表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/94

#94 望まぬ再会

 弓を構え、それから状況を整理するために今一度、密度を変えて『魔力感知』をする。


 接近してくるのは、寿命の渦から判断すると河馬種(タウエレトッ)の男の子のようだ。

 その母親とファウンは馬車から下りて走ってこちらへ……さらわれた可能性はなくもないのか。


 馬車には残りの連中が乗り込んでいる……馬車に集めているのか?

 だとしたら、場合によって襲撃から逃れるために出発する可能性もあるか。

 もしも無関係の人たちならば、俺たちが乗り遅れてても逃げてくれた方がいい。


 男の子がこちらへ来るのに合わせたかのように羊種(クヌムッ)も急にこちらへ走り出した。

 さっきいったん落ちてまた飛んだあのゴキブリ(カッツァリーダ)は、俺たちの居る場所の少し手前で木に留まった。

 本体が動くために木に留めたのか。もしくは、そこを起点に大きな魔法を発動させるか。

 ならば羊種(クヌムッ)ゴキブリ(カッツァリーダ)を『使い魔契約』って読みは濃厚っぽい。


 しかしこちらへ集まってくる連中がグルかどうかはわからない。

 マドハトに目を合わせ、俺は走り出す。

 森の中を、ニュナムの方へ。

 マドハトも黙ったまま走ってついてくる。


 『魔動人形』などというものの存在を知ってしまった今、子供だろうが何だろうが信じることができない。

 ディナ先輩に口を酸っぱくして優先順位を叩き込まれていなかったら、あの男の子がさらわれていると見立てて最初に助けようとしたかもしれない。

 でも今は、メリアンはいない。

 俺とマドハトの二人だけでは、戦うことよりも逃げることを優先する。すべては生き残るために。

 これは俺の体じゃない、リテルの体。

 ケティとも約束した。ルブルムやレムとだって……判断を誤るわけにはいかない。


 走りながら小さな石を拾って立ち止まる。

 『ぶっ飛ばす』を『接触発動』で仕込み、『見えざる弓』でその小石を構える。

 男の子はさっき俺たちがいた場所の近くで止まっている。最初から位置を決めて移動したのか、さもなくば俺たちが逃げたからそこに置き去りにしたのか。

 とりあえず、向きを変えてこちらへ走ってくる羊種(クヌムッ)は敵確定だろ。


 『見えざる弓』は、自分が投げられるサイズまでのものをまるで弓矢のように射出する魔法で、弓がないときに矢を飛ばしたり、剣を飛ばしたりという使用方法しか考えていなかったが、弧を描いて射る弓と違い、視覚範囲内の標的へ直線的に飛ぶことを確認してからは、むしろ軽くて威力のないものを気づかれずに飛ばす使用方法の方が正しい気がしている。

 命中精度は集中力に比例するし、威力のまったくないモノでも魔法を付与すれば絶大な効果を発揮する。


 落ち着いて、集中して、周囲を『魔力感知』で再び探る。

 『熱の瞳』の視界にも切り替えて、それから木々の隙間に射線が通る瞬間を待つ……ただ単に見えてから発射すればいいというわけではない。

 リテルが狩人として学んだ経験を元に、獲物が動く方向を予測してそこへ撃ち込む……『見えざる弓』の小石を放った……羊種(クヌムッ)の少し後ろを走ってくる、寿命の渦が全く見えない人型の熱源に対して。

 そいつは、体を回転させながら変な方向へと吹っ飛んだ。

 恐らく右胸に当たっている。


 羊種(クヌムッ)はと言えば、一瞬足を止めはしたが、再びこちらへと走り出す。

 当てた方は姿が見えないし、寿命の渦も見えない。だとしたらどのくらいの被害状況かは仲間からもわからないのかもしれない。

 羊種(クヌムッ)の動きが変わった……まさかフェイントを入れ始めた?

