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追放された絆紋使いの穏やかな冒険譚〜辺境の街ではぐれ者たちと最強の居場所を作ります〜  作者: 盆ちゃん


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第111話 国家間の空白地帯と、新たなる開拓の幕開け

第111話 国家間の空白地帯と、新たなる開拓の幕開け

 辺境の街アシュタルの東、小高い丘に広がる特級クラン『絆紋亭』の拠点であり、『絆紋公国』の中心地であるこの場所は、今日もまた、世界中のどの場所よりも優しく、奇跡のような調和に満ちた朝を迎えていた。

 庭の中央にそびえ立つ巨大な精霊樹は、深淵の邪神や虚無の暴食者を浄化した極上の光をたっぷりと吸収し、もはや一つの大森林と見紛うほどの神樹へと成長を遂げている。その豊かに茂ったエメラルドグリーンの枝葉が朝の心地よい風に揺れるたび、チリン、チリンと微かな鈴の音のような魔力の波紋が広がり、拠点全体を極上の癒やしのオーラで包み込んでいた。

「ウォンッ!」

「キュイッ!」

「きゅるるーっ!」

 澄み切った青空の下、縁側で朝の空気を胸いっぱいに吸い込んでいる俺の足元へ、一番最初に俺の固有スキルである『絆紋』を受け入れ、共に歩み始めた最古参の相棒たち――銀色のウルフ『フェル』、純白のポーションラビット『ピコ』、そして空色小竜の『ソラ』が競い合うように飛び込んできた。

 それに続くように、水豹のリン、幻宝石獣のキラ、白銀の幼熊ブラン、空間転移を操る銀狐のギン、鋼棘の鎧獣マル、疾風の隼ゲイル、影猫のシャロ、水妖の獺ミロ、風精のリスのルル、土精の土竜ドロ、星翼の梟ステラ、幻影の蝶ファル、雲羊のモフ、木精の栗鼠コノ、鎌鼬のタマ、鋼殻の戦亀カメ、雷雲の幼鳥ライ。

 極北の遠征で仲間になった氷牙の白虎ビャク、吹雪の妖精ユキ、霜結びの蜘蛛シモ、オーロラの精霊アウラ、氷晶の鹿ルカ、雪豹のマシロ、水晶の亀クリス、幻影の蝙蝠バット、白炎の狐ホムラ、浄水のスライムのスイ、鏡面の梟ミル、幻晶の穿山甲リン、虹光の蝶プリ、重力エイのフワ、影豹のクロ、磁力甲虫のジキ。時空の鯨クジラ、次元の螳螂カマ、星喰いのバク。星の精霊であるルミ、コア、ジュジュ。次元を司る星天の神狼シリウス。

 そして、暴食者の核から浄化され、新たに生まれ変わった虚空の精霊ゼロ、時空猫のチク、星屑の幼竜アストラたちも、わらわらと俺の周囲に集まり、心地よさそうに喉を鳴らしている。

「おはよう、みんな。今日も元気いっぱいだな。チク、そこはフェルの尻尾の上だぞ」

 俺が彼らの頭を順番に優しく撫でると、魔物たちは心底嬉しそうに目を細め、尻尾を振って応えた。庭の奥では、漆黒の竜ノヴァや紅蓮の火蜥蜴ガエン、鋼角の犀ザイン、岩砕の巨獣ダグ、砂塵の魔蠍ゼットといった大型組も、朝の日差しを浴びて気持ちよさそうに背伸びをしている。

「レイン様、朝食の準備が整いましたよ!」

 厨房から、見習い魔導士のエリスと元宮廷料理人のセシルが、賑やかな声を上げた。

 ダイニングルームの巨大なテーブルには、特製の魔力小麦で作った『焼きたてのハーブソーセージロール』に、農学者セリーヌが育てた新鮮なカボチャを使った『濃厚パンプキンスープ』、そして砂漠の巫女ナディアが持参したスパイスで味付けされた『彩り野菜のキッシュ』が並べられている。

「ガハハ! 今日も飯が美味いねぇ! 極北から帰ってきてしばらく経つが、毎日こんな美味い飯が食えるなんて最高だよ!」

 女戦士のアイラが、ソーセージロールを豪快に頬張りながら大笑いする。

「ええ。ですがレイン、そろそろゆっくりもしていられない状況になってきたみたいですよ」

 少女魔導士のルウが、優雅にスープを飲みながら視線を向けた先には、首席文官のエレナと特級密偵のシオンが、山積みの書類を抱えて足早に近づいてくる姿があった。

傘下拡大による空白地帯と、開拓の決断

 朝食後、領主の館の大広間にて、アシュタル辺境国のアルベルト国王、エレナ、開拓村総代官ウィリアム老伯爵、そして俺たち絆紋亭の首脳陣による重要な会議が開かれていた。

「レイン様、アルベルト陛下。現在、我がアシュタル辺境国および絆紋公国の傘下に降ることを表明した国家・貴族領は、すでに八十を超えました。これは大陸のほぼ七割に相当する規模です」

