#85 素直に喜べない
向こうが近づいてきてくれたから、ようやく『魔力感知』の範囲内に入る……うまく偽装しているが何かを乗せている。
獣種まではわからない。
空だと、視認できる範囲は『魔力感知』範囲よりも広いんだな。
どのみちあの高さだと、弓が届くかどうかも怪しい。
とりあえずは弓を構えるだけ構えておくか。
「待って。もしかしたら」
弓を握る俺の手の甲へ、ルブルムがそっと触れる。
もしかしたら?
ルブルムには心当たりがあるのか?
「ショゴちゃんを停めて」
ルブルムの声に応えてロッキンさんがショゴちゃんを停車させると、ルブルムは軽やかに外へと飛び出し、目深にかぶっていたフードを外した。
朝日を浴びたルブルムの赤髪が光を含んで輝く。
空の反応が変わった。
大きな四足鳥の背の辺り、さっきまで魔法代償を偽装していた何かが、猿種であることを明らかにする。
俺もショゴちゃんを出て、ルブルムの隣へと立つ。
弓を構えこそしないが持ったままで。
近づいてきたのは、鷲の上半身にライオンっぽい下半身が付いた魔獣。
嘴は鋭く曲がり、鷲頭には普通の鷲とは異なり耳羽のような耳が付いている。
朝日を浴びて金色に輝く体毛は美しく、気高ささえ感じるほど。
どう見てもグリフォン以外の何者でもない……その背中から、小さな朝日が……いや、綺麗なハゲ頭がにゅっと突き出て見えた。
「モクタトル!」
ルブルムが名前を知っているということは、知り合いなのだろうか。
それにしてもショゴちゃんにつないである馬の怯え方が半端ない。
グリフォンって馬を襲うんだっけ?
「おぅおぅ、久しぶりだなぁ、ルブルムよ!」
グリフォンの背から降りてきたのは、亀の甲羅のようなものを背負ったスキンヘッドの精悍な中年男性。
ちなみにサングラスやアロハシャツは着ていないし、爺さんでもない。
ダボっとした長衣にマントを羽織っているその姿は、ファンタジーの魔法使いっぽい印象を与える。
でも何より特徴的なのは眉毛……眉毛が赤い。ルブルムと同じ色の。
「やあ、君がカエルレウム様の新しい弟子かい。君の存在を知ったら、この国中の若い魔男が羨ましがるだろうよ」
ああ、やっぱりカエルレウム師匠は特別な人だったんだな。
俺もかぶっていたフードを外し、片膝をつくお辞儀をする。
「はじめまして。リテルといいます」
「はじめまして、リテル。僕のことはモクタトルで構わない。そしてこちらが僕の相棒、グリュプスのトリニティだ。人の言葉は話せないが、理解はできる。耳も良いんだ」
「こんにちは。モクタトルさん、トリニティさん、よろしくお願いします」
グリフォン……グリュプスのトリニティさんに対してもお辞儀をすると、トリニティさんは俺の動きに合わせて頭を動かした。
元の世界でのお辞儀みたいに。
「ははは。カエルレウム様から聞いていた通り、面白い子だね。ただ、敬称は不要だよ」
モクタトルは明るい人だ。
声もよく通る。いわゆるイケボ。
しかも腕まくりをしたその腕はそれなりに太い。
そんなモクタトルに、ルブルムはぎゅっと抱きついている……胸の奥がムズムズする。
ああでも、ちょうど良かったよ。
ルブルムへの気持ちが盛り上がり過ぎて苦しくなりかけていたから。
こういう人が居たのなら、もし俺に何かあっても……。
「ちょいちょい、リテル。ちょっとこっち来てくれるかな?」
モクタトルはルブルムから離れ、街道の端に寄り、手招きした。
俺が言われた通り近づくと、突然ガバっと抱きつかれた。
慌てて離れようとすると、小さな声で囁かれた。
「このままゆっくり二十数えるんだ」
モクタトルのがっしりした腕が俺の頭を抱え込んでいる。
俺は小さな声で、ゆっくり数を数え始める……ゆっくり二十って、やっぱりアレだよね?
