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#84 秘密の再会

 ほんのわずかに前へ体重を移しただけだった。

 しかし移しきる前にタレ目犬種(アヌビスッ)は突進してくる。その右手は背後に隠したままで。

 俺は左手で牽制しつつタレ目の左側へ体を(さば)く。

 その俺の背をかすめるかのように、ルブルムが小剣を鋭く突き出し、タレ目は慌てて地面を蹴り横へと転がるように離れた。


「ガキのクセして気配を読ませない訓練してんのかぃ」


 メリアンの言葉を思い出す。

 俺とルブルムが寿命の渦を偽装しているのは、『気配感知』を使用できる戦士からするとやりにくいのだと。

 寿命の渦に感情が乗るように、体を動かそうとする意識も寿命の渦に乗るらしく、それを全く見せない相手だと、視覚でしか動きが判断できないので、特に混戦だと対応が面倒になるって。


 ということはさ。


「ルブルム。エクシをお願い」


 俺はタレ目男へと全力突進……する意識を寿命の渦に乗せ、その実、体はタレ目がそれを回避した方向へ距離を詰められるようにバネを残す。

 男は眉間にシワを寄せ、迎撃の構えを取る。

 くっそ。避けないのか。俺は手前で立ち止まり、再び構える。


「きっもち悪ぃ動きしやがってぇ。だが素手の坊っちゃんならよぉ、オレっち負ける気はしねぇぜぃ」


 それはメリアンにも指摘されている。

 リテルは随分体を鍛えていた。

 しかし、狩人に必要な体と、格闘戦に向いた体とは違う。

 持久力と器用さと弓を引く腕力はあっても、打撃力は微妙なところ。

 拳で撃ち抜く動きが体に馴染むには鍛錬を繰り返してまだまだかかるよ、と言われた。

 魔法を使える野外ならその不足はなんとでも補えるが、こういう街の中のケンカだと足りない部分を否が応でも自覚させられる。

 動きを寿命の渦に乗せるやり方も、今思いついたばっかりで習熟度は低いし、何よりこちらの攻撃に脅威を感じてないのであれば、威嚇やフェイントを混ぜたところで……いや、余裕を持ってくれている今が唯一の攻め時かもしれない。

 『魔力感知』でタレ目の動きと寿命の渦のゆらぎとがうまく同調する密度にチューニングする……これ、激しく動きながらだとしんどいよな。


「ではお言葉に甘えて、武器を使わせてもらいます」


 俺は短剣の鞘の留め具へと手を伸ばしながら、タレ目へと近づいた。

 当然、寿命の渦には刺す気持ちをのせる。

 タレ目も右手を動かす構え。俺は急激に立ち止まってしゃがみ、抜いた短剣で地面をえぐった。

 他の街のように洗練された石畳ではないマンクソム砦の地面は、むき出しの土。短剣の上にすくいあげた土の塊を、タレ目の顔にめがけてぶっかけた。


「っつっ! テメェ!」


 そしてその間に脱出!

 ルブルムとエクシ(クッサンドラ)の方へ走り出したけど、足が止まった。


「おいっ! ヒューリ! お前っ、一昨日の今日で何やってんだっ!」


 その男は、さっきのタレ目犬種(アヌビスッ)を見つめていて、俺には気づいていない。

 ただ、俺は、いやリテルは、その男を知っていた。

 ケティの兄、ダイン兄貴だ……でも、なんでこんな場所に。

 ダイン兄貴は確かフォーリーの鍛冶師組合で修行していたはずだけど。


「ダイン兄貴?」


 思わず、声に出してしまった。


「え? あれ? お前、リテルか? 何やってんだこんなところで」


 背後にタレ目の気配が近づき、慌てて踵を返す。

 しかし、タレ目は両手を頭の上に出し、申し訳なさそうな顔をしている。


「なんでぇ。ダインの知り合いかよぉ。悪かったなぁ。じゃあぁ、あっちの子はもしかしてケティちゃん?」




 それからしばらくの後、俺たちは、ダイン兄貴が今寝泊まりしているという、鍛冶屋の二階の狭い小部屋に案内された。

 ヒューリと呼ばれたタレ目もついてきている。


「で、エクシとリテルがここに居る理由ってなんだい?」


 ダイン兄貴がフォーリーへ出てからもう六年は経つ。

 ダイン兄貴からしたら、俺はストウ村で、まだ狩人見習いにすらなっていない頃の記憶しかないはず。


 まず、リテルが狩人見習いになったこと、それから寄らずの森の魔女の弟子にもなったことを告げる。

 その寄らずの森の魔女のお使いで、姉弟子であるルブルムと共にヴォールパール自警団のラビツを探していること、エクシは護衛として同行してくれたが、ここへ来るまでの戦闘などで体調を崩している状態だ、と続けた。


