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追放された絆紋使いの穏やかな冒険譚〜辺境の街ではぐれ者たちと最強の居場所を作ります〜  作者: 盆ちゃん


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第137話 新たなる貴族の誕生と、開拓の先へ

第137話 新たなる貴族の誕生と、開拓の先へ

 辺境の街アシュタルの東、小高い丘に広がる特級クラン『絆紋亭』の拠点であり、『絆紋公国』の中心地であるこの場所は、今日もまた、世界中のどの場所よりも優しく、奇跡のような調和に満ちた朝を迎えていた。

 庭の中央にそびえ立つ巨大な精霊樹は、深淵の虚無や怨念を完全に浄化した極上の光をたっぷりと吸収し、一つの大森林と見紛うほどの神樹へと成長を遂げている。その豊かに茂ったエメラルドグリーンの枝葉が朝の心地よい風に揺れるたび、チリン、チリンと微かな鈴の音のような魔力の波紋が広がり、拠点全体を極上の癒やしのオーラで包み込んでいた。

「ウォンッ!」

「キュイッ!」

「きゅるるーっ!」

 澄み切った青空の下、縁側で朝の空気を胸いっぱいに吸い込んでいる俺の足元へ、一番最初に俺の固有スキルである『絆紋』を受け入れ、共に歩み始めた最古参の相棒たち――銀色のウルフ『フェル』、純白のポーションラビット『ピコ』、そして空色小竜の『ソラ』が競い合うように飛び込んできた。

 彼らの後に続くように、水豹のリン、幻宝石獣のキラ、白銀の幼熊ブラン、空間転移を操る銀狐のギン、鋼棘の鎧獣マル、疾風の隼ゲイル、影猫のシャロ、水妖の獺ミロ、風精のリスのルル、土精の土竜ドロ、星翼の梟ステラ、幻影の蝶ファル、雲羊のモフ、木精の栗鼠コノ、鎌鼬のタマ、鋼殻の戦亀カメ、雷雲の幼鳥ライたちが一斉に集まってくる。

 極北の遠征や各地の迷宮で家族となった魔物たち。そして、これまでの救済活動や開拓地で仲間になった無数の魔物たち、記録の妖精メモ、記憶の水晶亀カメオ、伝承の白鳩クルック、星光の蛾ホシ、叡智の粘体フミ、賢者の鴉クロ、綿雲の巨熊モコ、泡沫の精霊シャボ、音符の小鳥メロたちも、すっかり拠点に馴染み、わらわらと俺の周囲に集まり、心地よさそうに喉を鳴らしている。

「おはよう、みんな。今日も元気いっぱいだな」

 俺が彼らの頭を順番に優しく撫でると、魔物たちは心底嬉しそうに目を細め、尻尾を振って応えた。庭の奥では、漆黒の竜ノヴァや紅蓮の火蜥蜴ガエン、鋼角の犀ザイン、岩砕の巨獣ダグといった大型組も、朝の日差しを浴びて気持ちよさそうに背伸びをしている。平和な空気が、この庭には満ち溢れていた。

「レイン様、朝食の準備が整いましたよ!」

 厨房から、見習い魔導士のエリスと元宮廷料理人のセシルが、賑やかな声を上げた。

 ダイニングルームの巨大なテーブルには、特製の魔力小麦で作った『焼きたてのベーコンエピ』に、農学者セリーヌが育てた新鮮な野菜をふんだんに使った『熱々のミネストローネ』、そして砂漠の巫女ナディアが持参したスパイスで味付けされた『極上オーク肉の厚切りロースト』が並べられている。

「ガハハ! 今日も飯が美味いねぇ! 世界が平和になったからって、アタシらの食欲は留まるところを知らないよ!」

 女戦士のアイラが、厚切りローストを豪快に頬張りながら大笑いする。

「ええ。ですが、平和になったことで公国の領地が急激に拡大していますわ。私たちの胃袋以上に、国の規模が膨れ上がっているのは事実です」

 少女魔導士のルウも、優雅にスープを飲みながら微笑んだ。

「領土の拡大は、それだけ守るべき民が増えた証。統治のあり方も、新たな段階へと進むべき時が来ていますね」

 剣聖シルヴィアが静かに紅茶のカップを置いた。

領地拡大と、新たなる統治の指針

 朝食を終えた俺たちが執務室へ向かうと、そこにはアシュタル辺境国のアルベルト国王、首席文官のエレナ、特級密偵のシオン、騎士団長レオンたちが集まり、巨大な大陸地図を囲んで深刻な面持ちで議論を交わしていた。