皮膚と皮膚が触れた状態での、呪詛が伝染する条件。
「……クエイン・ラスタ、ミンクー・ラスタ、ユラスタ」
言われた通り二十を数え終えると、モクタトルが俺から離れ、今度はルブルムを呼ぶ。
そして何やら耳打ちをされたルブルムが、嬉しそうに俺の方へ走ってきて……俺にぎゅっと抱きついて、うわっ……耳を甘噛みされた。
「ちょっ、ル、ルブルムっ!」
離れようとした俺の手をつかんだルブルムは少し前かがみになり、つかんだ俺の手を、襟の開口部から自分の胸元へと突っ込んだ。
指先に触れる温かさと柔らかさ。
俺の手が、ルブルムの胸の谷間に挟まれている……ちょ、ちょっと待って。
何が起きている?
モクタトルはルブルムに何を言ったんだ?
混乱している俺に構うことなく、ルブルムが俺の股間をつついた。
「リテル、これが固くなった状態か?」
指摘されてようやく気付く……自分が勃起していることに。
勃起?
勃起!
おそらく数秒の頭真っ白状態を経た後、俺はルブルムの胸元から自分の手を引き抜いた。
さらに腰が引け気味なまま、後退る。
しかしルブルムは興味津々の表情で、俺の股間に顔を近づけようとしてくる。
さっきのモクタトルのハグは予想通り「呪詛を無効化する呪詛」を俺に伝染させるためなんだろうな……だからって。
「ルブルム。今は、そういうことをしている暇はないから……」
俺だって、めちゃくちゃ久しぶりなこの感覚をじっくり味わいたい気持ちもそりゃあるさ。
でも本当に今じゃないんだ。
その後、手短に現状をモクタトルに説明した。
メリアンとレムが先行してはいるが、まだラビツ一行に追いつけていないことも含め。
「わかった。じゃあトリニティにはあと二人くらいなら乗れるから、ギルフォドまで先に二人運ぼう。残りの三人は申し訳ないが馬車で」
ここでロッキンさんが「護衛なしにするのは」と少しもめたのだが、結果的にはモクタトルが押し切った。
モクタトルは現在、王都の西、コーカ・スレースに住んでいて、王国関連の仕事をしていると主張したのが功を奏したようだ。
マドハトもとってもついて来たがったが、ショゴちゃんを頼んだぞとお願いしたら嬉しそうに了解してくれた。
「魚は早く食べろ」とばかり、俺たちはトリニティの背中にまたがった。
ああ、これは「善は急げ」と同じ様な意味。この世界の諺。
前から見た時は体毛に覆われて見えなかったが、トリニティは両翼を挟み込むように分厚い革ベルトを犬の散歩用ハーネスみたいなのを装備していた。
革ベルトからはさらに、吊り革みたいなのが何本か伸びている。
もちろんプラスチックなんかないので、輪っか部分もオール革製だ。
「それが鐙の代わりだ。足首に巻きつけてしっかり固定しておくんだ。それからもう一つ、このベルトもしっかり腰に巻き、ベルトから伸びている固定紐を、正面の鞍にしっかり繋げて」
動物に騎乗するときの器具は動物に限らず「鞍」と呼んでいるようだ。
ベルトのバックルをキツく締めて留める。
恐る恐るトリニティの背中に乗る……大きいな。馬の背の比じゃない。
「乗ったら、鞍の手すりについている突起に、鐙紐の余った部分を巻きつけておくといい」
言われた通りにして腰を下ろすと、トリニティに触れている部分から体温を感じた。
すげぇ。
グリュプスに乗ってるのか……ファンタジーだなぁ。
ドキドキしている俺の背後から急にルブルムが抱きついてきて、違うドキドキが心臓に追加オーダーされる。
「二人とも、もうちょっと前に行って」
モクタトルの指示通り席を詰めると、ルブルムの匂いが俺に届く。
そんなに風呂に入れていないってのに、ほんのりと甘い匂い。
それとルブルムの呼気の熱が首筋にまで届き、そんなことでまた無駄に股間が反応する。
二人とも革鎧やらマントやらで肌が直接触れているわけでもないのに、こんなことくらいで……ヤバいなこれ。
いや、健全な童貞男子ならばおかしなことではないとは思う。
それでもこんなに見境なしかよ自分、という。
今まで自然にできていたことができなくなるというのは本当に困る。
