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追放された絆紋使いの穏やかな冒険譚〜辺境の街ではぐれ者たちと最強の居場所を作ります〜  作者: 盆ちゃん


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第37話 瑠璃色の鼓動と、紅蓮の精霊狐

第37話 瑠璃色の鼓動と、紅蓮の精霊狐

 辺境の街アシュタルの東、小高い丘に広がる非公式クラン『絆紋亭』の拠点は、今日という日もまた、世界中のどの場所よりも優しく、そして奇跡のような調和に満ちた朝を迎えていた。

 庭の中央にそびえ立つ精霊樹は、日を追うごとにその存在感を増し、今や拠点の要として太く力強い幹を天へと伸ばしている。その枝葉が朝の心地よい風に揺れるたび、チリン、チリンと微かな鈴の音のような魔力の波紋が広がり、庭全体を極上の癒やしのオーラで包み込んでいる。

 宝石蜘蛛のルリが編み上げた虹色の天蓋を透過して降り注ぐ朝日は、精霊樹の放つ淡い翠色の光と見事に混ざり合い、視界に入るものすべてをきらきらと輝かせていた。魔力農園で育つ野菜たちは、その恩恵を受けて、朝ごとに一回りも二回りも大きく、鮮やかに色づき、はち切れんばかりの生命力を誇示している。

「きゅるるーっ!」

「ウォンッ!」

「ピィィィッ!」

「ヒンッ♪」

「ルルゥッ♪」

「シャァンッ♪」

 澄み切った青空を背景に、空色小竜のソラ、雷鳴の怪鳥ライ、黄金の天馬ルミナが楽しげに上空を旋回している。ルミナの放つ神聖な黄金の光、ライの纏う青白い雷光、そしてソラの美しい空色の鱗が交差し、まるで空に生きた巨大な芸術作品が描かれているかのようだった。

 その三つの影を追いかけるように、地上では銀色のウルフであるフェルが、花纏いの黒豹フロリアと並んで軽やかに駆け回っていた。フェルの背中には、純白のポーションラビットであるピコがちょこんと乗り、風を切る感覚を楽しそうに味わっている。

 縁側の特等席では、クリスタル・ゲッコーのルチルが鉱石の鱗を虹色に輝かせて日向ぼっこをし、精霊獣のミエルは優雅な足取りで精霊樹の周りを散歩している。クリア・スライムのスイと水妖の獺ミロは、庭に引かれた清らかな水路の中でパチャパチャと水を掛け合って遊び、先日仲間になったばかりの人魚の少女シーナが、新設された『精霊の池』から嬉しそうにその様子を眺めていた。

 氷雪の幻獣マシロは、冷気を放ちながらミエルの足元で丸くなり、影猫のクロはシオンの肩の上からその平和な光景を眺め、月影の白蛇ルナは精霊樹の太い枝にその美しい銀白の体を巻きつけて、穏やかに目を細めていた。

「おはよう、みんな。今日も最高の天気だな」

 俺ことレインは、フェルとピコ、そしてマシロを順番に優しく撫でながら、自然と口元を緩めた。

 王都の勇者パーティーにいた頃は、毎朝が息の詰まるようなプレッシャーと冷徹な命令の連続だった。自分がどれだけ尽くしても、誰からも感謝されず「無能」と切り捨てられ、すべての居場所を奪われた。

 だが、今の俺には、こんなにも温かく、かけがえのない家族たちがいる。誰もが互いを尊重し、足りない部分を補い合い、笑顔を交わす。この『絆紋亭』こそが、俺にとっての絶対の帰る場所だった。

「さて、みんなのお腹が空く前に、朝飯の準備をするか。今日は魔力農園の野菜がとびきり美味しく育っているはずだからな」

 俺がそう呟くと、魔物たちは嬉しそうに歓声を上げ、それぞれの持ち場へと散っていった。

   * * *

 一階の広々とした厨房へと降りると、そこにはすでに見習い魔導士のエリス、仕立屋のリナ、元王都特級密偵のシオン、元宮廷料理人のセシル、そして元聖騎士のフレアがエプロン姿で立ち、手際よく調理を進めていた。

