第57話 魔女の森と、鏡の精霊
第57話 魔女の森と、鏡の精霊
辺境の街アシュタルの東、小高い丘に広がる非公式クラン『絆紋亭』の拠点は、今日という日もまた、世界中のどの場所よりも優しく、そして奇跡のような調和に満ちた朝を迎えていた。
庭の中央にそびえ立つ精霊樹は、日を追うごとにその存在感を増し、今や拠点の絶対的な要として太く力強い幹を天へと伸ばしている。その豊かに茂った枝葉が朝の心地よい風に揺れるたび、チリン、チリンと微かな鈴の音のような魔力の波紋が広がり、庭全体を極上の癒やしのオーラで包み込んでいた。
「きゅるるーっ!」
「ウォンッ!」
「ピィィィッ!」
「ヒンッ♪」
「ルルゥッ♪」
「シャァンッ♪」
「きゅあぁっ♪」
「キュゥッ♪」
「ホゥッ♪」
「キュイィィッ♪」
「キュルルゥッ♪」
「パタパタッ♪」
「プゥゥッ♪」
「ピィッ♪」
「サララッ♪」
澄み切った青空を背景に、空色小竜のソラ、雷鳴の怪鳥ライ、黄金の天馬ルミナ、翡翠の風呼びシルフィ、星詠みの白梟ステラ、黄金の女王蜂メルティ、黄昏のグリフォンであるシエル、意思を持つ魔道具である銀色の空飛ぶ絨毯シルキー、焔の不死鳥の雛フィア、古の樹精リーファ、そして先日仲間になったばかりの風呼びの巫女の末裔ウィンディが楽しげに上空を旋回している。ルミナの放つ神聖な黄金の光、ライの纏う青白い雷光、ソラの美しい空色の鱗、シルフィとウィンディが巻き起こすエメラルドグリーンのそよ風、ステラの星屑を散りばめたような銀色の羽ばたき、メルティの放つ黄金の鱗粉、シエルの夕空のような美しい翼、シルキーの滑らかな銀色の布地、フィアの放つ温かな炎の軌跡、そしてリーファの放つ淡い翠色の光が交差し、まるで空に生きた巨大な芸術作品が描かれているかのようだった。
そんな賑やかな空の舞を地上から見上げながら、二匹の魔物が堂々たる足取りで庭を歩いていた。
銀色のウルフである『フェル』と、純白のポーションラビットである『ピコ』だ。
彼らは、俺が王都を追放され、この名もなき辺境の森にたどり着いたその日に、一番最初に俺の『絆紋』を受け入れ、共に歩み始めた最古参の相棒たちである。
フェルの銀色の毛並みは月明かりのように美しく気高い光を放ち、その体躯は一回りも二回りも大きくなり、森の王者のような風格を漂わせている。ピコもまた、その小さな体には信じられないほどの敏捷性と強靭な魔力を宿し、仲間たちを癒やす要として立派に成長を遂げていた。彼らの後ろを、瑠璃色の幼竜ラピス、紅蓮の精霊狐イグニス、大地の巨熊の幼獣ベル、幻影の小狐ファム、夢紡ぎの獏ネム、癒しの水妖精ディーネ、巨木の守護獣ウドといった幼い魔物や精霊たちが、よちよちと、しかし元気いっぱいに追いかけていた。フェルとピコは時折立ち止まり、幼い魔物たちが転ばないように優しく鼻先で促している。その姿は、この大家族の頼れる兄と姉そのものだった。
「フェル、ピコ。今日もみんなの面倒を見てくれてありがとうな。お前たちがいてくれるから、俺は安心してこの場所を守れるんだ」
俺ことレインは、縁側に腰掛けながら、足元にすり寄ってきた二匹の頭を順番に優しく撫でた。
「ウォンッ♪」
「キュイッ♪」
フェルは嬉しそうに目を細めて俺の手に頬をすり寄せ、ピコは自慢の長い耳をピクピクと動かして俺の膝の上に飛び乗ってきた。
「さて、みんなのお腹が空く前に、朝飯の準備をするか。今日は魔力農園の野菜がとびきり美味しく育っているはずだからな」
俺がそう呟くと、フェルとピコは力強く鳴き、ラピスやベルたちを連れて水路の方へと遊びに行かせてくれた。
* * *
一階の広々とした厨房へと降りると、そこにはすでに見習い魔導士のエリス、仕立屋のリナ、元王都特級密偵のシオン、元宮廷料理人のセシル、元聖騎士のフレア、天才錬金術師のノエル、流浪の精霊弓士ライラ、猫耳の行商人ミーア、元Sランク冒険者の剣聖シルヴィア、元宮廷魔導水質管理官のアクア、流浪の吟遊詩人カノン、そしてウィンディがエプロン姿で立ち、手際よく調理を進めていた。
