#92 今できることをしよう
オストレアの治療を終えたあと、『虫の牙』を持って階段を上る。
自分の右足首の火傷はここでも後回しだ。
魔法による治療といったら万能なイメージがあったが、俺にできるのは細胞の再生と結合……つまり、炭化した細胞はいったん切除しないといけない。
自分の傷口から炭化した部分を削ぎ落とすのも、そこからの再生も単純に時間がかかるから。
「私がタールに気づいていたように、タールも私に気づいていたのかもしれないな」
俺に肩を貸してくれるオストレアがぽつりともらした。
「あいつは、いったい何がしたかったんだろう」
「強い奴との戦いが楽しいと言っていたのは覚えている。そして、戦う中で面白い能力を持つやつを見つけてはそいつを倒して『魔動人形』化して新しい分身にして……趣味と実益を兼ねていたのかもしれないな」
そう考えるとパリオロムも本当はスノドロッフ村に入るために『魔動人形』化したのかもしれないな。
ただ、目が赤くはなかったから当初の目的は果たせず……とか。
となるとアルバスの赤い目は遺伝とかじゃなく、魔法的な何かなのかもしれない。
「なぁ、オストレア。タールが新しい『魔動人形』を手に入れたなら、古い方はどうするんだ? どこかに保存するのか? ……さっきまであの部屋に飾ってあった一見は死に人形に見えたアレみたいに」
「いや……『魔動人形』は中に魂が入っていなければ、関節や筋肉が固くなってゆく。『魔動人形』はただでさえ維持に魔法代償が必要になるから、使わなくなった『魔動人形』を常に管理し続けるというのは不可能ではないが現実的ではない。あの『魔動人形』にもきっと魂をいくらか移しておいたはずだ」
タールはこの先、よりによってディナ先輩の母親の姿でウロウロするのかと思うと、なんとも言えない申し訳なさがこみ上げる。
とにかくディナ先輩には早めに連絡しなければ、だな。
「リテル……その……」
オストレアが立ち止まる。
「ん? なんだい?」
「……本当はこんなこと言えた義理ではないが……リテルにお願いしたいことがある……聞いてくれるか?」
その先がなんとなく想像がついたから、俺は首を左右に振り肯定の意思を伝える。
「ありがたい……あの……できればこの先も、タールを追うのを手伝ってもらえると嬉しい」
それは俺としても乗りかかった船というか、ディナ先輩の母親の『魔動人形』を放置はできない……だけど。
「そうしたいという気持ちはある。しかし俺には本来やらねばならないこともあるし、今は別行動を取っているが一緒に行動する仲間も居る。俺の一存では……特に今の状況では、申し訳ないが決められない」
そうなんだ。タールとの戦いでは一瞬の油断によって左足首を切り落とされた。
いったん逃げたタールと改めて対峙するときは、向こうも万全の準備をしていそうだし、きっともう油断もしてくれない。
深入りしてルブルムやレムが傷つくようなことになってしまうのは避けたいというのもある。
「そうか。断られなかっただけでも嬉しいよ」
笑顔を浮かべるオストレアに、胸の奥がちょっと痛んだ。
階段を登りきり、最初に向かったのは寿命の渦が三つ集まっている部屋。
マドハトとファウン、メリアンが、崩した壁の中からいろいろ漁っていた。
「これは、隠し部屋?」
あと、やけに周囲が濡れている。
「リテル様! 壁が突然燃え始めたから僕が『びちょびちょ洗濯物』で消したです!」
もしかして脱出時の証拠隠滅か?
