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石中の恋歌  作者: モノノベワークス
一対一対応の枕辺(まくらべ)
83/92

夢の終わり

次回の更新は6/6です。


唐突ですが既定の改定に小説を書いてる際にAIを用いているかを回答する必要があるらしいです。

先んじて言っておきますがAIはGPTを使ってます。しかし方言や騎士の言葉遣い、時代考証やプロット相談、整合性のチェックぐらいです。使ってて思うのですがAIがあれば大作を書けるほどのものではなく便利な道具どまりという印象です。ですが、頭のリソースを方言の調査や時代考証に向けなくて済むので楽なのは事実です。とはいえ、参考書籍を読まないとAIの嘘や間違いを見抜けないので結局万能な道具ではないというのが私の評価です。

 あ、これちゃんと答えないと駄目な奴…。


 その目に生唾を飲み込んでゆっくりと答えた。


「それは私がクラリネが今みたいに生きてくれる方が良かったから。前のクラリネの仕事が嫌だったから。…でも、私がそうしたかっただけなんだ。ごめん 」


 その言葉に彼女は口を開く。


「わたくしは、ルリコ様のお言葉が正しいと思ってついてきました」


 クラリネの言葉が冷たく感じて手が震える。


 ヤバイ…。本当のこと言ったら嫌われるかも…。でも私は…。クラリネに嘘をつきたくない…。


 そう思って目を瞑ると、私は頭を下げて言った。


「…私は、クラリネをあそこから連れ出したかった。だから、“貴方のためだ”みたいなことを言った 。それは本当にゴメン」


 その言葉が宙に消えて、どれくらいの時がたったか。クラリネの小さいため息と共に「仕方ありませんね」と小さく呟くと続けた。


「…正直、ルリコ様はズルいです」


 その言葉で私の背筋に冷たいものがはしる。顔をあげてクラリネを見つめると彼女は横に居たラッセルの手を取ってお互いが見つめっていた。


「でも今の私は…幸せです。それは事実です」


 そして私に困ったような笑顔を向けて言った。


「ルリコさん、確かに貴方は私を誘導するような言動はあったと思います。でも貴方が私を騙したと思っているならそれは間違いです」


 そう言うと、クラリネは自分の胸に手を当てて言った。


 ――だって最後に決めたのは私ですから。


「人の中には娼婦を見るとそんな仕事は止めろという人も居ます。そんな中で私は貴方に付いて行きたいと思ってしまった…貴方の言葉がとても正しく思えてしまったから」


「貴方は、もっと…清廉せいれんな方なのだと思っておりましたが、残念です」


 その言葉に私は胸がドキリとする。


「しかしそうなると不思議です…。ルリコさん、貴方は」


「え、はい」


「何故神を信じないのですか?」


「え? 何が?」


 私の素っ頓狂な声にクラリネはクスリと笑う。


「もし神が正しいのなら、その答えに従えばいいでしょう? けれど貴方は、いつも自分で確かめようとする。…ルリコさんは、本当は神を信じていないんじゃないですか?」


 そう…なのかな? まあ…そうかも? でも何故神を信じないのか…? だよね? …何でだ? わからん。


「うーん何でって。言われても…。信じてない…から? だって…神様が居たら…」


 私の脳裏に授業やテレビで見た戦争の映像が映し出される。テレビのCMで流れる貧困にあえぐ子供たちの映像が映し出される。


「世界はこんなことになってないじゃん」


 それを聞いたクラリネはクスッと笑った。


「神は偉大で、私達にははかり知れない深謀遠慮しんぼうえんりょがあるかもしれないじゃないですか」


「…そうかもしれない…でも私は…。運命なんて信じない。仮に神がクラリネにあんな仕事を振ったなら…。何回やり直してもクラリネにやめさせて私のところに来させると思う」


 それは嘘じゃない。


 それを聞いてクラリネは不安そうに胸に手を当てて言った。


「……そこまでして、わたくしを?」


「するよ。だって友達でしょ?」


 そう言うと、彼女は手を胸に当ててかみしめるように目を瞑ると、また開いた。


「そうですね。私もそう願います」


 その言葉を聞いて、私はホッとした。ホッとしてから私は自分の気持ちに戸惑った。

 

 なんだろう…何で私…ホッとしたんだろう? 何に…?


