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追放された絆紋使いの穏やかな冒険譚〜辺境の街ではぐれ者たちと最強の居場所を作ります〜  作者: 盆ちゃん


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第56話 風の精霊石と、風呼びの少女

第56話 風の精霊石と、風呼びの少女

 辺境の街アシュタルの東、小高い丘に広がる非公式クラン『絆紋亭』の拠点は、今日という日もまた、世界中のどの場所よりも優しく、そして奇跡のような調和に満ちた朝を迎えていた。

 庭の中央にそびえ立つ精霊樹は、日を追うごとにその存在感を増し、今や拠点の絶対的な要として太く力強い幹を天へと伸ばしている。その豊かに茂った枝葉が朝の心地よい風に揺れるたび、チリン、チリンと微かな鈴の音のような魔力の波紋が広がり、庭全体を極上の癒やしのオーラで包み込んでいた。

「きゅるるーっ!」

「ウォンッ!」

「ピィィィッ!」

「ヒンッ♪」

「ルルゥッ♪」

「シャァンッ♪」

「きゅあぁっ♪」

「キュゥッ♪」

「ホゥッ♪」

「キュイィィッ♪」

「キュルルゥッ♪」

「パタパタッ♪」

「プゥゥッ♪」

「ピィッ♪」

 澄み切った青空を背景に、空色小竜のソラ、雷鳴の怪鳥ライ、黄金の天馬ルミナ、翡翠の風呼びシルフィ、星詠みの白梟ステラ、黄金の女王蜂メルティ、黄昏のグリフォンであるシエル、意思を持つ魔道具である銀色の空飛ぶ絨毯シルキー、焔の不死鳥の雛フィア、そして古の樹精リーファが楽しげに上空を旋回している。ルミナの放つ神聖な黄金の光、ライの纏う青白い雷光、ソラの美しい空色の鱗、シルフィが巻き起こすエメラルドグリーンのそよ風、ステラの星屑を散りばめたような銀色の羽ばたき、メルティの放つ黄金の鱗粉、シエルの夕空のような美しい翼、シルキーの滑らかな銀色の布地、フィアの放つ温かな炎の軌跡、そしてリーファの放つ淡い翠色の光が交差し、まるで空に生きた巨大な芸術作品が描かれているかのようだった。

 そんな賑やかな空の舞を地上から見上げながら、二匹の魔物が堂々たる足取りで庭を歩いていた。

 銀色のウルフである『フェル』と、純白のポーションラビットである『ピコ』だ。

 彼らは、俺が王都を追放され、この名もなき辺境の森にたどり着いたその日に、一番最初に俺の『絆紋』を受け入れ、共に歩み始めた最古参の相棒たちである。

 フェルの銀色の毛並みは月明かりのように美しく気高い光を放ち、その体躯は一回りも二回りも大きくなり、森の王者のような風格を漂わせている。ピコもまた、その小さな体には信じられないほどの敏捷性と強靭な魔力を宿し、仲間たちを癒やす要として立派に成長を遂げていた。彼らの後ろを、瑠璃色の幼竜ラピス、紅蓮の精霊狐イグニス、大地の巨熊の幼獣ベル、幻影の小狐ファム、夢紡ぎの獏ネム、癒しの水妖精ディーネ、そして巨木の守護獣ウドといった幼い魔物や精霊たちが、よちよちと、しかし元気いっぱいに追いかけていた。フェルとピコは時折立ち止まり、幼い魔物たちが転ばないように優しく鼻先で促している。その姿は、この大家族の頼れる兄と姉そのものだった。