「レイン様、おはようございます。本日は、我が絆紋公国とアシュタル辺境国の『今後の統治機構』について、極めて重要な決定を下したいと考えております」

 エレナが深く一礼し、地図の上にいくつかの駒を置いた。

「魔王軍残党の討伐や、悪政を敷いていた貴族たちの排除が進んだことで、空白地帯となった領地が次々と我々の傘下に入ってきております。現在、それらの土地は、レイン様が各地で発掘された有能な代官や文官たちが臨時で治めておりますが……もはや、アシュタルからの直接指示だけで全土を管理するのは物理的に不可能な規模に達しています」

「確かに、旧ルミナス王国国境付近のレオナルドたちや、農業地帯のテオとエリス兄妹、さらには貧民街のザックやエララなど、みんな有能だが、いちいちアシュタルの決裁を待っていては復興のスピードが落ちるな」

 俺が腕を組むと、アルベルト国王が力強く頷いた。

「その通りだ。レイン殿。彼らは皆、民のために命を懸けられる素晴らしい人材だ。そこで、我がアシュタル辺境国と絆紋公国は、これまでの『臨時代官』という枠組みを廃止し、見込みのある者たちを正式に『貴族(領主)』として叙爵し、各領地の完全な裁量権を与える新たな制度を発足させたいと思う」

「代官から、正式な貴族へ……」

「はい。血筋や過去の身分に囚われず、真に民を想い、実績を上げた者を実力で貴族に登用する。これが、新たな時代の指針となります」

 シオンが進み出て、分厚い推薦状の束をテーブルに置いた。

「すでに、レオナルド様やテオ様たちは、その実績から十分に叙爵に値すると判断しております。彼らに『男爵』や『子爵』といった正式な爵位と領地を与え、独自の軍と予算を持たせることで、より強固な地方自治を確立させます。我々アシュタルと絆紋公国は、彼らを束ねる『中央連邦』として機能するのです」

「ガハハ! いいじゃないか! 腐った世襲貴族を追い出して、真っ当な連中が正式な領主になる。痛快な話だよ!」

 アイラが戦斧を叩いて笑う。

「それに、彼ら自身のモチベーションも劇的に上がるはずですわ。自分たちの手で、自分たちの街を創り上げる責任と権限が与えられるのですから」

 ルウも同意する。

「よし、その指針で進めよう」

 俺は深く頷いた。「今までの代官たちへの叙爵式の手配はエレナとアルベルト国王に任せる。だが、まだまだ世界には開拓が必要な土地や、隠れた逸材がいるはずだ。俺たちは、新しい開拓地の視察と、次なる『領主候補』の発掘に向かう」

荒野の開拓村と、若きリーダーの奮闘

 俺たちは、アイラ、ルウ、シルヴィアの主力陣と、フェル、ピコ、ソラたちを連れ、空間転移の銀狐ギンの力で大陸西部の『荒野の開拓村』へと跳躍した。

 そこは、かつて魔王軍の侵攻によって焦土と化し、長らく放棄されていた土地だが、最近になってアシュタルからの支援を受け、難民たちが集まって自力で村を作り始めている場所だ。

「活気があるな。まだ建物は少ないが、みんなの顔が明るい」

 俺が開拓村の様子を眺めていると、村の中央広場で、泥だらけになりながら指示を飛ばしている二人の若者の姿があった。

「第三班! そこは地盤が緩いから、建材を積む前に石を敷き詰めてくれ! ミレイ、井戸の水位はどうだ?」

 日に焼けた肌に、実直そうな瞳をした青年の『アーサー』が声を張り上げる。

「今のところ問題ありませんわ、アーサー。ですが、そろそろアシュタルからの追加の魔力肥料が届かないと、来月の小麦の作付けに影響が出ます」

 アーサーの横で、泥で汚れたスカートも気にせず、緻密な計算書を抱えた栗毛の女性『ミレイ』がテキパキと報告する。

 彼らは、貴族の出でも魔法の天才でもない。ただの平民でありながら、持ち前の責任感と行動力で難民たちをまとめ上げ、この開拓村の実質的なリーダーとして奮闘しているのだ。