早速、捜索に混ぜてもらうと……非常に怪しいものが出てきた。
「メリアン、これって……」
「隣国、というか今、戦争が始まるかもと言われているギルフォルド王国の紋章だな」
「っつーこたぁ、タール大隊長はギルフォルド王国とつながりがあったっつーことでやすね?」
「プルマ副長をお呼びするしかない」
オストレアがタールの屋敷を出てプルマ副長を呼びに行った後、メリアンが突然、小剣を抜いた。
一瞬だった。
メリアンが俺の手の上に、マドハトの右足首から先を置くまで、何が起きたのか全く理解できないでいた。
「リテル、腐るの止める魔法」
ハッとして『腐臭の居眠り』をマドハトの切り離された右足先にかける。
メリアンはマドハトの右足首を布で巻き、紐で固く縛って止血している。
それを見ていたファウンまでもが自分の左足首を鋭く切り離し、同様に止血する。
そして、俺に白魔石を手渡した。
「兄貴ぃ! あっしの治療はこれで足りやすか?」
白魔石の中にはそこそこの魔法代償が格納されている。
「大丈夫だと思う」
慌ててファウンの左足先にも『腐臭の居眠り』をかける……ほどなくして、オストレアとプルマ副長と他数名がタールの屋敷内へ駆け込んできた。
一緒に来たのは傭兵隊の者ではなくギルフォドの正規兵だった。
「事情は把握した。密通者が居ること自体は把握していたが誰かまではわからなかったのだ。まさかタール……元大隊長がそれだったとはな」
オストレアは、タールがナベリウスであったことを告げ、逃げた『魔動人形』の説明も行う。
その途中、正規兵と同じ鎧の、明らかに階級が高そうな人が参加する。
地下室についても詳しく調べられ、壁一面の仮面が、人の顔面を削いで死に人形に加工したものだと判明した。
あの穴の出口は訓練場内の森へとつながっていた。
正規兵を通じてギルフォドに二つある大門の門番へと情報を渡したとのことだが、過去の事例を聞く限りでは門で捕縛なんてのは難しそうだな。
俺とマドハト、ファウンについてはすぐに医療棟に移され、治療が始まった……のだが……治療にあたってくれた医療兵が最初に、治療魔法を使用した結果、今まで通りに体が動かなくなったとしても了承すること、みたいな宣言をし始めたので、魔石だけ借りて実際の治療は俺がやることにした。
神経とかそういう概念がないと、ただ乱暴に傷口をつなげるだけで終わるっぽいんだな。
借りた魔石の中身と、ファウンの白魔石、それからカエルレウム師匠にいただいた白魔石まで空にして、ようやく治療が終わった。
「よう、調子はどうだい?」
医療棟へメリアンとオストレア、プルマ副長とが見舞いに来る。
その手には、除隊証明書を持って。
「くっつきはしましたよ」
答えながら、ちょっとよろけてみせる。
一般的には、切れた四肢を魔法で治療してつなぐことができても、切断前のように動かせなくなることは少なくないという。
なので、傷自体が塞がっても、四肢損壊扱いで勇気除隊が許可される……と、マドハトの右足首を切り落とした直後にメリアンが説明してくれた。
俺が自分の左足を接続したのを見て、とっさに考えついた方法らしい。
しかも敵国の密通者の炙り出しの功績として、勇気除隊では通常支給されない、本来の契約期間分の給金も満額支給されることになった。
ありがたい。
メリアンは傭兵団に残り、しばらく大隊長代理となるということで、俺とマドハトの給金についてはメリアンに渡されるように手配した。
オストレアは、ナベリウスや『魔動人形』に対する知識を買われ、契約期間もまだけっこう残っていることもあり、第一小隊第一班の班長として残留せざるを得ないことになってしまった。
『虫の牙』は、俺の師匠であるカエルレウム師匠に調査をしてもらう、という名目で俺に渡された。
翌日いっぱいは治療棟で休息することになっていたので、本当はそれなりに治っている足を治っていないフリでベッドに横たわり持て余していた暇を利用して『虫の牙』を調べてみた。
柄に嵌められた紅魔石に触れると、中に入っている魔術を確認することができる……はずなのだが、どうにもよく理解できない部分がある。
なんせ時間があるので読解と思考とを何度も繰り返しようやくたどり着いた答えが、呪詛に組み込む魔法を外部から取り込む、という魔術式だった。
『虫の牙』の紅魔石に収められた魔術『影虫』は、魔術を構成する魔法の大部分が、地界からレムールを召喚し、対象者の発動した魔法効果を増強するという「ひとつまみの祝福」と外部から設定した効果をもって対象者に呪詛を貼り付ける……というもの。
アモンが炎を操るように、ナベリウスにも痛みを与える種族魔法があるという。
あの凄まじいまでの痛みは、どうやら魔法発動時にタール自身が添えていたのだろう。
さらに言えばタールが言っていた呪詛の番号も、『影虫』発動時に指定する必要があるみたいだ。
そうすることにより、呪詛解除するときに指定番号を添えるだけで、その呪詛を消すことができる。
指定番号を知らなければ呪詛の解除はできないし、『虫の牙』を奪われてもナベリウスにしか使えないように作り込まれた魔剣なんだな。
……なるほど。勉強になる。
魔法を組み合わせて一つの決まった実行形式にまとめたものが魔術……と覚えていたせいか、実際に使うときに別の魔法をセットして発動するという、いわば未完成のままの状態で魔術として作成するという発想にたどり着くまでにけっこうかかった。
でもこれは面白い。
例えば、特定属性を防御するという魔術を用意するとして、耐火、耐氷、耐電、みたいに属性の数だけ魔術を用意するのではなく、魔術使用時に『発火』を伴えば耐火、『凍れ』を伴えば耐氷、みたいにデザインできれば、魔術の練習のときに随分と楽になる。