「待て待て待て……なんか色々あり過ぎじゃないか?」


 ダイン兄貴の眉が、ヒューリのタレ目くらい下がりっぱなし。

 ケティが途中までついてきたことや、死にかけたことについてはあえて言っていない……というか、具合が悪そうなエクシ(クッサンドラ)のことですら、こんなに心配そうにしているダイン兄貴にはとてもじゃないが言い出せない。

 当然、エクシの中身がクッサンドラだということも絶対に言えない。

 クッサンドラが喋ってボロが出ないよう、エクシについても全て俺が話した。


 ダイン兄貴は、リテルより七歳も年上だ。

 六年前、フォーリーの鍛冶師組合へと弟子入りしたのだが、自分がどこまでできるのかを試したくなり、ダインの師匠の紹介で、去年からマンクソム砦で修行をしているとのこと。

 ヒューリとはこちらで意気投合し、娼館通い仲間なのだという。


 そして、問題のヒューリだが、「自分は元ヴォールパール自警団」だと自慢していたのだとか。

 「ヴォールパール自警団」は元々、ラビツや一部のメンバーがヴォールパール村出身のため、なんとなく使っているうちに、彼ら傭兵団の呼称として定着してしまったものらしい。

 メリアンの二つ名「噛み千切る壁」が知れ渡っているように、「ヴォールパール自警団」もかなりの知名度で、娼館でモテ具合が違うのだという。

 ところが一昨日の夜、本物のヴォールパール自警団が娼館に現れ、素直に謝ればいいのに、ヒューリは本物超えを狙ってラビツに勝負を挑み、あっさり返り討ちにあった上に、今までの嘘がバレたことで娼館街で笑い者になってむしゃくしゃしていたと……完全に自業自得じゃないか。


 それより一昨日!

 メリアンの読み通り、ちゃんとマンクソム砦に寄っていたのか。

 しかも「ここからギルフォドへは徒歩で向かうから明日早く出る」と、娼館街では泊まらずに宿に戻ったらしい……となると、昨日の朝出発したとして……メリアンたちとは遭遇できるのか? いや、ギリギリすれ違いそうな……やはり直接、ギルフォドへ向かった方が良かったのかな。

 とにかく早くメリアンたちに連絡して、できれば先にギルフォドへ向かってほしいところだな。


「忙しそうだな、リテル。もう行くのか?」


「ごめん、ダイン兄貴。ゆっくりしていける時間はないんだ」


「そうか……じゃあ、これやるよ。俺が鍛えた短剣だ」


 ダイン兄貴が手渡してくれた短剣は少し小振りで、柄の形がちょっと独特だ……何かに引っ掛けられそうな、というか。


「これはな、すね当ての内側に取り付けられるようになっているんだ」


「ダイン兄貴、ありがとうございます!」


 早速、すね当ての内側に装備してみる。

 おー。ここに短剣が隠されているなんてちょっと見にはわからないな。


「ヒューリはこう見えても面白い発想をするやつでな、この手の隠し武器ってのを色々考案してくれる。で、俺がそれをもとに試作してるんだ」


 なるほど。隠し武器か。

 紳士としては気が咎めはするが、生き残ること、ルブルムたちを守り抜くことを考えたら、そういう手段も十分アリだよな。

 あ、ヒューリのさっきの右手にもそういう隠し武器を仕込んでいたのかな。


「リテルちゃんよぉ。俺からもお詫びのこれ、もらってくれなぁ」


 ヒューリからも何か渡される……なんだこれ?