「こんにちは。アシュタルから視察に来た、レインだ」

 俺が声をかけると、アーサーとミレイは驚いて振り返り、慌てて頭を下げた。

「れ、レイン公王様!? こんな辺境の開拓村に、直接お越しいただけるとは……!」

「村の立ち上げ、ご苦労様。とてもよくまとまっているな。君たちがここを仕切っているのか?」

「仕切っているなんてとんでもない! 俺たちはただ、生き残ったみんなで力を合わせて、もう一度自分たちの帰る場所を作りたくて……」

 アーサーが照れくさそうに頭を掻く。

「アーサーは、誰よりも朝早く起きて働き、自分の食事を削ってまで子供たちに分け与えています。彼の人望がなければ、この村は三日で崩壊していました」

 ミレイが誇らしげにアーサーを見つめる。その瞳には、深い信頼と敬意が宿っていた。

「……だが、一つ問題が起きているんだろう?」

 俺が尋ねると、二人の表情が少しだけ曇った。

「実は……村の西側にある岩山から、時折、大きな魔物の鳴き声が聞こえるんです。凶暴な魔物なら討伐を依頼するべきなのですが、どうも様子がおかしくて……」

「様子がおかしい?」

「はい。昨夜、見回りに行ったら、傷ついた魔物たちが身を寄せ合って震えていました。危害を加えてくる様子はなかったんですが、村のみんなは不安がっていて……」

「分かった。俺たちが見に行こう。案内してくれ」

岩山の傷ついた命と、新たなる絆

 アーサーの案内で村の西側にある岩山へ向かうと、そこには巨大な洞窟が口を開けていた。

 中から微かな呻き声が聞こえる。俺たちが警戒しながら足を踏み入れると、そこには、密猟者の罠や、魔王軍残党の置き土産と思われる有毒な瘴気の沼に巻き込まれ、傷ついた四匹の魔物たちが倒れていた。

 一匹は、白く美しい陶器のような肌と、巨大な牙を持つ象――『白磁の巨象ポーセリン・エレファント』。

 一匹は、風を読み、美しい羽で天候を知らせる力を持つ鶏――『風見のウェザー・コック』。

 一匹は、岩盤をドリル状の鼻で砕くことができる、巨大なモグラ――『掘削の土竜ドリル・モル』。

 最後の一匹は、フワフワとした綿毛で覆われ、触れるものに癒やしを与える植物のような魔獣――『癒やしの綿毛獣ヒール・コットン』。

「この子たち……!」

 ミレイが息を呑む。

 彼らは人間を恐れているはずなのに、アーサーが近づいても逃げようとせず、ただ苦しそうに息を吐いていた。

「かわいそうに。俺たちの開拓が、彼らの住処を脅かしてしまったのかもしれない」

 アーサーが痛ましそうに呟き、無防備にも巨象の鼻を撫でようとした。

「よく頑張ったな。もう大丈夫だ」

 俺はアーサーの横に並び、右手の甲の『絆紋』の光を限界まで灯し、彼らの体に手をかざした。

 翠色の極限浄化と調和の光が、洞窟全体を温かく包み込む。

 魔物たちの傷や、瘴気に侵されていた体が瞬時に浄化され、彼らの体が本来の美しく力強い輝きを取り戻していく。

(……あたたかい。痛くない……。お前たちが、私たちを助けてくれたのか?)

 白磁の巨象から、どっしりとした、しかし穏やかで優しい思念が伝わってくる。

「ああ。俺はレイン。お前たち、人間を襲わずにじっと耐えていたんだな。立派だったぞ」

 俺が微笑みながら巨象の白い肌を撫でると、彼は嬉しそうに長い鼻を揺らし、アーサーの肩にも優しく触れた。風見の鶏も元気よく鳴き声を上げ、掘削の土竜は俺の足元を回り、癒やしの綿毛獣はフワフワと宙に浮いてミレイの頬にすり寄った。

「ウォンッ♪」「キュイッ♪」「きゅるるーっ♪」

 フェルやピコたちも近寄り、新しい仲間を優しく迎え入れる。

「もしよかったら、俺たちの家族にならないか? すぐそこの村には、お前たちのように優しくて、一緒に働いてくれる人間たちがいる。お前たちの力があれば、荒れ地を開拓し、天候を読み、怪我人を癒やすことができるはずだ」

