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#65 悪いことはしてないのに

「んー!」


 チェッシャーの唇が俺の唇に届く前に、俺の右手をその隙間に差し込んだ。

 手のひらに、チェッシャーの唇の柔らかさを感じる。

 その柔らかさの中に唇よりももっと温かいものが現れて、俺の手のひらをゆるゆると……舐めてる?


「うわっ」


 数歩下がりつつ手のひらを見るとじっとりと濡れている。

 これ、チェッシャーの……と眺めた俺に、おそらく隙ができたんだろうな。

 今度は間に合わなかった。

 チェッシャーの唇も舌も、俺の口で受け止めざるを得なかった。

 しかも逃げようとする俺の踵は壁にぶつかり追い詰められる。


 チェッシャーの唇の触れる速度が次第に優しさに変わる。

 俺の下唇を甘噛みするの、これ、チェッシャーのキスの癖なのかな……じゃなくて。


 チェッシャーを引き離そうとするが、思ったよりも力強く俺に抱きついていて……引き剥がすのにはかなり強引にやらないとだなこれ。


「私、あきらめが悪いんだ」


 チェッシャーの唇が……唇だけだけど、ようやく俺から離れた。


「た、たまたま助けただけだろ。助けたのが俺じゃなかったら、その助けたやつを好きになるんだろ?」


 本当はシンプルに、俺じゃなくても良かっただろと、そう伝えたかったんだけど。

 動揺してたんだろうな、俺。


「違うよ。助けてくれた人から好きになったんじゃないから」


 チェッシャーにそう言われてからようやく、俺の表現と俺の伝えたいこととがうまく重なっていないと気付いた。


「きっかけは……確かに助けてもらったから。でもね、違うの。リテルの考え方とか雰囲気とか笑った顔とか、そういう助けてくれたとことは関係ないとこをいっぱい好きになったの。別の場所で別の出会い方をしたとしても、きっと好きになっている自信があるよ」


 ヤバい。

 どストレートな告白、これ、くる。

 すごい深くまで刺さった。


 仕方ないよな。だって人生初めてだよ。

 俺のことを好きだなんてこんな正面にから言われたの。

 ケティはほら、もともとリテルと良い仲ではあったし……ルブルムのは、恋愛感情とは違うっぽいし……レムが求めているのは恋人じゃなくお兄ちゃんだし……。


「リテルはさ、体の結びつきの前に心の結びつきを大事にする性格でしょ。それって私の周りじゃそうとう珍しいよ。でも、だからこそ、結ばれたいって思うんだ。そういう人となら、貧乏とか病気とかどんな酷い状況になっても、一緒に乗り越えていけそうだから」


 チェッシャーの言葉の外側に、彼女の育った環境を感じる。

 貧乏や病気といった障害が簡単に人間関係を終わらせる、ここはそういうところなんだ。

 エクシが娼婦を穴と呼んだように、人が人として扱われていないところなんだ。


 チェッシャーは俺の体に回していた手を放し、一歩だけ離れた。


 ちゃんと考えて俺のことを好きと言ってくれたチェッシャー。

 それに対して俺は……チェッシャーが可愛いからとか、俺のことを好きだった言ってくれたからとか、そんな薄っぺらい理由で応えてはいけないように感じた。

 それ以前に俺は、リテルの体を借りているだけの存在なんだということも忘れてはいけない。


「チェッシャー。ありがとう。チェッシャーの言葉、本当に嬉しい。こんなことを言ってもらえるなんて、とっても光栄に思う」


「いいよ」


 でも、と言う前に、チェッシャーが言葉を挟まれた。


「大事なお仕事があるんでしょ。返事はそれが終わってからでも。私はこういうところで育った。言葉も、初めてだってことも、信じてもらえないのが普通。無理やり押し付けるみたいに言ったけど、それを聞いてくれただけでも嬉しいんだ。伝えておきたかったんだ。リテルは可愛い子と一緒に仕事をしていて、私のことなんて目に入らないかもしれないから、こんな風に想っている私が居るよってことをちゃんと」


「うん。覚えておく。ちゃんと」


 場の空気が少し和んだあと、俺はいったん宿に帰ることにした。

 明日の夜明け、一日税の発表がなされる告知広場で待ち合わせる約束をして。

 それからフラマの所に連れて行ってくれるという。


 宵闇通りの入り口まで送ってくれるというチェッシャーに続いて部屋を出ようとしたとき、大量の魔法代償の集中を感じた。

 振り返ると、クラーリンさんだった。


「もう一つ、教えておく。『魔力感知』の感度を変えられることは知っているか?」


 レムを追跡した夜の森で気づいたアレのことかな。


「はい」


「ならばこれはわかるか」


 これ?

