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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第110話 妖精の石とMagica puella(魔法少女)

ライブコンサートが終了した2日後、祝勝会会場の中央に異形の者達の集団が集まり否が応でも人目を惹く。

天使・悪魔は美男美女で2m前後の巨人であり、妖精に至っては大きさが3mから30cmとバラバラで同じ種族に見えない。


彼らは六花を取り囲み会話を楽しんでいる。

なお会場内は撮影禁止でありスマホの類も全て受付で取り上げられていた。


今回のライブに4つの世界から参加した4種族は、いずれも未来の六花がプレインズウォークで知り合った者達である。


天界 天使 ミカエル・ウリエル


地獄界 悪魔 ルシファー・バビロン


妖精界 妖精 ウンディーネ・シルフ・ノーム・サラマンダー・ピクシー・ホビット・ゴブリン・トロル


異世界 竜 白竜のベル・黒竜のスズ・赤竜のリン・青龍のカネ・緑龍のレイ


「天使と悪魔って仲が悪いと思ってた!」


「そんな事はありません。

私達は神により大いなる役目を仰せつかった同士であり、互いを尊敬しております。」


2m近い身長のウリエルがしゃがみこんで茜に答える。


「不仲であると人間に信じ込ませたのは異星人達である。

我らは人間を含めて元を辿ればひとつ地球から誕生した生命である。


時が進むにつれてユニバースから分岐してマルチバースへと至り、現在では天界、地獄界、現界、異世界、妖精界、幻想界の6つの多元地球が確認されている。

もしかしたらもっと存在するかもしれんがな。」


更に背が高いミカエルが膝を折り茜の頭を撫でた。


「皆さん肉体を持ちながら長命種ですよね。

なぜ現界の私達は短命種なのでしょうか?」


「それは異星人に遺伝子操作をされてしまったからなの。

元々は私達と同じ遺伝子でしたがDNAの数を極端に減らされ、能力の多くを失ってしまたのが現界の人間よ。」


萌葱は背中から肩に手を置くバビロンを見上げる。


「君達が地獄界で得た藻類は遺伝子修復ナノマシーンなのであろう。

遺伝子走査をしたがオリジナルの君達は我々よりも複雑で多くのDNAを有しているようだ。

まるで神のような遺伝子であるな。」


しゃがみこんだルシファーが萌葱の目を見つめ微笑んだ。


「ねーねー蒼!パンツ履いてないね!あたし達と同じだ!」


「これは私のポリシーです。てかっどこから出て来るんです!」


スカートの中から飛び出てきたピクシーをむんずと捕まえる蒼。


「あなた達気前よく妖精石を配ってたけど大丈夫なの?」


「んー?!分かんねぇ!ただの石ころだしだ丈夫じゃね!」


夜花子はホビットの無責任な答えに眉間を押さえた。


「桔梗よ!オラの嫁っこさなってけろ!」


「ごめんでち!大きすぎるでち!壊れるでち!」


「ほらな!だから無理だって言ったんだよ!俺っちならどうだ!」

「ごめんでち!小さすぎるでち!足りないでち!」


桔梗は3mを超えるトロルと1mに満たないゴブリンの求婚をバッサリと切り捨てた。


「みんな今日はありがとうね。

流石は4大精霊よねこれ以上ない位の演出だったわ!」


「私達こそとっても楽しい舞踊を見れて元気が出たわ。

生命の活力こそが私達のとっておきのご馳走だもの。

でも結構頂いちゃったけどよかったのかな?」


「観客のみんなの笑顔みたでしょう?

みんな大満足してたから平気平気!

きっと明日はケロッとしていつもの日常にもどるから!」


珊瑚の周りを風、水、火、土の光玉が嬉しそうに伸びたり縮んだりして飛び回っていた。


「姉御達って顔が広いよね。まさか幻想の生物とお知り合いとは。」


「食べられそうで怖くて近づけないよ!」


AKBFの面々は異形の集団を遠巻きで見ている。

ライブの最中は集中して気に留めていなかったが、今改めて見るとよくあの連中と同じ舞台に立っていたと身震いをした。


そんななか意を決した指差総括、木荒カメラマン、小茂呂プロデューサー、古井チームSPリーダー、新井チームAリーダーの一団が異形の集団に向かっていった。


指差総括が何やら話しかけ頭を下げている。

すると珊瑚が双方の紹介をはじめ指差、木荒、小茂呂が名刺を配り始める。

幾度かお忍びで来訪していた天使・悪魔らはビジネスマナーも習得済みで律儀に挨拶を交わし名刺を交換していた。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「妖精の石でそんな事が!」