 確実に近づいてくる。

 寿命の渦から感じる感情……何が何でも向かってくる気迫。

 やはりこいつは狂気に取り憑かれている。


 俺は次の小石を準備する。同じく『ぶっ飛ばす』を。

 『接触発動』は基本魔法代償消費は一ディエスで、三ディエスまでの魔法を付与できる。『ぶっ飛ばす』は『ぶん殴る』の五発分ということで五ディエス必要……『接触発動』も二ディエスになる。

 さすがに七ディエスを『魔法偽装』は無理だが、こちらの魔法を過小評価させるために魔法代償を減らしてはみせる。

 『見えざる弓』を再び構え、集中する。

 ためらいは自分たちを傷つけることになる……俺は再び発射した。


 羊種(クヌムッ)の左腕が飛び、その勢いに引っ張られるように転がるのが見える。

 こんな光景、昔だったらショックやら恐怖やらで固まってしまっていたかもしれない。

 だけど幾つもの命がけの戦いを越えて、自分の足首から先が千切れたりして、慣れたくもないのに慣れてきたようだ。

 狂気の羊種(クヌムッ)も起き上がる……魔法代償の集中を……いや、これは凄まじい勢いでたれ流ししている?


 この世界の人は、誰でも魔法が使える……その言葉を初めて肌で感じた。

 寿命の渦が花火のように散ってゆく……全体的に細りながらも吹き出す勢いに乗って、動かぬ体を無理やりに動かしているようにも見える。

 その迫力に気圧されそうになっていることに気付いたのは、羊種(クヌムッ)が派手に転んだから。

 マドハトが『大笑いのぬかるみ』をかけたのだ。

 いつの間にか数アブス先まで迫ってきていた。

 羊種(クヌムッ)はその場で滑って前へ進めない。

 今ならば矢で射抜ける……それがわかっているのに、俺の手は止まっている。


「……やっぱりエルーシだったか」


 エルーシはもがくのをやめ、ぬかるみに這いつくばったまま俺を見上げる。

 その寿命の渦はなおも崩壊を続けている。


「リテル、お前は少しばかり魔法が得意なようだが、世の中、上には上がいる。お前は助からん」


 弓を構える。


「俺はもう、誰にも奪われない」


 凄まじく大量の魔法代償の集中を、いやダダ漏れを感じたのと同時に矢を放った。

 矢はエルーシの喉元に命中こそしたが、封じていた『ぶっ飛ばす』はエルーシの体よりも先に当たった何かに炸裂し、エルーシ自体にはただの矢として刺さっている。

 周囲には何十匹ものゴキブリ(カッツァリーダ)が飛んでいる。

 『魔力感知』を通さない革袋の口を緩めたようだ。

 なるほど。そういうガードのされ方への考慮がなかったな。

 エルーシの体にはもう寿命の渦はほとんど戻っていない、その最後の渦が解けた瞬間、一つの黒い雲と化していたゴキブリ(カッツァリーダ)が一斉に『発火』した。


「リテル様!」


 こんな命がけのやりとりのさなか、俺はエルーシの最期の輝きに目を奪われていた。

 まだこちらへ向かってくる者は居るというのに……助かった、マドハト。


 次の矢に再び『ぶっ飛ばす』を『接触発動』しようとしてゾクリとする。

 何かを感じる。

 『魔力感知』にも『熱の瞳』にも映らない何かが……いや、違和感のようなものはわずかに『魔力感知』でも感じてはいる……さっき、男の子が飛んできたときと似た……。


 弓の弦がいきなり切れた。

 少し遅れて首筋に熱さが来る……とっさに手で触れ『生命回復』を使う。

 何が起きた?

 『魔力感知』の範囲内では魔法代償の集中を感じなかった。

 『魔法転移』を『魔法封印』した短剣にはまだ効果時間が残っているのを感じる。

 別の遠距離攻撃か?

 弦と首とが切れたとき、頬に風を感じた。

 『カマイタチ』という単語が頭をよぎる。

 エルーシの言っていた上というのはムニエールのことか?


 最初に吹っ飛ばした奴が視界から消えている。その寿命の渦は相変わらず見えないまま。

 なに油断してんだよ俺は……見えない奴はエルーシのそばにいた。この風は恐らく別の奴だ。

 驚異は全く減っていない。気持ちを切り替えないと。


 そしてまた、河馬種(タウエレトッ)の男の子がこちらへ飛んできている……なんというか、真っ直ぐではなく、ちょっとポエムだけど風に運ばれている感がある。

 さっき飛んでいたときもこんな感じだった……弦と首を切ったのも。

 敵は最低まだ三人。

 この男の子はどうなんだ?

 俺は子供に対して攻撃なんてできるのか?

