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#68 森の奥の二人

 『虫の牙』……もちろん知っている。

 ディナ先輩と、ディナ先輩のお母さんが囚われていたモトレージ領の領主キカイー白爵(レウコン・クラティア)の屋敷、そこに居た強い警備兵が持っていた魔法の武器『虫の牙』。

 その能力は地界(クリープタ)からレムルースを召喚し、対象に対し呪詛の傷として負わせるというもの。

 魔法代償を集中しようとしただけでとんでもない激痛を与える呪詛の傷を。


 ディナ先輩がキカイーの館から脱出する際に負わされた『虫の牙』の傷が巡り巡って今、自由意志を取り戻したポーとして俺と『契約』している状態なのだ。

 フラマさんが触れているこのレムールこそが、まさしくその『虫の牙』によってこの世界(ホルトゥス)へ召喚されたレムールなのだが……問題はフラマさんのスタンスだ。


 考え得る可能性は……あの警備兵の関係者、ディナ先輩のような『虫の牙』の被害者……あとは何だ?

 警備兵以前に『虫の牙』を持っていた者、もしくは『虫の牙』を制作した者、その関係者……。


 そもそも『虫の牙』の知名度ってどのくらいなのだろう。

 ルブルムの記憶を通して見たカエルレウム師匠の所蔵本には、魔法の品を扱ったものも何冊かあったけど、『虫の牙』のように特定の武器について書かれたものはなかった。

 ホムンクルスやゴーレム、ゾンビーの製造や維持に関わるものばかりだったような。


 もしもフラマさんがあの警備兵と対立する立場ならば、今後は共闘という道もあるかもしれない。

 ただ、ここでとぼけて後でそれが発覚したなら、確実に不信を招くよね。

 逆にあの警備兵側だとしたら、下手なことを言えば俺たちは攻撃されるかもしれないし、ディナ先輩にまで迷惑が及ぶ恐れもある。


(『虫の牙』ですか……)


 不確定な希望よりも、確実な安全だ。


(レムルースに関わる魔術の名前ですか? 少なくとも俺の『契約』とは違う魔術のようです)


 嘘はつかずに距離を置く。


(いえ、知らないのでしたら、知らないままの方が良いかもしれません)


 話が途切れてしまった。

 俺は話が下手だな……となると、フラマさんがレムールを見える理由も、こちらからは聞きにくいよな。

 言いたくないこと言わなくていいって宣言しちゃってるし。


 残る話題は……ヒモパンの入手方法と、この状況をどう切り抜けるか、ってあたりか……優先順位は比べるまでもない。


(あの……この街では、死刑とか逮捕ってよくあるんですか?)


 郷に入りては郷に従えとは言うけど、さすがに死刑ってのは……。


(よくあります。先程、死刑を宣告されたクロケ・ボートー様は、事あるごとに死刑を言い渡します)


 マジか。


(あの……処刑方法とか、聞いてもいいですか?)


 元の世界の中世では、処刑が一種の娯楽として見世物になっていたところもあるらしいもんな。

 方法によってはうまく逃げ出せたりしないかな……というか、ルブルムが持っているクスフォード虹爵(イーリス・クラティア)様の手形とか見せたら何とかならないかな。

 ボートー様は紅爵ポイニクス・クラティア……虹爵の方が格が上だもんな。


(大丈夫よ)


(大丈夫って、何がですか?)


(ここ、こんなにたくさん牢があるのに、私達以外に誰もいないでしょ。それは翌日までに)


 ギィ。


 扉が開く音。

 そして複数の足音が近づいてくる。


(レムール戻した方がいいわよ。あと、もしもどこかで『虫の牙』の噂を聞いたなら私に教えてほしいの。それを持つ奴は父さんの仇だから)


 マジか。

 こんなタイミングで通話終了か。

 俺は『テレパシー』を打ち切り、ポーに戻ってもらった。


「フラマっ!」


 牢屋の前に最初に現れたのはジャック様だった。

 しかし俺の牢の前は素通りして、フラマさんの牢の前へ。


「フラマッ! 先程のあれ……ワタクシは感動しました! 新しい世界へ到達した気分です!」


 ジャック様に続いてゾロゾロと現れた治安兵の皆さんが、牢の前の通路に整列する。

 隣の牢の鍵が開く音。

 どうやらフラマさんは解放されたようだ……ジャック様が俺の牢の前に……なんと!

 俺の牢の鍵も開けてもらえた。


「フラマ、並びにリテルよ。我が父、キングー・ボートー紅爵様より恩赦を与える」


 え?

 これ、ドッキリじゃないよね?