「あ、レイン様! おはようございますっ!」
「レインさん、おはようございます。今朝も魔力農園のお野菜がキラキラしてますよ。今日はウィンディさんが心地よい風を厨房に送ってくれているので、火のそばでも涼しくて快適です!」
「皆さん、おはようございます! 今朝のメニューは、特製の魔力小麦とたっぷりの野菜で作った『具だくさんケークサレ』に、アクアさんの浄水でコトコト煮込んだ『特製オニオングラタンスープ』、そしてメルティちゃんの『黄金の霊蜜』をかけた季節のフルーツマリネですよ!」
「私も、微力ながら玉ねぎを炒めるのをお手伝いさせていただいております!」
「ふふっ、人間の料理というのは、見ていてとても興味深いですね。香ばしい玉ねぎの匂いとチーズの香りがたまりません」
「レイン様、おはようございますニャ! 今日も朝からごちそうですニャ!」
「剣の修行の前に、この素晴らしい朝食をいただけるのは至福だな」
厨房いっぱいに広がるのは、ケークサレがこんがりと焼き上がる匂いと、オニオングラタンスープの甘く濃厚な香りが暴力的なまでに食欲をそそる匂いだ。セシルが加わったことで、俺の『料理』スキルや『植物知識』との相乗効果が生まれ、そこに伝説のエリクサーの主原料でもある『黄金の霊蜜』、さらにはアクアが魔法で極限まで不純物を取り除いた『究極の浄水』が加わっている。
女戦士のアイラ、少女魔導士のルウ、老薬師のゴット、ドワーフの若き職人ドーラもリビングに集まり、「いただきます」の合図と共に賑やかな朝食が始まった。
「んんっ!? なんだこれ!? このオニオングラタンスープ、玉ねぎの甘みが凝縮されてて、とろけるチーズとバゲットの相性が最高だぞ! ケークサレの塩気と合わさって、無限に食えちまうよ!」
アイラが豪快に頬張りながら、信じられないというように目を輝かせる。
「本当によ……セシルが来てから毎朝驚かされてるけど、今日のこれも別格ね。フルーツマリネの爽やかさが尋常じゃないわ。お肌の調子もまた一瞬で最高になっちゃった」
ルウもうっとりとした表情を浮かべて、スープを口に運ぶ。
「このチーズのコクと玉ねぎの甘みのバランス……王都の宮廷料理ですら、これには足元にも及びません。涙が出るほど美味しいです……!」
フレアは、美しい顔をほころばせながら、信じられないものを見るような目でケークサレを噛み締めていた。
「……美味しい。ただただ、美味しい……。呪いの痛みもなく、信頼できる仲間たちと囲む温かい食卓が、こんなにも心を震わせるものだったなんて……」
シルヴィアは、自身の切り分けたケークサレを食べながら、感動の大粒の涙をポロポロとこぼしていた。
「ほっほっほ、伝説の霊蜜を使ったフルーツマリネを朝から食うなど、王族が見たら卒倒するじゃろうな。寿命がさらに十年は延びた気分じゃわい」
ゴットも満足そうに髭を撫でて笑う。
テラスでは、魔物たちもそれぞれに用意された特製の朝食を夢中で食べている。ラピスやイグニス、ベル、ファム、ネム、ディーネ、フィア、リーファ、ウドといった幼い仲間たちや精霊たちには、セシルが特別に消化の良い特製ミルク煮込みに霊蜜を垂らしてくれており、顔を突っ込んで美味しそうに頬張っていた。ソラやライ、ルミナたちも、上質な魔物肉や果実を存分に堪能している。ダイヤはたっぷりの魔力草を幸せそうに咀嚼し、ステラとシエルは専用に用意された極上の肉片を優雅に啄んでいた。シルキーは、俺たちが食事を楽しむ様子を、興味深そうに空中からパタパタと見守っている。
* * *
和やかな朝食を終え、食後のハーブティーを楽しんでいた時のことだ。
エリスが、一枚の古びた依頼書を手にリビングにやってきた。
「レイン様、冒険者ギルドから少し変わった依頼が来ているみたいなんです」
「変わった依頼? 討伐や採取じゃないのか?」
