#91 死闘の後
寿命の渦の気配を消したのは維持しつつ、俺は三人を見据えたまま部屋の外へと跳ぶ。
タールに仲間が居るんじゃないかとは、最初から疑っていたから。
マドハトに単独行動を禁じたのもそのせい。
踵を返しながらカウダ毒を塗った吹き矢をもう一本、『魔法偽装』の『見えざる弓』で構えながら螺旋階段を駆け上る。
人影が視界に入るなり露出している皮膚へ迷わず吹き矢を撃ち込んだ。
そして『魔法偽装』の『ぶん殴る』を練りつつ、相手の左足に触れて発動……してから、螺旋階段を転がり落ちる人影がパリオロムだと気づいた。
オストレアが俺に話をする場所を選んだときからその可能性は考えていた。
マドハト、メリアン、ファウンには「俺の以前会った人が仇として探している相手がタールであると気づいてしまったことを、どうやらタールに知られたかもしれない」と言ってあった。。
オストレアには「マドハトとメリアンは信用していい」とだけ伝えた。
いったい、パリオロムはどういう思いでここに来たのだろう。
ドマースが同行したとき、ずっと気を張っていて結局敵対行動を取られなかったことを、そのときは心配しすぎなのかもと思いはしたが、逆に考えれば俺がずっとそうしていたからこそ向こうも何もせずにはいられなかったのでは、と今では考えている。
簡単に人が死ぬ世界。
特にこの傭兵団では、勝てば官軍臭が強い。
人を傷つけることにためらいを持っていた利照の常識ではなく、この世界に生きたリテルの、そして、リテルや利照を待っていてくれる人のためにも、決して油断してはならないんだ。
出遭ってからさっきまでずっと優しく、というか馴れ馴れしく振る舞っていたパリオロム。
正直、今、左足がくっついているのはパリオロムのおかげだ……だとしても、螺旋階段の階下をずっと窺っている姿で作った『新たなる生』を壊したのはパリオロム以外に考えられない。
クラーリンさんに習った『新たなる生』は、寿命の渦付きの幻影を作り出す魔術。
精神集中すれば動かすことができるが、幻影自体は触れられただけで簡単に壊れる。
しかし、幻影を移動させるとき、草むらなどを通って草に当たって壊れたなんてことがないように、当たり判定みたいな核の部分があり、そこ以外は触れられても空振る仕様だ。
さらには、何回か使ってわかったのだが、幻影に触れられた感覚は把握できる。
足部分が草むらに当たったとか肩を叩かれたとかの軽いモノから、武器で斬りつけられたり貫かれたり殴られたりという大きな衝撃まで。
俺の幻影は、背後から一刀両断されたのだ。
転がり落ちる中でパリオロムが手放した小剣を拾い上げる。
階段を下まで落ちたパリオロムの寿命の渦が、カウダ毒にやられているような強張り方をしていない。
タールもパリオロムも、毒が効かない何らかの準備をしているのかもしれない……だとしたら、無力化するには……ためらいを捨てるしかない。
階段の一番下、部屋のすぐ目の前で起き上がりかけるパリオロムに、俺は剣を突き立てた。
自分の意思と覚悟で。
続けてメリアンがよくやるように、相手を蹴り飛ばして剣を死体から抜く……まだ傷を癒やしていない右足首が痛む……ああ、そうか。
彼らの動きの違和感……。
「タールもパリオロムも痛みを感じてない! 毒も効いてない!」
俺が叫ぶと、メリアンはすかさず小剣でパリオロムの首を切断する……だがパリオロムの寿命の渦は消えない。
「リテル、火を頂戴!」
『発火』を二ディエス分作ると、俺の皮膚が焼けるよりも早くオストレアがその火を奪い、パリオロムの体を焼く……ようやく寿命の渦が崩れる。
「あれは『魔動人形』だ。こっちへ持ち込まれたものではなく、こっちで作られたもの」
オストレアはパリオロムを燃やし尽くした火を鞭の様に持って攻撃するが、その先端はタールに届くことはない。
タールが小刻みに魔法代償を集中しているのを感じる。
さっきみたいに火を操っているのか。
そして、メリアンの動きを予測しているとしか思えない動きはずっと継続中だ。
これって複数の魔法を同時に使っているよな?