小茂呂から局への問い合わせの話を聞いた六花は揃って驚きホビットを見た。


「イヤイヤ俺だけじゃないよ!むしろピクシーの方が沢山配ってたよ!」


「だって貰い物にはお返しが必要でしょう!むしろ私は偉い!」


双方罪のなすり合いで話にならない。

そこでバビロンが現物を見せてほしいと提案した。


「これはとても濃い魔力が凝縮されていますね。

自然に発生するとは思えません。元はどこから発生したのでしょう。」


手の平で虹色に輝く石を転がしながらバビロンが質問をした。


「それね私達の排泄物よ、人間でいえばウンコかしら。」


ピクシーの答えにバビロンの顔がピシッと固まった。


「別に汚くないわよ!私達の主食は魔力なんだからさ!」


「匂いも無いし味も無い他の種族からみたらただの綺麗な石だよ。」


ピクシーとホビットの説明でとりあえず出所が分かり、人に与える影響について考察が始まった。


「どうやら人の感情に強く作用するようね。

魅了かしら?少し違うようね。

一目見ただけで感情を支配され石のことばかり考えてしまう。

心臓の鼓動が早くなり体温の上昇や発汗作用もあるようね。」


「どうしてそんな具体的に分かるの?」


夜花子の疑問にウリエルが新井チームAリーダーを指差した。


「あなた石に魅入られてしまいましたね。」


「えっ?あっ!その・・・はい。」


「さて、ここには彼女を含め11人の人がいます。

何故彼女だけが魅入られたのでしょう?」


ウリエルは目を閉じ11人に手をかざした。


「私は人間の感情を読み取る事ができます。

気を悪くしたらごめんなさいね。

そこで分かったことがひとつあります。

あなたは辛い恋をしていますね?」


「・・・はい。」


新井は弱弱しく答えると珊瑚をジーッと見つめる。

視線の先に気付いた面々が珊瑚と新井を交互に見た。


「えーとですね、極めてプライベートなことなのでここでは勘弁してください!お願いします!それよりも石を貰った人達の話をしませんか?」


皆の視線の意味を理解した珊瑚は潔く頭を下げて話を切り替えた。


「そうよね!そうしましょう!それでインタビューしたこの子達の身元を探偵を使って調査してる最中なのよ!」


小茂呂が差し出した画像のプリントアウトに六花が反応を示した。


「マリリンとカレンだ!」


「としちゃんでち!」


珊瑚と桔梗が同時に声を上げた。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


MXテレビリポーター地見 茄子は妖精の石の魅力に憑りつかれた1人であり、時が経つにつれ手段を選ばず手に入れたいと本気で考えていた。


彼女は放送時モザイクで隠されたプラカードの「としあき」「マリリン」「カレン」のワードをネット検索し、ついにSNSの彼らのアカウントに辿り着いた。


地味は彼らが配達員をしながらチームRのゲリラライブを監視している事を知り、SNSの書き込みをくまなく読み行動範囲を特定する。


どうやら週に数回、各テレビ局にデリバリーをしておりMXにも出入りをしていることを突き止める。

この日から受付フロアでの張り込みが始まり、開始から4日後ついにマリリンの姿を見つけた。


「マリリンさんちょっとお時間いいかしら?」


ロケ弁当を受付に預け、駐輪場に向かうマリリンの背後に忍び寄り腕を掴んで声をかける。

マリリンは一瞬ビクッと体を震わすが騒ぐことなく振り向いた。


「お姉さんも石が欲しい人かな?」


「な、なんでそれを。」


「2日前から何人もの人に絡まれてるからね。」


「そうなのなら話が早いわ。石を譲って欲しいの。

お金ならあるだけ払います。お願いします。」


「いいよ、あげる。お金はいらないよ。」


マリリンはガマ口ポシェットから石を取り出すと地味に握らせた。


「本当にいいの?お金要らないの?」


「貰い物だし私には必要ない物だから。

本当に必要としている人の元へ行けば石が喜ぶの。

必ず肌身離さず持ち歩いて大切にしてあげて。

決して金庫とかに入れて保管しないでね。


それとお姉さんが必要としなくなったら、別の必要としている人に譲ってあげて。

落としても必要としている間は必ず戻ってくるし、逆に必要としなくなったら勝手に消えることもあるって聞いたよ。

それじゃ次の配達があるから行くね。バイバイ。」


呆気に取られているうちにマリリンは自転車に乗り街の喧騒の中へ消えていく。

地味は石をペンダントにして名前を付け肌身離さず持ち歩いた。


「英蔵さん」


地味が石をギュッと握り撮影スタッフと打ち合わせをする嬉無うれないディレクターの姿を見る。

嬉無の心には未だ死んだ妻が棲み付き地味が入り込む余地がない。

何度アプローチしても素知らぬ顔で躱され相手にされない。

それでも諦めきれずに視線で想いを伝え続けていた。


「いつか必ず。」


執着する強い想いに反応するように石の色が濁っていくことを地味は気づかずにいた。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「この人そろそろ魔物化しそうだね、危ないところだったよ。」


中天に真円の月が輝く夜、白い4本足の妖精が地味の枕元に立ち万色に濁りきった石を見て呟いた。


「人間の持つ念の力は凄まじいものだね。

これだけの量があれば3日位パーティーができそうだ。」


妖精が石を咥えると白い体が濁りはじめ漆黒に染まりきると吐き出す。

濁りが消え元の虹色の澄んだ光を放つ石に戻っていた。


「人間の念は例えるなら心を酔わせる美酒だね!

さて早く帰って皆で楽しもう!」


妖精は千鳥足になりながら闇夜に消えていく。


新円の月夜、数千の白い4足の妖精が世界中に現れ石の濁りを回収したが、中には忠告を守らず金庫に保管したため回収できないものもあった。


「QBEの報告で日本で濁りを回収できなかった石が4個。

今日の新月の夜、4人の魔物が産まれるわ。

私達の役目は魔物の濁りをこの石に吸収させること。

この日の為の猛特訓の成果を見せるのよ!」


AKBF劇場舞台に27人のメンバーが揃い、新井チームAリーダーの説明を真剣に聞いていた。


「チームRは世界中を移動して13の魔物の対処に当たります!

私達も負けていられません!気合入れていくよ!」


古井SPリーダーの激励にメンバーが大声で「ハイ!」と答える様子を見て、QBEと呼ばれる四足の白い精霊が「君たちに期待してるよ」と無感情のエールを送った。


「AKBFマギカ隊行くよ!」


「応!」


4隊に分かれると妖精を中心に円陣を組み、古井の号令に応えた瞬間にメンバーの姿がかき消えた。

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