 手のひらに収まるくらいの、スポンジ状の何か。軽く握ってみると、モワッと何かが出た。

 慌てて顔を背けると、ヒューリが笑っている。


「瘴気茸って言うんだぁ。ジャ・バ・オ・クーの洞窟でたまに採れる地界(クリープタ)産の茸をなぁ、スポンゴスの中に入れてんだぁ。握りしめると瘴気によく似たガスが出てなぁ。範囲は狭いがうまく使えば戦闘を有利に進められっからぁ。お世話は毎日数滴の水を垂らすだけでいぃぜぇ」


 スポンゴスという単語を聞いて、ルブルムが俺の股間をチラ見する……やめなさい。


「おいおい、ヒューリ、いいのか? それ、けっこう苦労して作ってただろう?」


「オレっち、目が覚めたんよぉ。ラビツに負けてぇ、さっきだって坊っちゃんに互角でよぉ。腕力が同じなら負けていたかもしんねぇ。リテルちゃんよぉ。あれ、よかったぜぇ。出した気配と違う動きすんの。あれ、オレっち極めてみたくなったんよぉ」


 いただけるというのなら、それはありがたく頂戴しておこうと思う。

 あの戦いは自分にとってもプラスになったし、この砦への寄り道して良かったと思えることを少しでも増やしたい気分。


「エクシちゃんにはこれでぇ、ルブルムちゃんにはこっちをやんよぉ」


 ヒューリがエクシ(クッサンドラ)に渡したのは、サンダルで使う革製の中敷き。中には小さなナイフが隠してあって、別に飛び出したりはしないんだけど、武器を持てない場所にも持ち込みやすいという。

 ルブルムに渡したのは、少し幅広な革製のリストバンド。内側に何本か鉄製の小さな針が隠せるようになっていて、針を格納している内側の革と外側との革との間に蝋を染み込ませた別の革を仕込んであるので、この針に毒を塗っておいても装備している側は大丈夫だと……。


「すごいだろ。ヒューリはこういう突拍子もない武器を考えるのが天才的なんだ」


「いーや。オレっち、もう、武人として修行するって決めたかんなぁ。リテルちゃんよぉ。あの技、最初っから使っちゃぁダメだぜぇ。始めのうちは実直に動きと気配合わせておいて、最後決めるときだけ、ずらして騙すんよぉ」


 確かにその通りだ。

 このヒューリって人、隠し武器をこれだけ考えている割にはちゃんと自分の体を鍛えている。

 この勝利への貪欲さは見習いたい。


「勉強になります。ありがとうございます」


「おぅ、エクシ、リテル。マンクソム砦の名前出したら親父とかケティとか心配するかもしんないからさ、ストウ村のみんなには黙っておいてくれよ。あと数年修行したら、またフォーリーに戻るつもりだし」


「わかりました。ダイン兄貴に会ったことは黙っておきます」


「頼むな」


 二人に礼を言い、俺たちはまずはショゴちゃんへと戻った。

 得た情報の共有と、買い出し前にエクシ(クッサンドラ)を休ませるため。

 それからメリアンたちへの連絡もしておかないと。

 『発見報告』をかけておいた紐二本の枝を折り、「俺たちがラビツ不在をマンクソム砦で確認して出発」をフライングで知らせる。


 護衛は今度はロッキンさんにバトンタッチしてもらい、松明や矢を多めに、それから槍を一本と、丈夫な長柄の棒を何本か買い足した。

 そして昼飯用に買ったリンゴを齧りながら、俺たちはマンクソム砦を出発した。


 このペースだと、恐らく夜中にまた黒き森の中を通ることになる。

 松明だ大量にあるので、魔法の方は控え気味でいけるだろうか。

 そもそもあいつらの数の多さ、地味にしんどかったよな。

 ただ、明日の早朝までマンクソム砦で夜を明かせるほどの時間的なゆとりはないから……覚悟を決めて進むしかない。


 順調に飛ばすショゴちゃんの中で、俺とルブルムは様々な動きをしながら、寿命の渦の細かな調整の研究をし続けた。




 日が暮れる。

 鬱蒼とした黒き森にはシュラットのウンセーレー・ウィヒトが当然のように出やがった。

 行きには焦って強行突破を仕掛け、馬にかなりのダメージを負わせてしまったので、今度は長柄の棒の先にしっかりと結びつけた松明をあちこち動かしながら、街道に立ちふさがるウンセーレー・ウィヒトを丁寧に排除しつつ進む。