別々の魔法や魔術だと、別々に練習しなきゃいけないもんな。
それから『虫の牙』については、ポーともよく話し合った。
まず最初にタールとの戦闘で加勢してくれたことへのお礼から始まり、『虫の牙』に収められた魔術『影虫』と『影送還』のこと。
タールの本体は倒したが、まだ逃げた『魔動人形』が少なくとも二体は居ることなどを。
結論から言うと、ポーはまだ俺と一緒に来てくれることになった。
そしてあのタールに一撃くれてやったあの技、あれはポーが、ウンセーレー・ウィヒトの攻撃を観てて真似してみたのだという。
寿命の渦からは奪えないが、魔法を唱えようと集中した魔法代償からはごっそり奪えるようだ。
そうそう。
ポーがタールやオストレア、フラマなんかに見えたのは、レムルースもナベリウスもアモンも、同じ地界出身だからだそうだ。
ということは、今まで戦った魔獣の多くにも見えているということだな。
今後、ポーに参戦協力をお願いするときにはそのへんも考慮しなきゃだな。
久々にゆっくり睡眠を取れたので頭も冴えて、分析や思考だけじゃなく、魔法についても考えることができた。
幾つか自己課題として挙げていたことに対して、新しい魔法も作ってみたりした。
そうやって作った新魔法の練習についても、全て『魔法偽装』で表面上は魔法代償の集中なんて全くしていない風を装いもした。
複数の魔法を制御でき、ある程度の未来予測まできるというナベリウス。
そんな奴と戦うにはこちらもそれなりに対応していかないといけない。
複数同時に魔法を使うというのも、一つの魔術として考えることで今、普通にできていることなんだ。
うまくワンセットとして思考できれば、魔術とか魔法に合わせての『魔法偽装』ができている今の俺でも十分に発動できるはずなんだ。
魔法を初めて理解して使ったあのときのように、今とてもワクワクしている。
タールと戦ってからまる一日が経過した昼下がり、メリアンとオストレアが昼食を持ってきてくれた。
オストレアが心なしか距離を詰めてきていて、それをメリアンにからかわれたりもした。
予定では今日の午後、契約の腕輪を正式に返却し、傭兵部隊から除隊される。
ただ、明日の朝までは特別にこの医療棟に滞在を許されていて、明日の朝、ニュナムへと出発する乗り合い馬車の座席をオストレアが取ってきてくれた。
オストレアは魔術師組合にも付き添ってくれ、実績紋の更新もできた。
ここに居るのは実質三日もない……にも関わらず、敵国内通者退治の貢献者として、実績紋には傭兵三ヶ月勤め上げた体で業績が記録されたらしい。
至れり尽くせりだな。
魔術師組合ではフォーリーの魔術師組合にも連絡を取ることができ、カエルレウム師匠へ大まかな事情説明の伝言をお願いした。
直接連絡を取れはしなかったので、ディナ先輩へ伝えたいことはさすがに控えた。
ついでにニュナムの魔術師組合にも連絡を取り、魔術師組合の元職員だったリリさん……ナイトさんの奥さんにも軽く伝言をお願いした。
十分な睡眠を取り、迎えた早朝。
メリアンとオストレアには再会の約束をして、俺とマドハトは乗り合い馬車へと乗り込んだ。
戦争の噂は市民にも広まっているようで、ギルフォドからニュナムへと避難する人たちが何組か乗っていた。
五、六歳の男の子と若い母親の河馬種親子。紳士っぽい馬種の老人。豚種若いカップルは女性の方が半返り。護衛として両生種の男性と、鹿種の女性。
そしてなぜかファウンもついて来るし、猿種の御者も忘れてはいけない。
かなりの大人数だ……だがここからは全く気が抜けない。
タールが俺に対して、始めのうちアールヴだと決めつけた上で応対してきた……そこで外見を装っているのか、みたいなことを尋ねてきたから。
逆に言えば、タールはその手の魔法を知っているということ。
だとしたらこの同乗者の中に、ディナ先輩の母親の『魔動人形』が姿を変えて混ざっていてもおかしくはないのだ。
ニュナムまで、この乗り合い馬車では四日かかる。
その間ずっと気が抜けない……信頼できるのはマドハトだけ。
しかもだ……走り始めてから思い出す。
普通の馬車はこんなにお尻が痛くなるものだって。
● 主な登場者
・有主 利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、呪詛にて不能となったが、ようやく解放された。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。レムールの「ポー」と契約中。
左足首を焼き切られたが、現在は回復中。『虫の牙』の解析をカエルレウムに頼むべく帰路に就いた。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えていたが、とうとうリテルとキスをした。
質問好きで、知的好奇心旺盛。リテルと一緒に旅に出るまでは無防備だった。
利照へ好意を持っていることを自覚し始めている。レムとも仲が良くなった。
・マドハト
赤ん坊のときに『取り替え子』の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。
今は犬種の先祖返りとしての体を取り戻したが、その体はあんまり丈夫ではない。コーギー顔。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、ずっとついてきている。
クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
