……凍りついてしまう……)

 俺の脳内に、皇子の苦痛に満ちた声が『絆紋』を通じて流れ込んできた。

「させない!! みんな、皇子の動きを止めるぞ! ルウ、イグニス、フィア! 炎で皇子の周囲の冷気を相殺してくれ!」

「任せてちょうだい!『フレイム・ウォール』!」

「キュンッ!」

「ピィッ!」

 ルウの放った巨大な炎の壁と、イグニス、フィアの放つ温かな炎が、皇子の周囲の絶対零度の空気を相殺し、俺たちが近づけるだけの道を作る。

「ウォォォンッ!!」

「キュイッ!!」

 銀色の閃光と、純白の弾丸が、凍てつく空気を引き裂いて駆け抜けた。

 フェルは目にも留まらぬ速度で皇子の側面に回り込み、その全身から青白い雷光を立ち昇らせた。

『白銀の迅雷(シルバー・ストライク)』!

 雷を纏ったフェルの強烈な突進が、皇子の足元の氷を砕き、動きを鈍らせる。

 そして、フェルが作った隙を見逃さず、ピコが驚異的な跳躍力で空高く舞い上がった。ピコの体から、俺の『野戦調薬』の魔力を受け継いだ浄化と破壊の光が溢れ出す。

『浄化の月面蹴り(ホーリー・ムーン・キック)』!

 空中で体を捻り、光を纏った強烈な両足蹴りが、皇子の背中の呪いの紋様にクリーンヒットする。ドゴォォォンッ!という轟音と共に、赤黒い紋様がわずかにヒビ割れる。

「レインの相棒たちにばかり、いい格好はさせないよ! オラァッ!!」

 アイラが戦斧に闘気を纏わせ、跳躍して皇子の周囲の氷柱を砕き散らす。

「聖なる光よ、呪いを打ち払え!『ホーリー・スラッシュ』!」

 フレアの聖剣が眩い光を放ち、呪いの冷気を浄化の光で切り裂く。

「水よ、その冷気を包み込みなさい!『アクア・バインド』!」

 アクアの放った強力な水流が、皇子の四肢に絡みつき、動きを封じる。

「絶技・白銀の飛燕!!」

 シルヴィアの放った神速の斬撃が、皇子の体表の呪いの魔力を切り刻む。

「シオン! 今だ!」

「了解です! クロ、影縛り!」

「にゃぁっ!」

 シオンが跳躍し、皇子の死角から短剣を突き立てる。クロが『シャドウ・バインド』で動きを完全に封じ込めた。

「グルルォォォォォッ……!!」

 悲痛な叫びを上げ、氷狼の皇子はついに氷の床に倒れ伏した。

   * * *

「ふぅ……これで少しは大人しくなるな」

 俺が武器を収めると、仲間たちも安堵の息を吐いた。

 俺はすぐさま、倒れ込んでいる皇子の元へと駆け寄った。

「大丈夫か? 怪我はないか?」

「グルゥゥ……」

 皇子は、苦しげに息を吐きながら俺を見上げていた。

「俺はレイン。絆紋亭のマスターだ。お前を助けに来たんだ」

 俺は両手を広げ、右手の甲にある翠色の痣――『絆紋』の光を限界まで解放した。

 翠色の温かな波紋が、洞窟の極寒の空気を押し退けるように広がり、皇子の体を優しく包み込む。

 俺はノエルの作ってくれた特製の浄化ポーションを取り出し、絆紋の光と共に皇子の背中にある呪いの紋様に直接注ぎ込んだ。

 すると、赤黒い呪いの紋様がパキパキと音を立てて砕け散り、皇子の体から溢れ出していた異常な冷気がみるみるうちに落ち着いていった。

「すごい……呪いが完全に解けた……。それに、この温かい光……」

 アクアが感嘆の声を漏らす。

「ウォォォン……♪」

 苦しみが消えた皇子は、美しく輝く銀白色の毛並みを取り戻し、ゆっくりと立ち上がって俺に頭を擦り寄せ、感謝の意を示した。

(あたたかい……。お前、不思議な力を持っているな。……私を、呪いの苦しみから救ってくれてありがとう)