 正しい対処が判っていれば、脅威は脅威でも、そこまで怯えるほどのものじゃない。

 魔法代償もかなり節約出来ている。

 ショゴちゃんの速度は落とさざるを得ないが、それでも燃え盛る炎でウンセーレー・ウィヒトを散らしながら確実に前進する。

 まだ具合が悪いままのエクシ(クッサンドラ)の代わりに、死せるシュラットへの恐怖心を克服しつつあるロッキンさんが後方を一人で頑張ってくれた。


 どのくらい頑張っただろうか。

 ウンセーレー・ウィヒトの数が減ってきた。

 『精霊探知』を試してみると……これは……群れを抜けつつあるのか?

 そのことを皆に伝えると、ショゴちゃんの内部に安堵の溜息が飛び交う。


「まだ気を抜かないようにっ」


 暗闇に俺の声がこだました。




 ニュナムからギルフォドへ向かう街道の、三つ目の共同夜営地に到着したのはもう明け方近くになってから。

 もちろん、わずかに休憩を取ったらすぐに出発する。


 ようやくラビツの背中に手が届きそうなところまで来た。

 感慨深いものがある。

 学ぶことが多かったこの旅も、ようやく終わりのときが近づいているのかも……なんて考えながら仮眠を取り始めたのが良くなかったのかもしれない。


「リテル、何か来る!」


 ルブルムに起こされた。

 まさか変なフラグ立てちゃったか?

 ルブルムの指す方向を確認すると、確かに近づいて来ている……それも空から。

 白み始めた空に、くっきりとその形が……巨大な鳥?

 いや、あれ、なんか四足ついてないか?

 頭の中に浮かんだ単語はグリフォン……いやいや待てよ。

 ルブルムからもらった知識の中に「グリフォン」を探すが出てこない。


 ショゴちゃんの上を何度か旋回したそれは、俺たちとの距離を次第に詰めてきているように感じた。


● 主な登場者


有主(アリス) 利照(トシテル)/リテル

 利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。

 リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。

 ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。

 その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種(マンッ)

 レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。

 現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。


・カエルレウム師匠

 寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種(マンッ)

 肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。

 寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。

 ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。

 自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。


・ルブルム

 寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種(マンッ)のホムンクルス。

 カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。

 質問好きで、知的好奇心旺盛。リテルと一緒に旅に出るまでは無防備だった。

 利照へ好意を持っていることを自覚し始めている。レムとも仲が良くなった。


・マドハト

 赤ん坊のときに『取り替え子』の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。

 今は犬種(コボルトッ)の先祖返りとしての体を取り戻したが、その体はあんまり丈夫ではない。コーギー顔。

 ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、ずっとついてきている。

 クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。

 明るい性格。楽しいことばかり追い求めるゴブリン的思考だったが、利照と一緒にものを考えるようになった。


・ディナ先輩

 フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。

 男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。ゴーレム作成の魔法品をくれた。

 アールヴと猿種(マンッ)のハーフ。ウォーリント王国のモトレージ白爵(レウコン・クラティア)領にて壮絶な過去を持つ。

 フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。


・メリアン

 ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。

 ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種(モレクッ)の半返りの頼もしい傭兵。二つ名は「噛み千切る壁」。

 円盾と小剣(ごつい)を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。

 騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツと結婚間近。現在は別行動中。


・ラビツ

 ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。

 兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。

 「ヴォールパール自警団」という傭兵集団に属しているっぽい。

 ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。

 北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。

 リテルたちより二日早くアイシスを出発した。ギルフォドに向かっているらしい。


エクシ(クッサンドラ)

 クッサンドラは、病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種(アヌビスッ)の先祖返り。ポメラニアン顔。

 フォーリーで領兵をしていたが、マドハトの『取り替え子』により、瀕死の状態からエクシを体を交換された。

 クッサンドラの肉体を傷つけ、その中に入ったエクシは死亡。

 エクシはリテルと同郷で幼馴染の一人。ビンスン兄ちゃんと同い年。フォーリーで領兵をやっていた。

 父ハグリーズからのエクシへの虐待を防いでくれていた姉が、クッサンドラの兄のもとへ嫁いだせいで、守ってくれる者が居なくなり、エクシは歪んだ。

 クッサンドラは、エクシから姉を奪ったことに責任を感じており、エクシが犯した罪を償うべく、エクシが殺しかけたドマースへ、その代償としてエクシ(クッサンドラ)の寿命の渦を売った。