 『魔力感知』の密度を変えてみる……感度を上げてゆくと……眩しいけれど……あっ!

 クラーリンさんの中で、さっき集めた魔法代償が移動しているのがわかる。

 集中に比べるととってもわずかだけど、移動も感じられる。

 さっき、移動はバレないとか思った自分が恥ずかしい。

 ここまで感度を調整すると、魔法代償の移動も見えちゃうのか。


「眩しいかい?」


「はい」


「じゃあ、僕の集めた魔法代償には注視したままで、それ以外の周囲からは眩しさを取り除いてごらん」


「やってみます」


 ……言っていることはわかる。

 きっと、クラーリンさんにだけ『魔力感知』の密度を高めて、それ以外に対しては薄くする……イメージはあるんだけどなかなか難しい……あ、ちょっとできた?

 わわわ!

 できる! できるって思った途端にできるできる!

 すごい……『魔力感知』ってこんなに細かく調整できるんだ。


「暗闇の中に灯りをかざすとき、松明をかざすのと、一箇所だけ扉を開けた灯り箱(ランテルナ)とでは明るくなる範囲が変わるだろう」


 なるほど。

 密度を全体的に高めるんじゃなく、部分的に高めることで、より詳細な寿命の渦の動きを確認できるのか。

 感情の動きが寿命の渦に出るって言っていたの、このレベルまで細かくしておかないと感じ取れないんだろうな。


「君ならこういう細かい制御技術を、理解も実践もできるだろうと思ったよ。もしかしたら弟になるかもしれない君には生き残ってもらいたいからね。僕はお金を持っていないから、こういうものでしか支援できないけれど」


「い、いえ、充分過ぎるくらいありがたい支援です。本当にありがとうございます」


 これだけの技術を持っている人が金がないなんて、魔術師の世界って職が少ないのか、それとも層が相当厚いのか……と思ったら、クラーリンさんは単に働くのが嫌だからというとんでもない理由を語ってくれた……これがヒモってやつか。


 別れ際にまた話が盛り上がってしまいはしたが、俺とチェッシャーはようやく部屋から脱出した。




 宵闇通りの入り口で、エクシが待っていた。

 偶然、チェッシャーには途中で帰ってもらったことにホッと胸をなでおろす。

 エクシはチェッシャーのことには一切触れず、宿に戻るまで……戻ってからもずっと沈黙を貫いた。


 メリアン達ももう帰っていた。

 宿の隣にある酒場で夕食を取る。

 湖畔の町であるアイシスの特産、スピナと呼ばれる藻のスープ。

 香草で香りをつけた魚の蒸し焼きと黒パン。

 スープは青のりっぽい爽やかな香りの中にわずかに酸味があって、クセはあるけどちょっとハマりそうな味ではある。

 リテルからしたら珍しさもあって美味しさを感じるのだろうけど、現代日本という食のバラエティ豊かな場所から来た利照(おれ)の方は、この世界(ホルトゥス)の食事には全体的に物足りなさを感じている。


 食後はさっさと部屋へ戻り、持ち帰った情報の交換を始めた。

 俺たちが借りた部屋は二部屋とも本来は四人部屋だが、女部屋の方からベッドを一つ、男部屋の方へ運んできたこともあって、全員が一部屋に集まるとかなり手狭だ。


「うちは収穫なしだよ。ここは街の半分以上そういう所だからね、広くって。言っても仕方ないことだけど、名無し森砦で足止め食らわなければねぇ」


 マウルタシュ虹爵(イーリス・クラティア)様が、今回の件はクスフォード領内のみのこととして処理するとお決めになったから、ラビツの呪詛は王都に対しては何も説明していない。

 とある手違いでラビツが持ち出してしまった貴重な魔法品を取り戻しに行く、という設定。

 エクシ達やロッキン達……レムにすら、呪詛の話だけはしていない。

 だからこそ、時間をかけることで呪詛が広がる危険性があるにも関わらず、あまり焦った姿を見せるわけにもいかないのだ。


 王都から派遣された使者が俺たちから直接話を聞きたがったのは、ラビツの話などどうでも良くて、ウォルラースがスノドロッフの財宝を狙った点にある。

 貴重な魔石を採取できるノウハウを伝えるスノドロッフは、クスフォード領にあるから。

 ウォルラースの狙いは魔石ではなくアルバスの子どもだったのだが、国としてはあわよくばスノドロッフを国の直轄領にできればという欲望もあるからだろうと、『遠話』でディナ先輩に説明してもらったっけ。