 俺の脳内に、皇子の気高くも優しい声が『絆紋』を通じて流れ込んできた。

「呪いが解けて良かった。君は一人で、この洞窟で封印を守っていたのか?」

 俺が微笑みかけると、皇子は静かに頷いた。

(そうだ。だが、邪悪な魔道士によって呪いをかけられ、我を失いかけていた。……もう、一人でこの場所を守るのも限界かもしれない)

「それなら、うちのクランに来ないか? うちの庭には、お前みたいに強くて優しい仲間がたくさんいるぞ。マシロもいるし、居心地は悪くないはずだ」

 俺が手を差し出すと、アイラやルウ、フレアたちも温かく頷き、フェルやピコが優しく鳴き声を上げて歓迎の意を示した。

 皇子は、俺の差し出した手と、温かい仲間たちの姿を見て、目を細めた。

「……ウォォォンッ!」

 こうして、氷狼の皇子が、絆紋亭の新しい家族として加わることになった。名前は、その美しい銀白色から『シリウス』と名付けた。

   * * *

 その日の夕暮れ。

 新しい家族であるシリウスを連れて、俺たちはアシュタルの拠点へと帰還した。

 拠点では、エリス、ゴット、ドーラ、ノエル、セシル、カノン、ウィンディ、ミラー、ライラたち、そして幼い魔物たちが温かく出迎えてくれ、新しい仲間の加入と、異常寒波の解決に拠点中が歓喜の声を上げた。シリウスは精霊樹の美しさと、多様な魔物たちが共存する光景を見て、「こんなに温かい場所があるなんて!」と感動の涙を流していた。

 そして夜。

 庭の虹色の天蓋の下、精霊樹の優しい光に照らされながら、シリウスの歓迎会が開かれた。

 セシルは、今日も腕を振るい、極上の料理を作り上げた。魔力農園の野菜をたっぷり使った色鮮やかな温野菜サラダ、最高品質の肉の特大シチュー、そしてマシロの氷室で冷やした、黄金の霊蜜をたっぷり使った絶品のフルーツアイス。

「シリウス! うちのクランへようこそ! これからは、アタシたちが背中を預け合う最高の仲間だ!」

 アイラが木製ジョッキを高々と掲げる。

「ウォォォンッ!」

 シリウスは、アイラの声に応えるように気高く咆哮し、極上のシチューを美味しそうに頬張っていた。

「……信じられないほど、穏やかで美しい時間だ。毎日が新しい発見と喜びに満ちているな」

 シルヴィアが、ワイングラスを傾けながら、心からの笑顔を見せた。

「えへへ、私もこのクランに来てから、毎日が幸せでいっぱいですニャ!」

 ミーアが猫耳をピンと立てて、幸せそうにデザートを堪能している。

 テラスでは、フェルやピコ、ソラ、ライ、ルミナ、ライトたち魔物組が、新しい仲間であるシリウスを囲んで歓迎し、ラピスやベル、ファム、ネム、ディーネ、フィア、リーファ、ミラーといった幼い仲間たちが、シリウスのふかふかの毛並みにすり寄って遊んでいた。メルティは空中から黄金の鱗粉を振りまいて宴を彩り、シエルは精霊樹の枝から穏やかにその様子を見守り、シルキーは気持ちよさそうに空中を漂っている。シーナとミロが精霊の池から美しいハーモニーを響かせ、ライラとカノンの二つの竪琴が、かつてないほど美しく、そして壮大な音楽を奏でていた。

 賑やかで、優しくて、誰もが誰かを必要とし、誰もが誰かに感謝している場所。

 王都で「足手まとい」と呼ばれ、すべてを失った俺の周りには、今、これほどまでに頼もしく、温かい家族たちがいる。

 急ぐ必要なんてない。俺たちの絆は、どんな極寒の吹雪にも負けず、この辺境の地で永遠に温かく輝き続けていくのだから。

 星降る夜の下、笑い声と美しい音楽が、いつまでも絶えることなく響き渡っていた。

【現在のステータス】

名前:レイン

職業:冒険者(クラン『絆紋亭』マスター)

称号:追放されし者 / 魔物に愛されし者 / 辺境の癒し手 / 森の守護者 / 大地の開拓者 / 導きの光 / 豊穣の主 / 呪い打ち砕く者 / 悪夢を晴らす者 / 浄水の守り手 / 炎を鎮める者 / 迷いを導く者 / 風を浄化する者 / 幻影を打ち払う者 / 雷を従える者 / 氷を溶かす者