「フェル、ピコ。今日もみんなの面倒を見てくれてありがとうな。お前たちがいてくれるから、俺は安心してこの場所を守れるんだ」

 俺ことレインは、縁側に腰掛けながら、足元にすり寄ってきた二匹の頭を順番に優しく撫でた。

「ウォンッ♪」

「キュイッ♪」

 フェルは嬉しそうに目を細めて俺の手に頬をすり寄せ、ピコは自慢の長い耳をピクピクと動かして俺の膝の上に飛び乗ってきた。

「さて、みんなのお腹が空く前に、朝飯の準備をするか。今日は魔力農園の野菜がとびきり美味しく育っているはずだからな」

 俺がそう呟くと、フェルとピコは力強く鳴き、ラピスやベルたちを連れて水路の方へと遊びに行かせてくれた。

   * * *

 一階の広々とした厨房へと降りると、そこにはすでに見習い魔導士のエリス、仕立屋のリナ、元王都特級密偵のシオン、元宮廷料理人のセシル、元聖騎士のフレア、天才錬金術師のノエル、流浪の精霊弓士ライラ、猫耳の行商人ミーア、元Sランク冒険者の剣聖シルヴィア、元宮廷魔導水質管理官のアクア、そして流浪の吟遊詩人カノンがエプロン姿で立ち、手際よく調理を進めていた。

「あ、レイン様! おはようございますっ!」

「レインさん、おはようございます。今朝も魔力農園のお野菜がキラキラしてますよ。今日はリナさんが仕立ててくれた新しいテーブルクロスで、食卓が華やかです!」

「皆さん、おはようございます! 今朝のメニューは、特製の魔力小麦と新鮮な卵で作った『チーズたっぷりオムレツ』に、アクアさんの浄水と魔力農園のトマトをふんだんに使った『濃厚ミネストローネ』、そしてメルティちゃんの『黄金の霊蜜』をかけたヨーグルトですよ!」

「私も、微力ながらトマトの湯むきをお手伝いさせていただいております!」

「ふふっ、人間の料理というのは、見ていてとても興味深いですね。甘い香りとトマトの爽やかな匂いがたまりません」

「レイン様、おはようございますニャ! 今日も朝からごちそうですニャ!」

「剣の修行の前に、この素晴らしい朝食をいただけるのは至福だな」

 厨房いっぱいに広がるのは、オムレツがバターと共に香ばしく焼き上がる匂いと、大鍋の中でトマトと野菜の旨味が極上の水に溶け出す暴力的なまでに食欲をそそる匂いだ。セシルが加わったことで、俺の『料理』スキルや『植物知識』との相乗効果が生まれ、そこに伝説のエリクサーの主原料でもある『黄金の霊蜜』、さらにはアクアが魔法で極限まで不純物を取り除いた『究極の浄水』が加わっている。