「あ、レイン様! おはようございますっ!」

「レインさん、おはようございます。今朝も魔力農園のお野菜がキラキラしてますよ」

「レインさん、おはようございます。お肉とハーブの仕込みは完了しています」

「皆さん、おはようございます! 今朝のメニューは、特製の魔力卵を使ったふわふわのオムレツと、焼きたてのハーブパンですよ!」

「私も、微力ながらお手伝いさせていただいております!」

 五人がそれぞれの持ち場から、明るく温かい笑顔で迎えてくれる。

 厨房いっぱいに広がるのは、バターがたっぷりと溶けたフライパンで卵が焼ける甘い香りと、ハーブが練り込まれたパンがオーブンで膨らむ香ばしい匂いだ。セシルが加わったことで、俺の『料理』スキルや『植物知識』との相乗効果が生まれ、クランの食事はもはや開拓地の料理の域を完全に超え、王都の最高級店すら凌駕するクオリティに達していた。

 出来上がったオムレツは、ナイフを入れると中からとろりとした半熟の卵が溢れ出し、添えられた特製のデミグラスソースと絶妙に絡み合う。ハーブパンは外側がカリッと、内側がもっちりとしており、一口かじれば爽やかな香りが鼻を抜ける。

 アイラ、ルウ、ゴット、ドーラもリビングに集まり、「いただきます」の合図と共に賑やかな朝食が始まった。

「んんっ! このオムレツ、口の中で溶けるねぇ! ソースのコクと卵の甘みが絶妙だ!」

 アイラが豪快にパンを平らげ、目を輝かせる。

「本当によ……セシルが来てから、毎朝の食事が楽しみで仕方がないわ。太っちゃわないか心配になるくらいね」

 ルウもうっとりとした表情を浮かべる。

「このパン、野営で食べていた硬い干し肉とは次元が違います……。涙が出るほど美味しいです……!」

 フレアは、王都の追手から逃げ延びた緊張が完全に解けたのか、美しい顔をほころばせながらオムレツを夢中で頬張っていた。

 テラスでは、魔物たちもそれぞれに用意された特製の朝食を夢中で食べている。誰もが満ち足りた顔で、笑い合いながら食卓を囲む。この他愛のない日常の風景こそが、俺にとって何よりの宝物だった。

   * * *

 和やかな朝食を終え、食後のティータイムを楽しんでいた時のことだ。

 庭の精霊樹の根元に安置されていた『未知の竜の卵』に、突如として変化が起きた。

「こ、これは……!」

 見張りをしていたフレアが、血相を変えてリビングへと駆け込んできた。

「レインさん! 卵が……卵が急に熱を持ち始めて、鼓動が大きくなっています!」

 その言葉に、俺たちは全員で庭へと飛び出した。

 精霊樹の根元に置かれた巨大な瑠璃色の卵は、まるでそれ自体が呼吸をしているかのように脈打ち、淡い光を放ち始めていた。卵の中から伝わってくる鼓動は、以前よりもはるかに強く、そして力強い。

 俺はそっと卵に両手を添え、『絆紋』の光を流し込んだ。

(……あったかい。……もうすぐ……外に、出られるよ……)

 卵の中の幼い意識が、はっきりと俺の心に語りかけてきた。

「……孵化が近い。間違いない。この子はもうすぐ生まれるぞ」

 俺の言葉に、周囲の仲間たちから歓声が上がった。

「やったわね! どんな竜が生まれてくるのか、楽しみだわ!」

 ルウが目を輝かせる。

 しかし、俺の『魔導知識』と『気配察知』が、ある問題を感じ取っていた。

「待ってくれ。このままじゃ孵化に失敗するかもしれない」

「えっ?」

「この卵は、王都の地下深くの遺跡に長年封印されていたせいか、自力で殻を破るための『熱量』が決定的に不足しているんだ。精霊樹の魔力で生命力は回復したが、最後に殻を割るための爆発的なエネルギーが足りない。このままでは、殻の中で体力を使い果たしてしまう」

