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『PAX UNIVERSALIS 2041/蒼の序曲』  作者: 幸塚良寛
三章.BLUE DAY / 思い邪まなる者に禍いあれ
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19.蒼穹の夢―2

 蓬莱基地の、島としてのかたちは円錐形、と言うか、餅つきなんかに使う(うす)の形にちかく、まぁ、典型的な火山島ぽいと言えなくもない。

 俺は空路のみ、上空のみからでしか見たことないから知らないけれど、船の上から――海面高さから眺めたならば、きっと小さい子供が絵に描くような、南洋に浮かぶ小島な姿なんじゃないかとは思う。

 と、

 殊更こう言うからには、その実際は全然まったく違ってるってなワケで、

 まず、上空――飛行機から見れば山のてっぺんは完全にフラット。まったくデコボコの無い真っ平らな平面になっている。(ついでに言えば、真上から見た()()()は真円だ)

 プリンみたいな形と言ったらわかりやすいだろうか。

 火山島だったら、頂上部はすり鉢状のクレーターになってる筈だが、そうじゃない。

 とは言え、普通の(?)山の頂上部分を削りまくって成形したというワケでもない。

 島のかたちを、『火山島ぽい』と言ったけど、この、『ぽい』というのが実は重要で、いま俺が近づきつつある孤島は、一見、島のように見えて島に(あら)ず。

 実はすべてが人工物――生体建材なる素材で出来ている。

 まぁ、なんて言うのかね、海水のなかに含まれている成分を析出させて人工的に珊瑚礁とか貝殻だとかを造りだしてる感じ?

 なんでも強度はコンクリートより強く、重量は鉄材よりも軽い。

 それでブロック状に『部屋』をつくって内部に気体を封入しとけば水に浮く。

 そんな構造物を無数につくって合体させて、最終的に島を一個つくりあげる。

 それが蓬莱基地。

 かたちやサイズは島だけど、島のように見えて島に非ず。

 つまりは、フネ――島の大きさをしたフネなわけなんだ。

 技術の驚異だか金の使い道だかに何ともビックリだよな。

 ()()に『地図に載ってない』って言ったと思うけど、理由はコレ。

 どんなに、非常識なくらいにどデカかろうと、『船舶』は地図には載らないだろ?――そーゆーことさ。

 正真正銘、『なんじゃ、そりゃ~!?』な現実。

 噂にゃ聞いていたけれど、俺自身はじめて実物を目の当たりにした時は開いた口がふさがらなかったもん。

 よっくもこんな『島』を作ったもんだ。そのうえ軍事専用って、税金の無駄遣いそのものじゃね? って。

 と、

 まぁ思うに、それほど先の大戦でうけた衝撃がデカかったって事なんだろう。

 東京を核攻撃したのはソ連――当時の超大国で、当時の敵側の盟主だった国。

 そう思われていたけど、実はそうじゃないかも知れない。

 ソ連のしわざと見せかけて真犯人は他にいるのかも……。

 何故って、潜水艦から発射されたことだけは間違いない弾道弾(SLBM)は、日本海側からではなくて、太平洋側から発射されたことが後の調べで判明したから。

 そして、当時から対潜水艦戦(ASW)に秀でていた我が国は、ソ連のフネがそちら側にいることは掴んでいなかった。

 つまり、

 東京を破壊し、あまつさえ当時の今上陛下を(しい)した下手人は、実は味方なはずの国だったかも知れない――その疑いが拭いきれないことになる。

 てなワケで、大戦から何十年もたった今でも、その真相は闇の中。

 諸説紛々たる状態のままでいる。

 犯人と目される国々は、いずれも事実上滅びてしまったし、大戦直後の大混乱のなかでは何を調べようにもどうしようもなかった。

 ハッキリした真実(こたえ)なんてシロモノは示したくても示せない――そういう結果で終わっても、だから、仕方ないっちゃあ仕方もなかったワケさ。

 ただ、

 そういう状況下で、日本に住まっていた者たちの心にわだかまったのは、疑心暗鬼と憤懣――行き場を失った被害者感情となってしまった。

 よく、戦後史を語る著作や番組なんかで、『あの時、大戦の惨禍からほぼ無傷な状態で生き残った大国、日本が、被災国にもうすこし手厚く手を差し伸べていたら……』というのがあるけれど、当時の国民感情からすると、それはとうていムリなことだったんだ。

 なにしろ一億二千万人からの日本国民、そのほとんどが、『自分たちは、いわれなき核攻撃を受けた被害者だ。なのに、世界のどの国もそのことに同情も同調もしてくれない』って悲憤慷慨してたんだから。

 その『世界』――日本以外の国々が、大戦によってこうむった被害はもっと深刻だったのにもかかわらず、だぜ?

 せいぜい日常生活にチョッとの不便を感じる程度であったのに、生きるか死ぬかの瀬戸際におかれた他国の人間に『日本の立場を理解』してもらおうとして、それが得られなかったから腹を立てた。

 一種のヒステリーと言うか、冷静さを欠いた心理状態に陥っていたのにしても何だかなぁ……、というのが、だけど当時の日本だったんだ。

 つけくわえて言うなら、核攻撃をうけた結果、当時の今上陛下がお亡くなりになったのもデカかった。

 大戦の勃発を見て、与党野党問わず、いわゆる国会議員の先生たちは、自分の地元を慰撫するため、とか何とか理由をこねて首都から脱出していたけれど、陛下はそれをヨシとはされなかった。

 皇太子殿下をはじめの皇族たちには疎開を命じられたけど、ご自身は東京を頑として離れられなかった。

 結局、それで落命されたワケだから、そりゃ国民感情も荒れるわな。

 すべてが終わった後に、国会議員の先生たちが東京にノコノコ戻ってきたって、待っているのは国民からの非難に罵倒、軽蔑、断崖、リコールの嵐となっても仕方ない。

 逆に天皇家に対する崇敬の念や評判は爆上がりとなって、国会議員の総取っ替え――総選挙の末に新たに選出された国会議員、政府は、ここに天皇紀元の復活を宣言するに至ることとなった。

 いかなる意味においても、我と我が身をまもるため、皇家に(おもねっ)ってみせた――自分たちこそ天皇家に対し尊崇の念を抱いている右代表ですとアピールしてみせた、とそういうワケだ。

 オトナと言えばオトナだし、卑しいと言えば卑しいことこの上ないだろう。

 ま、とにかく、そうしたネガな感情たちが、つまるところ現在の日本をかたちづくる礎となった。

 自国の『外』に向ける視線の冷たさと、現代版鎖国とも言うべき主義、その具体化だ。

 要するに、蓬莱基地は、そうした我が国の心理的、経済的、政策的、軍事的な諸々の要素が結晶し、かたちをとったものということ。

 なんならハリネズミ化した国家の象徴と評していいかも、な施設なワケなのさ。

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