 深呼吸を一つ。

 それから丁寧なお辞儀をして、俺は恐る恐る牢から出た。


「あ、ありがとうございます」


 フラマさんは、大丈夫って言ったでしょ的な表情を浮かべている……どういう事?


「我が母、クロケ・ボートーは、真にこの街を、そして私のことを愛している。それゆえ、愛ゆえに死刑を発令する。しかし我が領民ならびに、この愛すべきアイシスを訪れし旅人を処刑し続けては、この街そのものが成り立たなくなるからな。毎日、一回目の死刑は恩赦に処すと、我が父、キングー・ボートー紅爵様がお決めくださったのだ」


 一回目の死刑は恩赦ってパワーワードだな。

 とにかく助かるのなら、こんなにありがたいことはない。


「リテルよ。本日はもう死刑になるでないぞ」


「では……もう、街を出た方が良いですよね」


 治安兵に保護されながら宿へと戻ってからは早かった。

 やたらとオロオロしていたルブルムとマドハト、レムの三人も、フラマさんから聞いたラビツ情報を伝えると、すぐに気持ちを切り替えてくれた。

 まだ朝と呼べるうちに、俺たちはアイシスを出発した……チェッシャーやフラマさんにお別れを告げる暇もなく。




 アイシスを出発して数ホーラ。

 太陽の高さから、おそらく昼頃だろう。


「ライストチャーチ白爵(レウコン・クラティア)領の領都ニュナムまでは馬車で五日。向こうは徒歩とはいえ相手はラビツたち。こちらは二日遅れだし、ニュナムまでに追いつけるかどうか」


 御者当番のメリアンがポツリとこぼす。


「メリアンはラビツの行き先って知ってるんですか?」


「ニュナムから馬車で四日ほど行った所にトゥイードル濁爵(メイグマ・クラティア)領の領都ギルフォドがある。今、その辺りは戦争の噂が立っているって話だからな。おそらくそこに雇われに行ったんだろう」


 このラトウィヂ王国の東に高く長く聳えるマンティコラの歯山脈、その更に東にあるシルヴィルーノ王国とは、山脈を北から回りこむルートで交易をしている。

 そのルート上にある重要な中継地点である城塞都市ギルフォドは、今でこそラトウィヂ王国の最北東端の都市だが、百年ほど前まではギルフォドの北に広がるギルフォルド王国領だった。

 当時のギルフォルドが、ギルフォドにて無茶な通行税や関税をかけてきたことでラトウィヂと戦争になり、勝利したラトウィヂがギルフォドを奪ったのだが、その後何十年か毎に、ギルフォルドが攻撃を仕掛けてきているのだという。


「もし、俺たちが追いつく前に雇われてしまったら……」


「ああ。簡単には会えなくなるだろうな。それに傭兵仕事は複数月まとめての契約が多いからな。しばらくはフォーリーまで戻れっつーのも難しくなる」


「馬車で五日のとこ、もう少し縮めるってできます?」


「共同夜営地を無視して夜も進むというのは可能だが……あたしら馬車組はともかく、乗馬の二人はしんどいだろうね」


 交代で馬車に乗って休んでもらうのはどうだろう。

 その間の馬は、俺たちが乗馬の練習にも使えるかもだし……ああ、交渉しづらいな。

 エクシとはもちろんギクシャクしたまんま。


 アイシスを出る時はバタバタしてて、食料や水の買い出しもそこそこに街を出た。

 方針打ち合わせも休息も、ろくにできていないことにホッとしている自分が情けない。


「ロッキンさんにエクシ! ちょっと寄ってきてくれるか」


 突然メリアンが二人を呼び寄せ、雇い主からの報告だと前置きして、行程の短縮をいきなり告げた。

 ……強いな、メリアン。


 馬車はそのまま急ぎ気味に進む。

 ニュナム方面最初の共同夜営地に到着したのは、まだ夕焼けになる前。

 途中、遭遇したのは熊が一頭に、ニュナムからアイシスへ向かう定期便の馬車が一台。

 どちらも平和にやり過ごすことができた。


「夕飯込みの休憩の後は、夜通し走る。そのつもりで休んでくれ」


 恩赦のことを知っていたメリアンは、昨晩ゆっくり寝たらしく、今日はやけに元気だ。

 休憩を少なめにしたため、ロッキンさんとエクシには馬車で休んでもらい、夕飯の準備は残りのメンツでする。


 メリアンとレムがかまどの準備。

 ルブルムが芋の皮剥き。

 そして、俺とマドハト、クッサンドラとで近くの川まで水を汲みに行く。

 今日のメインはアイシスで買った魚を干したやつと芋とで作るスープ。


 革製の水袋に川の水をいっぱいに入れて口を縛った所で、クッサンドラが作業の手を止めた。


「あちらに二人……隠れているみたいですね」


 俺も『魔力感知』の範囲を絞り、距離を伸ばしてみる……クラーリンさんと出会えたおかげもあって、俺の『魔力感知』はかなりレベルアップしている気がするが……ん?

