不揃いの林檎たち
次回の更新は7/26です。
修正が間に合わなかったので今回は少なめです…。申し訳ありません。
「いやだって…! おかしいって! 何で皆もよおさないの!?」
中腰の姿勢のまま立ち上がって背中越しに言い訳を叫ぶ。すると背中越しにカラリリのクスクスと笑う声が聞こえた。振り返って見ると彼女は軽く握った拳を口元へ添え、人差し指だけを唇に掛けるようにして笑っていた。それを見て私も表情を崩すと、カラリリはこちらを見ながら笑顔をひそめて言った。
「ルリコさん、どうぞ行ってください」
ええ…何でぇ…? わからない…。乙女心と秋の空…。
用を足して戻ると、皆ティーテーブルから席を立って解散の雰囲気となっていた。皆に近づくとパインゲート教授が杖を突いてこちらを向いた。
「ルリコ様、今日はとても楽しかったです。エルフは美に興味があると聞いたのですが、今日の話はつまらなかったでしょう?」
そう言う教授に微笑み返して言う。
「いえ。面白かったです。しかし結局何故人はエルフに惹かれるのか? 何故人は人に惹かれるのか。それが謎のままなのが心残りです」
それを聞いた教授は片方の眉をひそめて言った。
「ほう。ではルリコ様。仮でも良いのですがそれは何なのだと思います?」
私は唇に拳を当てて言った。
「…そうですね。私は心だと思っています」
「ココロ?」
私の言葉にカラリリが振り返る。それに頷く。
「うん。心ってなんていうか…。気持ち? 自分の中の声みたいな感覚なんだよね」
「それは神学では悪魔のささやきと称されるものですね。成程。カラリリ様はルリコ様に
…失礼」
何かを言いかけた教授が顔を俯かせる。見ると教授をカラリリが横目でにらんでいた。そんなカラリリにため息をつく。
「ねえ、カラリリあっちで話そう」
私は教授やフラン達と離れた場所でカラリリに耳打ちする。
「ねえ、カラリリ。心っていうのは…説明が難しいけど。カラリリが言ったようなどうしようもなくそうしてしまう衝動が来る場所…? みたいなものなんだ…胸の中にあるもので」
それを聞いたカラリリは私を半眼で見つめる。
「やはり貴方はソレを知っているんですね。私が貴方のことを気にしている理由。それの一つが貴方が物事に対して実に明晰だったということ。貴方だったら私のこの胸の衝動を御する術を知っているんじゃないですか? もしそうなら…」
そう言って頭を下げようとしたカラリリを手で制して言う。
「いやいや。カラリリ。それはね。誰にもどうすることもできないんだよ。私もそう。そうじゃないと生きていけない様な衝動。…というかそういう内心に言葉にできない欲望とか声とか衝動を全部ひっくるめて心あるいは夢って言うんだよ」
それを聞いてカラリリは自分の胸に手をあてて言った。
「ではこの胸の醜悪な衝動はどうすることもできないのでしょうか?」
それに私は肩をすくめる。
「さあ…。でも私はそういう時それに名前とか言葉を付けてみるけどな…。おっちょこちょいの私…とか、私の夢とか」
「それはこの衝動に名前を付けると言うことですか? というより、この衝動が私のモノだと認めることが必要なのですね…。それはなんだか不服です」
「いや、というより…多分…。認知療法的なものなんじゃない?」
私の言葉にカラリリは腕を組んで言う。
「ニンチ? …やはり貴方は明晰じゃないですか」
「そんなことないよ。療法って病気に対する言葉だけど…。私はカラリリは病気じゃないと思ってるし…多分」
その言葉にカラリリは片方の眉をピクリと動かす。そして顔を伏せると言った。
「…そうでしょうか? 私は…何か自分が病んでいるかもしれないと思う時があります」
「…初めの違和感は母の万霊節でした」
「万霊節?」
「ええ。万霊節で母の棺に拝礼しに行った時です」
そう言うとカラリリは、自分の顔半分を隠した。