「そ、そんな……! どうすればいいんですか!?」

 卵を命懸けで守ってきたフレアが、悲痛な声を上げる。

「アシュタルの北にある『炎竜の谷』に生えている『紅蓮草ぐれんそう』と、そこで採れる純度の高い『火の魔石』が必要だ。それを集めて卵の周りに陣を敷き、外部から熱エネルギーを供給してやれば、無事に孵化できるはずだ」

 俺がそう説明すると、仲間たちは即座に頷いた。

「そういうことなら、急いで集めに行こうじゃないか! アタシの斧で火の魔石なんていくらでも掘り出してやるよ!」

 アイラが戦斧を背負い直す。

「私も行きます。この子のために、できることは何でもしたいんです!」

 フレアも聖剣を腰に帯び、強い決意の瞳で俺を見た。

「よし、パーティーは俺、アイラ、ルウ、シオン、フレアだ。魔物は索敵に優れたフェルとクロ、それに熱耐性のあるソラとフロリアを連れて行く。セシル、ゴットさんたちは拠点の防衛と卵の監視をお願いできるか?」

「任せてください! 温かいスープを作って待っています!」

「ほっほっほ、拠点の守りはワシらにお任せあれ」

 こうして、竜の卵を救うための緊急探索パーティーが結成され、俺たちはアシュタルの街の北へと急行した。

   * * *

 アシュタルの街から北へ馬車を走らせること数時間。

 周囲の気温が次第に上がり、岩肌が赤茶色に変色し始めた。そして視界が開けた先には、大地の裂け目から赤いマグマが覗き、熱風が吹き荒れる過酷な環境――『炎竜の谷』が広がっていた。

「うわぁ……すごい熱気ね。私の氷魔法で少しでも気温を下げるわ」

 ルウが杖を掲げ、周囲に冷気の結界を展開する。

「シオン、クロ、周囲の警戒を頼む。フェルは『紅蓮草』の匂いを追ってくれ」

「了解です。クロ、影の索敵を広げて」

「にゃっ!」

 俺たちは熱風に耐えながら、谷の奥へと進んでいった。

 フロリアが尻尾の蔦を器用に動かし、岩陰に隠れて生えている貴重な『紅蓮草』を次々と見つけ出してくれる。真っ赤な炎のように揺らめくその草は、触れるだけで火傷しそうなほどの熱を帯びていたが、俺の『野戦調薬』の技術で安全に採取し、収納袋に収めていった。

「よし、紅蓮草は十分に集まった。あとは純度の高い『火の魔石』だ」

 俺がそう言った矢先だった。

「ウォンッ!!」

 フェルが鋭く吠え、谷の奥の巨大な岩山を睨みつけた。

 ズシンッ、ズシンッ……!

 地響きと共に現れたのは、体長が五メートルを超える、全身が溶岩で構成された巨大な蜥蜴の魔物――Aランク相当の『ヴォルカニック・リザード』だった。その口からは絶えず高温の炎が漏れ出し、背中の突起からは黒煙が噴き上がっている。

「グルルォォォッ!!」

 侵入者である俺たちを発見したヴォルカニック・リザードは、耳をつんざくような咆哮を上げ、巨大な火球を吐き出してきた。

「ルウ、防いでくれ!」

「任せて!『絶対氷壁アブソリュート・ウォール』!」

 ルウの展開した分厚い氷の壁が、火球と激突し、凄まじい水蒸気爆発を引き起こす。

「アイラ、フレア! 一気に決めるぞ!」

「オラァッ!! 溶岩トカゲ風情が、アタシの斧で粉々になりな!」

 アイラが戦斧に闘気を纏わせ、蒸気を切り裂いて突進する。

「私も行きます!『聖光斬ホーリー・スラッシュ』!」

 フレアが抜剣し、神聖な光を纏った一撃を放つ。

 アイラの風の斬撃とフレアの光の刃が、ヴォルカニック・リザードの強固な溶岩の装甲に深く突き刺さる。しかし、相手もAランク魔物だ。痛みに狂いながら、太い尻尾を鞭のように振るって二人を薙ぎ払おうとする。

