#66 高級娼婦のシャツの下
「フラマ! リテルは私のお客よっ!」
チェッシャーが俺の右腕をぎゅっと抱え込む。
「あら、リテル様は情報がほしいのでしょう? 閨でのことは秘め事。外で明かされることは決してありませんわよ?」
フラマさんが俺の左腕をぎゅっと抱え込む。
自分を好きだといってくれる子の胸と、宵闇通りのナンバーワンと言われるご立派な胸とに挟まれて、雑念が俺の思考を乱しまくる。
勃たないとはいえ、堪えられるとはいえ、意識はそれなりに持ってかれてしまう。
待て待て。
思考に集中しろ。集中するんだ。
外で絶対に明かさないってことは、内なら……つまり、買ったら教えてもらえるってこと?
「待て待て待てーっ!」
うん、待て待て……うん?
告知広場を東西南北に貫く目抜き通りの一つ、その東側から二頭の馬がこちらへ向かって走ってくる……いや、馬の間というか背後に大きな人影が見える。
大声を張り上げているのはそいつのようだ。
人の波がみるみる左右へと開き、それは俺たちの手前までやってきて止まった。
「待て待て待て待て待てっ! フラマっ!」
二頭立ての戦車……馬二頭に牽かせたリヤカーのような乗り物に乗っていたのは、やけにフリルの多い服に身を包んだ太めの河馬種。
周囲の人々が皆、片膝をつき、この世界のお辞儀をする。それも目線を合わせない丁重なやつ。
高貴な方ってことか。
チェッシャーとフラマさんも俺の手をいったん放してお辞儀をする。
俺とレムとメリアンも同様にお辞儀した。
「お辞儀はもうよい。フラマの可愛い顔が見えぬではないか」
フリルを着た河馬種の声を合図に皆々が顔を上げる。
そのタイミングで、河馬種の背後、目抜き通りの向こうに聳える高い城壁から昇る太陽が俺たちの目を細めさせた。
後光さすそのシルエットは、恰幅の良さも相まってまるで大黒様か布袋様のような印象を受ける。
「フラマ。今日こそはお前を買う客は居ないはずだ。さあ、大人しくこのジャック・ボートーに買われるがよい!」
ボートーってまさか……ボートー紅爵?
このアイシス一帯の領主? ……この河馬種が?
でも、領主にしてはちょっと若すぎる気もしなくもない。
「ジャック様、大変申し上げにくいのですが……本日は既にこちらのリテル様に買われた身でございます」
え、ちょ、ちょっとそれ、いつの間に確定したの?
情報収集はしたいけれど、娼婦を買うとかそんな無駄使いできるお金はないし……レムもチェッシャーも目つきが険しくなっているし。
メリアンが笑っているのがせめてもの救い。
「なんとっ! なんとなんとなんとっ!」
ジャック様は大げさな身振りで自分の眉間を右手でつまみ、天を仰ぐ。
なんだこの芝居がかったアクションは。
「ああ、母様……こんな酷い仕打ちがあってよいのでしょうか! 小癪な恋泥棒どもを排除するのにどれだけ苦労してきたか。ようやくフラマにワタクシを受け入れる空きができた……はずなのにっ! まだこんな所に一人……ああ! ああっ!」
よく通る大声。
「ジャックー! ジャックの嘆く声が聞こえるわっ!」
今度は女の声、そしてまた二頭立ての戦車。
体型的にはジャック様と同じ……いや、二周りくらいは大きい女性の河馬種。
しかも服についたフリルの数が凄まじい。
袖やズボンもフリルまみれで、まるでフリルのマフラーを着ているみたいな……決して口には出せないが、また変なのが増えた……。
「ジャック! ああ、ワタクシの可愛いジャック!」
戦車から降り、つばの広い帽子からはみ出ている金色のくせっ毛を手でファサッとなびかせたその女性に対し、ジャック様は片膝をつきつつしがみつく。
「母様、酷いんだよ。フラマのやつ、またワタクシ以外の客を……」
周囲の民衆が再び丁寧なお辞儀をするのに合わせ、俺たちも皆でお辞儀をする。
「まあ! まあ!」
あからさまな嘘泣きでメソメソ泣いているジャック様と、その頭を優しく撫でる……母様ということは、ジャック様はもしかしてボートー紅爵の息子あたりか?