「あの時、私は地下神殿に祀られた母ミリアルドへ、成人したことを報告しに参りました。側近たちが下がり、母と私だけになった時です。ふと、母の髪の色が変わっていることに気づきました。幼い頃の私の記憶にある母の髪は、燃えるような赤だったはずです。ですが、その時目の前にあった髪は、輝く金だったのです」
「うーん…経年劣化で変色したとか?」
「薬品の効能で木乃伊の髪が変色する可能性については私も考えました。だから私は母の生前の姿を描いた肖像画を見てみたのです」
私はごくりと生唾を飲み込んだ。
「そこに描かれた母の髪は金色でした。私の記憶とは違っていたのです」
「…じゃあ記憶違いなんじゃない?」
「そう考えるのが普通です。でも…私は母の髪が赤だったと確信しているのです。化粧台で髪をすく母の燃えるような赤い髪。母は私の髪色が同じだねと微笑んでいた確かな記憶があるのです」
「でも証拠が…」
「そう、全ての証は母の髪は金だったと示している。でもルリコさん。記憶の中で母の髪の色を間違えることはあっても…。自分の髪の色を間違えて覚えているなんてこと…あると思います?」
確かに…。親の髪だってちょっとあり得ないのに…。自分の髪色の記憶が違うなんてこと…考えにくい気がする…。でも…。
私は目の前のカラリリの金色の髪を見つめる。その視線を受け止めたカラリリは手の平を下げて隠した顔半分を見せる。
「ルリコさん。これは一体どういうことなのでしょう? 私は一体何者なのでしょう?」
カラリリの前で口元に手を当てて唸る。
目の前のカラリリは影武者……? いや、違う。影武者なら自分が偽かもなんて言い出す理由がない。だったら…。
私は自分の口元に指をピンと立てる。
「…催眠術…とか…?」
「サイミン…? 何ですかそれは?」
ああ、この世界にはまだ催眠術ないのかな…?
「えっと…催眠術は人に暗示をかけて操る術で…。多分偽の記憶とかも埋め込めるのかも」
「人の記憶を書き換える術……そのようなものが本当に?」
「私の世界にはそういう話があったの。実際にできるかは分からないけど…」
それを聞いたカラリリは顔を伏せて考え込む。
「…そういえば古い分家には古代の神殿では暗示を使った治療などが行われていた記されていました。術師の言葉だけで敵味方を取り違えたり、力が強くなった兵士がいたとか…」
「そうそう。他にも自分を動物だと思い込ませたりもしてたっけ…」
その言葉には答えないまま、カラリリはこちらを向いて言った。
「つまりあなたは私のこの偽りの記憶がその催眠術で埋め込まれたと言うんですが? 一体何故? 誰に?」
「それは…カラリリからの血統の正当性を疑わせるため。カラリリのライバルみたいな人がそうしたんじゃないかって…
その言葉にカラリリは口元に手を当てて言った。
「王位継承の敵なんて数えきれないほどいますが…。私の叔父ならあるいは…。いや、でも叔父にそんな陰謀が行えるかどうか…。むしろこちらの派閥が偽の血統である私を取り立てたの方があり得る気がするんですが…。その場合…王位の簒奪者は私ということになりますか…」
そう言葉を重ねるほど、カラリリの声はどんよりと重くなっていく。
…うーん。そこまで考えると…カラリリが心配になるんだけどな…。
「ねえ、カラリリ。国の寿命ってどの程度か知ってる?」
「はい? いきなりなんですか?」
怪訝そうに眉をひそめるカラリリに、私はあたふたと答える。
「いや、人間の国ってさ……実は平均寿命は大体二百年らしいんだよね……」
「はあ……? しかし連邦は滅ぶ前は千年以上の歴史があったはずですが……」
「いや、あくまで平均だから……。それに、名前が続いてても王朝が変わったり、支配者が入れ替わったり、都合よく記録が整理されたりするでしょ」
「……それで?」
「つまり王家の記録って、神様が石に刻んだ真実じゃないでしょ。その政治が誰を幸せにしたかでしょ?」
「つまりあなたは良い政治をするならそれが簒奪者でも良いと?」