股間を紳士状態にする魔法でも作ってみようかなと本気で思うくらい。
「いやぁ、初々しいなぁ」
モクタトルは笑いながら、ルブルムの背後に乗り込み、トリニティが力強く羽ばたいた。
空中へと浮き上がる。
あっという間にショゴちゃんやマドハトたちが小さくなる。
緑色に広がる景色の中に、細く街道の線が一本引かれている。
景色の素晴らしさと、グリュプスの背に乗っているという高揚感とで股間の硬直は速やかに収まる。
「景色を楽しみたいかもしれんが、速度を上げたらトリニティの背中になるべく張り付くこと。風が強くなると呼吸がつらくなったり、飛ばされそうになるからな」
言葉に従うと、トリニティの羽ばたきと背中と空しか見えなくなる……それでも心は喜びに震える。
こんな体験、普通できないもんな。
ここが如何に剣と魔法の世界であっても、ストウ村であのまま狩人として暮らしていたら、きっと。
「なぁ、リテル。具合はどうだ?」
モクタトルの声。
「気持ちが高揚してますが、体調は悪くないです」
「カエルレウム様は一応、魔術特異症対策も施しておいたって言っていたから、リテルが勃起できたなら上書き呪詛は成功だな」
「リテルの勃起、あとでもっと体験させて」
「おいおい。お前ら、いつの間にかそんな仲なのか?」
「ち、違いますよ。ディナ先輩の所で勉強って言って見られて、ルブルムはその続きのつもりなんです」
「リテルはディナ坊にも会ったんだ?」
「あ、はい。出発前の準備を色々と手伝ってくださって、一晩泊めさせてもいただいて」
モクタトルが口笛を吹く。
「すごいぞリテル。ディナ坊のお屋敷入って生きて出てこれた男は初めて見たぞ」
ディナ先輩と出遭った当初のことを考えると、冗談に聞こえない。
「もう薄々勘付いていると思うがな、ルブルムは僕の娘みたいなもんだ……ホムンクルスは男の精から創る。普通は精の持ち主に似たホムンクルスしか創れない。性別は男しかできないんだ。それを、女ホムンクルスを創ろうとしたのが、カエルレウム様の研究の一つでね。僕はその研究に精を提供する栄誉を得た、数少ない一人なのさ」
確かにその条件、「精から創る」「精の持ち主に似る」だと、男しか生まれなくなる。
「そうなんですね」
「そうなんだよ。だから可愛くてしょうがなくてな。カエルレウム様から男と一緒に行かせたと聞いたときにはちょっと大人げない感情が湧きもしたが」
一瞬だけ殺気のようなものを感じたが、その直後、ルブルムが俺に強くしがみついた。
「なぁ、ルブルムが感情を表に出すようになったのは、リテルのおかげか?」
「誰のおかげかと言ったら、ルブルムが自分で乗り越えたおかげです」
「そうか……うん。リテル、君のことはだいたいわかった」
その後の無言が怖いです……うわっ。
急に体がふわりと浮いた。
「トリニティが風を見つけて乗ったんだな」
翼を見ると、さっきまで羽ばたいていたのに今は広げたまま動かしていない。
滑空している感じなのかな。
「なぁ、リテル」
「はい」
「もしもルブルムとどうにかなりたいって考えることがあったら、二人揃ってコーカ・スレースに挨拶に来い」
「はっ、はい!」
つい、勢いよく答えてしまったけど……俺は……この旅が終わったら、リテルの体から出てゆくことを考え始めている。
俺にしがみつくルブルムの手に力が入ったのが、なんだかとてもしんどかった。
その後ちょっとだけ魔法を教えてもらえたのが気分転換になって助かった。
そんな心情を見抜かれたのかはわからないけれど、俺とルブルムは少し寝るように言われ、トリニティの背中で仮眠を取った。
だからあっという間だった。
モクタトルに起こされたときにはもう昼で、ギルフォドに到着していた。
そして物凄く囲まれていた。
まだ、ギルフォドには入っていない壁の外側だというのに。
それほど、グリュプスは珍しいらしい。
「お兄ちゃーんっ!」
トリニティから降りた俺に駆け寄ってくる一人の少女……レムだ。
「見つけたよ! ラビツ!」
レムが走ってきた方向を見ると、メリアンと、ラビツ一行が揃って立っている。
会えたのか!
