#90 熱き闘い
「ほう。寿命の渦を猿種に偽装しているのかと思いきや、肉体そのものが猿種の男になっているのですね」
タールは剣先で、俺の露わになった股間を軽く突く。
「実体がありますね。アールヴには種族や性別を変える魔法があるのでしょうか……興味深い」
タールは剣を鞘に収めると、今度はズボンを下ろし自らの下半身をさらけ出した。
凶悪そうなタール自身の剣は臨戦態勢だ。
「いや失礼、もう口も動かせないでしょう。別に構わないのですよ、男だろうが女だろうが……陵辱を加えますとね、私自身への憎しみや怒りが増しますでしょう。それが目的なのです。知性ある生き物にですね、苦痛やら屈辱やらを与えますと、ときに驚くような力を発揮することがあります。私はそれと戦いたい」
タールは俺の両膝をつかみ、押し広げようとした。
しかし、俺が大股を開かれるよりも前に、タールの右手が鈍い音を立てて弾かれる。
タールは慌てて飛び退り、自分の右手に触れて確認する。
「なるほど。無策で飛び込んできたわけではないと……嬉しいですよ。しかもこの骨の砕け方、回復に時間がかかります……いいですね。すばらしい!」
タールはズボンを再び穿き直すと、傍らにあったバケツをつかんで中身を俺めがけてぶちまけた。
緊張で一瞬、身が竦む……いや油ではない……違う。やつの意図は……俺の右脚の甲で水が勢いよく弾ける。
なるほど……『接触発動』は水がかかるのでも発動してしまうのか。
念のため仕込んでおいた『ぶっ飛ばす』はこれで二発とも発射された。
「では、私も本気でかからせてもらいますよ」
タールが魔法代償を集中するのを感じる。
「ほう。動けるのですか……パイア毒への耐性か、解毒か、何にせよ素晴らしい!」
タールは『虫の牙』を再び抜き、踏み込んできた。
慌てて横へ転がって逃げ、半身を起こし手斧を構える……手斧がいつもより重い。
パイアの毒は、寄らずの森でもディナ先輩のとこでも受けているから耐性はかなり強まっている、とはいえ、そんなすぐに解呪はしない。
『虫の牙』の激痛覚悟で『パイア毒の解毒』をかける……声を立てられないほどの痛みが左肩を中心に広がる。
「ですよね……『虫の牙』で負った呪詛傷がある状態で魔法を使えば、普通はそうなります。六十九番をどうやって無効化したのかはわかりませんが、三百一番はちゃんと機能しているようですね」
六十九番というのはポーのことか?
そして三百一番というのが今やられた呪詛傷か。
つまりタールは『虫の牙』で与えた一つ一つの呪詛傷を把握できているということ。
それよりももっと危険なのは、俺が動くよりも前に俺が動くことを予見したということだ。
さっきの魔法代償集中はそういう予知系の魔法だったのだろうか……また。
鋭い突きを避けるために動いた、その方向へタールも飛び、右腕に三つめの呪詛傷を付けられてしまう。
「痛みに耐えて魔法を使ってはいかがです? 『虫の牙』の呪詛によって魔法の威力が上がることはご存知でしょう?」
「そうさせてもらう」
魔法代償を集中する……タールも同様に。
『脳内モルヒネ』を使用する……三百一番と、おそらく三百二番から痛みが湧くが、耐えられない痛みじゃなくなる……そして、タールは動かない。
使う魔法が見えるんじゃなく、動きが見えるだけか?
なら、フェイントをかけるんじゃなく、見えても対処できない方法を使えばいいってことだろ。
タールが魔法代償を集中して距離を詰めてくる。
俺もまた魔法代償を集中する……タールは慌てて立ち止まり、また距離を取る。
へぇ。相打ち覚悟の『ぶっ飛ばす』が見えたのかな……でも、逃げたらこっちに使うって決めてたんだ。
俺は入り口の扉に『ぶっ飛ばす』をぶつけた。
もともと『ぶん殴る』の五倍の威力……に、魔術特異症と壊れかけた六十九番で三倍。三百一、二番でそれぞれ二倍つくなら七倍の威力ってことだろ?
すぐに魔法代償を集中する。
タールも魔法代償を集中しながら突撃してくる……が、立ち止まる。
だよな。巻き込まれるもんな。
三ディエス分の『発火』を付与した手斧を地面に叩きつけ、俺は扉に空いた穴から階段側へ抜け出す。
背後には凄まじい炎。
あの部屋の大きさなら部屋の奥へ逃げれば炎に呑まれずに済むだろうが、この階段を駆け上がるほどの隙はできるだろう……と、俺が階段を数段駆け上がったときだった。
何かに足を引っ張られて階段を踏み外す。
慌てて体勢を変えて振り向いたそこには扉の穴越しに無傷のタール……その周囲には、炎がまるで蛇のようにとぐろを巻いている。
その炎の蛇の一つが、まるで縄のように俺の左足首に絡みついていた。
「未来を見るまでもない。挑戦試合のときからね、その使い慣れてそうな炎系の魔法を使ってくれると信じていましたよ」
まさか、炎を操る魔法か何かか?