 そう言って前を向くと、そこには微笑んでるクラリネの顔があった。


 そっか…。私、クラリネに嫌われたくなかったんだ…。いや、当たり前だけど…。そっか私…。


――思っている以上に人に嫌われたくなかったんだな…。


 すると背後の誰かが私の肩を叩いた。振り返るとそこにはフランの姿があった。


『驚いた。ルリコって友達居たんだ』


 その瞬間全てが理解できた。


 そっかぁ…。友達ってこんな感じなんだ。てっきり友達ってもっと気を使うものだと思ってた…。


 私の脳裏にずっと人の輪の中で他人の顔色を伺っている自分が映し出される。


 嫌われない様にしなくちゃ、ヤバイこと言わない様にしなくちゃ。


 そう念じながらずっと、隠れて生きていた。


 でも…ありのままの私でもいいって言ってくれる人が…友達だったんだなぁ…。


「ありがとう」


 そう言って天を仰ぎ見ると、相変わらず空には押しつぶされそうなほどの美しい星環が流れていた。


『え? なんかゴメン。本当に?』


 フランはそう言うと私に目線を合わせて心配そうに私の頭を撫でる。


 いや、まあ…。そうだけど。


『否定はしないけど…。普通それ本人を目の前にして言う…?』


『友達だからこそだね』


 フランは私の事なんてお見通しとでも言う様にニコリと笑う。


『そうじゃなきゃ長い付き合いなんてできないでしょ?』


 そう言われて私もニヤリと笑う。


『確かに、そうじゃなきゃ貴方と友達なんかできないか』


 そう言われてフランはふんわりと笑った。


『そう。だって、私達よく似てるもの』


 本当にコイツは…。

 

「お二人は本当に仲睦まじいのですね」


「まあね」


 クラリネの言葉にフランは直ぐ答える。


「ところで先ほどの大柄な男性のエルフは…お二人のご友人ですか?」


 クラリネの言っているのはアキンボのことだろう。


「うん。私達の幼馴染」


 そう答えると、クラリネは「そうですか…」と頬に手をあてて困ったように首をコテンと傾けた。


「どうかしたの?」


「いえ、あの大柄の方は…あの少女を…どうしたいのでしょう?」


 その言葉に私達は顔を見合わせる。


「どうって…。恋人とか結婚とか…そういう感じ?」


 それを聞いたクラリネは眼を閉じて言った。


「そうですが、でしたら…あの二人は一緒になるべきではないかもしれません」


「どうして?」


「あの二人はお互いを見ていません。男は女に夢を見て、女は男の財を見るかのように」


 クラリネは立ち上がると言った。


「そういう男女は長くは続きはしません」


 そういうとクラリネは自分の額に手を置いて言った。


「いえ…しかしこれは…」


 そう言うとクラリネは二人の居る天幕に眼を細めた後、俯いた。


 俯いたまま彼女は額に手を当て、小さい悩まし気なため息を吐く。そのはかくも憂う表情に私達は息を飲む。


「申し訳ありません。今日はここで失礼いたします」


 私達の気持ちを知ってか知らずか、彼女はそう言うと、夫のラッセルに身を寄せるようにしてその場を離れて行った。


『キレイだったね…笑っている時よりずっと…』


 その言葉に私は無言で頷いてフランを振り返る。


『でもなんだったんだろう、あんな思わせぶりなこと言って』


 それに答えようとして言葉が出なかった。


 多分…クラリネは気づいたんだと思う。二人の間にある、ほんのわずかな“噛み合わなさ”みたいなものに。そして、二人を“そういう目”で値踏みしてしまった自分が、嫌になったんだと思う。


 私は二人を横目で見てため息をつく。


 本当そうなのか? わからない。わかってたら離婚なんてしてない。


 私が黙ると、フランもそれ以上は聞かなかった。そのまま、私達は何も言えなくなってしまった。


「なんか…疲れたね…」


 私達はアキレアが持って来てくれた椅子に座わったまま、会場をぼうっと見ていた。天の太陽も既に大きく傾いて生きているのに、会場の人達の熱気は未だ冷めやらないまま話し込む貴族たち、皿を片付けている使用人たちでごった返していた。


『いやぁ…なんなんだろうね此処の人達は…体力無限なのかな?』


『さあ?』


 そんなやり取りの間にサロンの賑やかしをしていた楽団がなんだか切ない曲を演奏し始める。


 あー…この曲の感じ…。もう終わりなのかな?