 女戦士のアイラ、少女魔導士のルウ、老薬師のゴット、ドワーフの若き職人ドーラもリビングに集まり、「いただきます」の合図と共に賑やかな朝食が始まった。

「んんっ!? なんだこれ!? このオムレツ、ふわっふわで中からチーズがとろけ出してくるぞ! ミネストローネの酸味と合わさって、無限に食えちまうよ!」

 アイラが豪快に頬張りながら、信じられないというように目を輝かせる。

「本当によ……セシルが来てから毎朝驚かされてるけど、今日のこれも別格ね。トマトの甘みが尋常じゃないわ。お肌の調子もまた一瞬で最高になっちゃった」

 ルウもうっとりとした表情を浮かべて、スープを口に運ぶ。

「このチーズのコクとトマトの酸味のバランス……王都の宮廷料理ですら、これには足元にも及びません。涙が出るほど美味しいです……!」

 フレアは、美しい顔をほころばせながら、信じられないものを見るような目でオムレツを噛み締めていた。

「……美味しい。ただただ、美味しい……。呪いの痛みもなく、信頼できる仲間たちと囲む温かい食卓が、こんなにも心を震わせるものだったなんて……」

 シルヴィアは、自身の切り分けた野菜が入ったスープを食べながら、感動の大粒の涙をポロポロとこぼしていた。

「ほっほっほ、伝説の霊蜜を使ったヨーグルトを朝から食うなど、王族が見たら卒倒するじゃろうな。寿命がさらに十年は延びた気分じゃわい」

 ゴットも満足そうに髭を撫でて笑う。

 テラスでは、魔物たちもそれぞれに用意された特製の朝食を夢中で食べている。ラピスやイグニス、ベル、ファム、ネム、ディーネ、フィア、そしてリーファとウドといった幼い仲間たちや精霊たちには、セシルが特別に消化の良い特製ミルク煮込みに霊蜜を垂らしてくれており、顔を突っ込んで美味しそうに頬張っていた。ソラやライ、ルミナたちも、上質な魔物肉や果実を存分に堪能している。ダイヤはたっぷりの魔力草を幸せそうに咀嚼し、ステラとシエルは専用に用意された極上の肉片を優雅に啄んでいた。シルキーは、俺たちが食事を楽しむ様子を、興味深そうに空中からパタパタと見守っている。

   * * *

 和やかな朝食を終え、食後のハーブティーを楽しんでいた時のことだ。

 買い出しから戻ったミーアが、少し困ったような表情でリビングに入ってきた。

「レイン様、ちょっとお耳に入れたい噂があるんですニャ……」

「どうしたんだ、ミーア。またどこかで魔物が暴れているのか?」

 俺が尋ねると、ミーアは首を横に振った。

「いえ、今回はアシュタルの西にある『風鳴りの谷』の辺りで、奇妙な現象が起きているらしいのですニャ。常に強い風が吹き荒れる場所なのですが、最近その風がピタリと止んでしまい、代わりに谷底から不気味な黒い竜巻が発生していると……」

「黒い竜巻……。ただの自然現象とは思えませんね」

 シオンが密偵としての冷静な顔つきになる。

「風が止んだとなると、風の精霊に何か異変が起きたのかもしれんのう。あの谷には、古くから『風の精霊石』と呼ばれる強力な魔力媒体が眠っているという伝承がある」

 ゴットが険しい表情で髭を撫でる。

「精霊石が汚染されたり、悪用されたりしているなら、放っておけないわね。風が滞れば、森の空気も淀んでしまうわ」

 ルウが杖を握りしめる。

「街の人々や自然が困っているなら、アタシたちの出番だね! よっしゃ、その黒い竜巻ごと、アタシの斧で吹き飛ばしてやるよ!」

 アイラが戦斧を背負い直して立ち上がる。

「私も行きます。邪悪な力が精霊を苦しめているのなら、私の聖剣で浄化してみせます!」

 フレアが聖剣の柄に手を添える。

「風の異変なら、私の風魔法が役に立つかもしれません」

 シルフィが、エメラルドグリーンのそよ風を巻き起こしながらふわりと舞い降りた。

「俺も行こう。未知の現象であれ、我が剣で切り開いてみせる」

 シルヴィアが大剣を背負って頷いた。

「よし、決まりだ。今回の探索パーティーは俺、アイラ、ルウ、フレア、シオン、シルヴィア、そしてミーアも案内役として頼めるか? 魔物は、風に干渉できるシルフィとソラ、空からの索敵にシルキーとライ、そして地上の警戒にフェルとピコを連れて行く。エリス、ゴットさん、ドーラ、ノエル、セシル、アクア、カノン、ライラたちは、拠点の防衛と留守番をお願いできるか?」

「はいっ! ティタンと一緒に、拠点の外周防衛システムを完璧にしておきます!」

 エリスが元気よく頷き、ノエルも「風の瘴気に備えて、特製の浄化ポーションを持たせます!」と眼鏡を光らせた。

 こうして、奇妙な黒い竜巻の謎を解明するため、俺たちはアシュタルの西に位置する『風鳴りの谷』へと出発した。

   * * *

 アシュタルの街から馬車とフェルの背、そしてシルキーの飛翔を駆使して数時間。

 視界が開けると、深く切り立った岩肌が続く『風鳴りの谷』がその威容を現した。しかし、ミーアの言う通り、普段なら耳を劈くほどの風が吹き荒れているはずの谷は、不気味なほどに静まり返り、空気はどんよりと重く淀んでいた。