「いいですね。ここまでずっと冷静だったあなたがようやくいい表情を見せてくれました」
左足に巻き付いた炎がひときわ大きくなる。
慌てて後ろ手のまま階段を数段登り、そのまま体の向きを変えて駆け上が……ったつもりだった。
うまく登れなかった。
その理由が、左足首から先がないことだと気づくまでに少し時間がかかった……そしてその間に、俺の右足にも炎の蛇が絡みついた。
炎耐性を魔法で、と考えたがすぐにイメージが固まらない。
いやダメだ。
集中しろ。
それならば……俺の思考が次の手段にたどり着く前に、炎の蛇がゆるりと離れた。
炎の蛇は、俺の目の前で一本の腕にじゃれついている。
その腕の持ち主は、たった今、俺を飛び越えて俺とタールとの間に立ち塞がった人……白いメンフクロウ頭のオストレア。
「リテル、もっと『発火』をちょうだい」
俺は言われるままに『発火』を発動する。さっきより一ディエス多い四ディエスで。
オストレアはそれを受け取り、炎の蛇と合わせると、もはやそれは炎の龍のようにも見える。
そして俺の腕の産毛はチリチリになる。
「早く上がって治療して」
明らかに、炎の龍を操っているように見えるオストレアは、壊れかけた扉を蹴破り、中へ。
「そう。交代だ」
その声と共にメリアンが俺を飛び越えて扉の前へ。
そして俺の左足首から先を拾って俺へと投げた。
「見せたいほどご立派なのはわかるが、戦いのときは隠したほうがいいぞ」
受け取った左足先で慌てて股間を隠すが……パイア毒のせいか普段よりサイズが大きい状態が収まらない。
「リテル様!」
「リテルの兄貴ぃ!」
マドハトとファウンに担ぎ上げられ、隠し階段のあった部屋の先、入り口の部屋まで戻る。
『脳内モルヒネ』のせいでちょっとひねった程度の痛みしかないのだが、どう見ても左足首が千切れている。
しかもその切り口は焦げていて……。
ショックも大きいが、それよりももっと大きいのは焦燥感だ。
こんなとこで休んでいる場合じゃないのに。
「足の先はまだ死んでいない。急いだ方がいい」
その声にハッとする。
パリオロムだ。
確かにそうだな。
ここは元の世界はない。魔法がある世界なんだ。
「炭化した部分はもう戻らないが、そこを切り落とした血と肉ならば時間はかかるが再生できるんだよ」
「兄貴ぃ! やってよござんすね?」
「ファウン、頼む。パリオロム、ありがとう」
炭化した部分を削ぎ落とすと、いっきに血が溢れる。
血の流れる部分を合わせたが、左足だけ十センチちょい短くなってしまう。
ただの『生命回復』ではダメだ。細胞を……再生しなきゃ。
そういえば、元の世界でニュースで見たな。iPS細胞……万能細胞とかいうやつ。
皮膚細胞から人工的に万能細胞を作り出したという。
つまり、人の細胞にはもともとそういう力があるんだ……きっとコストはかさむだろうが、今の効果七倍中ならばきっとできる。
そう、できると信じられることが魔法には大切だとカエルレウム師匠もおっしゃっていた。
再生効果を併せ持った『生命回復』を新たに創る!