それにしても何見せられているのこれ……。
「伝令! 伝令!」
その母様が突然叫んだ。
「はっ! ここに!」
背の高い鳥種が、ジャック様の母様の前で丁寧なお辞儀をする。
「本日の日替わり法は内容を変更いたします! 本日、フラマを抱いた男は死刑! 屋敷前で配布するタルトのスープは無料になさい! 以上!」
なんていう無茶な……なんて横暴な……これが領主というものか。
こんなことが許されるのか。
いや、別に抱きたかったわけじゃないし、そもそも抱くのは呪詛的に不可能だし、それ以前に俺たちはただ情報収集したいだけなのに、どうしてこんな妙な話になっちゃうんだよ……。
「母様、でもそれじゃフラマの客が辞退しても、ワタクシがフラマを抱けないではないですか!」
ジャック様の抗議は途中で周囲の民衆の大歓喜にかき消される。
そりゃそうだよな。三銅貨浮くんだもん。そりゃ喜ぶよな。
「今のうちにっ」
フラマさんが俺の左腕をひっぱってどこかへ行こうとするのを踏み留まる。
「ちょっと待って。このままフラマさんと一緒に行ったら、俺、死刑にされちゃうんじゃないの?」
「お兄ちゃん、そのフラマって人のこと抱くつもりなの?」
レムがチェッシャーを押しのけて俺の右腕を抱き込む……いくら股間が反応しないとはいえ、いちいちこの触感には気が削がれる。
しかもこう次々と押し付けられるのって精神的なざわつきがハンパない。
頑張れ、俺。
紳士たれ、俺。
「ち、違うよ。抱くつもりなん」
言い終わらぬうちに唇を、無理やり塞がれる……視界に揺れる赤い髪に一瞬気を取られ反応が遅れたが、すぐにルブルムではないと気付き、距離を取る。
朝日を受けて赤く輝いているのは、フラマさんの髪だった。
「おねがい」
顔の放し際、俺の耳元でフラマさんはそう言った。
おそらく俺以外には、周囲の歓声で聞こえてないくらいの小声。
さて、どうしよう。
漫画の主人公みたいな人なら、こういうシーンって普通はこの可愛いフラマさんの味方するんだよね。
でも、俺の判断は違う。
ルブルムの涙を思い出す。ディナ先輩の忠告を思い出す。ケティが「ストウ村で待ってる」と言ったときの表情を思い出す。レムの不安そうな悲しそうな表情……チェッシャーもレムと同じ表情。
死刑の危機とフラマさんと、どちらが優先順位高いかなんて比べるまでもない。
だいたい情報だけ貰えればいいってのに……。
そうだよ。
情報を貰えさえすれば、例えばラビツがもう旅立ったって情報をもらえらたとしたら、俺たちも今からもうこの街を出発したっていいんだ。
放置プレイって単語が頭に浮かぶ。
不本意だけど、そういうプレイってことにすればうまく乗り越えられないか?
「わかった。今日一日、フラマさんを買う。でも、抱かない。それでいいだろう?」
「待て待て待てっ! し、信用できるかそんなこと! ワタクシが監視するっ!」
ジャック様が割り込んでくる。
フラマさんは嫌そうな顔をするが、嫌悪というよりは辟易といった感じ。
二人がどんな関係なのか、フラマさんが何を嫌がっているのか、事情が全くわからないが、もしかしてただの痴話喧嘩みたいなオチはないか?