 特には……変な所はないように感じるけど?


「あっちの方向にウサギとネズミが居るのは分かります?」


 あ、そう言われてみると……自然にその二種類が一緒に居ることってあんまりないな、というのはリテルの知識から。


「動かない奴が居ますね」


「それだけでも不自然ではあるのですが、もう一つ。偵察兵の先輩から教えていただいたこととして、よっぽど訓練された人でもない限り、獣種が気配を動物に似せるときは、動物先祖の気配を真似しやすいんですって」


 気配というのは、魔術師以外が寿命の渦について語るときに用いる言葉。


「となると、兎種(ハクトッ)鼠種(ラタトスクッ)の二人組が気配を動物に似せて潜伏している、と」


 クッサンドラは首を横に振る……これは肯定だ。

 さすが偵察兵、索敵は技術も知識も磨いた上で、さらに思考も必要なんだな。勉強になる。


「おいらはちょっと偵察してきます」


「クッサンドラ、一人じゃ危ない。俺も行くよ。マドハトはメリアンに連絡してきてくれ」


「リテルさま、わかったです!」


「マドハト、走らずに、ですよ……そしてこちらはこちらで、向こうに気付いてないと思わせるため、薪でも拾いながら近づきましょう」


 俺も首を横に振って肯定を示すと、手斧の鞘の留め具をそっと外す。


 この川の付近は既に森の中。

 まだ明るさは森の中へ届いているとはいえ、野生動物や、もしかしたら魔物が出るかもしれない場所に、寿命の渦を擬態させて潜んでいるなんて、まっとうじゃない輩な可能性は大いに有り得る。

 次からは水汲みでも弓矢を持ってきてもいいかもな。

 名無し森でのカウダたちとの戦いを思い出しながら、クッサンドラと共に森の奥へ踏み出した。




 相当な覚悟でここまで来た俺だったけど、近づくにつれ聞こえはじめた高いびきに嫌なものを感じ始めていた。

 ああ、やっぱり……その二人を目視できる距離まで近づいたとき、嫌な予感は確信へと変わる。


 そいつらは、森の中に小さなテーブルと椅子を置き、片方……鼠種(ラタトスクッ)の先祖返りは、テーブルに突っ伏して寝ており、もう一人も先祖返り……兎種(ハクトッ)は、その寝ているやつにもたれかかりながら何か飲んでいるようだった。


 森の中で出遭うには余りにも異様な光景。

 自分たちを隠したいのか、目立たせたいのか分からない…… 変な人たちと言ってしまえばそれまでだけど、そんな思考放棄はすべきではない。

 混乱させようとしているのであれば……手放しかけていた思考を自分の中へ取り戻す。

 こいつらが何らかの囮だとしたら、他のやつらが居る可能性……どこから……俺たちが来るのは水汲み場からだと判っているなら……。


 クッサンドラを見ると剣を抜き、あの二人の様子を探っているようだ。

 俺も手斧を構えつつ『魔力感知』の形を変え、真横から後ろ半分全てを念入りに索敵する。


 ああ、やっぱり居るね……近づいてくるのが。

 猿種(マンッ)と、ちょっと離れて犬種(アヌビスッ)の先祖返り……後者がマドハトだとしたら、前者はルブルムか……さもなくばエクシか。

 『魔力感知』の、今度は密度を調節して猿種(マンッ)の方をじっくり観察してみる。


 ……これは恐らく、ルブルムではない。

 だとするとエクシ……ということは、クッサンドラが『警報通知』で連絡したのか?


 テーブルの二人にも注意を戻すが、相変わらず。

 後ろの二人が到着するまで待つのか?

 それとも一旦、皆の所へ戻るべきか?