ようやくだな。
「グリュプスが飛んできたって街中で盛り上がってね、グリュプスを使い魔にしているのはコーカ・スレースのモクタトル様だけだから! それで見に来たら、まさかのお兄ちゃんとルブルムが乗ってるでしょ! すごいすごい! お兄ちゃん、モクタトル様ともお知り合いだったの?」
「いやいや、カエルレウム師匠のお力です」
モクタトルとルブルムの関係については他の人には言わないようにと空の上で釘を刺されていた。
ホムンクルスのことは、レムにも言っていない……これは信頼している、していないとは別問題だから。
「じゃあ、早速、魔術師組合に行こうか」
モクタトルが魔術師組合を勧めたのは、そこには外に声が漏れない密談室というのがあるからだ。
しかも密談室は、モクタトルの属するコーカ・スレースの魔導研究所が開発した魔法品を使用しているらしい。
コーカ・スレースは古い遺跡の跡地に造られた研究都市で、魔術師たちが集って日夜、魔法や魔術、魔法品の開発に勤しんでいるという。
そこに行ったら、もしかしたら俺とリテルを切り離すことができる研究とかもあったりしないかな。
まだ先だと思っていた旅の終わりがもう目前だ……なのに、その次へ進むための心の準備がまだ済んでいない。
溜息を堪えながら密談室の席に着いた。
モクタトルとルブルム、俺、メリアン、ラビツ、ラビツの仲間である赤毛の猫種先祖返りの「流水」ロブスト、ロブストと異父兄弟の猿種「流星」パンス、猿種「夜爪」のオール。
この四人は全員が二つ名持ち、本物のヴォールパール自警団だ。
ちなみにレムとトリニティは、魔術師組合の外でお留守番。
早速、呪詛のことも含め、モクタトルが説明する。
ラビツたちが呪詛を広めるきっかけになったこと、実際にストウ村と娼婦を中心に広めてしまっていること、それを公にしたくはないクスフォード虹爵様のご意向、呪詛を上書き無効化する呪詛の準備ができたこと、その新しい呪詛と共に今まで回ってきた各地を逆に辿り、同じ娼婦に呪詛を感染させてほしいこと、帰りの費用については支援の用意があること、この一件については他言無用であること、それが守られる限り、呪詛を広めてしまった罪については不問にすること。
「どうだい?」
モクタトルが尋ねると、真剣な表情で話を聞いていたラビツが答えた。
「とてもありがたい申し出だ……しかし、遅かった」
● 主な登場者
・有主 利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、呪詛にて不能となったが、ようやく解放された。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。
レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。
質問好きで、知的好奇心旺盛。リテルと一緒に旅に出るまでは無防備だった。
利照へ好意を持っていることを自覚し始めている。レムとも仲が良くなった。
・モクタトル
ダボっとした長衣にマントを羽織り、亀の甲羅のようなものを背負ったスキンヘッド筋肉質の中年男性。猿種。
カエルレウムがルブルムを創る際、ホムンクルスの材料を提供した。眉毛がルブルムと同じ色。イケボ。
古い遺跡の跡地に造られた研究都市コーカ・スレースで、日夜、魔法や魔術、魔法品の開発に勤しんでいる。
王国において、グリュプスを使い魔にしている唯一の魔術師。
・マドハト
赤ん坊のときに『取り替え子』の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。
今は犬種の先祖返りとしての体を取り戻したが、その体はあんまり丈夫ではない。コーギー顔。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、ずっとついてきている。
クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
明るい性格。楽しいことばかり追い求めるゴブリン的思考だったが、利照と一緒にものを考えるようになった。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。ゴーレム作成の魔法品をくれた。