「うわぁ……本当に風が止まってる。それに、空気がなんだか息苦しいわ」

 ルウがノエルの作った浄化ポーションを口元に当てながら顔をしかめる。

「シオン、空からの索敵はシルキーとライに任せて、地上の警戒を。フェルとピコは、異常な魔力の発生源を探ってくれ。シルフィ、ソラ、周囲の淀んだ空気を吹き飛ばしてくれ」

「了解です。クロ、影の探知を」

「にゃっ!」

「ウォンッ!」

「キュイッ!」

「シャァンッ♪」

「きゅるるーっ!」

 シルフィとソラが協力して清らかな風を巻き起こし、俺たちの周囲の淀んだ空気を浄化していく。フェルとピコの案内で、俺たちは谷の奥深くへと慎重に進んでいった。

 やがて、谷の最深部にある広大なすり鉢状の空間へと辿り着いた。

 そこで俺たちが目にしたのは、信じられない光景だった。

「キャァァァッ!!」

 すり鉢の中央、微かに光を放つ巨大な結晶——『風の精霊石』の前で、一人の少女が黒い竜巻に飲み込まれそうになっていた。

 少女は淡い緑色の髪を風に靡かせ、羽衣のような軽やかな衣装を身に纏っている。彼女の手には、精霊石と共鳴するような小さな杖が握られていた。

 そして、彼女を取り囲み、黒い竜巻を発生させているのは、全身が黒い風で構成された鳥の魔物——『カース・ストーム(呪われた暴風鳥)』の群れだった。

「あれは……風の精霊と交信する『風呼びの巫女』の末裔ではありませんか!? 彼女の力で、なんとか暴風を抑え込んでいるようです!」

 シオンが驚きの声を上げた。

「カース・ストームの群れ……。おそらく、風の精霊石の魔力が淀み、邪悪な魔物を生み出してしまったんだ。巫女はそれを浄化しようとして、逆に襲われているんだな」

 俺が状況を即座に把握する。

「ギャァァァッ!!」

 巨大なカース・ストームの一体が、巫女の結界を力任せに引き裂き、鋭い風の刃を彼女に向かって放った。

「きゃぁぁっ!?」

 結界が砕け散り、巫女が地面に倒れ込む。

「させない!!」

 俺が叫ぶより早く、俺の最古参の相棒たちが動いていた。

「ウォォォンッ!!」

「キュイッ!!」

 銀色の閃光と、純白の弾丸が、淀んだ空気を引き裂いて駆け抜けた。

 フェルは目にも留まらぬ速度でカース・ストームの側面に回り込み、その全身から青白い雷光を立ち昇らせた。

『白銀の迅雷シルバー・ストライク』!

 雷を纏ったフェルの強烈な突進が、魔物の黒い風の体を粉砕し、その巨体を大きく吹き飛ばす。

 そして、フェルが作った隙を見逃さず、ピコが驚異的な跳躍力で空高く舞い上がった。ピコの体から、俺の『野戦調薬』の魔力を受け継いだ浄化と破壊の光が溢れ出す。

『浄化の月面蹴り(ホーリー・ムーン・キック)』!

