#93 黒い悪魔と
「リテル様! 起きるです!」
マドハトが俺を揺さぶる。
俺は「熟睡している」ように偽装していた寿命の渦を起きた状態へと変える……もちろん魔術特異症なんかではない単なる猿種として。
「どうしたんだ?」
寝ぼけた声でそう尋ねてはいるが、本当は理解している。
襲撃者は羊種……寿命の渦の形では。
そして俺たちが寝ているテントが燃え始めていることも……何らかの遠距離魔法がテントのすぐ近くで発動されたから。
「兄貴ぃ、襲撃でやす!」
まとめてあった荷物と弓、矢筒、それから『虫の牙』とを持ってテントの外へと逃げ出す。
革ブーツも手斧の鞘がついた革ベルトも装着したまま横になっていたから、脱出は容易だ。
マドハトもファウンも俺に続く。
火の月、月昼週五日目の大の月は半月よりは膨らんでいて、周囲の様子もすぐに把握できる……馬車も、他のテントも無事。
燃えているのは俺たちのだけ、ということは確実に狙われているよな?
定期便馬車は共同夜営地での宿泊時、一番安い運賃は自分の席か屋外か、空いていれば馬車の床で眠る。
乗車前に割増料金を払えば、二人用か四人用のテントを貸してもらえる。
馬種の老紳士と、豚種カップルがそれぞれ二人用のテントを借り、四人用を借りたのは俺たちだけ。
河馬種母子と、御者の猿種、見張りをしていない方の護衛は馬車の床で寝ている……見張りをしていた方の護衛、鹿種の女性が槍を持ったままこちらへと駆けてくる。
「火矢ではありませんっ! おそらくは魔法です!」
こちらが『魔力感知』で向こうを捕捉できているということは、あちらも捕捉している可能性が高い。
猿種はこの場に二人だけ。
定期便馬車の御者はだいたい馬車の床で寝るらしいので、『魔力感知』ができて俺の獣種を知っている者であれば、俺を特定するのは容易だろう。
となるとあの羊種の襲撃者は、逃げたタールの『魔動人形』か、雇われた者か?
もしくは……ウォルラースの顔が浮かぶ。
いや、誰が相手であろうとも油断せず、最善の手を尽くすだけだ。
まずは『魔法封印』にて『魔法転移』を禁じる……範囲は、革ベルトに収めてある短剣から半径三アブスほど……十メートルくらい。
この範囲内で唱えるか、範囲内を転移場所として指定した『魔法転移』は失敗する。
タールとの戦いで防御手段の重要性は再認識しているから、まずはそこから。
「マドハトは俺と一緒に襲撃者の確認! ファウンは馬車を守りつつ後方警戒!」
「リテル様、行くです!」
「わかりやしたっ!」
もしも襲撃者が俺狙いなら俺が離れた方が一般人に迷惑がかからない。
もしもあの馬車に敵対者が紛れ込んでいるのであれば、挟撃しやすいこの状況では炙り出せる可能性も高い。
森の中へと踏み込みながら、マドハトと俺の鎧におまじないの魔法をかける。
医療棟で休息させてもらっている間に作ってみた新魔法だが……実際にどれほど効果があるかまではわからない。
気休め程度の魔法だから、おまじない。
さらにマドハトの短剣にも『魔法転移』を『魔法封印』する魔法をかけていると、マドハトが耳をくるんと動かした。
魔法代償の集中を感じた……小さい……恐らく二ディエスほど。
あの羊種の居る場所から、ごくごく小さな寿命の渦が不自然なくらいまっすぐにこちらへと向かってくる。
寿命の渦を偽装する魔法?