 俺の誘いに、四匹の魔物は嬉しそうに大きく頷いた。

「よし。巨象のお前は『マク』だ。鶏は『カゼ』。土竜は『ドリ』。綿毛獣は『ワタ』だ。今日からよろしくな、みんな!」

「パオォォッ♪」

「コケッ♪」

「キュルッ♪」

「フワァッ♪」

 新たなる家族、マク、カゼ、ドリ、ワタを迎え入れた俺は、アーサーとミレイに向き直った。

「アーサー、ミレイ。この子たちの力は、君たちの村の開拓に絶対に役立つはずだ。それに、魔物を恐れずに助けようとした君たちのその優しさは、上に立つ者として何より大切な素質だ」

 俺は二人の目を見つめ、真剣な声で告げた。

「アーサー、ミレイ。アシュタルからの決定だ。君たちを、この開拓村を含む周辺一帯の正式な領主として叙爵する。爵位は『男爵』だ」

「なっ……!? 俺たちが、貴族に!?」

 アーサーが驚愕でひっくり返りそうになる。

「俺たちのような平民が、領主だなんて……そんな大任、務まるわけがありません!」

 ミレイも顔を真っ青にして首を振る。

「務まるさ。君たちのその泥にまみれて民のために汗を流す姿こそが、新しい時代の貴族のあり方だ。俺たち絆紋公国が、全面的に支援する。この村を、誰もが笑って暮らせる素晴らしい領地にしてくれ」

 俺の言葉に、アーサーとミレイは互いの顔を見合わせ、やがて決意に満ちた表情で深く頭を下げた。

「はいっ……! この命に代えても、レイン公王様のご期待に応え、民と魔物たちが共に豊かに暮らせる領地を創り上げてみせます!」

 こうして、実直なる若きリーダーのアーサーと、優秀な補佐官ミレイという逸材が、正式な貴族として新たな人間の仲間に加わったのである。

叙爵式と、広がりゆく調和の領土

 数日後。アシュタル辺境国の王城にて、盛大な叙爵式が執り行われた。

 かつて代官として奮闘していたレオナルド、テオ、ザック、そして新たに発掘されたアーサーたちが、真新しい貴族の礼服を身に纏い、アルベルト国王と俺の前に整列している。

「これより、新たな時代の礎となる者たちへ、正式に領地と爵位を授与する!」

 アルベルト国王の荘厳な声が響き渡る。

 彼らは血筋ではなく、自らの行動と民への愛によってその地位を勝ち取った、誇り高き新時代の領主たちだ。

 叙爵式が終わると、領主の館の中庭では、彼らの門出を祝う大宴会が開かれた。

 セシルやエリスが腕を振るったご馳走が並び、アイラやルウたちも新米領主たちに次々と酒を注いで回っている。

 魔物たちも、白磁の巨象マクがダグやザインたちと力比べをし、風見の鶏カゼがソラやゲイルたちと空を飛び回り、賑やかな笑い声が絶えることはなかった。

「ガハハ! これでアタシらの領土も、立派な領主たちがしっかり治めてくれるってわけだ! これからは安心して前線で暴れられるね!」

 アイラがワインを一気飲みして笑う。

「ええ。彼らがいる限り、絆紋公国の内政は盤石ですわ」

 ルウが優しく微笑み、シルヴィアも深く頷いた。

「ウォンッ!」「キュイッ!」「きゅるるーっ!」

 フェル、ピコ、ソラが俺の膝の上に飛び乗り、顔をすり寄せてくる。

 彼らの温もりを感じながら、俺は満天の星空と、笑顔に溢れる家族たちを見渡した。

 領地が拡大し、新たな貴族たちが誕生しても、俺たちの根底にある『絆』の理念は変わらない。

 権力に溺れず、共に汗を流し、全ての命と調和する。

 新たなる指針のもと、絆紋公王レインと仲間たちの果てしなき救済と開拓の旅は、これからも永遠に続いていくのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作もよろしく(*´∀`)ノ

しがらみだらけの人生に疲れたので、記憶を消して無人境へ転生します〜無限魔力の【万能創造】で理想の拠点を作ってたら、最強の魔獣たちが勝手に懐いて最高の家族になりました〜

https://ncode.syosetu.com/n3777mp/

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