「『魔動人形』を黙らせるには?」
「切り落とせば散逸する!」
メリアンの問にオストレアが答えた、その内容とさっきのパリオロムの散り際とを重ねて理解する。
普通の寿命の渦は、身体部位を失っても動き方が弱るだけだが、パリオロムの場合、首が飛んだときに寿命の渦がゴソッと減った。
「了解!」
俺は『ぶん殴る』の五倍、『ぶっ飛ばす』をパリオロムの小剣の先に『接触発動』して、身構えた……そしてもう一つ。
ルブルムから教えてもらった彼女オリジナルの身体強化魔法……『鹿』。
集中力と俊敏性を高めるやつ……とにかく当てさえすれば、ただでさえ魔力効果が上がっている今なら……うわ、なんだ?
俺の体にあった『虫の牙』の呪詛傷が二つ、消えた。
三百一番と三百二番とタールが言っていたやつが……『虫の牙』は呪詛傷を与えるだけじゃなく解除もできるのか。
それと同時に呪詛傷に「ひとつまみの祝福」として添えられていた魔力効果増加が急激に四倍分消える……つまり七倍効果は、この『ぶっ飛ばす』と『鹿』で最後ってわけか。
二つしか消えなかったことに、タールは少なからず動揺を覚えたかもしれない、なんて考えたときにはもう、踏み込んでいた。
予測されても速度に反応できなければ……俺はタールが『虫の牙』を持ち替えた左手を狙う、と寿命の渦では見せかけて右肩を突く。
しかしタールはそれを読んだのか避けた、そこへオストレアが炎の鞭、さらに小剣でも攻撃を加える。
狭い部屋だ。避けられる場所など限られてくる。
俺とオストレアの攻撃の後、メリアンがあのゴツい小剣二本で猛攻をかけ、タールの右手を肘でたたっ斬る。
俺もなんとかタールに当てようと小剣を振り抜く、と、それを防ごうとした『虫の牙』を、左手の肘関節ごとふっ飛ばせす。
しかしタールも強力な魔法代償を集中している……身体部位を失うたびに集中し直しているということは、このまま削り続ければ、と俺も慌てて魔法代償を集中する。
『ぶっ飛ばす』で脚を……いや、タールの方が早い。
自爆系。
ふと脳裏に浮かんだ言葉。
『魔動人形』ということは、本体ではないということだよな。
だとしたら、もっと早くからその可能性を考えていても良かったんじゃないのか。
自分の未熟さが全然なくならない。
しかもこんな至近距離で攻撃を防げるような防御系の魔法を、俺は磨いて来なかった……やけに時間の流れをゆっくりと感じる……その中で、俺たち三人とタール以外に動くものがあった。
ポーが、しなるようにタールの喉元へと伸びたのだ。
タールの集中した魔法代償は、何も発動せずに減った。
今のは見たことがある。
黒き森でウンセーレー・ウィヒトが、エクシの寿命の渦を毟った、あのときに似た感じ……ポーもそんなことできたのか。
(フイウチマネタ)
(助かったよ、ポー)
「頭を下げろ!」
メリアンの声と同時に床に伏せる。
頭のすぐ上を凄まじい剣圧が過ぎ、タールは、タールだったモノの欠片へと変わった。
オストレアはすぐさまその肉片を焼き始める……タールの、寿命の渦が残っていない生首だけを残して。
「上を見てくる。リテルはさっきの左足首、剣の破片と布でしっかり巻いて隠しておけ」
メリアンは螺旋階段を駆け上がる。
言われて気づいたが、パリオロムの小剣は剣先と根本で折れていた。
付与した魔法の負荷に耐えられなかったのだろう。
俺が、フンドシに使っていない側のズボン裾を破き、折れた剣を添え木代わりに左足へ巻きつけ始めると、オストレアが『虫の牙』を拾い上げ手渡してくれた。
「これは、リテルが持っていっていい……それからありがとう。タールに勝てるとは思わなかった」
『虫の牙』を受け取って、立ち上がる。
見た目は左足首骨折の人みたいだ。