「こちらは……メリアンから教えてもらった通りの聞き込みをしたら、宵闇通りのフラマという娼婦の名が上がり、宵闇通りまで探しに行きました」


 フラマについて現在わかっていること、そのついでにさらっとチェッシャーの話もする。

 街道で助けたチェッシャーが、助けてもらったお礼に明日、フラマの所へ案内してくれてるという約束についてを。

 さすがに告白されたことは伏せたけれど……その一部をあえて隠していることに対し、なんだか妙に罪悪感を覚える……その状態の自分の寿命の渦を詳細に観察することで、いくらか冷静さを取り戻せた。


 ……なのに。

 情報交換が終わったあと、俺だけ女部屋に呼び出されてしまった。


 呼び出しの理由は「魔法の練習」ということだったが、部屋に入った俺を見つめるルブルムとレムの視線がいつもの練習のときとはちょっと違う。

 しかも沈黙が重い。

 まさかエクシが余計なことを?

 でも、エクシが路地に消えてから、チェッシャーのとこで過ごした時間はさほど長くはなかったし、エクシもお馴染みさんと何かしてた時間もあったろうし、宵闇通りの入り口で再会するまでの時間を考えると、エクシが宿に戻って皆に変なことを吹き込むってのは、限りなく不可能に近いんだよな。


「お兄ちゃん」


 レムが急に笑顔になり、問いかけてきた。


「うん」


「今日あったこと『テレパシー』して」


 笑顔で。

 いつも以上の笑顔で。

 そして右手をすっと俺の方へ差し出す。

 その隣で、ルブルムも同様に右手を差し出す。


 マジか。


 悪いことをしたわけじゃないし、エクシみたいに遊んできたわけでもないけど……でも、チェッシャーのまっすぐな気持ちを、勝手に晒すのは気が引ける。

 かといってレムたちの要求を断ると、やましいことがあったと思われるよな。

 うーわ。

 どうしたらいいんだ……メリアンは横でニヤニヤしながら俺たちを見ている。

 どっちを選んだらいいんだ。

 ……。


 いや、思考を止めるな。

 考えろ。

 自分にとってのチェッシャーと、自分にとってのルブルムと、自分にとってのレムと。

 そして、紳士に相応しい選択を……。


 今までにないくらい脳をフル回転させる。

 そして、道筋が、見えた。


「街道で助けたチェッシャーが、魔法を使った話はしたよね」


「聞いた」


「チェッシャーに魔法を教えた人ってのが、チェッシャーのお姉さんの恋人で、実はチェッシャーを助けたお礼にって魔法を教えてくれたんだ」


 『テレパシー』を使う。

 二人同時に対象にして、だ。

 そもそも俺がイメージした『テレパシー』は、電話とかチャットとかの使用感覚だったし、記憶の端末から他者に接続する部分についてはUSBみたいなマークがついていたし、だからこそ、複数人同時接続ってのも簡単にできたのかもしれない。

 試しに魔法代償を倍消費したら簡単に、二人同時に接続することができた。


 教えてもらった魔法『新たなる生』のこと、『魔法代償』を準備しておく技のこと、『魔力感知』の密度を部分的に変える方法についてを二人に伝える。

 『テレパシー』の効果時間が切れたあとは、実際に『新たなる生』を教えて、それ以上チェッシャーについて突っ込まれることもなく、キスや告白の話もしないで済んだ。


 うん。頑張った俺!

 あわや修羅場をよくぞ乗り切ったよ!




 その夜は、クッサンドラが寝ずの番を申し出てくれて、俺たちは安心して寝ることができた。

 夜明け前、一緒にフラマに会いに行くメリアンを起こしに女部屋の扉をノックすると、すぐにレムが出てくる。

 今日の護衛はレムがついてくるという。


 エクシとルブルムとを置いて行くことにちょっと不安はあったが、あまり大人数で行くのもアレだからと、当初の予定通り俺とメリアンとレムの三人でチェッシャーとの待ち合わせ場所を目指す。

 しきりについてきたがったマドハトには、ルブルム監督のもと『魔力感知』の訓練をお願いしておいた。




 まだ薄暗い告知広場には、思った以上にたくさんの人が居た。

 一日税は一定の間隔で同じのを繰り返しているとのことだが、たまに突然イレギュラーなのが混ざることがあるっぽいんだよね。

 だから念のためちゃんと確認しに来ている人が少なくないのか。


「リテル、早いねぇ!」


 駆け寄ってきた勢いで俺に飛びつこうとするチェッシャーの前にレムが立ち塞がる。


「久しぶりだな」


 メリアンが腕組みから片手の指先だけ出してひらひらと振り、チェッシャーがそれに対して膝をつくお辞儀をすると、レムの警戒心がちょっとだけ和らぐ気配……が、あくまでも俺とチェッシャーの間に割り込むというポジションは死守する構えのようだ。