「うん。だって重要なのは誰がやるかじゃなくて何をするかでしょ? 逆に言えばいくら正当性があってもダメな政治したら国は潰れるんだから」
カラリリは顔を伏せるとフッと笑っていた。
「なんですかそれ…本当に貴方と言う人は。…最悪です」
「…私はカラリリの夢が王位継承なら。王位の正当性とかどうでもいいってそう思うよ。だってカラリリなら…いい政治しそう…な気がするから」
そう聞いたカラリリは困ったように微笑む。
「いや、でもアイデンティティは重要か…」
「あいで…? なんですか?」
「えーとだから…。カラリリってさ。お父さんの後を継ぎたいの?」
「急に何ですか?」
「まあ、良いから教えてよ」
「決まってます。父の世継ぎは私しかありえません。父の世を継ぎ、腐敗した議会を壊す。それが私の使命です」
「ふーん…。だったらさ…カラリリ。さっき言ってた違和感を覚えた場所って、もう一回確認しない?」
「…母の棺を、という意味ですか?」
「いや、棺そのものじゃなくて。保管してる場所とか、記録とか、誰が触れられるのかとか…」
「…何を言ってるんですか? 先ほど貴方は政さえ良ければ誰がやっても同じと言ったばかりじゃないですか」
「いや…でもさ…。自分のルーツに確信を得るのはいいかなって。カラリリもモヤモヤしたままは嫌でしょ?」
「ふざけないでください。私の胸のつかえを取るために、神聖な神殿に足を踏み入れることなど許されません。あそこは死者の国なんですよ」
「……」
「それが許されるとすれば、血統の欺瞞が治世を乱すと判断された時だけです」
「うん、だから。カラリリの血統に欺瞞があったら大変だから確認した方が良くない? ってこと。カラリリ達当事者じゃない第三者が」
「貴方という人は…それは屁理屈です」
「でも屁理屈は理屈でしょ? 確認すれば済むようなことなんだからさ」
「開き直らないでください」
「開き直るよ。だって、夢を叶えるのに現実を見ないなんておかしいじゃん」
「…夢? そんなこと言って本当は貴方は私が失脚されると困るっていう私情じゃないですか?」
「そりゃ私情だよ。でも私は個人的にカラリリが失敗するのを見たくない。それだけ」
「貴方という人は…本当に…最低ですね」
「いや、三回は流石に傷つくって…」
「仕方ありませんね」
「え…? いいの?」
「貴方がそうしろといったんじゃないですか」
「いや、だって…。お家の事情がどうのって言うかなって…」
「家のためでも、治世のためでもなく。私のためなのでしょう?」
「……まあ、私の為でもあるけど」
「ならば、私も私情で応じます。ただし、許可ではありません。黙認です。母に無礼を働いたと判断されれば、その場で追い出されるでしょう」
「それって…追い出されるだけじゃすまないんじゃ…」
「大丈夫です、その時は私が一緒ですから」
カラリリがニコリと怪しく笑う。
「ああ…うん。でもどうだろう。ちょっと…なんか怖くなってきた」
「大丈夫です、私は最後まで裏切りません。共犯ですから」
どうしよう、なんかカラリリの目が怖い。
「うん。そうだね。まあ、でも一旦持ち帰って検討してみようかな? ただ行っただけじゃ捕まるだけだしね。また今度連絡する。じゃあ…」
そう言うと即座に踵を返して足早にフランとアキレアの元に戻る。
「あれ? ルリコ。遅かったね? 何話してたの?」
そうほほ笑むフランの顔をずっと見つめていると胸に安心感が充足していく。
「本当にどうかしたの? 顔青いよ?」
そう首をひねるフランに私は問いかける。
「ねえ、フラン。外交途絶ってどう思う? 鎖国のやり方知ってる?」
「いや、本当に何を話してたの?」
墓守とアキレアが引いて来たシュラにお尻を乗せると彼女たちも豪快にシュラにまたがる。そのシュラの足元に杖を突いたパインゲート教授が来て私達を仰ぎ見た。
「今日は実に有意義な一日でした。また大いに語り合いましょう」
