#83 マンクソムッ・モラリス
「マドハト、どうした?」
『魔力感知』の粗さを様々に変えながら前方の幌を上げ、御者席脇にあるステップへと身を乗り出した。
暗闇の中に無数の人影が見える……いつの間にか囲まれている。
しかし、感知はできないまま。
全身を毛に覆われた人型の……さっきロッキンさんに聞いたシュラットそのものの特徴。
さらに気になるのは、灯りを持っているわけでもないそいつらの輪郭が、暗闇の中でもしっかりと見えること。
ああそうか……ほんのりと燐光を放っているんだ。
「あれはウンセーレー・ウィヒトかもしれない」
御者席を挟んで反対側のステップへ身を乗り出したルブルムが、連中を見つめながら言った。
早速、ルブルムにもらった記憶の中からウンセーレー・ウィヒトを検索する……これか。
特定の種族名ではなく、現象としての名前。
異世界からの来訪者が目撃されやすい地域でたまに出現する。
その場所で大規模な戦争や虐殺、災害など、寿命によらない大量死があると、そこで死んだ者たちの姿が燐光を帯びて現れる。
これに触れてしまうと、寿命の渦を毟られるので注意しなければならない。
火を避けるので、とにかく火を掲げて身を守ること……って、これ、いわゆるアンデッドモンスターってやつか。
アンデッドモンスターに強いと言えば僧侶や神官だけど、明確な神の居ないこの世界では、不安感が凄まじいな。
せめて火が効くのが助かった。
「松明を用意して! 動きは早くないはずだから、近づいてきたら火で散らして!」
ルブルムの号令により、俺たちは一人一つ、松明を手にする。
松明に火を付ける前に試しに矢を一本取り出した。
『発火』を『魔法付与』で鏃に付与する……発動効果時間が数秒は保つように調整して弓につがえ、火が点ったのを待ってから射掛けた……馬に一番近いウンセーレー・ウィヒトに向けて。
まるでそこには何も存在しないかのように火矢はウンセーレー・ウィヒトの中央を貫き、さらに何体かも貫通して遥か先の道の上へと落ちた。
手応えは全然ないが、炎に触れたウンセーレー・ウィヒトはちり紙みたいに簡単に焼け落ちて崩れた。
「あのくらいの火でもいけるのか……エクシ、槍を貸してくれ!」
「いいけど、後ろはけっこう近づかれている!」
エクシから受け取った槍の穂先に、効果時間を心持ち長めにして『発火』を『魔法付与』し、構えた。
長さ的に、ギリギリ馬を守れるかもしれない。
「マドハト、駆け抜けるぞ!」
「リテル様! わかりました!」
ショゴちゃんは再び走り出す。
ゆっくりと、だが群れて迫りくるウンセーレー・ウィヒトに対し、俺たちは必死に炎で対抗しながら馬を走らせた。
どのくらい時間が経っただろうか。
「リテル、もう『発火』は大丈夫だと思う」
もうルーティーン化していた槍の穂先への『魔法付与』をルブルムに止められた。
確かに、視界の暗闇にはあの忌々しい燐光はもう見えない。
トータルではけっこう魔法代償を消費したけど、守りきれずに何度か触られてしまった馬たちの寿命の渦の細り方を見ると、それでも魔法を使って良かったとは思えた。
アンデッドモンスターというか数の暴力はエグい。
ショゴちゃんの荷台へと戻ると、エクシとロッキンさんも後方の幌を上げた状態で、荷台の外へ松明を突き出したまま、肩で息をしている。
「ルブルムがもう大丈夫だって言ってます」
「聞こえました……けど、松明を消すために馬車を止めて地面に降りて砂をかけるとか、今はできる気分ではありません」
ロッキンさんの笑顔がひきつっている。
俺たちはしばらく火を灯したまま、ショゴちゃんを走らせ続けた。
「しかし、ルブルムさん、すごいですね。死せるシュラットが居なくなったかどうかを感知できるだなんて。魔術師の『魔力感知』でも、熟練の戦士の『気配感知』でも、とらえられないって聞きますのに。さすが、寄らずの森の魔女さまのお弟子さんです」
から始まって、ルブルムを褒めちぎるロッキンさん、よっぽどシュラットが怖かったんだな。
「ウンセーレー・ウィヒトは、レムルース同様に肉体を持たない。精霊に近い存在だ。先輩から精霊を探す魔法を教えてもらったことがあるが、その魔法で探すことができる」
その『精霊探知』を、ルブルムは俺にも教えてくれた。
ディナ先輩がカエルレウム師匠の下で初めて創ったオリジナル魔法らしい……ああ確かに、ポーの存在も寿命の渦のように感知することが出来る。
ただ、選択肢が増えるということは、とっさの判断で何を優先するかを迷いやすくなるということでもある。
その後、日が昇るまでショゴちゃんを停めることなく走らせ続け、その間ずっと、頭の中で様々なシチュエーションに合わせたシミュレーションを繰り返した。
黒き森にもようやく明るさが戻ってくると、皆の肩から力が抜けるのが解る。
ローテーションで取ることになっていた仮眠も、結局は皆、ちゃんと眠れなかったようだ。
馬も相当参っているようだったので、少し長めの休憩を取ることにした。
水で割ったワインに黒パンを浸して口に放り込みつつ、馬の疲労を取る魔法について思案していると、ルブルムが突然、変なことを言い出した。
「リテル。メリアンをどう思う?」
「どう……って、強い人?」
「そうじゃない。メリアンがラビツの婚約者ってこと。私たちはマンクソム砦ではなく、ギルフォドに向かって、そこで待つ方が良かったかもって」
「あ、そう言われてみれば」
まさか、メリアンがラビツたちを逃がそうとしているってこと?