Lv:58(※氷狼の皇子の呪い浄化によりアップ)

HP:600 / 600

MP:400 / 400

【スキル】

・生活魔法 Lv.10(極まる)

・剣術 Lv.4

・解体 Lv.8

・野営技術 Lv.10(極まる)

・野戦調薬 Lv.10(極まる)

・植物知識 Lv.10(極まる)

・建築・修繕 Lv.10(極まる)

・鑑定 Lv.9

・気配察知 Lv.10(極まる)

・魔導知識 Lv.10(極まる)

・料理 Lv.10(極まる)

【固有スキル】

・絆紋(きずなもん):対象の魔物(および心を持つ存在)と心を通わせ、警戒心を解き放つ。集った魔物たちと精霊樹の魔力を調和させ、巨大な隠蔽と浄化の絶対結界を形成している。

【クラン『絆紋亭』メンバー】

・空色小竜(ソラ):絆レベル5

・銀色のウルフ(フェル):絆レベル5

・ポーションラビット(ピコ):絆レベル5

・クリスタル・ゲッコー(ルチル):絆レベル5

・スピリット・フォーン(ミエル):絆レベル5

・クリア・スライム(スイ):絆レベル5

・宝石蜘蛛(ルリ):絆レベル5

・雷鳴の怪鳥(ライ):絆レベル5

・シャドウ・キャット(クロ):絆レベル5

・水妖の獺(ミロ):絆レベル5

・氷雪の幻獣(マシロ):絆レベル5

・黄金の天馬(ルミナ):絆レベル5

・花纏いの黒豹(フロリア):絆レベル5

・月影の白蛇(ルナ):絆レベル5

・人魚の少女(シーナ):絆レベル5

・瑠璃色の幼竜(ラピス):絆レベル5

・紅蓮の精霊狐(イグニス):絆レベル5

・翡翠の風呼び(シルフィ):絆レベル5

・大地の巨熊の幼獣(ベル):絆レベル5

・心優しきゴーレム(ティタン):絆レベル5

・虹水晶の巨亀(ダイヤ):絆レベル5

・星詠みの白梟(ステラ):絆レベル5

・幻影の小狐(ファム):絆レベル5

・黄金の女王蜂(メルティ):絆レベル5

・黄昏のグリフォン(シエル):絆レベル5

・銀色の空飛ぶ絨毯(シルキー):絆レベル5

・夢紡ぎの獏(ネム):絆レベル5

・癒しの水妖精(ディーネ):絆レベル5

・焔の不死鳥の雛(フィア):絆レベル5

・古の樹精(リーファ):絆レベル5

・巨木の守護獣(ウド):絆レベル5

・鏡の精霊(ミラー):絆レベル5(※絆深化)

・雷霆の白虎(ライト):絆レベル4(※絆深化)

・氷狼の皇子(シリウス):新規合流 / 絆レベル3

・ウールシープの群れおよび森の小動物たち

・アイラ(女戦士・正式なクラン協力者)

・ルウ(魔導士・正式なクラン協力者)

・ゴット(薬師・正式なクラン協力者)

・エリス(見習い魔導士・クランメンバー)

・ドーラ(ドワーフの若き職人・クラン専属建築士兼鍛冶師)

・リナ(服飾職人・クラン専属仕立屋)

・シオン(元王都特級密偵・クラン専属防衛担当)

・セシル(元宮廷料理人・クラン専属料理人)

・フレア(元聖騎士・クラン専属護衛担当)

・ノエル(天才錬金術師・クラン専属錬金術師)

・ライラ(流浪の精霊弓士・クラン専属狩人)

・ミーア(猫耳の行商人・クラン専属商人)

・シルヴィア(元Sランク冒険者の剣聖・クラン専属剣術指南役)

・アクア(元宮廷魔導水質管理官・クラン専属水場管理係)

・カノン(流浪の吟遊詩人・クラン専属音楽家)

・ウィンディ(風呼びの巫女の末裔・クラン専属風使い)

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作 【安全第一】死に戻り商人の異世界スローライフ~万能魔法と『リトライ』を駆使して完璧な物流網とインフラを整備し、のんびり隠居を目指します~

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