「ええ、是非」
そう頷くフランが見えていないかのようにカラリリが私を直視して言う。
「ルリコ様、是非今度私の国にいらしてくださいね」
「勿論、行けたら行きます」
カラリリの満面の笑顔に笑顔で返しながら、見えない手でアキレアのマントを必死に引っ張り続けた。
「あんなに仲良かったのに。急にどうしたの?」
並走するシュラの上でフランが声を大にして投げかけて来た。
『うーん。いや、なんか…。カラリリと話してたら…カラリリが自分のお母さんが…記憶と違うって言い出して…。それで今度一緒に確認する? って言ったら…。それは墓暴きだけど…でもカラリリがその時は私も共犯みたいに言い出して…』
私に言葉にフランは天を仰いで言った。
『待ってわけがわからない。ちゃんと説明して』
『えっと…だから。最初は…カラリリがお母さんの記憶がおかしいって言い出したんだよ。昔は赤髪だったって覚えてるのに、肖像画もご遺体も全部金髪なんだって。だから自分の記憶がおかしいのか、それとも誰かが遺体を変えたんじゃないかって悩んでてさ』
『え、それってカラリリは大丈夫なの?』
『大丈夫じゃなさそうだけど…。でもカラリリってちょっと変わってるからさ…。私はカラリリの記憶違いかな…って私は思ってるけど』
『ふーん…ていうかさ…。髪の色の違いとか親に似てるかってそんなに重要?』
『…? どういうこと?』
『だってさ…。私達って時々金髪の両親から黒髪が生まれたりするし…。それに皆あたし達エルフって皆似たような顔してるじゃない。美人って方向でさ。正直顔立ちで誰が親とか見分けつかなくない?』
『ああ……まあ。…言われてみれば。』
『だからカラリリが親と断定するのに顔とか髪色を持ち出すのはなんか…新鮮に感じちゃった』
自分の手に顎を当てて首をひねる。
『…。ていうかそうなると…。私達って親をどうやって親って認識しているだろう?』
『まあそれは…。同じ屋根の下で暮らしているかとか…魂が似ているかとかじゃない』
『…なんかむしろそっちで断定してる私達がおかしくない? って気がしてきたんだけど…』
『まあ、元々私達は大いなる母の子なんだから…。全員が家族みたいなもんでしょ』
いや、それ言ったら人類だってアフリカの一人の女性を祖とするから兄弟って言ってるのと同じじゃん…。大体大いなる母は黒髪だったって言うけどじゃあ金髪のエルフはどこから…っていうか…。
『…それ言ったらさ…。そもそも大いなる母からゾマとか道化さんみたいな容姿の人が何で生まれるの? って思うんだけど』
『いや、ルリコ。実はゾマさんも道化さんも顔立ちは整ってるんだよ。シーブ長老だって老いてるけど顔立ちは良いでしょ?』
『あー…。まあ、確かに』
フランはシュラに揺られながらニコリと笑う
あれ、でも待って? そう言えば…私が城で会った人間の方も美形が多くなかった? ああ、でも城の人達は顔採用的なものがあってもおかしくないか。…でも農村でもそんなに顔が崩れた人なんていなかったんだよなぁ…。
私の脳裏にクリシダが従えていた狼の群れが思い浮かぶ。
そう言えばクリシダの狼もそうだ…。森の獣も。そういえば、私この世界で"先天的な形態異常”を持った存在を見た覚えがない。
そう思ってふとフランの金髪を見て大地に広がる金の麦畑を思い出した。
『…ねえフラン。稲とか小麦とか植物だけど…普通と全然違う形になることってある?』
『突然なに? んーまあ…形が悪いのができることはあるよ。育たない株とか、実が入らない穂とか』
『でも大きく形を崩れたりするものはない? 例えば別れた穂の数が他より多かったり少なかったり…』
『それは見たことないかなぁ…』
…うーんつまり…。育たないものはある。でも、型そのものから外れるものは少ない? 人も獣も植物も……? 未熟児もいる。病もある。痣だってある。異常そのものは存在する。でも、先天的な形態異常はない? …なんで?