「シオン、フェル! 隙を作れ!」

「了解です! クロ、影縛り!」

「にゃぁっ!」

 シオンが熱風を利用して跳躍し、短剣で魔物の眼球を狙う。クロが『シャドウ・バインド』の魔法で魔物の影を地面に縫い付けようとするが、相手の熱量の前では影すらも揺らいでしまう。

「ウォォォンッ!!」

 だが、フェルが雷のような速度で駆け抜け、魔物の死角からその後ろ足の関節に強力な牙を突き立てた。

「きゅるるーっ!」

 上空からは、ソラが急降下しながら風の魔法で魔物の周囲の酸素を奪い、炎の威力を強制的に減衰させる。

「今だ!」

 俺は『絆紋』の魔力を右手に集中させ、事前に調合しておいた『冷却の魔法薬』を魔物の頭上へと投げつけた。

 パリンッ!

 フラスコが割れ、極低温の液体が溶岩の装甲に降り注ぐ。急激な温度変化により、ヴォルカニック・リザードの全身の装甲に「ピキピキッ!」と無数の亀裂が走った。

「トドメだ、アイラ、フレア!」

「オラァァァッ!!」

「はぁぁぁっ!!」

 アイラとフレアの渾身の連携攻撃が、亀裂だらけになった魔物の中心を正確に打ち抜いた。

 ドゴォォォンッ!!

 凄まじい轟音と共に、ヴォルカニック・リザードの巨体は粉々に砕け散り、ただの黒い岩の塊となって沈黙した。

「ふぅ……手こずらせやがって。でも、これで特大の火の魔石が手に入ったね」

 アイラが戦斧を肩に担ぎ直し、砕けた岩の山から、赤々と燃えるように輝く巨大な『火の魔石』を拾い上げた。

「完璧な連携だった。みんな、怪我はないか?」

 俺が声をかけると、シオンやフレアたちも安堵の息を吐いて頷いた。

   * * *

 目的の素材を全て集め、帰路につこうとしたその時だった。

「キュゥゥ……」

 岩陰から、ひどく弱々しい、子犬のような鳴き声が聞こえてきたのだ。

「……レインさん、岩の隙間に何かがいます」

 シオンが短剣を構えながら慎重に近づく。

 そこには、俺たちの想像を絶する愛らしい姿があった。

 体長はわずか三十センチほど。燃えるような真紅の毛並みを持ち、三本のふさふさとした尻尾を揺らす、小さな狐の魔物――『紅蓮の精霊狐イグニス・フォックス』の幼体だった。

 しかし、その小さな体は酷い傷を負っていた。どうやら先ほどのヴォルカニック・リザードの攻撃に巻き込まれ、岩の下敷きになっていたらしい。右の後ろ足が不自然な方向に曲がり、炎を纏うはずの毛並みは煤けて光を失っていた。

「なんてこと……! こんな小さな子が……!」

 フレアが悲痛な声を上げる。

(痛い……お母さん、どこ……? 怖いよ……)

 俺の脳内に、精霊狐の幼体からの悲痛で、純粋な恐怖の感情が流れ込んできた。周囲を探っても、親狐の気配はない。おそらく、すでに他の強大な魔物に……。

「大丈夫だ。怖いことはしない。君を助けに来たんだ」

 俺は武器を置き、両手を広げてゆっくりと近づいていった。

「キュゥ……!」

 小さな精霊狐は怯え、岩の奥へと逃げ込もうとするが、足の痛みで動くことができない。

 俺は右手の甲にある翠色の痣――『絆紋』の光を限界まで解放した。

 翠色の温かな波紋が、熱風を押し退けるように広がり、精霊狐の震える体を優しく包み込む。

 絆紋の波動が彼女の心に届いた瞬間、怯えきっていた瞳から恐怖の色がスッと消え去り、代わりに驚きと安心の色が浮かんだ。

「この光……あったかい……。お母さんの匂いがする……」

「今、痛いのを取ってあげるからな」

 俺は『野戦調薬』で作った超回復ポーションと、骨接ぎ用の軟膏を取り出した。優しく小さな体を抱き上げ、曲がった骨を的確な位置に戻し、ポーションを患部に浸透させる。絆紋の浄化の光が細胞の再生を促し、数分のうちに骨は完全に繋がり、傷口は塞がった。