『魔力感知』の感度を上げたら、こういうとき感情も詳細に判断できるようになるのだろうか。
「なんでジャック様が」
「当たり前だ。ワタクシはこの街の治安部隊の隊長なのだから!」
フラマさんの口答えに即答するジャック様。
なるほど。警察トップみたいな感じかな。
そういえば、このジャック様、領主の息子な割には、人を死刑にする法律を即興で作っちゃう母親の子どもって割には、けっこうちゃんとしているような気がするんだよな。
あくまでも客として、あくまでも法に則り、行動しようとしているように見えるから。
「では、ジャック様に確認していただくことにしましょう。フラマさん、時間が惜しいので早くお店に案内してください。ジャック様もご一緒に」
「えっ?」
フラマさんがポカンと口を開けて俺を見つめる。
「そうかそうか。じゃあ、あたしらは護衛として店の前で待っているよ」
メリアンがレムの背中を押しながら近づいてくる。
「治安兵! ジャックについて行きなさい!」
「チェッシャーもついてく!」
「よお、アンタ! 今日の浮いた一日税、アンタにやるよ!」
「いいね! 俺のもやるよ!」
「ワシも乗ったぞ!」
「はーい! リテル様へのご寄付はこちらー!」
どこから取り出したのか、チェッシャーがいつの間にか大きな袋を用意して広げている。
お正月の賽銭箱の前のように、あちこちから銅貨が飛び始めた。
ベッドの上に山と積まれた銅貨を数え終え、その合計額を告げると、フラマさんはその上にジャラリと横たわる。
既にサンダルもズボンも上着も脱ぎ、身につけているのは裾がちょっと長めのシャツ一枚。
露わになった太ももの付け根は見えそうで見えなくて、ついつい視線が引っ張られ……じゃなくて。
フラマさんの足。
すねの途中から急激に細くなり、本来ならばくるぶしがあるあたりは完全に鳥の足。
それも、指と指の間に水かきのついた水鳥の足……ということは半返り?
でも、鳥種の半返りなら嘴があるのが普通……ルブルムからもらった知識ではそうだ。
最初に会ったとき、ただの鳥種とはどこか違う……違和感のようなものを感じたんだよね。
で、肝心のフラマさんご本人は、天井を見つめながら何やら指折り数えている。
「驚いた!」
フラマさんは上体を起こし、こちらを見つめる。
「私、安くはないのですけれど……星の月夜週が終わるまでは独占できますわよ」
やっぱり高かったのか。
実はお金が一番の心配だったりしたんだけど、思わぬ臨時収入で乗り切ることができそうだ。
「じゃあ全部払うから延長してください」
とりあえず俺がまとめて出しておけば、今月いっぱいはフラマさんは客を取らずに稼げるってことだよね。
「待て待て待てっ!」
「あら、ジャック様は見ているだけのお約束でしょう?」
「ぐっ」
部屋の入口の椅子に腕組みをして座っているジャック様は、苦々しい表情ながらも素直に黙る。
ジャック様、俺の中ではもう「いい人」認定。
「はい。じゃあ、期間いっぱい、楽しみましょう?」
フラマさんに引っ張られ、ベッドの上に寝転ぶと銅貨の臭いと感触がまとわりつく。
「それで、聞きたいこ」
全部言わせてもらえず唇を塞がれる。
なんなの俺の唇。
どんだけ奪われてるんだよ。唇ビッチかよ……うわぅ!
フラマさんの手が俺の股間を揉みしだくように撫で始める。
「だ、抱かないって言っただろ」
「ふぅん。そう言えばまだ一度も私のおっぱい、触ってないですものね。ねぇ、おっぱい目当てで私を探してくれたのでしょう?」
フラマさんは俺の股間から手を放すと、今度は上にまたがった。
膝立ちするフラマさんの股の間から、こちらを凝視するジャック様が見える……ジャック様の股間は俺の代わりにかなり盛り上がってくれている。
「ほら、触って」
フラマさんは両手で俺の手をそれぞれ取り、絹製の上等なシャツの上からでもわかるフラマさんの二つの突起へと誘導する。
大きさ、形、張り、何をとっても確かに噂になるようなご立派さ……だけど、罪悪感ゆえに、揉む気にはならない。
「……んっ。じらすのが上手ね」
そ、そういうつもりじゃないんですけれど。
「ね、抱くってどこまでが抱くなのかしらね。挿れなければ良いのかしら。一昨日の客も下に挿れるより胸で挟んでもらう方が良いってお願いされてね」
胸で挟む? そ、それ、もしかしてラビツ?