完全には消せていないけれどね……それに羊種は元の場所に残ったまま。
いやいや、俺がタールのとこで使った囮作戦みたいなものかもしれない……で思考を止めるな。
考えを固定するな……寿命の渦を偽装しているのでなければ、虫ほどの大きさ。
虫を操る魔法……じっくり吟味する時間はない。
思ったよりも近づくスピードが早いから。
まずはマドハトに少し離れた木の陰に隠れるよう指示を出す。
俺の方も自身の寿命の渦は偽装しつつ、『新たなる生』で猿種の寿命の渦付きの俺の幻影を作り出し、木の陰に隠れている風に配置する。。
さらにまた別の新魔法『遠回りの壁』を幻影方向に向けて発動する。
『遠回りの壁』は、前面と背面とに二枚の壁をイメージして発動する。
スノドロッフの長ベイグルに教えてもらった『遠回りの掟』と同じ思考方法で作成した魔法。
自分の前面にある壁の向こう側と、自分の後方にある壁の向こう側とを遠回りさせてつなげる魔法だ。
壁と壁とに挟まれた空間に何があろうとも、視線も射撃もそこは回り込んで逆側へと抜ける。
矢のジョークグッズで、矢の中央部分が半円状に湾曲していて、頭にはめるとまるで矢が突き抜けたように見える、あんな感じ。
「遠回り」という概念は、本当に良い贈り物をもらった感じだ。
魔法は「寿命の渦を消費して思い込みを現象にする」ものっぽい。
イメージできることが最重要だ。
魔法の内容について、術者が強く信じていたり、体験していることだったりすることをもとにイメージした場合、コストは少なくて済む。
それに加えて物理法則に則ったイメージをするとコストは更に小さくなる……物理法則は元の世界とほぼ同じっぽいんだよね。
ただ単に「熱くなれ」よりも「分子の動きを加速せよ」の方が効率よく熱することができる。
ちなみに、魔法を使用している相手に触れるとそのイメージが伝わるのだが、そのイメージの中に理解できない概念があると、せっかく伝わった魔法でもうまく使えない。
ディナ先輩やルブルムと違ってマドハトは「分子」という概念がどうしても理解できず、『凍れ』を使おうとすると追加コストが大量に発生しそうになり、慌てて止めさせたっけ。
イメージできない分は、魔法代償を余計に消費して実行するという結果になるようだ。
こういう風に世界の理が少しずつ見えてくると、魔法を考えるのもすごく楽しくなってくる。
医療棟での休息中、たくさんの魔法をデザインした。
マドハトだけじゃなくファウンも近くにいたし、医療等で働くヒトもちょいちょい様子を見に来たから、実際に発動までには至っていないのがちょっと残念だが、自身を対象に『テレパシー』をかけて自分の記憶を反芻することで、何度も練習したのと同じくらい意識に定着はできているつもりだ。
平穏に生きたい、けれど、せっかく作った魔法を使ってみたいという気持ちも決して少なくなくて。
深呼吸する。
紳士たれ……マクミラ師匠の教えを思い出し、心の中で唱える。
相手は自分より優れているものとして構えろ。
劣っているからこそ工夫を怠るな。
武器も罠も地形も天候も自分と相手を含めた全ての生き物も活用せよ。
ただし、狩るべき相手以外はむやみに傷つけるな。
自分の考えを、相手が上回った場合のことを常に考えておけ。
狩りに必要な心構えとして教えられた「紳士であれ」は、カエルレウム師匠に教えられた「思考を止めるな」という魔術師の心構えに通じている。
ルブルムの顔を、リテルとケティの想いを、レムを、ディナ先輩を、そしてすぐ近くに居るマドハトに、刹那想いを馳せる。
自分の気持の中の浮つきを抑え込む。
これは遊びじゃない……紳士たれ。
落ち着いて、するべきことをするのだ。
例の小さな寿命の渦はもう少ししたらここに着く。
『遠回りの壁』の注意点を今一度確認する。
前後の二枚の壁は、外側からは「遠回り」して反対側へ抜けてくれるが、内側から物理的な衝撃が通り抜けようとすると、即座に壊れる……その硬さは障子紙くらい。
風になびいた草が触れるくらいなら大丈夫だが、指で強く突き刺すとかだともうアウト。
それから……もう一つ自分に魔法をかける。
レムのお母さんが創ったという魔法『熱の瞳』を、もちろん『魔法偽装』で。
視界をサーモグラフィーのように切り替えられるようになる……ちょうどそのとき、それが来た。
小さな寿命の渦と重なる小さな熱の塊は、俺の幻影とマドハトの近くをぐるぐると何周かして……おそらく虫で間違いないが……甲虫? カナブンみたいな?