「でね、フラマもね、昨日のお客が早く片付いたとかで一緒に来てくれたよ」


「初めまして。フラマです」


 夜明け前の薄明に浮かび上がるシルエットは、噂通り立派な胸を含めた美しいプロポーション。


「初めまして。俺はリテルと言います。こちらの二人は護衛です」


 名乗るかどうかは本人に任せよう。

 しかし、フラマさんのこの寿命の渦って……にわかに辺りが騒がしくなる。

 すると突然、フラマさんが俺の腕をつかんで声高らかに叫んだ。


「リテル様、本日、私をお買いあげ、ありがとうございます!」


 え、な、何が?

 俺が? フラマさんを?


● 主な登場者


利照(トシテル)/リテル

 利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。

 リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。

 ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。

 その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種(マンッ)

 レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。

 現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。

 チェッシャーに告白された。


・カエルレウム師匠

 寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種(マンッ)

 肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。

 寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。

 ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。


・ルブルム

 寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種(マンッ)のホムンクルス。

 かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。

 カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。

 質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。

 ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。


・ディナ先輩

 フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。

 男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。

 アールヴと猿種(マンッ)のハーフ。壮絶な過去を持つ。

 フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。


・マドハト

 赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種(コボルトッ)の先祖返り。コーギー顔。

 今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。

 ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。

 リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。

 フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。

 勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。


・ケティ

 リテルの幼馴染。一歳年上の女子。猿種(マンッ)

 旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。

 カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。

 盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。

 足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。


・メリアン

 ディナ先輩が手配した護衛。

 リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。

 ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種(モレクッ)の半返りの頼もしい傭兵。

 円盾と小剣(ごつい)を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。

 謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。

 騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いである様子。


・エクシ

 ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。

 村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。

 ちょいちょい差別発言や嫌味を吐き、マウントを取ってくる面倒な人。

 ルブルム一行の護衛として同行。過去にチェッシャーを買い、魔法で惑わされた。


・娼婦

 エクシのことをかばった犬種(アヌビスッ)の半返りの娼婦。


・クッサンドラ

 病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種(アヌビスッ)の先祖返り。ポメラニアン顔。

 フォーリーで領兵、それも偵察兵をやっている。

 ルブルム一行の護衛として同行。


・ラビツ

 ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。

 兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。

 ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。

 北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。


・レム

 バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。

 魔法に長けた爬虫種(セベクッ)の少女。

 リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。

 その母親は利照同様に異世界イギリスから来た。

 現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。

 ルブルム一行の護衛として同行。


・ロッキン・フライ

 名無し森砦の兵士。

 フライ濁爵(メイグマ・クラティア)の三男。

 ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っている。

 ルブルム一行の護衛として同行。


・チェッシャー

 アイシス出身の猫種(バステトッ)の半返りの女子。あざといくらいに無防備な姿をしているが、魔法を使う。

 姉のために寿命を売りにフォーリーへ向かう途中、乗っていた馬車定期便が襲撃により横転したため、その近くに隠れていた。

 チェッシャーたちの命を取らなかったリテルの唇を奪い、銀の髪飾りをくれた。

 リテル達が名無し森砦で待たされている間にアイシスへ戻ってきていた。リテルへ好意を打ち明けた。


・グリニー

 チェッシャーの姉。猫種(バステトッ)。美人だが病気でやつれている。

 チェッシャーがフォーリーで稼いだお金で買った薬で命をつないだ。


・クラーリン

 グリニーに惚れている魔術師。猫種(バステトッ)。目がギョロついているおじさん。

 チェッシャーに魔法を教えた人。リテルにも魔術師としての心構えや魔法を教えてくれた。


・フラマ

 宵闇通りの娼婦。おっぱいで有名。

 突然、リテルに買われたと叫んだ。


・レムルース

 地界(クリープタ)に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。

 『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。

 レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。

 ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。



この世界(ホルトゥス)の単位


・ディエス

 魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。

 魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。


・ホーラ

 一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ一時間に相当する。


・ディヴ

 一時間(ホーラ)の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ五分に相当する。


・クビトゥム

 長さの単位。

 本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。

 トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。


・アブス

 長さの単位。

 元の世界における三メートルくらいに相当する。


・プロクル

 長さの単位

 一プロクル=百アブス。

 この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。


・通貨

 銅貨(エクス)銀貨(スアー)

 十銅貨(エクス)(十二進数なので十二枚)=一銀貨(スアー)


・暦

 一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。

 それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。

 各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。

 毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。

 第六十四話終了時点では星の月夜週の五日になる直前。


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