 エレナが巨大な大陸地図をテーブルに広げ、眼鏡を押し上げる。

「それは喜ばしいことだ。各国の指導者が我々の理念に賛同し、不毛な争いが消え去ったのだからな」

 アルベルト国王が深く頷くが、エレナの表情は真剣そのものだった。

「問題は、国家間の国境が事実上消滅したことにあります。これまで各国家は、他国からの侵略を防ぐための『緩衝地帯』として、あるいは魔物の巣窟として放置していた広大な『空白地帯』を抱えていました。国境が取り払われた現在、これらの空白地帯が剥き出しとなり、各国の物流や人々の往来を阻害する巨大な障害となっているのです」

 シオンが地図上のいくつもの無色のエリアを指差す。

「さらに、我が国が絶対的な安全圏であるという噂が広まり、世界中から難民や移住希望者がアシュタルと絆紋公国を目指して大移動を始めています。彼らがこの未開の空白地帯を通り抜ける際、野生の魔物や未踏の自然環境の脅威に晒されているという報告が相次いでいます」

「なるほど……」

 俺は地図を見つめながら顎に手を当てた。

「傘下に入った国々との物流をスムーズにし、移住してくる人々を安全に誘導するためには、この『空白地帯』を放置しておくわけにはいかないということだな」

「その通りです。しかも、これらの空白地帯には、未開拓の肥沃な土地や、手つかずの魔力鉱山、貴重な資源が眠っている可能性が極めて高いのです」

 ウィリアム老伯爵が白髭を撫でながら目を輝かせる。

「決まりだな」

 俺は力強く宣言した。

「絆紋公国のクランメンバーと、アシュタル辺境国の『魔境鎮圧部隊』を複数の小隊に分け、有用な土地や鉱山の選定と同時並行で、これらの空白地帯の開拓を行う。安全な街道を整備し、物流の拠点となる新しい街を各地に造成しよう。そうすれば、辺境国に流入する民をそこに誘導し、分散させることもできる」

「素晴らしい提案です! 直ちに各部隊の編成と、選定箇所のリストアップに取り掛かります!」

 エレナが弾んだ声で書類にペンを走らせた。

鉱山地帯の開拓と、最適化された部隊

 数日後。俺は魔境鎮圧部隊の一部とクランメンバーを率いて、大陸の中央部に位置する巨大な岩山地帯――『大地の牙』と呼ばれる空白地帯へと足を踏み入れていた。

 ここは古くから良質な魔力鉱石が眠ると噂されていたが、凶暴な岩石系の魔物が多数生息しているため、どの国も手を出せずにいた未開の地である。

「よし、ここを第一の開拓拠点にする。ガレス、ルーク、カイル! 岩盤の撤去と整地を頼む!」

「おうっ! 任せな!」

「俺の大剣で、山ごと平らにしてやるぜ!」

 重騎士ガレスのタワーシールドによる突進と、重剣士ルーク、大剣使いカイルの圧倒的な腕力が、立ち塞がる巨大な岩の壁を次々と粉砕していく。

「セリス、アリス、ジュノ! 粉砕した岩の破片を風と氷でまとめて、防壁の基礎を作れ!」

「了解しましたわ!『氷結地帯』!」

「『風神の旋風』っす!」

 氷結士セリスと風魔法使いジュノが連携し、砕けた岩を綺麗に一箇所へと集め、アリスが魔力でそれらをコーティングして強固な城壁の基礎へと変えていく。極北のダンジョンで培われた『環境への最適化』と『完全な分業』は、戦闘だけでなく開拓作業においても驚異的な効率を発揮していた。

「ドロ、ダグ、ゼット! 鉱脈の探知と地下坑道の掘削だ!」

「キュッキュッ!」

「ゴオオォォッ!」

「ギチチッ!」

 土精の土竜ドロが地中深くへと潜り込み、良質な鉱脈の場所をピンポイントで特定する。岩砕の巨獣ダグと砂塵の魔蠍ゼットが、その圧倒的なパワーで一瞬にして安全な地下坑道を掘り進めていった。

「ガハハ! こりゃあいい鉱石がザクザク出そうだねぇ! 魔導技師のクロムが泣いて喜ぶよ!」

 アイラが戦斧を肩に担ぎながら、掘り出されたばかりの輝く魔力鉱石を見て豪快に笑う。

「ええ。これだけの資源があれば、新しい街のインフラ整備もすぐに終わるわね」

 ルウも満足げに頷いた。

『グルルルルォォォッ!!』

 その時、岩山の奥から地鳴りのような咆哮が響き、巨大な影が姿を現した。

 体長十メートルを超える、全身が硬質な魔力鉱石で覆われた巨大な熊――『クリスタル・ベア』の群れだ。自分たちの縄張りに侵入してきた俺たちを排除しようと、怒り狂って突進してくる。