直後、その小さな寿命の渦は幻影に近づき、顔近くで燃えた……まるで二ディエス分の『発火』を虫が発動させたかのように。
その威力は、魔術特異症の俺の一ディエスの『発火』よりも弱い火。
致死傷どころか、軽い火傷を負わせられるかどうかというレベル。
なぜ二ディエス分の『発火』なんていう仮定が脳裏に浮かんだのか、何をしようとしているのか……その思考が、一瞬フリーズしかける。
この状況に一番当てはまる仮説が、狂気の沙汰だったから。
虫が『発火』のような魔法を発動したのは、もしくは、虫の位置で発動したのは、ギリギリ俺の『魔法封印』範囲だから『魔法転移』ではないはず。
目で見た効果から逆に考えると、『発火』に加えて『魔法転移』的な効果を加えたとなると、『魔法偽装』で隠せる範囲に収まるかどうか……それにもう一つ。
さっきこの虫が動き始める直前に羊種が消費した魔法代償量が、この二ディエス分の『発火』と妙に一致する。
だとしたらどうやって発動させたか……何度考えても集中した魔法代償を預けることができる使い魔の可能性が頭から離れない。
ただ、使い魔には……『使い魔契約』には、互いの位置の把握、五感の共有、魔法を一つ預けられるというメリットに対し、使い魔が傷つけば契約者本人の寿命の渦も傷つくというデメリットがある。
だから弱くてすぐ死んでしまう生き物を使い魔にする者はほとんどいない……とある例外を覗いて。
例外とは、力ずく契約だ。
本来なら信頼関係がないと成立しない『使い魔契約』だが、弱い生き物を指定する場合、相手の同意も信頼も不要で強制的に契約を結ぶことができる。
対象が抗えば抗うほど、魔法代償の追加消費が必要になるとも聞いている。
そうまでして強引に契約した使い魔を、『発火』を遠隔で使うためだけに使い捨てるか?
術者本人にまでダメージがくるのに?
確かに『魔法転移』を用いず、相手との距離が変わっても追跡できはする……けれど、契約者が負うダメージとは割に合わないだろう。
なのに、さらにまた別の虫が、またこちらへ飛んできている。
それだけじゃない。
羊種のすぐ近くにその虫と同程度の寿命の渦がたくさん集まっているのを一瞬だけ捕捉した……まるで『魔力感知』を遮断する虫かごいっぱいに集められでもしていたかのように。
なんにせよ自分の命が消費されることを全く厭わない、それは狂気と呼んでいい。
今度飛んできた虫は、魔法代償を預かっていないように見えるが、さっきのよりも寿命の渦が弱っているようにも見える。
虫は再び俺の幻影へと近づいてゆく。
ふと、『熱の瞳』と『魔力感知』とを併用すると『新たなる生』の幻覚が簡単に見破れてしまうことに気づく。
幸い、虫は幻影を俺だと思ってくれているようだ。
『魔力感知』に集中していたから今までは幻影を動かさなかったが、不自然さをカバーするために幻影に手斧を鞘から出させる。
しかし虫は容赦なく、幻影の首筋めがけ突進した。
虫は俺の幻影を通り抜け、木の幹に突き刺さる……刺さる?
幻影が壊れるときに受けたダメージの情報を俺にフィードバックする……針のような……針?
小さいからここからじゃ細かいところまではよくわからないが、見た感じ木の幹に刺さっていることを考えると針を持つ虫?
この世界に来てから見た昆虫は、元の世界のとそんなに大きく変わらないものばかり。
まさか、あれも地界あたりから来た外来種か?
……なんて考察している暇はない。
すぐさまもう一匹、新しい奴が飛んでくる……ということは今度はマドハト狙いか?
マドハトは寿命の渦の操作も苦手だし、俺が教えたオリジナル魔法もあまり上手に覚えられていない。
となると、俺だけ隠れているわけにもいかないか。
矢の先へ『ぶっ飛ばす』を『接触発動』でセットし、矢を軽くつがえた状態の弓を左手で固定する。
『魔法封印』をかけていない短剣を抜き、つま先で『遠回りの壁』を壊し、さっきまで俺の幻影を配置しておいた木へと近づいた。
虫……近づくと、その形がだいたいわかる。
胴体部分は温かく、足は冷えている……羽根を羽ばたかせているが、その体を貫いている針は木の幹に刺さったまま抜けない。
あからじめ、その中心に針を刺していたのか?
異様な執念を感じ背筋が凍る。
しかもこの昆虫……カッツァリーダだ!