「『再生回復』!」
細胞が分裂し増殖するイメージ……万能細胞を……そして新たに造られた万能細胞は、骨は骨に、神経は神経に、血管は血管に、筋肉は筋肉に、内蔵は内蔵に、皮膚は皮膚に、それまであった肉体を再構築しながら再生してゆくイメージ。
失われた部位を、失う前の状態に再生しながら回復してゆく……肉体の営みを取り戻し、元の状態へ……うーわ、すっごい痒い。
十ディエスという大量の魔法代償を消費して再生したのは足首の太さで一センチほど。
効果七倍でこれか……普通の状態だったらとんでもないな。
だが、絶対にこの左足は取り戻す……利照のせいだから。
リテルがストウ村から出なかったら、こんな酷い目に合わなかっただろうから。
……それから『再生回復』をかけること十三回。
寿命の渦を半年分は消費して、ようやく元の左足が戻ってきた。
「すごい……こんな速度で再生する魔法なんて初めて見た。通常は元に戻るまで何ヶ月もかかるってのに」
パリオロムが口笛を吹く。
「メリアンとオストレアは?」
「まだ下でさぁ」
地下階段のある部屋への扉の前で様子をうかがっているファウンが答える。
「加勢しなきゃ」
立ち上がろうとしたが、足が痺れているみたいに上手に動かせない。
「体の治るのが、気持ちが治るのについていってないんじゃないか? 失った手足を再生できなかった傭兵が、よく、そこにないはずの手足の痛みを感じるというのを聞くから」
なるほど。
パリオロムはさすが傭兵の先輩だ。詳しいな。
「リテル様! 僕が支えるです!」
マドハトが肩を貸そうとしてくれる。
「いや、マドハトとファウンは他の部屋を調べてほしい。何か隠してあるモノや扉がないかを……その地下扉も、鎧を飾ってある台座を押したら取っ手をひっくり返せるようになった。罠もあるかもしれないから二人一組で気をつけて探して」
「僕、頑張るです!」
「了解でさぁ、兄貴!」
気持ちの問題なら俺一人でも気合でどうとでもできる……魔法だってあるのだから。
それよりも、ここがタールの拠点ならば、逃げ出すための仕掛けとかあるかもしれない。それを探すのが先だ。
隠し扉があったり、寿命の渦を偽装したり、罠もあった……あの灯り箱、今思えば甘い香りはあれから漂ってきていた。
パイアの毒はその油にでも混ぜていたのだろうか。
だとしたら、あの部屋で戦えば、オストレアやメリアンが危ないんじゃないか。
自分自身に『テレパシー』をかける。
他人となら交信になるが、自分自身にかけたときは自分の過去の記憶を再度体験できる……これでメリアンとの模擬戦や、弓をうまく射れたときの体験を何度も復習することで短期間で技術をずいぶんと上達させることができたんだ。
昔の自分を取り戻すというのなら、原理は同じだよな。
自分の動きを、走ったとき、忍び歩いたとき、戦闘の足さばき、ジャンプして、しゃがんで、蹴りに、正座に、足の指でモノをつかんだときのことまで、思い出せる限りの足の動きを蘇らせる。
その場で軽く跳ねてみる。
よし。いける。
これなら足手まといにはならない。
階段の下からは炎の揺らめく音、金属が打ち合う音がまだ聞こえている。
ズボンの右脚部分を割いて急ごしらえのフンドシを作り装備すると、慎重に階段を下りてゆく。
右足も足首を火傷してはいるが、ちゃんと動くので手当は後回しだ。
直線階段が螺旋階段へと変わり、折れ曲がった所……上の部屋から見えなくなった地点で『魔法偽装』で『新たなる生』を発動する。
作成するのは自分自身。そして同時に自分の寿命の渦を極限まで消し込むように偽装する。
これはここに置きっぱなしでいい。
それからレムから託された吹き矢を一本取り出し、カウダ毒に浸した。同様に短剣の先にも毒を塗る。
『見えざる弓』を『魔法偽装』でかけ、いつでも吹き矢を射れるように構え、少しずつ下りてゆく。
まだ三人の寿命の渦は動いている。
階段の終わりが見えてきた。
さっき俺が左足首を焼き落とされた場所。
妙な汗が出る……あれ、風の流れを感じる。
風は俺の背後から、地下へと向かって流れてゆく……そうだよな。
密室であんなに火が燃えたら酸欠になるよな?
ということは、まだあの先に隠し通路なりがあるという可能性。
俺は三人の動きを注意深く見極め、タールが魔法代償を集中しない隙と射線が重ならないタイミングとを図り……よし、ここだ!
階段の下まで一気に降りると同時、吹き矢を射った。
音を立てずに吹き矢は真っ直ぐに飛ぶ……タールに刺さる。
タールがこちらをちらりと見る。
そこにメリアンが小剣を叩き込むが、タールはなんとか『虫の牙』でさばく。
「この部屋、おそらく抜け道がある!」
「おいおい、左足は大丈夫かい!」
メリアンの動きがいつもより鈍い……パイア毒のせいか?
一方、オストレアの動きはさほど鈍ってはいない。
俺は部屋の中へと入り、メリアンに『パイア毒の解毒』をかける。
「あんがとな」
なるほど。
部屋の隅で燃え尽きている灯り箱の残骸が見えた。
今、この部屋には甘い匂いが残っていないし、さっきの炎でパイア毒の溶けた油が全部燃えたのかも。
あれ。
なんで、タールは無事だったんだ?