 空中で体を捻り、光を纏った強烈な両足蹴りが、別の魔物の頭部にクリーンヒットする。ドゴォォォンッ!という轟音と共に、呪われた風が浄化の光に包まれて消滅していく。

「な、なんだ……!? 狼と、兎……?」

 風呼びの巫女が、驚愕に目を見開いて尻餅をつく。

「レインの相棒たちにばかり、いい格好はさせないよ! オラァッ!!」

 アイラが戦斧に闘気を纏わせ、跳躍してカース・ストームの群れをなぎ払う。

「聖なる光よ、邪悪を退けよ!『ホーリー・スラッシュ』!」

 フレアの聖剣が眩い光を放ち、黒い風を浄化の光で両断する。

「風よ、邪悪を吹き飛ばしなさい!『トルネード・バースト』!」

 ルウの放った強力な竜巻が、魔物たちの風を相殺し、動きを鈍らせる。

「絶技・白銀の飛燕!!」

 シルヴィアの放った神速の斬撃が、鈍った魔物たちを次々と一刀両断にしていく。

「シオン、シルフィ、ソラ! とどめだ!」

「了解です! クロ、影縛り!」

「にゃぁっ!」

 シオンが跳躍し、魔物たちの死角から短剣を突き立てる。クロが『シャドウ・バインド』で動きを完全に封じ込めた。

「シャァァンッ!!」

「きゅるるーっ!!」

 シルフィとソラが放った極大の浄化の風が、残った魔物たちの魔力核を正確に貫いた。

「ギョォォォォォッ……!!」

 断末魔の悲鳴を上げ、カース・ストームの群れは完全に沈黙し、ただの風となって消えていった。

   * * *

「ふぅ……手強かったけど、これで巫女も無事だな」

 俺が武器を収めると、仲間たちも安堵の息を吐いた。

 俺はすぐさま、地面に倒れ込んでいる風呼びの巫女の元へと駆け寄った。

「大丈夫か? 怪我はないか?」

「あ、あなたたちは……? どうして、この危険な谷に、これほどの強者たちが……」

 巫女は、信じられないものを見るような目で俺たちを見上げていた。

「俺はレイン。絆紋亭のマスターだ。街で異変の噂を聞いて助けに来たんだ」

 俺が手を差し伸べると、巫女は震える手でそれを取り、立ち上がった。

「ありがとうございます……。私は風呼びの巫女の末裔、ウィンディと申します。風の精霊石が瘴気に汚染され、魔物を生み出しているのを感じて、浄化しに来たのですが……私の力では及びませんでした」

 ウィンディは悲しそうに精霊石を見つめた。精霊石は未だにどす黒い瘴気を放ち、周囲の空気を汚染し続けている。

「……精霊石の汚染か。俺に任せてくれないか」

 俺は両手を広げ、右手の甲にある翠色の痣――『絆紋』の光を限界まで解放した。

 翠色の温かな波紋が、淀んだ空気を押し退けるように広がり、ウィンディと精霊石を優しく包み込む。

 俺はノエルの作ってくれた特製の浄化ポーションを取り出し、絆紋の光と共に精霊石に直接注ぎ込んだ。

 すると、どす黒い瘴気がみるみるうちに消え去り、精霊石は本来の透き通るような美しいエメラルドグリーンの輝きを取り戻した。同時に、谷に滞っていた風が勢いよく吹き抜け、清々しい空気が満ち溢れた。

「すごい……一瞬で、精霊石の瘴気を完全に浄化してしまうなんて……。それに、この温かい光……」

 ウィンディが感嘆の声を漏らす。

「ウィンディ、君は自分の命を懸けて、この谷と風を守ろうとしたんだな。立派だったよ」

 俺が微笑みかけると、ウィンディの目から大粒の涙が零れ落ちた。

「私……一族が途絶え、一人ぼっちで風の声を聞き続けてきました。でも、こんなにも優しくて、温かい風に触れたのは初めてです……」

「帰る場所がないなら、うちのクランに来ないか? うちの庭には、どんな風でも優しく受け入れる精霊樹がある。君の風を呼ぶ力があれば、シルフィたちと一緒に、農園の野菜たちももっと元気に育つはずだ」