元の世界でいうところのゴキブリ!
俺は短剣でゴキブリの背を滑らせるように薙ぎ、羽ばたいていた羽根を千切る。
それからゴキブリの寿命の渦が消えるのを確認するまで何度も短剣を突き立てた。
バラバラになった体は地面へと落ち、あとには鋭い針だけが残る……この針の太さ、見覚えがある。
レムが使っていた吹き矢の針部分だ。
となると、触れて確かめるわけにはいかないが、この針の先にはおそらく毒……するとカウダ盗賊団関連の生き残り?
羊種ということは、まさかエルーシか?
フォーリーでルブルムにちょっかい出してマドハトに魔法で腹を下されて逮捕もされ、その後、名無し森砦へ向かう途中にウォルラースたちの手下として襲いかかってきて返り討ちにあったエルーシ……俺やマドハトに恨みを抱いていてもおかしくはない。
カウダ毒で麻痺らせて縛り上げていたけど、ウォルラースが隠れていた洞窟に俺たちが潜っている間に……おそらくは同様にウォルラースの仲間だったダイク隊長たちに助けられたのだろう……その後、ずっと追いかけてきた?
だとしたら、俺がここにいることを把握している奴がいて……あっ、ウォルラースはかつてタールと組んでいたじゃないか……ではやっぱりタールが入り込んだ『魔動人形』が馬車に同乗していた?
もう一匹、飛んできていたゴキブリが、いったん地面に落ちて、また飛び立った。
間違いない。『使い魔契約』だ。
使い魔が一匹絶命したから契約者にダメージが行って、それで集中力が乱れて使い魔を強制的に操作していたのが一瞬、緩んだんだ。
というか、何故一匹ずつなんだ?
ここでずっと飛んでくるのを倒し続ける?
まさか時間稼ぎ?
もしもエルーシが、逃げたウォルラースと一緒に居たなら、タールの宿った『魔動人形』も居るというのなら、俺とマドハトだけでは圧倒的に不利になる。
逃走も考えた方がいいよな?
しかし馬車に戻っても逆に危険かもしれないし……ここは、ニュナムへもギルフォドへも馬車で二日、マンクソム砦なら馬車で一日弱の距離だけど、この時間だと確実にウンセーレー・ウィヒトと遭遇する。
どうする?
結論を出せないでいると、いやな風を感じた。
馬車の方からも何か飛んでくる……考えたくはないがそれは、河馬種の男の子のように思えてならない。
● 主な登場者
・有主 利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、呪詛にて不能となったが、ようやく解放された。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。レムールの「ポー」と契約中。
左足首を焼き切られたが、現在は回復中。『虫の牙』の解析をカエルレウムに頼むべく帰路に就いた。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えていたが、とうとうリテルとキスをした。
質問好きで、知的好奇心旺盛。リテルと一緒に旅に出るまでは無防備だった。
利照へ好意を持っていることを自覚し始めている。レムとも仲が良くなった。
・マドハト
赤ん坊のときに『取り替え子』の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。
今は犬種の先祖返りとしての体を取り戻したが、その体はあんまり丈夫ではない。コーギー顔。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、ずっとついてきている。
クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
明るい性格。楽しいことばかり追い求めるゴブリン的思考だったが、利照と一緒にものを考えるようになった。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。ゴーレム作成の魔法品をくれた。
アールヴと猿種のハーフ。ウォーリント王国のモトレージ白爵領にて壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・ディナの母
アールヴだが獣種の男に惚れ、アールヴの隠れ里を出た。
だがウォルラースに唆されたモトレージ白爵の計略で夫を殺され、孤立させられた。
ディナを守るため育てるためにモトレージの妾となったが、結果的にディナもモトレージの慰み者になった。
モトレージの屋敷からディナだけをなんとか逃したが、その後、『魔動人形』にされていた。
現在は、タールの魂が中に入っている。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。二つ名は「噛み千切る壁」。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。一ヶ月後だったラビツとの結婚はさらに二ヶ月延期になった。
現在は、タール亡き後、第一傭兵大隊の隊長代理。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪ったことについて謝罪した。おっぱい大好き。