「いや、ほとんどメリアンのおかげだ」
「そうだな」
オストレアのメンフクロウ顔が目を細める……これは笑ったのかな。
「ところで『魔動人形』というのは何だ?」
「『魔動人形』は、術者の魂を格納することができるゾンビーの一種だ」
この世界のゾンビーは、元の世界の感染力を持つアンデッド的なモノではなく、無機物を魔力で操るモノがゴーレム、有機物を魔力で操るモノがゾンビーといった区分。
「一種、ということは単なるゾンビーではない、と」
「ゴーレムやゾンビーは魔術師が与えた命令を行えるし、一部の感覚を共有することもできるが、それだけだ。だが『魔動人形』は分身に等しい。まるで自分の体のようにそれを扱える……と聞いている。実際、『魔動人形』だと確信できなかったのは、まるで人のように寿命の渦が見えていたからだ」
確かに、ゴーレムには寿命の渦なんてなかった。
ゾンビーはまだ見たことはないが、ゴーレムとの違いは素材だけって考えると……いや、『新たなる生』のように寿命の渦を投影する魔法もあるよな。
寿命の渦はいままでさんざん偽装したりされたりしてきたから、それを判断基準にするのは危険だな。
「パリオロムも『魔動人形』だったのか?」
「その可能性は高い……そして、あとまだ一体は居るはずだ」
「そうケントウを……えっと、そう推測した理由は?」
見当って言葉はこの世界にはそのまま訳せる表現はないのか。
「今のはこのへんの言葉じゃないね。リテルも訳ありなんだな……いいよ。そんな顔するなよ。詮索はしない」
寿命の渦は制御できても顔に出ちゃうんじゃまだまだだな、俺。
「恐らく気づいているだろうが、タールはこの世界の人ではない。私の父と同じ地界の出身だ。パイアは繁殖に利用する相手に合わせ毒と誘う姿とを調整する……この世界に馴染み獣種を獲物と定めたパイアの毒が、最も効きやすいのは獣種の男だ。続いて獣種の女。私は半分獣種じゃないから、パイア毒の効きが悪かった。タールについても、毒が効きにくいのはてっきり獣種ではなくナベリウスだからだと思っていた」
ナベリウス……その名前はルブルムからわけてもらった本の情報にあった。
苦痛を与えたり、未来を見ることができる能力を持つ勇猛な地界の一種族……外観は先祖返りの鳥種に似て、頭部は烏、種族としてしわがれ声。魔法品の制作に長けている。
……と記憶は教えてくれるけれど、タールの声はしわがれてはいなかった……魔法か何かで声帯の形を変えた、とか?
でも魔法品の制作に長けているのであれば、その『魔動人形』とやらを作れるというのも納得が行く。
それに苦痛を与える能力って……『虫の牙』のあの痛みを思い出す。
「『魔動人形』はナベリウスしか作れない魔法品なのか?」
「恐らくは、この世界の魔法でも作れないこともないだろう。ただ、それを扱えるのは、ケルベロスと渾名されるナベリウスだけだと思う」
ケルベロス!
こりゃまた随分メジャーな魔物の名前が……でも、元の世界のケルベロスと同じような魔物なのか?
まずはルブルム情報から先に調べると……ケルベロスも地界の魔物か。
頭が三つある巨大な犬に似ているが、稀にそれ以上の多頭となる個体もいて、凄まじい吠え声と、毒を含む唾液には注意が必要。
へぇ。唾液には毒があるのか。
光は苦手で、主人には忠実だけど、大好物の甘いものには抗しきれない。
甘いもの好きってケルベロスにそんなイメージなかったな。
「ナベリウスも甘いもの好きなのか?」
オストレアが思わず吹き出した……だけじゃなかった。
もう一人、吹き出した奴が居たのだ。
……ディナ先輩のお母さんの死に人形……だと思っていたそれは、もしかして『魔動人形』だった?