 逆にこれが罠で、本当にただ利用されて飛ばされているだけだったとしたら、そんな無実の子供を傷つけでもしたら、一生悔やんでも悔やみきれないだろう。


 マドハトに目配せしてエルーシの亡骸から距離を取る。

 今度は街道の方へ。

 『魔力感知』範囲内の魔法代償の集中はおおよそ見えてはいるが、同時にあちこちで発生した場合、そのすべてを把握しきれてはいない。


 だから気付けなかった。


 木の陰から飛び出してきて、俺に触れた、何か小さな虫のようなものには。

 その途端に体が動かなくなる……カウダの麻痺毒とは違う……この効果は『皮膚硬化』それもかなりの魔法代償を消費したやつ。

 ああ、少し離れた木の、こちらからは見えない向こう側にそれなりの魔法代償集中を感じたっけ。

 『生命回復』かと思っていたが『皮膚硬化』だったのか……だとしたら、どうやってここまで魔法を飛ばした?


 俺よりも街道に近かったために先行していたマドハトが急に立ち止まり、振り返って俺を見る。

 立ち止まるなと言いたいが全身の皮膚が突っ張って、口も開けない。


 実はこの『皮膚硬化』は解除できる。

 『皮膚硬化』効果がある魔法品をウォルラースに武器として使われたときの経験から、対策魔法を用意してあるからだ。

 触れた魔法の効果時間を「近道」してすぐに終了させてしまう『時間切れ』という魔法。

 「近道」というのは「遠回り」とまったく反対の思考。

 「遠回り」が可能ならば「近道」だって、と試しに作ってみたらうまくいったもの。

 ただ、さっきの虫みたいな奴の正体がわからないままで解除しても、今度は別のもっと致命的な魔法を使われるかもしれない。

 まだ『魔法転移』は使えていないはずだから。


 第一、『皮膚硬化』を使うということは、俺を殺すのではなく生け捕りを目的としているように感じる。

 この仕掛てきている連中がタールの『魔動人形』ならば俺が狙いというのは十分にあり得る。

 だがその場合、マドハトはどうなるだろうか。

 そんな俺の不安をよそに、マドハトは俺のところまで戻ってきて一生懸命担ごうとする。

 全然前に進まない。

 それもそのはず、俺がマドハトを助けた夜までマドハトの本体は病弱でほぼ寝ていたのだ。

 いくら本来の魂が戻って徐々に体が健康になってきたとはいえ、あれから一ヶ月も経っていないマドハトの体はまだまだ強いとは言えない。

 マドハトの必死さが伝わってくるだけに、余計切ない。


 ふとマドハトが俺の体を動かそうとするのをやめた。

 すぐ近くに男の子がふわりと着地したからだ……着地点を変更できるのか、それとも同じ移動魔法を再使用したのか。

 マドハトはすぐに『大笑いのぬかるみ』を使う……男の子はつるりと滑って、ぬかるみに転ぶ。

 また飛ぶかと思いきや、今度はぬかるみの中でもがくだけ。

 その表情がどうにも「無理やりさらわれました」という感じではない。

 あまつさえ舌打ちをした……クロか?


 魔法代償の集中を感じる……なんだなんだ。

 男の子の体が巨大化してゆく……と共に容姿も、寿命の渦すらも形が変わる。

 わずかな間に木々の隙間で窮屈そうにするくらいのサイズに……この大きさ、ルージャグと変わらない。

 この醜悪な姿、まるで魔物……記憶の中にあるルブルムからもらった知識に醜い姿の魔物を探してみるが、そんなアバウトなキーワードでは情報が出てこない。

 そいつは手近な木につかまり、やすやすとぬかるみの範囲から抜け出す……この大きさ、幻影ではなく実体があるということか!

 まあ魔法というものがある世界だ。

 そこは受け入れる。

 ただルージャグのときと違い、これだけ体格差のあるモノが至近距離に居ると恐怖感が半端ない……紳士たれ、という言葉が脳内で虚しく響く。


「殺さないでくれよ」


 デカイ奴の後ろから声が聞こえた。


「当たり前だろう。私にも使えるかもしれないのだから」


 デカイ奴が答える。

 生け捕りという可能性は当たった……けど、圧倒的に不利なのは変わらない。

 デカイ奴がぬっと手を出し、俺の体をつかもうとする。

 マドハトが魔法代償を集中するが、魔法が発動する前に、俺たちめがけて突風が吹いた。


 瞼を閉じられなかったので目がヒリヒリする。

 凄まじい突風だったとか、デカイ奴がロウソクを吹き消すときのように息を吹いたとか、過去形で状況を振り返ったときにはもう、俺は巨大な手につかまれ、持ち上げられていた。

 マドハトは小柄だからか、ちょっと離れた場所まで吹き飛ばされていた。

 寿命の渦の動きから判断すると吹き飛ばされて木にぶつかって……意識を失った?