・レム

 バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。

 魔法に長けた爬虫種(セベクッ)の少女。リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。

 その母親は利照同様に異世界イギリスから来た。

 名無し森砦の兵としてルブルム一行の護衛として同行。洞察力があり、頭の回転も早い。

 利照のことをお兄ちゃんと呼び、慕っている。ルブルムやマドハト同様に頼れる仲間。現在は別行動中。


・ロッキン・フライ

 名無し森砦の兵士。

 フライ濁爵(メイグマ・クラティア)の三男。山羊種(パーンッ)

 ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っているが影が薄い。

 ルブルム一行の護衛として同行。指笛で相棒の馬を呼べる。兄弟は皆、強い騎士。地元が、黒き森からそう遠くない。

 本当はルイース虹爵(イーリス・クラティア)領の領都アンダグラにある図書館で働きたかった。


・ケティ

 リテルの幼馴染で想い人。一歳年上の女子。猿種(マンッ)

 旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。

 カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。

 盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。

 足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。


・ダイン兄貴

 ケティの兄。リテルより七歳上。

 フォーリーの鍛冶師組合で五年修行し、去年、マンクソム砦の鍛冶屋に修行に来た。


・ヒューリ

 体格が良くタレ目の犬種(アヌビスッ)。ダイン兄貴の娼館遊び仲間。

 「元ヴォールパール自警団」と嘘をついてモテていたため、本物であるラビツたちに遭遇してギャフンと言わせられた。

 隠し武器のアイディアマンだが、リテルとのケンカを経て、真っ当な武人としての修行を心に誓った。


・ナイトさん

 元の世界では喜多山(キタヤマ)馬吉(ウマキチ)。元の世界では親の工場で働いていた日本人。

 四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。馬種(エポナッ)。元はニュナム領兵の隊長をしていた。

 今は発明家兼ナイト商会のトップ。ヒモパンやガーターベルトやコンドームの発売もしており、リテルを商会に誘ってくれた。

 サスペンションなど便利機能がついた馬車「ショゴウキ」(略してショゴちゃん)を提供してくれた。


・レムルース

 地界(クリープタ)に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。

 『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。

 レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。

 ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。


・シュラット

 元々は地界(クリープタ)の住人だが、こちらの世界(ホルトゥス)に居着くことの多い種族の一つ。

 人型で、全身を毛に覆われている。森に棲み、旅人を惑わすことがある。

 かつてマンクソム砦を作る際、黒き森に棲むシュラットが大量に討伐された。


・ウンセーレー・ウィヒト

 種族そのものではなく、現象としての名前。異世界からの来訪者が目撃されやすい地域でたまに出現する。

 その場所で寿命によらない大量死があると、そこで死んだ者たちの姿が燐光を帯びて現れる。

 これに触れられると、寿命の渦を毟られるので注意。火を避けるので、とにかく火を掲げて身を守ること。



この世界(ホルトゥス)の単位


・ディエス

 魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。

 魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。


・ホーラ

 一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ一時間に相当する。


・ディヴ

 一時間(ホーラ)の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ五分に相当する。


・クビトゥム

 長さの単位。

 本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。

 トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。


・アブス

 長さの単位。

 元の世界における三メートルくらいに相当する。


・プロクル

 長さの単位

 一プロクル=百アブス。

 この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。


・通貨

 銅貨(エクス)銀貨(スアー)金貨(ミールム)大金貨(プリームム)

 十銅貨(エクス)(十二進数なので十二枚)=一銀貨(スアー)

 十銀貨(スアー)(十二進数なので十二枚)=一金貨(ミールム)

 十金貨(ミールム)(十二進数なので十二枚)=一大金貨(プリームム)


・暦

 一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。

 それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。

 各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。

 毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。

 第八十四話終了時点では星の月夜週の十日(十進だと十二日)の明け方。


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