思考を止めるなとカエルレウム師匠にあれだけ言われていたにも関わらず、ディナ先輩にもあれほど忠告されていたにも関わらず、メリアンを味方以外として考えることは一切行っていなかった。
今回の追跡における詳細については、真実は俺とルブルムしか知らない……マドハトにすら黙っている。
これはクスフォード虹爵さまから「魔女の弟子以外が知ってはならない」というご命令があったからなので仕方がない。
でもそのせいで、メリアンにはラビツたちが呪詛にかかっていることを伝えられていない。
ニセの情報として、「ラビツたちが勘違いで誤って持っていってしまったものが、虹爵家ゆかりの品だった」とは説明してあるが、勘の良いメリアンのことだから、それが真実ではないことに薄々気づいているのかもしれない。
もしも、貴族の持ち物を窃盗した事件が起きた場合、領主の心積もり次第では、死刑になる場合だってある。
メリアンがラビツを逃がそうとしても、まったくおかしくはないのだ。
仮にメリアンが俺たちを騙したパターンで思考を進めてみると……嫌な結末にしか辿り着かない。
レムの安全さえ不安になる。
背負い袋にしまってあった、連絡用の小枝を確認する。
紐を一本だけ巻きつけてあるのは「俺たちがラビツ発見」したときに折るもの。
紐二本は「俺たちがラビツ不在をマンクソム砦で確認して出発」したときに折るもの。
紐三本は「メリアンたちがラビツ発見」したときにレムが折ってくるはずのもの。
あと紐なしは、「レムが命の危険を感じた」ときに折るように伝えてあるもの。
どれも『発見報告』の魔法をかけてあるのだが、紐なしについては、俺とレム、ルブルムだけの間で決めたこと……ただ、メリアンがレムの不意をついて一撃で命を奪うことなんて、造作もないことだろう。
「リテル、ごめん。そんな顔しないで」
「いや、ルブルムは悪くない。そういう可能性を考えることを、俺は無意識に避けていた気がする……でも今、この状況で俺たちにできることはそんなに多くはない。あっちの二人を信じて、やるべきことをやるしかないのかもな」
「そうだね」
そう言うとルブルムは突然、俺の頭を撫でた。
驚いてルブルムを見ると、ルブルムは少しだけ頬を染める。
「私は、リテルにこうしてもらったとき、嬉しい気持ちになったから。リテルの気持ちが癒やされると嬉しい」
……ごめん、レム。
今、一瞬だけ、レムのことを忘れた。
ルブルムを抱きしめたい気持ちでいっぱいになってた。
「ルブルム、ありがとう」
でも俺は、紳士でいなきゃいけない。
この体はリテルのもので、そしてリテルはケティが好きなのだから。
休憩を終え、ショゴちゃんにまた乗り込む。
そこからは、ニュナム行きの定期便馬車とすれ違った以外は何にも遭遇せず、昼前にはマンクソム砦へと到着した。
普段だったら最初に宿の手配をするのだが、今回は砦門入ってすぐの広場にショゴちゃんを仮置きする。
マドハトと、ロッキンさんに、ショゴちゃんの中へ残ってもらい、馬の世話と荷物の番とをお願いする。
そして俺とルブルムとエクシとで、魔術師組合へ寄ってからラビツ情報を集めに出ることに。
まず、ウンセーレー・ウィヒトのことを報告すると、魔術師組合の人は「生き延びたことが報酬だよ」と笑った。
炎で散ったとしても退治できているわけではなく一時的なものだし、そこから採れる素材があるわけでもなく、「死んでまで迷惑かけやがって」というのは、この辺りの人の実際の想いなのだろう。
ただ、ああやって出現するにはそれだけの虐殺があったからなのだと考えると、応対してくれたこの人のようにシュラットへ悪態までつく気にはならなかった。
気持ちを切り替えて娼館街へと向かう。
アイシスやフォーリーの娼館街に比べると、なんだか全体的にガラが悪い。
ジャ・バ・オ・クーの洞窟とその付近は、瘴気をまとった魔物や魔人がよく出没するので腕に自信のある者たちが集まってくる。
脅威ある魔物を仕留めたら、砦の正式な兵士として雇ってもらえるかもしれないからだ。
この世界では、異世界モノでよく見るような「冒険者」という職業はない。
身分と給料が保証される領兵や砦兵は、人気の職業なのだ。
ただ、幾つかの街の領兵や、名無し森砦の砦兵を見てきた感じだと、あのダイク隊長と配下数人以外はそれなりに規律を重んじた人々だったのに対し、このマンクソム砦では、砦門や魔術師組合の守衛、街中を巡回している砦兵を見る限り、だらしなさやフリーダムさを特に感じる。
ここは、そういう人たちが集まる所なのだろう……そして、そういうのを相手する娼館もそれなりに、だった。
俺たちが若いからか、男女の二人組だからか、まるで話にならない。
エクシもついてきてはくれているのだが、今朝からずっと調子悪そうで、油断すると俺たちと距離が離れてしまう。
しかも、念のためルブルムにはフードを深くかぶるようにお願いしてあったのだが、ここいらの人は平気でしゃがんで顔を覗き込んでくる。