ガコン、と、大きな音がして壁にかかっていた仮面の何枚かが落ちる、と同時に鋭い何かが飛び出してきた。
とっさに避ける……のに精一杯で、気づいたときにはもう『魔動人形』が立っていたと思われる場所には大きな穴があるだけだった。
その穴から追うのは諦めた。
俺はなんとか槍をかわせたが、タールの生首の確保を優先したオストレアが深い傷を負ってしまったから。
その治療を優先したため。
治療の合間に、オストレアはナベリウスについて詳しく話してくれた。
ナベリウスという種族がケルベロスと呼ばれる所以は、彼らが複数の思考を同時に行うことができるからであり、通常、魔法で別の体へ意識を移した場合、本体が昏睡状態のようになるものだが、ナベリウスの場合はそれがなく、本体と同時に意識を移した『魔動人形』数体を操れるとのこと。
ただ、操れるとはいっても……『魔動人形』があんなに細かく反応よく動けたのは、魔術師の魂と寿命の渦と血液とを本体から切り離して封入するからで……つまり大量生産はできないし、切り離す必要があるため意識の共有自体も起きないという。
さっき、この部屋でタールが俺を目視していたにも関わらずパリオロムが俺の幻に攻撃したのは、パリオロムがあの幻影を本物の俺だと思ったからだろう。
「だからタールの頭を……」
「ああ。タールのことだからどこかに自分の血を保管している可能性はあるが、今後、タールが増やせる『魔動人形』は多くはないはず。それに意識を分けられるとはいえ、あまり細かく分けた場合、魔法を使えなくなると聞いている」
さっきから聞いている、というのを何回か耳にしている。
「その情報を教えてくれたのって、もしかしてオストレアの」
「ああ、父だ。父はアモンという種族だ。アモンは炎を操ることができる……その力をタールが使ったということは、タールが父を『魔動人形』化して、炎を操る能力を理解して魔法に再構築したとしか思えない。体には記憶が残るから」
オストレアの表情が沈んだのを感じる。
見た目はメンフクロウでも、ずっとコミュニケーションを取るうちに表情を見分けられるようになってゆくんだな。
あ、もしかして、パリオロムが俺に優しかったのって、『魔動人形』にするつもりだったから?
……なんて、リテルの体を借りている身の利照には、非難できないか。
● 主な登場者
・有主 利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、呪詛にて不能となったが、ようやく解放された。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。レムールの「ポー」と契約中。
左足首を焼き切られたが、現在は回復中。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えていたが、とうとうリテルとキスをした。
質問好きで、知的好奇心旺盛。リテルと一緒に旅に出るまでは無防備だった。
利照へ好意を持っていることを自覚し始めている。レムとも仲が良くなった。
・マドハト
赤ん坊のときに『取り替え子』の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。
今は犬種の先祖返りとしての体を取り戻したが、その体はあんまり丈夫ではない。コーギー顔。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、ずっとついてきている。
クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
明るい性格。楽しいことばかり追い求めるゴブリン的思考だったが、利照と一緒にものを考えるようになった。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。ゴーレム作成の魔法品をくれた。
アールヴと猿種のハーフ。ウォーリント王国のモトレージ白爵領にて壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・ディナの母
アールヴだが獣種の男に惚れ、アールヴの隠れ里を出た。
だがウォルラースに唆されたモトレージ白爵の計略で夫を殺され、孤立させられた。
ディナを守るため育てるためにモトレージの妾となったが、結果的にディナもモトレージの慰み者になった。
モトレージの屋敷からディナだけをなんとか逃したが、その後、『魔動人形』にされていた。
現在は、タールの魂が中に入っている。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。二つ名は「噛み千切る壁」。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。一ヶ月後だったラビツとの結婚はさらに二ヶ月延期になった。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪ったことについて謝罪した。おっぱい大好き。