俺が尋ねると、エリスは頷きながら依頼書を読み上げた。
「ええと……『魔女の森での調査と探索。最近、森の中で不可解な鏡の幻影が現れ、迷い込んだ旅人が出てこられなくなっている。原因の究明と解決を求む』……だそうです」
「魔女の森……。かつて強力な魔法使いが住んでいたと言われる場所ですね。しかし、鏡の幻影とは奇妙な」
シオンが密偵としての冷静な顔つきになる。
「ほっほっほ、魔女の遺した魔法陣や魔道具が暴走しておるのかもしれんのう。鏡の幻影となると、精神に干渉する厄介な代物かもしれん」
ゴットが険しい表情で髭を撫でる。
「鏡の幻影……。もしかして、人の記憶や心の隙を突くような魔法かしら。放っておけば、被害が拡大するかもしれないわね」
ルウが杖を握りしめる。
「街の人々や旅人が困っているなら、アタシたちの出番だね! よっしゃ、その幻影ごと、アタシの斧で粉砕してやるよ!」
アイラが戦斧を背負い直して立ち上がる。
「私も行きます。邪悪な魔法が人々を惑わしているのなら、私の聖剣で浄化してみせます!」
フレアが聖剣の柄に手を添える。
「精神干渉の魔法なら、私の歌で少しは対抗できるかもしれません」
カノンが竪琴を手に微笑んだ。
「俺も行こう。どんな幻影であれ、我が剣で切り裂いてみせる」
シルヴィアが大剣を背負って頷いた。
「よし、決まりだ。今回の探索パーティーは俺、アイラ、ルウ、フレア、シオン、シルヴィア、そしてカノンも頼めるか? 魔物は、幻影を無効化できるマシロ、索敵に長けたフェルとピコ、そして空からの偵察にシルキーとソラを連れて行く。エリス、ゴットさん、ドーラ、ノエル、セシル、アクア、ライラ、ウィンディ、ミーアたちは、拠点の防衛と留守番をお願いできるか?」
「はいっ! ティタンと一緒に、拠点の外周防衛システムを完璧にしておきます!」
エリスが元気よく頷き、ノエルも「精神干渉を防ぐ特製の魔除けの香を持たせます!」と眼鏡を光らせた。
こうして、鏡の幻影の謎を解明するため、俺たちはアシュタルの北方に位置する『魔女の森』へと出発した。
* * *
アシュタルの街から馬車とフェルの背、そしてシルキーの飛翔を駆使して数時間。
視界が開けると、深い霧に包まれた『魔女の森』がその姿を現した。ノエルが作ってくれた魔除けの香を焚きながら、俺たちは森の中へと足を踏み入れる。
「うわぁ……霧が濃くて、なんだか薄気味悪いわ。それに、空気がどんよりしてる」
ルウが周囲を警戒しながら杖を構える。
「マシロ、浄化の冷気をお願い。シオン、空からの索敵はシルキーとソラに任せて、地上の警戒を。フェルとピコは、異常な魔力の発生源を探ってくれ」
「キュゥ♪」
「了解です。クロ、影の探知を」
「にゃっ!」
「ウォンッ!」
「キュイッ!」
マシロの浄化の冷気と魔除けの香の力で、なんとか霧の奥へと進んでいく。フェルとピコの案内で、俺たちは森の奥深くへと慎重に歩を進めた。
やがて、森の中心部と思われる開けた場所に出た。
そこには、信じられない光景が広がっていた。
「あれは……鏡……?」
フレアが驚きの声を上げる。
空き地の中央に、数え切れないほどの姿見のような大きな鏡が、円を描くように配置されていた。その鏡はすべて、鈍く妖しい光を放っている。
そして、その鏡の円陣の中心で、一人の少女が膝を抱えて蹲っていた。
少女は長い銀糸のような髪を持ち、まるでガラス細工のように儚げな容姿をしていた。彼女の周囲には、無数の小さな鏡の破片が浮遊している。
「あの少女が……幻影の原因?」
アイラが戦斧を構える。
俺が少女に近づこうとしたその時、周囲の鏡が一斉に眩い光を放ち、鏡面が波打ち始めた。
「気をつけろ! 何かが来るぞ!」
俺の叫びと同時に、それぞれの鏡の中から、俺たち自身と同じ姿をした影——『ミラー・ドッペルゲンガー』が這い出してきた。
「なっ……私と同じ姿!?」
ルウが驚愕の声を上げる。