 俺が手を差し出すと、アイラやルウ、フレアたちも温かく頷き、フェルやピコが優しく鳴き声を上げて歓迎の意を示した。

 ウィンディは、涙を拭い、俺の差し出した手と、温かい仲間たちの姿を見て、満面の笑みを浮かべた。

「……はいっ! 私、レイン様と皆様のために、世界で一番心地よい風を呼び続けます!」

 こうして、風呼びの巫女の末裔ウィンディが、絆紋亭の新しい家族として加わることになった。

   * * *

 その日の夕暮れ。

 新しい家族であるウィンディを連れて、俺たちはアシュタルの拠点へと帰還した。

 拠点では、エリス、ゴット、ドーラ、ノエル、セシル、アクア、カノン、ライラたち、そして幼い魔物たちが温かく出迎えてくれ、新しい仲間の加入と、風の谷の異変解決に拠点中が歓喜の声を上げた。ウィンディは精霊樹の美しさと、シルフィたちの清らかな風を感じて、「こんなに素晴らしい風が吹く場所があるなんて!」と感動の涙を流していた。

 そして夜。

 庭の虹色の天蓋の下、精霊樹の優しい光に照らされながら、ウィンディの歓迎会が開かれた。

 セシルは、今日も腕を振るい、極上の料理を作り上げた。魔力農園の野菜をたっぷり使った色鮮やかなサラダ仕立てのカルパッチョ、最高品質の肉の香草焼き、そしてマシロの氷室で冷やした、黄金の霊蜜をたっぷり使った絶品のフルーツジェラート。

「ウィンディ! うちのクランへようこそ! これからは、アタシたちが背中を預け合う最高の仲間だ!」

 アイラが木製ジョッキを高々と掲げる。

「は、はいっ! ありがとうございます! こんなに温かくて美味しい食卓、夢のようです……!」

 ウィンディは、初めて味わう極上の料理に目を輝かせながら、夢中で頬張っていた。シルフィと共に、心地よいそよ風を宴の席に送ってくれている。

「……信じられないほど、穏やかで美しい時間だ。毎日が新しい発見と喜びに満ちているな」

 シルヴィアが、ワイングラスを傾けながら、心からの笑顔を見せた。

「えへへ、私もこのクランに来てから、毎日が幸せでいっぱいですニャ!」

 ミーアが猫耳をピンと立てて、幸せそうにデザートを堪能している。

 テラスでは、フェルやピコ、ソラ、ライ、ルミナたち魔物組が、新しい仲間であるウィンディを囲んで歓迎し、ラピスやベル、ファム、ネム、ディーネ、フィア、リーファといった幼い仲間たちが、ウィンディの巻き起こす風のイタズラに大はしゃぎしていた。メルティは空中から黄金の鱗粉を振りまいて宴を彩り、シエルは精霊樹の枝から穏やかにその様子を見守り、シルキーは気持ちよさそうに空中を漂っている。シーナとミロが精霊の池から美しいハーモニーを響かせ、ライラとカノンの二つの竪琴が、かつてないほど美しく、そして壮大な音楽を奏でていた。

 賑やかで、優しくて、誰もが誰かを必要とし、誰もが誰かに感謝している場所。

 王都で「足手まとい」と呼ばれ、すべてを失った俺の周りには、今、これほどまでに頼もしく、温かい家族たちがいる。

 急ぐ必要なんてない。俺たちの絆は、どんな瘴気の風にも負けず、この辺境の地で永遠に温かく吹き続けていくのだから。

 星降る夜の下、笑い声と美しい音楽が、いつまでも絶えることなく響き渡っていた。

【現在のステータス】

名前:レイン

職業:冒険者(クラン『絆紋亭』マスター)

称号:追放されし者 / 魔物に愛されし者 / 辺境の癒し手 / 森の守護者 / 大地の開拓者 / 導きの光 / 豊穣の主 / 呪い打ち砕く者 / 悪夢を晴らす者 / 浄水の守り手 / 炎を鎮める者 / 迷いを導く者 / 風を浄化する者

Lv:55(※カース・ストームの群れ討伐と精霊石の浄化によりアップ)