 クッサンドラはさっきよりも二人に近づいていってる。


 俺も『警報通知』みたいな遠距離連絡系の魔法を作っておけばよかったな……その時だった。

 聞き覚えがある音に反射的に身をかがめる。


 タン。


 乾いた音が、すぐ近くに刺さった。


● 主な登場者


利照(トシテル)/リテル

 利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。

 リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。

 ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。

 その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種(マンッ)

 レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。

 現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。

 アイシスでチェッシャーに告白されたり、死刑を宣告されたり、フラマからラビツ情報を聞いたり。


・カエルレウム師匠

 寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種(マンッ)

 肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。

 寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。

 ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。


・ルブルム

 寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種(マンッ)のホムンクルス。

 かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。

 カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。

 質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。

 ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。


・マドハト

 赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種(コボルトッ)の先祖返り。コーギー顔。

 今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。

 ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。

 リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。

 フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。

 勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。


・ディナ先輩

 フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。

 男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。

 アールヴと猿種(マンッ)のハーフ。壮絶な過去を持つ。

 フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。


・メリアン

 ディナ先輩が手配した護衛。

 リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。

 ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種(モレクッ)の半返りの頼もしい傭兵。

 円盾と小剣(ごつい)を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。

 謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。

 騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いである様子。


・ラビツ

 ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。

 兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。

 ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。

 北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。

 リテルたちより二日早くアイシスを出発した。ギルフォドに向かっているらしい。


・エクシ

 ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。

 村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。

 ちょいちょい差別発言や嫌味を吐き、マウントを取ってくる面倒な人。

 ルブルム一行の護衛として同行。過去にチェッシャーを買い、魔法で惑わされた。


・クッサンドラ

 病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種(アヌビスッ)の先祖返り。ポメラニアン顔。

 フォーリーで領兵、それも偵察兵をやっている。

 ルブルム一行の護衛として同行。


・レム

 バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。

 魔法に長けた爬虫種(セベクッ)の少女。

 リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。

 その母親は利照同様に異世界イギリスから来た。

 現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。

 ルブルム一行の護衛として同行。


・ロッキン・フライ

 名無し森砦の兵士。

 フライ濁爵(メイグマ・クラティア)の三男。

 ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っている。

 ルブルム一行の護衛として同行。


・チェッシャー

 アイシス出身の猫種(バステトッ)の半返りの女子。あざといくらいに無防備な姿をしているが、魔法を使う。

 姉のために寿命を売りにフォーリーへ向かう途中、乗っていた馬車定期便が襲撃により横転したため、その近くに隠れていた。

 チェッシャーたちの命を取らなかったリテルの唇を奪い、銀の髪飾りをくれた。

 リテル達が名無し森砦で待たされている間にアイシスへ戻ってきていた。リテルへ好意を打ち明けた。


・クラーリン

 チェッシャーの姉グリニーに惚れている魔術師。猫種(バステトッ)。目がギョロついているおじさん。

 チェッシャーに魔法を教えた人。リテルにも魔術師としての心構えや魔法を教えてくれた。


・フラマ

 宵闇通りの高級娼婦。おっぱいで有名。

 鳥種(ホルスッ)の半返りのようだが、嘴はない。足は水鳥のよう。

 ジャック・ボートーに言い寄られている。本日からしばらくはリテルに買われた。

 魔法を使え、他の人には見えないはずのポーの姿が見える。

 『虫の牙』を持つ者が父の仇だと言う。


・ジャック・ボートー

 フリルのついたシャツを着るアイシスの治安部隊の隊長。太めの河馬種(タウエレトッ)

 アイシスを含むボートー領を支配する紅爵ポイニクス・クラティアと同じ名前。

 フラマに入れ込んでいる。根は真面目だが、NTR性癖の気配。


・クロケ・ボートー

 ジャックよりさらに太い河馬種(タウエレトッ)。ジャックの母にしてボートー紅爵の妻。

 大きな帽子とフリルまみれの服を着て、ジャックを溺愛している。

 アイシスにおける法を決める権力を持ち、領地や息子への愛ゆえに死刑を乱発する。


・キングー・ボートー

 ボートー紅爵ポイニクス・クラティア

 死刑を乱発する妻の尻拭いとして恩赦を与えまくる。


・森の中の二人

 森の中に小さなテーブルと椅子を置き、テーブルに突っ伏して寝る鼠種(ラタトスクッ)の先祖返りと、それにもたれて何かを飲んでいる兎種(ハクトッ)の先祖返り。

 怪し過ぎる二人組。


・レムルース

 地界(クリープタ)に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。

 『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。

 レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。

 ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。



この世界(ホルトゥス)の単位


・ディエス

 魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。

 魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。


・ホーラ

 一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ一時間に相当する。


・ディヴ

 一時間(ホーラ)の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ五分に相当する。


・クビトゥム

 長さの単位。

 本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。

 トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。


・アブス

 長さの単位。

 元の世界における三メートルくらいに相当する。


・プロクル

 長さの単位

 一プロクル=百アブス。

 この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。


・通貨

 銅貨(エクス)銀貨(スアー)

 十銅貨(エクス)(十二進数なので十二枚)=一銀貨(スアー)


・暦

 一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。

 それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。

 各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。

 毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。

 第六十八話終了時点では星の月夜週の五日の午後。


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