現れたドッペルゲンガーたちは、それぞれオリジナルの仲間たちと同じ武器を構え、襲いかかってきた。
「フン、自分の影と戦うことになるとはな。だが、本物には及ばない!」
シルヴィアが大剣を振りかぶり、自身の影と激しく打ち合う。
「聖なる光よ、まやかしを打ち払え!『ホーリー・スラッシュ』!」
フレアの聖剣が放つ光が、影の聖剣と激突し、火花を散らす。
「アタシの力、甘く見るんじゃないよ!『烈風大車輪』!」
アイラの戦斧が、影の戦斧と激しく交差する。
俺たちと全く同じ能力を持つ影たちとの戦闘は、予想以上に困難を極めた。
その間にも、円陣の中心にいる少女は、苦しそうに頭を抱え、泣き声を漏らしていた。
(……助けて……鏡が……私の心が……砕けちゃう……)
俺の脳内に、少女の悲痛な声が『絆紋』を通じて流れ込んできた。
「……あの少女自身が、この鏡の魔法に囚われているのか!」
俺は状況を即座に把握する。
「カノン、少女の心を落ち着かせる歌を! フェル、ピコ! 影どもを引きつけろ!」
「はいっ! 『癒しのセレナーデ』!」
カノンの竪琴から放たれる優しい音色が、森の空気を震わせ、少女の心を包み込むように響き渡る。
「ウォォォンッ!!」
「キュイッ!!」
銀色の閃光と、純白の弾丸が、鏡の円陣の中を駆け抜けた。
フェルは目にも留まらぬ速度で影たちの側面に回り込み、その全身から青白い雷光を立ち昇らせた。
『白銀の迅雷』!
雷を纏ったフェルの強烈な突進が、影たちの陣形を乱し、動きを止める。
そして、フェルが作った隙を見逃さず、ピコが驚異的な跳躍力で空高く舞い上がった。ピコの体から、俺の『野戦調薬』の魔力を受け継いだ浄化と破壊の光が溢れ出す。
『浄化の月面蹴り(ホーリー・ムーン・キック)』!
空中で体を捻り、光を纏った強烈な両足蹴りが、一つの鏡にクリーンヒットする。
パリンッ!という鋭い音と共に鏡が砕け散り、そこから這い出していた影も霧散した。
「なるほど、鏡本体を破壊すればいいのね!」
ルウが杖を構える。
「そういうことなら、任せな! オラァッ!!」
アイラが戦斧に闘気を纏わせ、跳躍して鏡を次々と粉砕していく。
「聖なる光よ、邪悪を退けよ!『ホーリー・スラッシュ』!」
フレアの聖剣が眩い光を放ち、鏡を浄化の光で両断する。
「絶技・白銀の飛燕!!」
シルヴィアの放った神速の斬撃が、残る鏡を次々と木っ端微塵に切り刻む。
「私の魔法で燃え上がりなさい!『フレイム・バースト』!」
ルウの放った灼熱の炎が、鏡の破片を焼き尽くす。
「シオン、とどめだ!」
「了解です! クロ、影縛り!」
「にゃぁっ!」
シオンが跳躍し、残った最後の鏡を短剣で突き破る。クロが『シャドウ・バインド』で影の動きを完全に封じ込めた。
「パリーンッ!!」
最後の鏡が砕け散ると共に、すべてのドッペルゲンガーが消滅し、森を包んでいた不気味な霧も晴れていった。
* * *
「ふぅ……手強かったけど、これで幻影の元凶は断ち切れたな」
俺が武器を収めると、仲間たちも安堵の息を吐いた。
俺はすぐさま、地面に倒れ込んでいる少女の元へと駆け寄った。
「大丈夫か? 怪我はないか?」
「あ、あなたたちは……? どうして、この呪われた森に……」
少女は、信じられないものを見るような目で俺たちを見上げていた。
「俺はレイン。絆紋亭のマスターだ。森の異変を聞いて助けに来たんだ」
俺が手を差し伸べると、少女は震える手でそれを取り、立ち上がった。
「ありがとうございます……。私は鏡の精霊、ミラーと申します。昔、この森に住んでいた魔女に作られたのですが、魔女がいなくなった後、私の魔力が暴走してしまい……自分の意思とは裏腹に、迷い込んだ人々の心から幻影を作り出してしまうようになってしまったのです」
ミラーは悲しそうに俯いた。
「……魔力の暴走か。俺に任せてくれないか」
俺は両手を広げ、右手の甲にある翠色の痣――『絆紋』の光を限界まで解放した。