「敵襲だ! 迎撃態勢!」

 クロードが長槍を構えるが、俺はそれを手で制した。

「待て。彼らは魔王の瘴気を持たない、純粋な野生の魔物だ。無闇に傷つける必要はない」

 俺は武器を持たず、右手の甲の『絆紋』の光を限界まで灯し、突進してくるクリスタル・ベアの群れの前へと静かに歩み出た。

 翠色の極限浄化と調和の光が、波紋のように岩山全体へと広がっていく。

「ウォォォンッ!!」「キュイッ!!」「きゅるるーっ!!」

 俺の背後で、フェル、ピコ、ソラたちが、威嚇ではなく、友好的な温かい魔力を放って群れに呼びかける。

 絆紋の光に触れたクリスタル・ベアたちは、その圧倒的な調和の力に当てられたように、ピタリと突進を止め、困惑したように立ち止まった。

(……お前たち、なぜ俺たちの山を壊す? ここは俺たちの住処だ)

 群れのリーダー格である一際大きなクリスタル・ベアから、警戒と怒りの混じった思念が伝わってくる。

「すまない。でも、壊しているんじゃない。俺たちはここに、人間と魔物が共に豊かに暮らせる新しい街を作ろうとしているんだ。お前たちの住処を奪うつもりはない。むしろ、一緒にこの山を守ってくれないか?」

 俺が微笑みながら、リーダーの巨大な鉱石の鼻先を優しく撫でると、その強張っていた体がスッと解け、心地よさそうに喉を鳴らした。

(……お前の光は、山の奥深くにある魔力の泉よりもあたたかい。……わかった。俺たちも、お前たちの群れに入る)

「ありがとう。お前の名前は『ロック』だ。よろしくな、ロック」

「グルルッ♪」

 新たに鉱山地帯の主であるクリスタル・ベアの『ロック』とその群れが家族に加わったことで、採掘作業はさらに加速した。彼らはどの岩盤に最高の鉱石が眠っているかを熟知しており、自らの鋭い爪で器用にそれらを掘り出してくれたのだ。

新たな魔物たちと、善良なる貴族の赴任

 同じ頃、別の空白地帯である『豊穣の河川地帯』や『風吹き抜ける大平原』でも、別働隊による開拓が驚異的なスピードで進められていた。

 俺は空間転移のギンや星天の神狼シリウスの力を借り、各部隊の拠点を転々としながら、その土地の主である魔物たちと次々に絆を結んでいった。

 河川地帯では、清らかな水を守り続けていた巨大な美しい亀――『清流の霊亀アクア・タートル』の『スイレン』。

 大平原では、風と同化して空を駆ける美しい四つ足の獣――『疾風の天馬エアロ・ペガサス』の『ウィンド』。

 そして、深い森の遺跡では、古代の知識を宿すという言葉を解する賢い魔鳥――『知恵の翠鳥ウィズダム・バード』の『エル』を新たにテイムし、彼らの協力を得て、それぞれの環境に完璧に調和した都市の基盤を作り上げていった。

「レイン様、各地の開拓拠点、インフラの基礎工事はほぼ完了しました。あとは、これらの街を治め、移住してくる民を導く優秀な為政者が必要です」

 エレナの報告を受け、俺はすでに心当たりがある人物たちを呼び寄せていた。

 数日後、完成したばかりの鉱山都市の広場に、数名の人間が到着した。

 一人は、かつてオークヘイヴン王国の国王であり、民のために国を捨ててアシュタルに移住してきた豪快な男、ボルグ。

 もう一人は、旧ルミナス王国で隠遁していた慈愛の貴族、フローラ女伯爵。

 そして最後の一人は、新たに傘下に降った小国から「最も誠実で有能」と推薦されてやってきた、若き文官上がりの男爵、『セドリック』であった。

「ボルグ殿、フローラ様、そしてセドリック男爵。貴方たちには、この新しく開拓した三つの都市の領主として赴任していただきたい」

 俺が告げると、三人は驚きと感動で目を見開いた。

「俺のような敗軍の王に、これほど立派な新しい街を任せていただけるとは……! この命に代えても、民を豊かにしてみせます!」

 ボルグが感涙に咽びながら深く頭を下げる。

「医療と福祉の知識を活かし、誰もが安心して暮らせる優しい街を築き上げますわ」

 フローラ女伯爵も優雅に微笑む。

「わ、私のような若輩者が……! しかし、レイン公王の御期待に沿えるよう、誠心誠意、政務に励む所存です!」

 セドリック男爵も、緊張しながらも力強く決意を語った。

 彼らのような、本当に民を想う「善良な貴族や人材」を適切な場所に配置することで、アシュタルや絆紋公国本国への過度な人口集中を防ぎ、広大な大陸全体にバランスの取れた物流と発展のネットワークが構築されていく。

 国境という概念が消え去り、かつての空白地帯が、人と魔物が共存する希望の都市へと生まれ変わっていく。

 世界を繋ぐ巨大な調和の輪は、極北の闇を払った俺たちの手によって、今まさに盤石なものとなろうとしていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作 【安全第一】死に戻り商人の異世界スローライフ~万能魔法と『リトライ』を駆使して完璧な物流網とインフラを整備し、のんびり隠居を目指します~

https://ncode.syosetu.com/n1368mp/

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