 それはそれで心配なのだが、ここから脱出することを考えるためには他にもっと考えなきゃいけないことがある。

 複数の思考を同時に行えるナベリウスが羨ましい。

 殺さないでくれよ、という声、聞いたことがある声だったから。


「コンウォル、君が持ちあげたままだと僕の手が届かない」


 その声がまた喋った。

 コンウォルというのは、このデカイ奴の名前か?

 俺をつかむ手のひらからは体温も感じる。

 この巨大化の魔法、消費した魔法代償量はそんなに多くなかったのに、費用対効果がえげつない。

 どんな思考でこんな効果を作れるんだ?

 酷い状況の中で、魔法に対する興味を持てている自分を見つけ、少しだけ冷静さを取り戻す。


「また指を飛ばせばいいだろう?」


 巨大で醜い姿のコンウォルが半笑いで俺は地面へ無造作に置く。


「がさつだな。指は拾って『生命回復』で取り付けてからでないと再使用できないのは知っているだろう。君の『魔動人形』と違って僕は指を切り落せば痛みもあるんだ。君の突風で飛ばされたかもしれない」


「そこに居たのか。姿が見えない方が悪いし、指を探す魔法でも作っておかないのも悪い」


 コンウォルと、見えない声との、軽い言い争いは続く……どことなく二人の仲の良さを感じる。

 その見えない声だけど……ようやく思い出せた。


「『姿なき姿』の効果時間はもうすぐきれる。僕が指を見つけるまで少し待ってくれたまえ」


 間違いない。

 この声、クラーリンさんだ……だけど、このコンウォルはさっき「私にも使えるかも」と言った。

 「使う」ってなんだ?

 まさか、クラーリンさんが実はタールの『魔動人形』?

 寿命の渦を完璧に消せることを考えると、その可能性もなくはない。

 タールと戦ったあの日、死に人形だと思っていたディナ先輩のお母さんは、動いて逃げた。

 『魔動人形』には、寿命の渦を完璧になくせる効果が備わっているのかもしれない……となると、「使う」というのは、俺を『魔動人形』化?

 それはヤバい。

 ルブルムやレムが簡単に騙される残酷な未来しか思いつかない。


「不便な魔法だな。途中で効果時間を終了させられないなんて」


 俺がやろうとしている作戦がバレたのかとドキリとする……落ち着け、俺。

 巨大だったコンウォルが、また男の子くらいの大きさへと戻る。

 しかしその姿は河馬種(タウエレトッ)とは異なる醜い人型で、寿命の渦も獣種ではない。


「生まれただけで所持している種族魔法と、研究と努力の末に作り上げた可愛い魔法たちとを同列に扱わないでくれたまえ」


「ふん。これは先に取り返させてもらう」


 小さくなったコンウォルが俺の腰から『虫の牙』を収めた鞘ベルトを外す。


「ああ、ようやく戻ってきた。私の最高傑作、『虫の牙』!」


 戻ってきた?

 ということはコンウォルはタールの『魔動人形』?

 まさか、コンウォルとクラーリンさ……クラーリンは、二人とも?


 オストレアの話では『魔動人形』は複数体もてるが、それぞれに魂を分けて封入しなきゃいけないから、数多くは持てないと……通常のナベリウスでも三、四体と言っていた。

 タール本体、ディナ先輩の母親、オストレアの父親、パリオロム、クラーリン、コンウォル……六体。

 コンウォルもクラーリンも魔法を使うということはタールの『魔動人形』はそろそろ打ち止めと考えて……いや、そうじゃない。

 思考の可能性を自ら閉ざしてどうする。

 俺の疲れた心が、都合が良い可能性を選ぼうとしている……それは思考の放棄だ。

 負けるな、俺。

 紳士たれ、俺。


 ふと左手の手の甲に冷たさを感じた。

 コンウォルが、『虫の牙』を鞘から抜き、刃先で触れたのだ。


「確かに硬いな。だがこれの傷はほぼ呪詛だから問題ない……それに、ネスタエアインから呪詛が効いてなかったと聞いた。私も試してみたいんだ」


 ネスタエアイン……まだ他に居るのか。

 コンウォルが醜い顔に笑みを浮かべながら魔法代償を集中した。


● 主な登場者


有主(アリス) 利照(トシテル)/リテル

 利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。

 ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、呪詛にて不能となったが、ようやく解放された。

 その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種(マンッ)。レムールの「ポー」と契約中。

 左足首を焼き切られたが、現在は回復中。『虫の牙』の解析をカエルレウムに頼むべく帰路に就いた。


・カエルレウム師匠

 寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種(マンッ)

 肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。

 寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。

 ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。

 自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。


・ルブルム

 寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種(マンッ)のホムンクルス。

 カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えていたが、とうとうリテルとキスをした。

 質問好きで、知的好奇心旺盛。リテルと一緒に旅に出るまでは無防備だった。

 利照へ好意を持っていることを自覚し始めている。レムとも仲が良くなった。


・マドハト

 赤ん坊のときに『取り替え子』の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。

 今は犬種(コボルトッ)の先祖返りとしての体を取り戻したが、その体はあんまり丈夫ではない。コーギー顔。

 ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、ずっとついてきている。

 クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。

 明るい性格。楽しいことばかり追い求めるゴブリン的思考だったが、利照と一緒にものを考えるようになった。


・ディナ先輩

 フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。

 男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。ゴーレム作成の魔法品をくれた。

 アールヴと猿種(マンッ)のハーフ。ウォーリント王国のモトレージ白爵(レウコン・クラティア)領にて壮絶な過去を持つ。

 フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。


・ディナの母

 アールヴだが獣種の男に惚れ、アールヴの隠れ里を出た。

 だがウォルラースに唆されたモトレージ白爵(レウコン・クラティア)の計略で夫を殺され、孤立させられた。

 ディナを守るため育てるためにモトレージの妾となったが、結果的にディナもモトレージの慰み者になった。

 モトレージの屋敷からディナだけをなんとか逃したが、その後、『魔動人形』にされていた。

 現在は、タールの魂が中に入っている。


・メリアン

 ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。

 ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種(モレクッ)の半返りの頼もしい傭兵。二つ名は「噛み千切る壁」。

 円盾と小剣(ごつい)を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。

 騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。一ヶ月後だったラビツとの結婚はさらに二ヶ月延期になった。

 現在は、タール亡き後、第一傭兵大隊の隊長代理。


・ラビツ

 ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。

 ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪ったことについて謝罪した。おっぱい大好き。

 高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」という傭兵集団に属している。ようやくリテルたちと会えた。


・レム

 バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。

 魔法に長けた爬虫種(セベクッ)の少女。リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。

 その母親は利照同様に異世界イギリスから来た。

 名無し森砦の兵としてルブルム一行の護衛として同行。洞察力があり、頭の回転も早い。

 利照のことをお兄ちゃんと呼び、慕っている。ルブルムやマドハト同様に頼れる仲間だが、とうとうリテルとキスをした。


・ケティ

 リテルの幼馴染で想い人。一歳年上の女子。猿種(マンッ)

 旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。

 カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。

 盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。

 足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。


・エルーシ

 フォーリーのスラム出身の羊種(クヌムッ)

 フォーリーの街についたばかりのリテルとルブルムに絡み、マドハトにお腹が下るゴブリン魔法をかけられ、牢屋で腹を下して大変だった。

 ディナが牢屋から出してあげたのは、ディナ先輩配下の娼館の有力者ロズの弟だったから。

 その後、体を売る仕事ではなく、支配する側に回りたいと考え、ウォルラース配下の盗賊団に友人と共に参加し、襲撃してきたが、メリアンによって返り討ちに。

 その後、逃げ出し姿をくらましていたが、魔法を学び再びリテルの前に現れた。もう誰にも奪わせないと最期は自ら散った。


・ウォルラース

 かつてディナ先輩とその母を絶望のどん底へ叩き落とした張本人。

 名無し森砦を守る兵士たちと手を組み、スノドロッフの子どもたちを狙っていたが、ダイク達を見捨てて独り逃げた。

 クスフォード虹爵と国王との間で、カウダ盗賊団の首領とされ逆賊認定された。

 本来は身を守るための魔法品を、相手の無力化に用いたりなど、魔法品を使いこなす。


・ファウン

 アイシスの街で意気投合した山羊種(パーンッ)三人組と一緒に居た山羊種(パーンッ)