翠色の温かな波紋が、森の空気を押し退けるように広がり、ミラーの体を優しく包み込む。
俺はノエルの作ってくれた特製の浄化ポーションを取り出し、絆紋の光と共にミラーの魔力核に直接注ぎ込んだ。
すると、彼女から漏れ出していた歪な魔力がみるみるうちに安定し、ミラーの体は透き通るような美しい輝きを取り戻した。
「すごい……暴走していた魔力が完全に安定した……。それに、この温かい光……」
ミラーが感嘆の声を漏らす。
「ミラー、君はずっと一人で暴走する力に苦しんでいたんだな。よく耐えたよ」
俺が微笑みかけると、ミラーの目から大粒の涙が零れ落ちた。
「私……ずっと一人で、誰も傷つけたくなくて、この森の奥に引きこもっていました。でも、こんなにも優しくて、温かい光に触れたのは初めてです……」
「帰る場所がないなら、うちのクランに来ないか? うちの庭には、どんな魔力でも優しく調和させる精霊樹がある。君の鏡の力があれば、ルリの天蓋や拠点の防衛がもっと強固になるはずだ」
俺が手を差し出すと、アイラやルウ、フレアたちも温かく頷き、フェルやピコが優しく鳴き声を上げて歓迎の意を示した。
ミラーは、涙を拭い、俺の差し出した手と、温かい仲間たちの姿を見て、満面の笑みを浮かべた。
「……はいっ! 私、レイン様と皆様のために、この鏡の力を正しく使います!」
こうして、鏡の精霊ミラーが、絆紋亭の新しい家族として加わることになった。
* * *
その日の夕暮れ。
新しい家族であるミラーを連れて、俺たちはアシュタルの拠点へと帰還した。
拠点では、エリス、ゴット、ドーラ、ノエル、セシル、アクア、ライラ、ウィンディ、ミーアたち、そして幼い魔物たちが温かく出迎えてくれ、新しい仲間の加入と、森の異変解決に拠点中が歓喜の声を上げた。ミラーは精霊樹の美しさと、多様な仲間たちが共存する光景を見て、「こんなに素晴らしい場所があるなんて!」と感動の涙を流していた。
そして夜。
庭の虹色の天蓋の下、精霊樹の優しい光に照らされながら、ミラーの歓迎会が開かれた。
セシルは、今日も腕を振るい、極上の料理を作り上げた。魔力農園の野菜をたっぷり使った色鮮やかなパエリア、最高品質の肉の特大ロースト、そしてマシロの氷室で冷やした、黄金の霊蜜をたっぷり使った絶品のフルーツゼリー。
「ミラー! うちのクランへようこそ! これからは、アタシたちが背中を預け合う最高の仲間だ!」
アイラが木製ジョッキを高々と掲げる。
「は、はいっ! ありがとうございます! こんなに温かくて美味しい食卓、夢のようです……!」
ミラーは、初めて味わう極上の料理に目を輝かせながら、夢中で頬張っていた。
「……信じられないほど、穏やかで美しい時間だ。毎日が新しい発見と喜びに満ちているな」
シルヴィアが、ワイングラスを傾けながら、心からの笑顔を見せた。
「えへへ、私もこのクランに来てから、毎日が幸せでいっぱいですニャ!」
ミーアが猫耳をピンと立てて、幸せそうにデザートを堪能している。
テラスでは、フェルやピコ、ソラ、ライ、ルミナたち魔物組が、新しい仲間であるミラーを囲んで歓迎し、ラピスやベル、ファム、ネム、ディーネ、フィア、リーファといった幼い仲間たちが、ミラーの作り出す小さな光の幻影に大はしゃぎしていた。メルティは空中から黄金の鱗粉を振りまいて宴を彩り、シエルは精霊樹の枝から穏やかにその様子を見守り、シルキーは気持ちよさそうに空中を漂っている。シーナとミロが精霊の池から美しいハーモニーを響かせ、ライラとカノンの二つの竪琴が、かつてないほど美しく、そして壮大な音楽を奏でていた。
賑やかで、優しくて、誰もが誰かを必要とし、誰もが誰かに感謝している場所。
王都で「足手まとい」と呼ばれ、すべてを失った俺の周りには、今、これほどまでに頼もしく、温かい家族たちがいる。
急ぐ必要なんてない。俺たちの絆は、どんな幻影にも惑わされず、この辺境の地で永遠に温かく輝き続けていくのだから。