 その曲と共に徐々に会場から使用人たちが消えて、話し声も静まった。会場が静まりつつある中、その時を見計らったかのように上座にリリア団長が登壇すると会場の拍手に団長が答えると会場はシンと静まり返った。


『ルリコ、立って』


 いつの間にか立ち上がったフランに呼ばれて立ち上がると団長が話し始めた。


「皆様。本日は、この森の宴へお越しいただき感謝申し上げます」


 静かな声だった。けれど先程までざわついていた会場は、不思議とその声をよく通した。


「この地は未だ若く、未熟な土地です」


 団長はそう言って、ゆっくりと会場を見渡した。


「ですが本日、この場には多くの言葉が交わされ、多くのえにしが生まれました


「それはきっと、明日すぐに形になるものではないのでしょう」


「それでも私は――この夜が、いつかこの地の礎になると信じております」


 その言葉と共に会場から一斉に拍手が起きた。それと共に副団長が団長の後ろに立つと言った。


「ではこれにてリリア・ブンラジュ様のサロンを終了とさせていただきます。最後に当地の支配者でありますエルフ様より最後のお言葉を賜りたく存じます。ではルリコ様、こちらにどうぞ!」


 副団長の竹を割ったような声で指名された私の方に皆の視線が一斉に集まる。


 いやぁ…聞いてないんだよなぁ…。


 そう思って振り返ったフランは顔をそむけて他人のふりを決め込んでいた。


 覚えてろよこの…。


 そう思いながらも正面を向いた私は精一杯の営業スマイルを浮かべながらゆっくりと上座へと向かう道中、どんな挨拶をするかを考える時間稼ぎをした。歩いている中、美しい…という男性の感嘆の声や、女性のため息の様なものが聞こえる。


 すまんな…。今はそれに構ってる余裕は私にない。ていうか私はエルフの中でもブスよりだしな! いやーまさかエルフに生まれても顔面偏差値の格差があるなんて本当に世の中どうなって…。あ。


 そんなことを考えていたら上座についてしまった。


 ええい! こうなったらままよ!


 そう私は意を決して振り返ると言った。


「えー只今ご紹介にあずかりました。エルフのルリコです」


 その言葉に会場内はどよめき、皆がお互いの顔を見合わせ困惑の声を上げる。


「本日は、このような場にお招きいただき、本当にありがとうございました」


 目の前の貴族が「このような場?」と他の貴族に聞くと、相手は肩をすくめる。


「静粛に!」


 副団長の叱咤を最後に私の頭完全に真っ白になって後は社会人時代に身についたセリフが口から勝手に出てくるだけになってしまった。


「本当…今日は実りのある時間で…とてもいい経験になりました」


 口が勝手に動く中、背中に副団長の視線が会場に注がれているのが痛いほどわかる。


「この会場の皆さまとは今後ともいい関係を気づけることを願っています…」


 いや、でも言うほど会場の人と話してなかったよな…。


「未熟な点も多いかと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします 」


 そう言って軽く頭を下げると、背後から副団長の「拍手!」という声と共に会場内に割れんばかりの拍手喝采が起きた。しかしその拍手をしている人達の顔は一様に青ざめていた。


 きっと後ろの副団長は凄い顔しているんだろうな…。


 こうしてリリア団長のサロンは奇妙な空気のまま、解散となった。


『お前なぁ。あんまり恥かかせるんじゃねえよ』


 身分の高い私達は一番早い鳥車に乗って会場を後にしたが、その帰りの鳥車の中、私は隣の師匠にずっと叱られていた。その隣でつまらなさそうに窓の外を見ているフランと対面の椅子にアキンボとソルヒルドが座っていた。私は師匠に怒られながらも二人の様子を盗み見ていた。


 あれから何がどうなったのかソルヒルドはアキンボに懐いた子猫のようにベッタリだった。しかし隣のソルヒルドはどこか子供の様にアキンボの様にちょこんと座りお土産の果物を食べていた。一方のアキンボもソルヒルドの頬についた果物の汁を拭ったりしていてカップルというよりはお父さんと娘の様だった。


 なんかあれだけ見ていると凄く仲良しにみえるけど…。確かにクラリネの言う通りカップルっぽくはないんだよなぁ…。


『お前が舐められるとエルフが舐められる。わかってんのか?』


『は、ハイ。わかってます』


『人間は今エルフを見定めている。舐められたらお前らを軽く扱う様になるぞ。そしたら…またエルフを手に入れようって奴が押し寄せてまた戦争になる。しっかりしろ。ちゃんとやれ』


 いや、まあ…。それは正論なんだけど…。


『承知してますよ。でも…騎士の人達は絶対そんなこと許さないって雰囲気だったし…別に大丈夫ですよ。だからもう良くないですか?』


 フランの言葉に師匠はフンと鼻を鳴らすと、土産にもらった酒を仰いで息を吐いた。途端に鳥車の中が酒臭くなって窓を開ける。窓の外には日が傾きかけた宙の星環が変わらないままに瞬いていた。