 ルージャグに襲われて逃げてきたクーラ村の子供たちを、彼なりに助けようとはしていたと申告。

 リテルを兄貴と呼び、ギルフォドまで追いかけてきた。偽ヴォールパール自警団作戦に参加。


・タール

 第一傭兵大隊の隊長。『虫の牙』の所持者。『虫の牙』にて与えた呪詛傷は全て把握しているし、呪詛傷の解除も可能。

 挑戦試合で一班の班長に勝ったリテルを、自分の屋敷へと呼び出し、襲いかかってきた。

 地界(クリープタ)のナベリウスという種族。オストレアやメリアンたちの協力のもと、なんとか倒したが、

 『魔動人形』(ディナの母)の姿で逃走。それ以外にも『魔動人形』(オストレアの父、コンウォル、クラーリン)も所持しているっぽい。


・パリオロム

 第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。猫種(バステトッ)の先祖返り。

 毛並みは真っ白いがアルバスではなく瞳が黒い。タールの『魔動人形』だったことが判明。現在は消し炭。


・オストレア

 第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。鳥種(ホルスッ)の先祖返り。真っ白いメンフクロウ顔。

 前班長を含む四人に襲われかけたが返り討ちにし、そいつらの棒を削ぎ落とした。

 フラマの妹であり、父は地界(クリープタ)のアモンという種族。父の仇であるタール本体をなんとか倒した。


・フラマ

 アイシスの宵闇通りの高級娼婦。おっぱいで有名。

 鳥種(ホルスッ)の半返りのようだが、嘴はない。足は水鳥のよう。

 魔法を使え、他の人には見えないはずのポーの姿が見える。オストレア同様、タールを父の仇として探していた。


・コンウォル

 河馬種(タウエレトッ)の男の子の姿をしていたが、現在は醜い小男の姿。種族は獣種でないこと以外は不明。

 ギルフォドからニュナム行きの定期便馬車に河馬種(タウエレトッ)の母親と一緒に乗っていた。

 風に飛ばされるような魔法、実体を伴ったまま巨大化する魔法などを使う。タールの『魔動人形』っぽい。


・クラーリン

 チェッシャーの姉グリニーに惚れている魔術師。猫種(バステトッ)。目がギョロついているおじさん。

 チェッシャーに魔法を教えた人。リテルにも魔術師としての心構えや魔法を教えてくれた。

 アイシスに居たはずがなぜかエルーシと共に襲撃してきた。タールの『魔動人形』っぽい。


・ネスタエアイン

 タールの仲間もしくは『魔動人形』。詳細は不明。


・馬車のその他の同乗者

 御者は猿種(マンッ)、護衛は両生種(ヘケトッ)の男性と鹿種(ケルヌンノスッ)の女性。

 客は、紳士っぽい馬種(エポナッ)の老人、豚種(ヴァラーハッ)若いカップルは女性だけ半返り、

 男の子の若い母親である河馬種(タウエレトッ)


・レムルース

 地界(クリープタ)に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。

 『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。

 レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。

 ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。


・ナベリウス

 苦痛を与えたり、未来を見ることができる能力を持つ勇猛な地界(クリープタ)の一種族。

 先祖返りの鳥種(ホルスッ)に似た外観で、頭部は烏。しわがれ声。魔法品の制作も得意。


・アモン

 炎を操ることができる地界(クリープタ)の一種族。



この世界(ホルトゥス)の単位


・ディエス

 魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。

 魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。


・ホーラ

 一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ一時間に相当する。


・ディヴ

 一時間(ホーラ)の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ五分に相当する。


・クビトゥム

 長さの単位。

 本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。

 トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。


・アブス

 長さの単位。

 元の世界における三メートルくらいに相当する。


・プロクル

 長さの単位

 一プロクル=百アブス。

 この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。


・通貨

 銅貨(エクス)銀貨(スアー)金貨(ミールム)大金貨(プリームム)

 十銅貨(エクス)(十二進数なので十二枚)=一銀貨(スアー)

 十銀貨(スアー)(十二進数なので十二枚)=一金貨(ミールム)

 十金貨(ミールム)(十二進数なので十二枚)=一大金貨(プリームム)


・暦

 一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。

 それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。

 各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。

 毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。

 第九十四話終了時点では火の月、月昼週の五日の夜。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