アールヴと猿種のハーフ。ウォーリント王国のモトレージ白爵領にて壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。二つ名は「噛み千切る壁」。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツと結婚間近。現在は別行動中。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。
高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」という傭兵集団に属している。ようやくリテルたちと会えた。
・ロブスト
「ヴォールパール自警団」に属する赤毛の猫種先祖返り。二つ名は「流水」。
・パンス
「ヴォールパール自警団」に属する猿種。二つ名は「流星」。ロブストと異父兄弟。
・オール
「ヴォールパール自警団」に属する猿種。二つ名は「夜爪」。
・エクシ
クッサンドラは、病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種の先祖返り。ポメラニアン顔。
フォーリーで領兵をしていたが、マドハトの『取り替え子』により、瀕死の状態からエクシを体を交換された。
クッサンドラの肉体を傷つけ、その中に入ったエクシは死亡。
エクシはリテルと同郷で幼馴染の一人。ビンスン兄ちゃんと同い年。フォーリーで領兵をやっていた。
父ハグリーズからのエクシへの虐待を防いでくれていた姉が、クッサンドラの兄のもとへ嫁いだせいで、守ってくれる者が居なくなり、エクシは歪んだ。
クッサンドラは、エクシから姉を奪ったことに責任を感じており、エクシが犯した罪を償うべく、エクシが殺しかけたドマースへ、その代償としてエクシの寿命の渦を売った。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
名無し森砦の兵としてルブルム一行の護衛として同行。洞察力があり、頭の回転も早い。
利照のことをお兄ちゃんと呼び、慕っている。ルブルムやマドハト同様に頼れる仲間。
・ロッキン・フライ
名無し森砦の兵士。
フライ濁爵の三男。山羊種。
ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っているが影が薄い。
ルブルム一行の護衛として同行。指笛で相棒の馬を呼べる。兄弟は皆、強い騎士。地元が、黒き森からそう遠くない。
本当はルイース虹爵領の領都アンダグラにある図書館で働きたかった。
・ケティ
リテルの幼馴染で想い人。一歳年上の女子。猿種。
旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。
・ナイトさん
元の世界では喜多山馬吉。元の世界では親の工場で働いていた日本人。
四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。馬種。元はニュナム領兵の隊長をしていた。
今は発明家兼ナイト商会のトップ。ヒモパンやガーターベルトやコンドームの発売もしており、リテルを商会に誘ってくれた。
サスペンションなど便利機能がついた馬車「ショゴウキ」(略してショゴちゃん)を提供してくれた。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
・グリュプス
鋭く曲がった嘴、耳羽に似た耳、鷲の上半身に、獅子の下半身を持つ魔獣。
もとは天界の住人だが、既にこの世界に定着している。
モクタトルの使い魔であるグリュプスの名前は、トリニティ。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
十銀貨(十二進数なので十二枚)=一金貨
十金貨(十二進数なので十二枚)=一大金貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第八十五話終了時点では星の月夜週の十日(十進だと十二日)の昼頃。