彼らの辞書に礼儀とか遠慮って文字はないのだろう。
街中ですれ違う人たちですらこんな感じなのだ。
娼館街でいざ情報を集めようとしても、からかわれるか、ナンパされるか、もっと大人になってからおいでと門前払いされるか。
ただ話を聞きたいだけなのに、その話を始めさせてもらえることすら滅多にない。
俺だってこういう輩と交渉した経験なんて、元の世界でもこっちでもほぼない。
唯一経験があるのがフォーリーの娼館街の人たちだけど、今思えば、ここの人たちに比べると彼女らはとんでもなく上品だった。
俺たちがショゴちゃんを離れるとき、ロッキンさんがうんざりとした顔で「マンクソムッ・モラリスにご注意」って言っていたのはこのことか……直訳すると、マンクソムの道徳……ここでの道徳は、他の地域の道徳とは異なる、って意味らしい。
「リテル、協力報酬を先に見せたら、話してくれるだろうか」
突然、ルブルムがため息と共にこぼした言葉。
「やめた方がいいね」
と、俺が言う前に、誰かが先に言った。
「こんな坊っちゃん嬢ちゃんがお金持ってまぁすなんて公言したら、あっという間に奪われちまうぜぇ。奪われるのが財布だけならまだいい方だ……おっ」
声をかけてきた男は俺たちにズカズカと近づいてきて、突然しゃがむ。
「お嬢ちゃん、綺麗な顔してんねぇ。それだけの器量ならかなり稼げるだろうよぉ」
そのタレ目の犬種も、ルブルムのフードの中身を見上げて確認する。
フォーリーでエクシたちに絡まれたときのことを思い出す。
「人を探しているだけなので、失礼します」
ルブルムの手を引き、とりあえずその場を離れる。
変なのに絡まれても、ここの領兵は頼りにならないし、街や砦の中の往来では、原則、魔法の使用は禁止されている。
それを破るとフォーリーでのマドハトのように、罰金代わりに寿命を提出させられるから、魔法でなんとかするってこともできない。
君子は危うきに近寄らないのが一番だ。
「あれぇ? どこいくのぉ? オレっちが手伝ってあげようかぁ?」
イラッとする話し方だが、身のこなしというか、筋肉ムッキムキそうな気配とか、腕に覚えがありそうには見える。
面倒くさそうなのに絡まれてしまった。
「なぁなぁ。無視するなってぇ。人探しだろぉ? オレっち、顔が広いのよぉ。試しに名前だけでも言ってみぃよ!」
ルブルムが突然、立ち止まる。
「あなたが、ヴォールパール自警団と知り合いだとは思えない」
あー、こういうのは無視するのが一番だってのに……だが、空気が変わった。
タレ目犬種も、周囲で俺たちをニヤニヤ眺めていた路傍の人たちも。
「てめぇ、今なんつったぁ?」
タレ目がルブルムの胸ぐらをつかもうと手を出してきた。
だから俺はルブルムとの間に割って入った……直後、腹部に衝撃を覚える。
一時的にできなくなっていた呼吸ができるようになったとき、俺は地面に這いつくばっていたことに気付く。
このタレ目、動きが早いし腕力もメリアンほどじゃないけどあった。
それに何より「ヴォールパール自警団」という単語への反応。
二手に分かれる前のメリアンが、ここで聞き込みをするなら「おっぱい好き」よりも「ヴォールパール自警団」と言って探したほうがなにかと良いだろうと教えてくれたのだけど……。
ルブルムは既に小剣を抜いている。
向こうのタレ目も素手だが構えている。
エクシにいたってはちょっと離れた場所で既に倒れている。
俺も慌てて立ち上がり、武器を抜かずに構える……こんなときに構えるのが、メリアンに教えてもらった素手の組み手だなんて。
「へぇ、若いってぇのに刺す覚悟を見せる嬢ちゃんに、見せかけじゃない型で構えられる坊っちゃんかぃ」
タレ目が右手をゆっくりと自分の背後へと回す。
飛び道具か、それとも誘いの罠か。
何かあったとき、またルブルムの前に出られるよう、俺は体重をわずかに前へ移動させた。
● 主な登場者
・有主 利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。
レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。
現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。
質問好きで、知的好奇心旺盛。リテルと一緒に旅に出るまでは無防備だった。
利照へ好意を持っていることを自覚し始めている。レムとも仲が良くなった。
・マドハト
赤ん坊のときに『取り替え子』の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。
今は犬種の先祖返りとしての体を取り戻したが、その体はあんまり丈夫ではない。コーギー顔。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、ずっとついてきている。
クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