明るい性格。楽しいことばかり追い求めるゴブリン的思考だったが、利照と一緒にものを考えるようになった。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。ゴーレム作成の魔法品をくれた。
アールヴと猿種のハーフ。ウォーリント王国のモトレージ白爵領にて壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・ディナの母
アールヴだが獣種の男に惚れ、アールヴの隠れ里を出た。
だがウォルラースに唆されたモトレージ白爵の計略で夫を殺され、孤立させられた。
ディナを守るため育てるためにモトレージの妾となったが、結果的にディナもモトレージの慰み者になった。
モトレージの屋敷からディナだけをなんとか逃したが、その後、『魔動人形』にされていた。
現在は、タールの魂が中に入っている。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。二つ名は「噛み千切る壁」。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。一ヶ月後だったラビツとの結婚はさらに二ヶ月延期になった。
現在は、タール亡き後、第一傭兵大隊の隊長代理。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪ったことについて謝罪した。おっぱい大好き。
高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」という傭兵集団に属している。ようやくリテルたちと会えた。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
名無し森砦の兵としてルブルム一行の護衛として同行。洞察力があり、頭の回転も早い。
利照のことをお兄ちゃんと呼び、慕っている。ルブルムやマドハト同様に頼れる仲間だが、とうとうリテルとキスをした。
・ケティ
リテルの幼馴染で想い人。一歳年上の女子。猿種。
旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。
・ファウン
アイシスの街で意気投合した山羊種三人組と一緒に居た山羊種。
ルージャグに襲われて逃げてきたクーラ村の子供たちを、彼なりに助けようとはしていたと申告。
リテルを兄貴と呼び、ギルフォドまで追いかけてきた。偽ヴォールパール自警団作戦に参加。
・タール
第一傭兵大隊の隊長。『虫の牙』の所持者。『虫の牙』にて与えた呪詛傷は全て把握しているし、呪詛傷の解除も可能。
挑戦試合で一班の班長に勝ったリテルを、自分の屋敷へと呼び出し、襲いかかってきた。
地界のナベリウスという種族。オストレアやメリアンたちの協力のもと、なんとか倒したが、
『魔動人形』(ディナの母)の姿で逃走。それ以外にも『魔動人形』(オストレアの父)も所持しているっぽい。
・プルマ副長
第一傭兵大隊の万年副長。鼻梁に目につく一文字の傷がある羊種の女性。
筋肉が大好きっぽく、メリアンに会えたことに興奮していた。
・パリオロム
第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。猫種の先祖返り。
毛並みは真っ白いがアルバスではなく瞳が黒い。タールの『魔動人形』だったことが判明。現在は消し炭。
・オストレア
第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。鳥種の先祖返り。真っ白いメンフクロウ顔。
前班長を含む四人に襲われかけたが返り討ちにし、そいつらの棒を削ぎ落とした。
フラマの妹であり、父は地界のアモンという種族。父の仇であるタール本体をなんとか倒した。
・フラマ
アイシスの宵闇通りの高級娼婦。おっぱいで有名。
鳥種の半返りのようだが、嘴はない。足は水鳥のよう。
魔法を使え、他の人には見えないはずのポーの姿が見える。オストレア同様、タールを父の仇として探していた。
・ナイトさん
元の世界では喜多山馬吉。元の世界では親の工場で働いていた日本人。
四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。馬種。元はニュナム領兵の隊長をしていた。
今は発明家兼ナイト商会のトップ。ヒモパンやガーターベルトやコンドームの発売もしており、リテルを商会に誘ってくれた。
サスペンションなど便利機能がついた馬車「ショゴウキ」(略してショゴちゃん)を提供してくれた。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
・ウンセーレー・ウィヒト
種族そのものではなく、現象としての名前。異世界からの来訪者が目撃されやすい地域でたまに出現する。
その場所で寿命によらない大量死があると、そこで死んだ者たちの姿が燐光を帯びて現れる。
これに触れられると、寿命の渦を毟られるので注意。火を避けるので、とにかく火を掲げて身を守ること。
・ナベリウス
苦痛を与えたり、未来を見ることができる能力を持つ勇猛な地界の一種族。
先祖返りの鳥種に似た外観で、頭部は烏。しわがれ声。魔法品の制作も得意。
・アモン
炎を操ることができる地界の一種族。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
十銀貨(十二進数なので十二枚)=一金貨
十金貨(十二進数なので十二枚)=一大金貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第九十二話終了時点では火の月、月昼週の三日の早朝。