高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」という傭兵集団に属している。ようやくリテルたちと会えた。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
名無し森砦の兵としてルブルム一行の護衛として同行。洞察力があり、頭の回転も早い。
利照のことをお兄ちゃんと呼び、慕っている。ルブルムやマドハト同様に頼れる仲間だが、とうとうリテルとキスをした。
・ケティ
リテルの幼馴染で想い人。一歳年上の女子。猿種。
旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。
・ウォルラース
かつてディナ先輩とその母を絶望のどん底へ叩き落とした張本人。
名無し森砦を守る兵士たちと手を組み、スノドロッフの子どもたちを狙っていたが、ダイク達を見捨てて独り逃げた。
クスフォード虹爵と国王との間で、カウダ盗賊団の首領とされ逆賊認定された。
本来は身を守るための魔法品を、相手の無力化に用いたりなど、魔法品を使いこなす。
・ダイク
名無し森砦の守備隊長だったが、架空の盗賊団カウダを作り出し、時折旅人を襲っていた。勲爵。
ウォルラースと手を組んでいたが、ウォルラースが渡した薬を飲んで凶暴化し、メリアンたちに倒された。
クスフォード虹爵と国王との間で、ダイクを殉職英雄扱いすることになり、その罪は全てウォルラースが被ることに。
・ファウン
アイシスの街で意気投合した山羊種三人組と一緒に居た山羊種。
ルージャグに襲われて逃げてきたクーラ村の子供たちを、彼なりに助けようとはしていたと申告。
リテルを兄貴と呼び、ギルフォドまで追いかけてきた。偽ヴォールパール自警団作戦に参加。
・タール
第一傭兵大隊の隊長。『虫の牙』の所持者。『虫の牙』にて与えた呪詛傷は全て把握しているし、呪詛傷の解除も可能。
挑戦試合で一班の班長に勝ったリテルを、自分の屋敷へと呼び出し、襲いかかってきた。
地界のナベリウスという種族。オストレアやメリアンたちの協力のもと、なんとか倒したが、
『魔動人形』(ディナの母)の姿で逃走。それ以外にも『魔動人形』(オストレアの父)も所持しているっぽい。
・パリオロム
第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。猫種の先祖返り。
毛並みは真っ白いがアルバスではなく瞳が黒い。タールの『魔動人形』だったことが判明。現在は消し炭。
・オストレア
第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。鳥種の先祖返り。真っ白いメンフクロウ顔。
前班長を含む四人に襲われかけたが返り討ちにし、そいつらの棒を削ぎ落とした。
フラマの妹であり、父は地界のアモンという種族。父の仇であるタール本体をなんとか倒した。
・フラマ
アイシスの宵闇通りの高級娼婦。おっぱいで有名。
鳥種の半返りのようだが、嘴はない。足は水鳥のよう。
魔法を使え、他の人には見えないはずのポーの姿が見える。オストレア同様、タールを父の仇として探していた。
・河馬種の男の子のように思えてならない者
ギルフォドからニュナム行きの定期便馬車に、母親と一緒に乗っていた五、六歳くらいの男の子。
一般的に、獣種の人々は空を飛べない。例え鳥種の先祖返りであろうとも飛べない。
・馬車のその他の同乗者
御者は猿種、護衛は両生種の男性と鹿種の女性。
客は、紳士っぽい馬種の老人、豚種若いカップルは女性だけ半返り、
男の子の若い母親である河馬種。
・ベイグル
猫種の先祖返り。アルバスだが、レムルースで赤目を隠している。
槍を持つスノドロッフ村の村長。魔法に詳しい。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
・ウンセーレー・ウィヒト
種族そのものではなく、現象としての名前。異世界からの来訪者が目撃されやすい地域でたまに出現する。
その場所で寿命によらない大量死があると、そこで死んだ者たちの姿が燐光を帯びて現れる。
これに触れられると、寿命の渦を毟られるので注意。火を避けるので、とにかく火を掲げて身を守ること。
・ナベリウス
苦痛を与えたり、未来を見ることができる能力を持つ勇猛な地界の一種族。
先祖返りの鳥種に似た外観で、頭部は烏。しわがれ声。魔法品の制作も得意。
・アモン
炎を操ることができる地界の一種族。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
十銀貨(十二進数なので十二枚)=一金貨
十金貨(十二進数なので十二枚)=一大金貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第九十三話終了時点では火の月、月昼週の五日の夜。