明るい性格。楽しいことばかり追い求めるゴブリン的思考だったが、利照と一緒にものを考えるようになった。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。ゴーレム作成の魔法品をくれた。
アールヴと猿種のハーフ。ウォーリント王国のモトレージ白爵領にて壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。二つ名は「噛み千切る壁」。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツと結婚間近。現在は別行動中。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。
「ヴォールパール自警団」という傭兵集団に属しているっぽい。
ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。
北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。
リテルたちより二日早くアイシスを出発した。ギルフォドに向かっているらしい。
・エクシ
クッサンドラは、病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種の先祖返り。ポメラニアン顔。
フォーリーで領兵をしていたが、マドハトの『取り替え子』により、瀕死の状態からエクシを体を交換された。
クッサンドラの肉体を傷つけ、その中に入ったエクシは死亡。
エクシはリテルと同郷で幼馴染の一人。ビンスン兄ちゃんと同い年。フォーリーで領兵をやっていた。
父ハグリーズからのエクシへの虐待を防いでくれていた姉が、クッサンドラの兄のもとへ嫁いだせいで、守ってくれる者が居なくなり、エクシは歪んだ。
クッサンドラは、エクシから姉を奪ったことに責任を感じており、エクシが犯した罪を償うべく、エクシが殺しかけたドマースへ、その代償としてエクシの寿命の渦を売った。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
名無し森砦の兵としてルブルム一行の護衛として同行。洞察力があり、頭の回転も早い。
利照のことをお兄ちゃんと呼び、慕っている。ルブルムやマドハト同様に頼れる仲間。現在は別行動中。
・ロッキン・フライ
名無し森砦の兵士。
フライ濁爵の三男。山羊種。
ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っているが影が薄い。
ルブルム一行の護衛として同行。指笛で相棒の馬を呼べる。兄弟は皆、強い騎士。地元が、黒き森からそう遠くない。
本当はルイース虹爵領の領都アンダグラにある図書館で働きたかった。
・ケティ
リテルの幼馴染で想い人。一歳年上の女子。猿種。
旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。
・ナイトさん
元の世界では喜多山馬吉。元の世界では親の工場で働いていた日本人。
四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。馬種。元はニュナム領兵の隊長をしていた。
今は発明家兼ナイト商会のトップ。ヒモパンやガーターベルトやコンドームの発売もしており、リテルを商会に誘ってくれた。
サスペンションなど便利機能がついた馬車「ショゴウキ」(略してショゴちゃん)を提供してくれた。
・タレ目の男
やけに絡んでくる体格の良い犬種。
「ヴォールパール自警団」という名前を出した途端、激昂した。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
・シュラット
元々は地界の住人だが、こちらの世界に居着くことの多い種族の一つ。
人型で、全身を毛に覆われている。森に棲み、旅人を惑わすことがある。
かつてマンクソム砦を作る際、黒き森に棲むシュラットが大量に討伐された。
・ウンセーレー・ウィヒト
種族そのものではなく、現象としての名前。異世界からの来訪者が目撃されやすい地域でたまに出現する。
その場所で寿命によらない大量死があると、そこで死んだ者たちの姿が燐光を帯びて現れる。
これに触れられると、寿命の渦を毟られるので注意。火を避けるので、とにかく火を掲げて身を守ること。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
十銀貨(十二進数なので十二枚)=一金貨
十金貨(十二進数なので十二枚)=一大金貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第八十三話終了時点では星の月夜週のミンクー日(十進だと十一日)の昼前。