「キュゥッ!」

 痛みが消えたことに気づいた精霊狐は、嬉しそうに三本の尻尾を振り、俺の胸にその温かい顔をすり寄せてきた。

(ありがとう……あたたかい人。私、もう痛くない……)

「一人ぼっちだったのか。……帰る場所がないなら、うちのクランに来ないか? うちには、君と同じように温かい家族がたくさんいるんだ」

 俺がそう言うと、フェルやフロリアが優しく鼻先を擦りつけ、ソラも空から舞い降りて挨拶をした。

 小さな精霊狐は、満面の笑みを浮かべるように目を細め、俺の手のひらをペロリと舐めた。

「キュゥッ♪」

 こうして、紅蓮の精霊狐である小さな幼狐が、絆紋亭の新しい家族として加わることになった。名前は、その燃えるような真紅の毛並みから『イグニス』と名付けた。

   * * *

 その日の夕暮れ。

 必要な素材と、新しい家族であるイグニスを連れて、俺たちはアシュタルの拠点へと大急ぎで帰還した。

 拠点では、ゴットやセシルたちが卵の様子を見守っていたが、卵の明滅はすでに限界に近く、光が弱まり始めていた。

「間に合ったぞ! みんな、下がってくれ!」

 俺は精霊樹の根元にある卵の周囲に、採取してきた『紅蓮草』を円を描くように配置し、その中心に巨大な『火の魔石』を据え付けた。

 そして、俺の『魔導知識』と『絆紋』の力を総動員し、魔法陣を起動させる。

「発動しろ……『生命のライフ・フレイム』!」

 魔石から放たれた膨大な熱エネルギーが、紅蓮草を伝って魔法陣全体に行き渡り、瑠璃色の卵を優しく、しかし力強く包み込んだ。

 ドクンッ……ドクンッ……!

 外部からの熱供給を受けた卵は、再び強い鼓動を取り戻し、その表面の瑠璃色の鱗模様が眩いばかりの光を放ち始めた。

 ピキッ……。

 静まり返った夜の庭に、殻にヒビが入る微かな音が響き渡った。

 全員が息を呑んで見守る中、ヒビは次第に大きくなり、やがて……。

 パリンッ!!

 美しい音と共に殻が割れ、中から小さな、本当に小さな命が顔を出した。

 それは、夜空の星屑を集めたかのような、美しい瑠璃色の鱗を持つ幼い竜だった。つぶらな瞳で周囲を見渡し、そして、目の前にいる俺とフレアの顔を見て、嬉しそうに鳴き声を上げた。

「きゅあぁっ♪」

「生まれた……! 本当によかった……!」

 フレアが感極まって涙を流し、両手で顔を覆う。

 幼い竜は、よちよちとした足取りで殻から這い出し、俺の足元へとすり寄ってきた。

(あったかい……お父さん? お母さん?)

 俺の心に、生まれたての純粋な喜びの感情が流れ込んでくる。

「俺はレインだ。お前は今日から、俺たちの家族だ。……名前は、その美しい瑠璃色の鱗から、『ラピス』にしよう」

「きゅあぁっ♪」

 ラピスは嬉しそうに鳴き、ソラやフェル、そして新しく加わったイグニスたちともすぐに打ち解け、鼻先を突き合わせて挨拶を交わした。ソラは同じ竜種の弟ができたと大喜びで、上空をくるくると飛び回っている。