高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」という傭兵集団に属している。ようやくリテルたちと会えた。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
名無し森砦の兵としてルブルム一行の護衛として同行。洞察力があり、頭の回転も早い。
利照のことをお兄ちゃんと呼び、慕っている。ルブルムやマドハト同様に頼れる仲間だが、とうとうリテルとキスをした。
・ケティ
リテルの幼馴染で想い人。一歳年上の女子。猿種。
旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。
・ファウン
アイシスの街で意気投合した山羊種三人組と一緒に居た山羊種。
ルージャグに襲われて逃げてきたクーラ村の子供たちを、彼なりに助けようとはしていたと申告。
リテルを兄貴と呼び、ギルフォドまで追いかけてきた。偽ヴォールパール自警団作戦に参加。
・タール
第一傭兵大隊の隊長。『虫の牙』の所持者。『虫の牙』にて与えた呪詛傷は全て把握しているし、呪詛傷の解除も可能。
挑戦試合で一班の班長に勝ったリテルを、自分の屋敷へと呼び出し、襲いかかってきた。
地界のナベリウスという種族。オストレアやメリアンたちの協力のもと、なんとか倒したが、
『魔動人形』(ディナの母)の姿で逃走。それ以外にも『魔動人形』(オストレアの父)も所持しているっぽい。
・プルマ副長
第一傭兵大隊の万年副長。鼻梁に目につく一文字の傷がある羊種の女性。
筋肉が大好きっぽく、メリアンに会えたことに興奮していた。
・パリオロム
第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。猫種の先祖返り。
毛並みは真っ白いがアルバスではなく瞳が黒い。タールの『魔動人形』だったことが判明。現在は消し炭。
・オストレア
第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。鳥種の先祖返り。真っ白いメンフクロウ顔。
前班長を含む四人に襲われかけたが返り討ちにし、そいつらの棒を削ぎ落とした。
フラマの妹であり、父は地界のアモンという種族。父の仇であるタール本体をなんとか倒した。
・フラマ
アイシスの宵闇通りの高級娼婦。おっぱいで有名。
鳥種の半返りのようだが、嘴はない。足は水鳥のよう。
魔法を使え、他の人には見えないはずのポーの姿が見える。オストレア同様、タールを父の仇として探していた。
・ナイトさん
元の世界では喜多山馬吉。元の世界では親の工場で働いていた日本人。
四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。馬種。元はニュナム領兵の隊長をしていた。
今は発明家兼ナイト商会のトップ。ヒモパンやガーターベルトやコンドームの発売もしており、リテルを商会に誘ってくれた。
サスペンションなど便利機能がついた馬車「ショゴウキ」(略してショゴちゃん)を提供してくれた。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
・ウンセーレー・ウィヒト
種族そのものではなく、現象としての名前。異世界からの来訪者が目撃されやすい地域でたまに出現する。
その場所で寿命によらない大量死があると、そこで死んだ者たちの姿が燐光を帯びて現れる。
これに触れられると、寿命の渦を毟られるので注意。火を避けるので、とにかく火を掲げて身を守ること。
・ナベリウス
苦痛を与えたり、未来を見ることができる能力を持つ勇猛な地界の一種族。
先祖返りの鳥種に似た外観で、頭部は烏。しわがれ声。魔法品の制作も得意。
・ケルベロス
地界の種族。頭が三つある巨大な犬に似ているが、稀にそれ以上の多頭となる個体もいる。
凄まじい吠え声と、毒を含む唾液には注意が必要。光は苦手。主人には忠実だが、大好物の甘いものには抗しきれない。
・アモン
炎を操ることができる地界の一種族。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
十銀貨(十二進数なので十二枚)=一金貨
十金貨(十二進数なので十二枚)=一大金貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第九十一話終了時点では火の月、月昼週の一日の午後。