星降る夜の下、笑い声と美しい音楽が、いつまでも絶えることなく響き渡っていた。
【現在のステータス】
名前:レイン
職業:冒険者(クラン『絆紋亭』マスター)
称号:追放されし者 / 魔物に愛されし者 / 辺境の癒し手 / 森の守護者 / 大地の開拓者 / 導きの光 / 豊穣の主 / 呪い打ち砕く者 / 悪夢を晴らす者 / 浄水の守り手 / 炎を鎮める者 / 迷いを導く者 / 風を浄化する者 / 幻影を打ち払う者
Lv:56(※ミラー・ドッペルゲンガーの群れ討伐と精霊の浄化によりアップ)
HP:580 / 580
MP:380 / 380
【スキル】
・生活魔法 Lv.10(極まる)
・剣術 Lv.4
・解体 Lv.8
・野営技術 Lv.10(極まる)
・野戦調薬 Lv.10(極まる)
・植物知識 Lv.10(極まる)
・建築・修繕 Lv.10(極まる)
・鑑定 Lv.9
・気配察知 Lv.10(極まる)
・魔導知識 Lv.10(極まる)
・料理 Lv.10(極まる)
【固有スキル】
・絆紋:対象の魔物(および心を持つ存在)と心を通わせ、警戒心を解き放つ。集った魔物たちと精霊樹の魔力を調和させ、巨大な隠蔽と浄化の絶対結界を形成している。
【クラン『絆紋亭』メンバー】
・空色小竜:絆レベル5
・銀色のウルフ(フェル):絆レベル5
・ポーションラビット(ピコ):絆レベル5
・クリスタル・ゲッコー(ルチル):絆レベル5
・スピリット・フォーン(ミエル):絆レベル5
・クリア・スライム(スイ):絆レベル5
・宝石蜘蛛:絆レベル5
・雷鳴の怪鳥:絆レベル5
・シャドウ・キャット(クロ):絆レベル5
・水妖の獺:絆レベル5
・氷雪の幻獣:絆レベル5
・黄金の天馬:絆レベル5
・花纏いの黒豹:絆レベル5
・月影の白蛇:絆レベル5
・人魚の少女:絆レベル5
・瑠璃色の幼竜:絆レベル5
・紅蓮の精霊狐:絆レベル5
・翡翠の風呼び(シルフィ):絆レベル5
・大地の巨熊の幼獣:絆レベル5
・心優しきゴーレム(ティタン):絆レベル5
・虹水晶の巨亀:絆レベル5
・星詠みの白梟:絆レベル5
・幻影の小狐:絆レベル5
・黄金の女王蜂:絆レベル5
・黄昏のグリフォン(シエル):絆レベル5
・銀色の空飛ぶ絨毯:絆レベル5
・夢紡ぎの獏:絆レベル5
・癒しの水妖精:絆レベル5
・焔の不死鳥の雛:絆レベル5
・古の樹精:絆レベル5(※絆深化)
・巨木の守護獣:絆レベル5(※絆深化)
・鏡の精霊:新規合流 / 絆レベル3
・ウールシープの群れおよび森の小動物たち
・アイラ(女戦士・正式なクラン協力者)
・ルウ(魔導士・正式なクラン協力者)
・ゴット(薬師・正式なクラン協力者)
・エリス(見習い魔導士・クランメンバー)
・ドーラ(ドワーフの若き職人・クラン専属建築士兼鍛冶師)
・リナ(服飾職人・クラン専属仕立屋)
・シオン(元王都特級密偵・クラン専属防衛担当)
・セシル(元宮廷料理人・クラン専属料理人)
・フレア(元聖騎士・クラン専属護衛担当)
・ノエル(天才錬金術師・クラン専属錬金術師)
・ライラ(流浪の精霊弓士・クラン専属狩人)
・ミーア(猫耳の行商人・クラン専属商人)
・シルヴィア(元Sランク冒険者の剣聖・クラン専属剣術指南役)
・アクア(元宮廷魔導水質管理官・クラン専属水場管理係)
・カノン(流浪の吟遊詩人・クラン専属音楽家)
・ウィンディ(風呼びの巫女の末裔・クラン専属風使い)
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作 【安全第一】死に戻り商人の異世界スローライフ~万能魔法と『リトライ』を駆使して完璧な物流網とインフラを整備し、のんびり隠居を目指します~
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