俺みたいに耐性があったとしても、動きがぎこちなくなる一瞬くらいあっても良さそうなものだが。
それにカウダの毒だってもうそろそろ効いてきてもいい頃……となると、タールは毒に対する何らかの抵抗力を持っていると考えるべきか。
メリアンの動きがよくなるにつれタールが押され始める。
オストレアはメリアンの邪魔をしないように、だが、上手にタールの隙をついて鋭い突きを繰り出して、タールは随分と満身創痍……だが、その動きの鋭さは全く衰えない。
そういえば『ぶっ飛ばす』で骨が砕けた右手は……指が変な方向に曲がったまま『虫の牙』を握りしめている。
今整理した情報で幾つかの可能性を新たに考えると……そこで思考は中断する。
『新たなる生』で作った分身が壊されたのを感じたから。
● 主な登場者
・有主 利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、呪詛にて不能となったが、ようやく解放された。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。
六十九番(契約したレムール「ポー」)以外に、三百一番と三百二番という新たな二つの『虫の牙』呪詛傷をつけられ、魔法効果爆上がり中。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えていたが、とうとうリテルとキスをした。
質問好きで、知的好奇心旺盛。リテルと一緒に旅に出るまでは無防備だった。
利照へ好意を持っていることを自覚し始めている。レムとも仲が良くなった。
・マドハト
赤ん坊のときに『取り替え子』の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。
今は犬種の先祖返りとしての体を取り戻したが、その体はあんまり丈夫ではない。コーギー顔。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、ずっとついてきている。
クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
明るい性格。楽しいことばかり追い求めるゴブリン的思考だったが、利照と一緒にものを考えるようになった。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。ゴーレム作成の魔法品をくれた。
アールヴと猿種のハーフ。ウォーリント王国のモトレージ白爵領にて壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。二つ名は「噛み千切る壁」。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。一ヶ月後だったラビツとの結婚はさらに二ヶ月延期になった。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪ったことについて謝罪した。おっぱい大好き。
高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」という傭兵集団に属している。ようやくリテルたちと会えた。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
名無し森砦の兵としてルブルム一行の護衛として同行。洞察力があり、頭の回転も早い。
利照のことをお兄ちゃんと呼び、慕っている。ルブルムやマドハト同様に頼れる仲間だが、とうとうリテルとキスをした。
・ケティ
リテルの幼馴染で想い人。一歳年上の女子。猿種。
旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。
・ファウン
アイシスの街で意気投合した山羊種三人組と一緒に居た山羊種。
ルージャグに襲われて逃げてきたクーラ村の子供たちを、彼なりに助けようとはしていたと申告。
リテルを兄貴と呼び、ギルフォドまで追いかけてきた。偽ヴォールパール自警団作戦に参加。
・タール
第一傭兵大隊の隊長。『虫の牙』の所持者。『虫の牙』にて与えた呪詛傷は全て把握している。
挑戦試合で一班の班長に勝ったリテルを、自分の屋敷へと呼び出し、襲いかかってきた。
・プルマ副長
第一傭兵大隊の万年副長。鼻梁に目につく一文字の傷がある羊種の女性。
筋肉が大好きっぽく、メリアンに会えたことに興奮していた。
・パリオロム
第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。猫種の先祖返り。
毛並みは真っ白いがアルバスではなく瞳が黒い。気さく。
・オストレア
第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。鳥種の先祖返り。真っ白いメンフクロウ顔。
前班長を含む四人に襲われかけたが返り討ちにし、そいつらの棒を削ぎ落とした。
フラマの妹であり、タールを父の仇と付け狙う。
・フラマ
アイシスの宵闇通りの高級娼婦。おっぱいで有名。
鳥種の半返りのようだが、嘴はない。足は水鳥のよう。
魔法を使え、他の人には見えないはずのポーの姿が見える。
『虫の牙』を持つ者が父の仇。
・ナイトさん
元の世界では喜多山馬吉。元の世界では親の工場で働いていた日本人。
四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。馬種。元はニュナム領兵の隊長をしていた。
今は発明家兼ナイト商会のトップ。ヒモパンやガーターベルトやコンドームの発売もしており、リテルを商会に誘ってくれた。
サスペンションなど便利機能がついた馬車「ショゴウキ」(略してショゴちゃん)を提供してくれた。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
・パイア
猪の皮を被った魔物。中身は獣種の女性に似ていて、繁殖のために獣種の男を誑かして交尾する。
交尾が済むと、子の栄養のため、攫った男も周囲の生命も喰らい尽くす。
可哀想な被害者は交尾を免れたとしてもパイアの毒で死んでしまう。このパイア毒には催淫効果もある。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
十銀貨(十二進数なので十二枚)=一金貨
十金貨(十二進数なので十二枚)=一大金貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第九十話終了時点では火の月、月昼週の一日の午後。