 ちゃんとやれ…か…。


 日も沈んだ夜空の星環を仰ぎ見ながら私とフランはたき火を囲んでいた。私達の後ろでわびジーちゃんの家を背にアキレアが立って周囲を見張っている。しばらく続いたいつもの光景。それと違うのはアキンボとソルヒルデが二人仲睦まじく同じたき火を囲んでいることだろう。


『なんか嘘みたい』


 フランはリ二人を見ながら呟く。


『あのアキンボが女の子と一緒に居るなんてね』


 そういうアキンボはいつの間にか眠ったソルヒルデに肩を貸しながら私達を見る。


『お前達のお陰だ』


 それを聞いた私達はお互いの顔を見合わす。


『驚いた。貴方が私に素直に礼を言うなんてね』


 そう言ってフランは肩をすくめる。その向こうでアキンボの指がソルヒルドの髪を撫でた。すると彼女は気持ちよさそうに寝返りを打つ。


『貴方これからその子はどうするの? 森に連れ帰る気?』


 フランがそう言うと、彼は座ったまま背筋を伸ばして言った。


『俺は帰らない』


『は? なんで?』


 アキンボの言葉にフランが反射的に身を浮かす。


『コイツの自由を奪いたくない。きっとこいつは森では生きていけないだろう』


 そのアキンボの言葉に私達は再び顔を見合わせる。


『それでいいの?』


『ああ。俺はそれでいい。礼を言う』


『そう…』


 アキンボの言葉にフランは寂しそうに笑って目を伏せる。再びの長い沈黙の時が訪れたき火の音だけが周囲に響く。その静寂を初めに破ったのはフランだった。


『じゃあこっちも言わせてもらうけど…あたし、母さんの跡を継ごうと思う』


 その言葉に今度は私とアキンボが驚いて目を見合わせた。


『どういうことだ?』


『本当はルリコと一緒に行けるとこまで行きたいって思ってたけど…。なんかさ。結局、森残ることにした』


 その言葉を私は否定することはできなかった。


『それにルリコもアキンボも…ニコラスも…外に行っちゃいそうで…。だったら帰って来る場所が必要かなって』


 そう言うフランと眼が合う。


『それにまたルリコを…一人にしたくないしね』


 それを聞いて私の胸が切なく締め付けられた。


『また…?』


 首を傾げるアキンボに私の前世のことを話した。


『私、前は別の世界の人間だったの』


 深いため息とともに息を吸って言う。


『で、向こうで……独りで死んじゃった』


『そうか…』


『いや、そうか…って。他になんかないの?』


『お前はお前だろ?』


 その言葉に俯いて頷く。その背中にフランの手が添えられる。


『ルリコは前は独りぼっちで死んじゃったんだって。だからルリコや貴方達がなんかやらかして帰って来た時に守ってあげられる家に私がなる。そうすればルリコも安心して行けるでしょ?』


 でもそうしたらフランが…。


 そう思って見たフランは微笑んで言った。


『安心して。ルリコの為だけじゃないじゃなくて皆の為になることがしたいの。皆を守りたい。それが私の願いだから』


 その言葉に私は俯く。

 

 そっかぁ…。アキンボもフランも…。そうなるのかぁ…。


『俺はそうは思わない』


 納得しかけた耳に、アキンボの声が響く。顔を上げるとアキンボはフランを見て言った。


『俺はルリコは夢を叶えると思っている。その夢に皆きっと振り回される』


 その言葉にフランは『それは確かにそう』と肩をすくめる。


『そして多分コイツは、夢を叶えたその先で…道を見失って立ち止まる…気がする』


 あー…。


『『ありそう』』


 私とフランの声が重なる。それでお互い顔を見合わせて笑った。それを見てアキレアも微笑む。そうしてフランは後ろの地面に手をついて空の星環を仰ぎながら言った。


『ルリコさ。夢って本当に叶えないと…ダメなの? ニコラスとさ、暮らせばいいじゃん。ここで』


 そのフランの言葉に私の胸は締め付けられながらも無理やり笑って答えた。


『それも悪くないかもね』


 その言葉にフランは『それマジ?』と眼を輝かせる。


『わかんない』


 そう答えると、フランは私に抱き着いて揺すった。それがなんだか嬉しくてフランの頭を撫でた。そうして見上げた空の星環はいつもと変わりなく、空に瞬き続けていた。

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