顔を伏せて深く考え込む。
あれ…? でも道化さんって小人症っぽい感じだったし…。じゃあやっぱり先天的な形態異常はある? でも比率がおかしい? それとも生まれてすぐ死んじゃっただけとか…? ああ…なんかわけわかんなくなってきた。
『わからないなぁ…』
そこでふと思いついて聞いてみた。
「ねえ、アキレア」
「なんでしょうルリコ様」
「近親交配って聞いたことある?」
その言葉にアキレアは軽く振り返る。
「…確か学校で通っていたころに…伝説として昔の一族に近親同士で結婚をしてた者達が居たとは聞いたことがあります」
「その人たちはどうなったの?」
「その者達は代を重ねるごとに先天的な形態異常を持つ子供が生まれる様になり、やがて滅びたとされています」
「滅びたって…。今は居ないってこと?」
「そうですね。恐らくその一族の後の世代は親や教師に近親相姦を禁忌として教わったとこで途絶えたのでしょう。やがてそれは遠い過去の伝説となったのではないでしょうか?」
…ふーん。でも逆に考えると…。歴史の途中までは近親交配とか先天的な形態異常みたいなのが居たってことか…。
そう思ってアキレアの腰から手を離して腕を組むと、背後からフランが言った。
『あのさルリコ。話を戻すけど…。カラリリは繊細なの。だからルリコが気を付けないと駄目』
あ…。そう言えばそう言う話だっけ…。
『カラリリはずっとお嬢様やってて友達なんていなかったんだから。距離の取り方がヘタなんだよ』
『いや、まあそれはそうだけど…』
『ああいう子は何回か遊んであげれば多分落ち着くから。行ってあげな?』
『ええ…。遊び感覚で墓荒らし行くの…? こわ…』
『怖いとか言っちゃ可哀そうだよ』
『いや、別にそれはいいんだけどさ…。でも急に共犯とか言い出すのって…メンヘラっぽくて怖いっていうか…』
『メン…? 何?』
『情緒不安定みたいな…』
『そう? カラリリは私にはそういう態度取らないし…。多分ルリコだけだよ。さっき話してたルリコを見ると好きすぎて意地悪したくなるみたいな感じの延長じゃない? ホラ、男が女に意地悪するような』
ああ…。まあそれはわからなくもないけど…。
『それにさ…ルリコに意地悪したくなる気持ち…私もちょっとわかるかも』
『ホワイ?』
『いやなんていうか…。ルリコちょっとキレイになってる気がする。それでなんか…ドキドキするんだよね』
『ええ…?』
驚いて振り返るとルリコはからかうように微笑む。
『ホラ。良く恋が人を変えるって言うじゃん? 多分ニコラスとの関係でルリコも変わったんじゃない?』
ああ…まあ。確かに恋は人を変えるって言うけど…。それは多分男と付き合うと女性っておしゃれしたり明るくなってキレイになるっていうか…。男と居てホルモンが分泌したりするせいもあるんだろうけど…。そんなに変わるもんなのかな?
そう思って考えを巡らせると自分の脳裏に過去の自分の姿が思い浮かぶ。
いや、でも前世の私も肌がボロボロだったり髪もぼさぼさだったのって…離婚や仕事の激務のせいって考えると…。結局、それって恋っていうか置かれた環境や立場で変わるってことだよね。
…。
そこでふと私の中で何かがひらめきかけてそれを言葉にしようと口を開く。
『…ねえ、フラン。権力は人を変えるって言うけどもし…』
そう言ってから二の句を告げようとした時アキレアの声がさえぎった。
「ルリコ様! なんか様子が変です!」
その言葉に振り返るとフランは開拓地の砦の向こうを指で刺していた。フランの指の先を追うと、城の外の畑に農民たちが集まって何かを言い争っているようだった。