HP:570 / 570

MP:370 / 370

【スキル】

・生活魔法 Lv.10(極まる)

・剣術 Lv.4

・解体 Lv.8

・野営技術 Lv.10(極まる)

・野戦調薬 Lv.10(極まる)

・植物知識 Lv.10(極まる)

・建築・修繕 Lv.10(極まる)

・鑑定 Lv.9

・気配察知 Lv.10(極まる)

・魔導知識 Lv.10(極まる)

・料理 Lv.10(極まる)

【固有スキル】

絆紋きずなもん:対象の魔物(および心を持つ存在)と心を通わせ、警戒心を解き放つ。集った魔物たちと精霊樹の魔力を調和させ、巨大な隠蔽と浄化の絶対結界を形成している。

【クラン『絆紋亭』メンバー】

空色小竜ソラ:絆レベル5

・銀色のウルフ(フェル):絆レベル5

・ポーションラビット(ピコ):絆レベル5

・クリスタル・ゲッコー(ルチル):絆レベル5

・スピリット・フォーン(ミエル):絆レベル5

・クリア・スライム(スイ):絆レベル5

宝石蜘蛛ルリ:絆レベル5

・雷鳴の怪鳥ライ:絆レベル5

・シャドウ・キャット(クロ):絆レベル5

・水妖のミロ:絆レベル5

・氷雪の幻獣マシロ:絆レベル5

・黄金の天馬ルミナ:絆レベル5

・花纏いの黒豹フロリア:絆レベル5

・月影の白蛇ルナ:絆レベル5

・人魚の少女シーナ:絆レベル5

・瑠璃色の幼竜ラピス:絆レベル5

・紅蓮の精霊狐イグニス:絆レベル5

・翡翠の風呼び(シルフィ):絆レベル5

・大地の巨熊の幼獣ベル:絆レベル5

・心優しきゴーレム(ティタン):絆レベル5

・虹水晶の巨亀ダイヤ:絆レベル5

・星詠みの白梟ステラ:絆レベル5

・幻影の小狐ファム:絆レベル5

・黄金の女王蜂メルティ:絆レベル5

・黄昏のグリフォン(シエル):絆レベル5

・銀色の空飛ぶ絨毯シルキー:絆レベル5

・夢紡ぎのネム:絆レベル5

・癒しの水妖精ディーネ:絆レベル5

・焔の不死鳥のフィア:絆レベル5(※絆深化)

・古の樹精リーファ:絆レベル4(※絆深化)

・巨木の守護獣ウド:絆レベル4(※絆深化)

・ウールシープの群れおよび森の小動物たち

・アイラ(女戦士・正式なクラン協力者)

・ルウ(魔導士・正式なクラン協力者)

・ゴット(薬師・正式なクラン協力者)

・エリス(見習い魔導士・クランメンバー)

・ドーラ(ドワーフの若き職人・クラン専属建築士兼鍛冶師)

・リナ(服飾職人・クラン専属仕立屋)

・シオン(元王都特級密偵・クラン専属防衛担当)

・セシル(元宮廷料理人・クラン専属料理人)

・フレア(元聖騎士・クラン専属護衛担当)

・ノエル(天才錬金術師・クラン専属錬金術師)

・ライラ(流浪の精霊弓士・クラン専属狩人)

・ミーア(猫耳の行商人・クラン専属商人)

・シルヴィア(元Sランク冒険者の剣聖・クラン専属剣術指南役)

・アクア(元宮廷魔導水質管理官・クラン専属水場管理係)

・カノン(流浪の吟遊詩人・クラン専属音楽家)

・ウィンディ(風呼びの巫女の末裔・クラン専属風使いとして新規加入)

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作 【安全第一】死に戻り商人の異世界スローライフ~万能魔法と『リトライ』を駆使して完璧な物流網とインフラを整備し、のんびり隠居を目指します~

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