   * * *

 その夜。

 庭の虹色の天蓋の下、精霊樹の優しい光に照らされながら、ラピスの誕生とイグニスの加入を祝う盛大な大宴会が開かれた。

 セシルが腕を振るった極上の料理がテーブルを埋め尽くす。魔力農園の野菜を使ったテリーヌ、肉汁溢れる特大のロースト、そしてマシロの氷室で冷やしたデザート。

「ラピス、イグニス! うちのクランへようこそ! これからは、アタシたちが背中を預け合う最高の仲間だ!」

 アイラが木製ジョッキを高々と掲げる。

「はいっ! 私、皆さんと一緒にこの子の誕生を見届けられて、本当に幸せです……!」

 フレアは、涙を拭いながら、最高の笑顔を見せた。

 テラスでは、ソラやフェル、ライ、ルミナたち魔物組が、新しく生まれたラピスと小さなイグニスを囲むようにして、特製の魔力肉や果実を夢中で頬張っている。シーナも精霊の池から美しい歌声を響かせ、宴の夜をさらに華やかに彩っていた。

 賑やかで、優しくて、誰もが誰かを必要とし、誰もが誰かに感謝している場所。

 王都で「足手まとい」と呼ばれ、すべてを失った俺の周りには、今、これほどまでに頼もしく、温かい家族たちがいる。

 急ぐ必要なんてない。俺たちの絆は、この新しく生まれた命のように、どんな時も優しく、この辺境の地で永遠に育ち続けていくのだから。

 満天の星空の下、笑い声がいつまでも絶えることなく響き渡っていた。

【現在のステータス】

名前:レイン

職業:冒険者(クラン『絆紋亭』マスター)

称号:追放されし者 / 魔物に愛されし者 / 辺境の癒し手 / 森の守護者 / 大地の開拓者

Lv:40(※ヴォルカニック・リザードの討伐と竜の孵化によりアップ)

HP:420 / 420

MP:220 / 220

【スキル】

・生活魔法 Lv.10(極まる)

・剣術 Lv.3

・解体 Lv.8(※レベルアップ)

・野営技術 Lv.10(極まる)

・野戦調薬 Lv.10(極まる)

・植物知識 Lv.10(極まる)

・建築・修繕 Lv.9

・鑑定 Lv.6(※レベルアップ)

・気配察知 Lv.8

・魔導知識 Lv.7(※孵化魔法陣の構築によりアップ)

・料理 Lv.10(極まる)

【固有スキル】

絆紋きずなもん:対象の魔物と心を通わせ、警戒心を解き放つ。集った魔物たちと精霊樹の魔力を調和させ、巨大な隠蔽と浄化の絶対結界を形成している。

【クラン『絆紋亭』メンバー】

空色小竜ソラ:絆レベル5

・銀色のウルフ(フェル):絆レベル5

・ポーションラビット(ピコ):絆レベル5

・クリスタル・ゲッコー(ルチル):絆レベル5

・スピリット・フォーン(ミエル):絆レベル5

・クリア・スライム(スイ):絆レベル5

宝石蜘蛛ルリ:絆レベル5

・雷鳴の怪鳥ライ:絆レベル5

・シャドウ・キャット(クロ):絆レベル5

・水妖のミロ:絆レベル5

・氷雪の幻獣マシロ:絆レベル5

・黄金の天馬ルミナ:絆レベル5

・花纏いの黒豹フロリア:絆レベル5(※絆深化)

・月影の白蛇ルナ:絆レベル5

・人魚の少女シーナ:絆レベル4(※絆深化)

・瑠璃色の幼竜ラピス:新規誕生 / 絆レベル3

・紅蓮の精霊狐イグニス:新規合流 / 絆レベル3

・ウールシープの群れおよび森の小動物たち

・アイラ(女戦士・正式なクラン協力者)

・ルウ(魔導士・正式なクラン協力者)

・ゴット(薬師・正式なクラン協力者)

・エリス(見習い魔導士・クランメンバー)

・ドーラ(ドワーフの若き職人・クラン専属建築士兼鍛冶師)

・リナ(服飾職人・クラン専属仕立屋)

・シオン(元王都特級密偵・クラン専属防衛担当)

・セシル(元宮廷料理人・クラン専属料理人)

・フレア(元聖騎士・クラン専属護衛担当)

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