ここはうまく聞き出さなくては……言葉を選ぼうとする俺の頭に、フラマさんの胸の感触が、早鐘のように打つ自分の心音が、強制的にねじ込まれてくる。
頬が、体が、熱くなりがならも、ここまで冷静でいられるのは、呪詛のおかげだけじゃない。
ディナ先輩のとこで耐性を鍛えたおかげだろうな。
頑張れ、紳士な俺。
「……ああ、俺の知り合いの兎種もそういう趣味だよ。傭兵をやっててね。今頃は仲間三人と一緒に北へ向かっているはずなんだけど」
「ふふ……同じ人だったりして」
トロリとした笑みを浮かべながらフラマさんは、ごくごく自然にシャツを脱いだ。
そのシャツを俺の顔の横に無造作に放ると、桃に似た甘い香りがほんのりと香る。
いやいやいや、そこじゃなく!
フラマさん、履いている。
今の今までシャツに隠れていて見えなかったけれど、なんか紐パンみたいなのを……この世界では、少なくともケティやルブルムやディナ先輩たちは、下着をつけていなかったし、リテルの記憶の中にもパンツの類はなかった。
それがどうだ。
この眼の前の真っ白い絹の紐パンは、フラマさんの腰の左右でそれぞれ蝶々結びされている。
フラマさんの股の間から見えるジャック様は、自らの股間を両手でぐっと押さえ、身を乗り出すようにしてこちらを見つめている。
「あら、ヒモパンを見るのは初めて? これを着けているのは貴族か高級娼婦くらいですものね」
「ヒモパン?」
口に出して理解する。
やっぱりこの世界の言葉じゃない。
リテルの記憶で翻訳された言葉じゃなく、響きはまるで日本語のような……と、ということはっ!
● 主な登場者
・利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。
レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。
現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。
チェッシャーに告白された後、流れでフラマを買うことになった。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。
質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。
ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。
アールヴと猿種のハーフ。壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・ケティ
リテルの幼馴染。一歳年上の女子。猿種。
旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。
リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いである様子。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。
ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。
北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。
リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。
ルブルム一行の護衛として同行。
・チェッシャー
アイシス出身の猫種の半返りの女子。あざといくらいに無防備な姿をしているが、魔法を使う。
姉のために寿命を売りにフォーリーへ向かう途中、乗っていた馬車定期便が襲撃により横転したため、その近くに隠れていた。
チェッシャーたちの命を取らなかったリテルの唇を奪い、銀の髪飾りをくれた。
リテル達が名無し森砦で待たされている間にアイシスへ戻ってきていた。リテルへ好意を打ち明けた。
・フラマ
宵闇通りの高級娼婦。おっぱいで有名。
鳥種の半返りのようだが、嘴はない。足は水鳥のよう。
ジャック・ボートーに言い寄られている。本日からしばらくはリテルに買われた。
・ジャック・ボートー
フリルのついたシャツを着るアイシスの治安部隊の隊長。太めの河馬種。
アイシスを含むボートー領を支配する紅爵と同じ名前。
フラマに入れ込んでいる。根は真面目な人のよう。
・ジャックの母
ジャックよりさらに太い河馬種。
大きな帽子とフリルまみれの服を着る。
アイシスにおける法を決める権力を持つ。ボートー紅爵のごく身近な関係者と思われる。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第六十五話終了時点では星の月夜週の五日の早朝。




